虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

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2話 真面目は真面目でも狂気じみた天然真面目

 

 

 

 

─────虹ヶ咲学園の校門から駅へと続く並木道。

放課後の柔らかな陽光を浴びながら、眠そうな目をした女子高生・近江彼方(このえかなた)はふらふらと、しかし慣れた足取りで歩いていた。

 

 

彼方「・・・ふわぁ・・・眠い・・・今日はバイトも、お昼寝も・・・全部頑張った・・・」

 

 

抱えた枕をぎゅっと抱きしめ、重い瞼を必死に持ち上げる。

彼女にとっての世界は、常に半分夢の中にあるようなものだ。

しかし─────そんな彼方の微睡(まどろみ)を強制的に覚醒させる、あまりにも異様な光景が視界に飛び込んできた。

 

道の真ん中で、一人の男が『何か』と対峙していた。

 

男は、腰まで届く艶やかな黒髪をなびかせ、青い着物に白い羽織という、時代錯誤も甚だしい姿をしていた。

その端正な顔立ちは驚くほど真剣だが、問題はその隣に立つ『何か』だった。

 

それは、身長180センチメートルはあろうかという、巨大な白いペンギンのような生き物だった。

─────無表情な丸い目に、黄色い嘴。

そして、そこから覗く妙に生々しい毛深い足。

 

彼方は足を止め、首を傾げた。

 

 

彼方「・・・ん・・・あれは・・・巨大な、マシュマロ・・・? それとも、新しい、癒やし系・・・キャラ・・・?」

 

男「待て、エリザベス! お前の出すその『グー』は、宇宙の心理を内包しすぎている! もっとこう、初心に帰って、拳で語り合うのだ!」

 

 

男が叫ぶ。

巨大な白いペンギン・エリザベスは、無言でプラカードを掲げた。

 

『それ、ジャンケンっていうか、ただの暴力です』

 

と。

 

 

彼方「・・・あの・・・」

 

 

我慢できず、彼方がぽつりと声をかけた。

男・桂小太郎(かつらこたろう)は、電光石火の速さで振り返り、厳粛な面持ちで彼方を見据えた。

 

 

小太郎「そこの少女─────すまないが、此処からは俺とエリザベスによるとある《儀式》を執り行っている最中でな。一般人は近寄らぬ方が身の為だ」

 

彼方「・・・・・・ぎしき・・・? ジャンケン、してるように・・・見えるけど・・・」

 

小太郎「違う! これは攘夷志士としての精神統一、そして来るべき夜明けの為の─────」

 

彼方「・・・・・・ふかふか・・・」

 

 

桂の演説を無視して、彼方はエリザベスの腹部に吸い寄せられるように歩み寄り、その白い胴体に顔を埋めた。

エリザベスは突然寝転がってきた女子高生に、頬を紅く染まっていく。

プラカードを掲げる。

 

『やばい、可愛い女の子が寝てきた。しかも匂いが良い』

 

と。

 

 

彼方「・・・あ、これ・・・すごく、寝心地、いい・・・今までの、どの枕よりも・・・至高の、ふかふか感・・・」

 

小太郎「あ、ちょっと少女!? 貴殿、我が友を何だと思っている! それは枕ではない、攘夷の魂を宿した戦友なのだぞ!」

 

彼方「・・・ずー・・・」

 

小太郎「寝た!? この状況で寝たのか!? 貴殿、もしや政府(ばくふ)が送り込んだ特殊な刺客か? 睡眠によって、相手の戦意を削ぐという高度な術式か!?」

 

 

エリザベスがプラカードを掲げる。

 

『いや、単純に眠たいだけだと思います』

 

と。

 

桂が狼狽していると、遠くから喧騒が響いてきた。

複数の足音と、拡声器を通した荒々しい声。

 

 

男「いたぞ!!!桂だ!!!桂を逃がすなァァァ!!!」

 

 

彼方には、聞き覚えのない組織の一団が黒い制服を翻して、こちらへ猛ダッシュしてくる。

その組織の名は、警察武装組織・真選組(しんせんぐみ)

その先頭を走る煙草を咥えてる男が、彼方とエリザベス、そして桂の構図を見て目を見開いた。

 

 

男「てめぇヅラ!!!昼間から公道で何さらしてやがる!!!挙句の果てに、そんな眠そうな女子高生(ガキ)まで連れ込んで・・・てめぇ、ついにそっちの道に走りやがったか!!!」

 

小太郎「待て、真選組! 違う、これは誤解だ! 彼女が勝手にエリザベスにダイブしただけで─────」

 

男「問答無用だコラァ!!!通報によれば、『巨大な化け物とロン毛の不審者が、女子高生を拉致して洗脳教育を施している』とのことだ!!!このロリコン攘夷浪士が!!!」

 

 

円な目をした青年がバズーカを肩に担ぎ、無表情に照準を合わせる。

 

 

青年「死んじまいなァ、ロリコン」

 

小太郎「ロリコンではない!桂だ!待て!俺は何もしていない!本当だ!彼女が・・・ロリコンではないと言っているだろうがぁぁぁ!!!」

 

彼方「・・・ん・・・煩い・・・折角、いい夢・・・見そうと、だったのに・・・」

 

 

爆風が吹き荒れる直前、エリザベスが彼方をひょいと抱え上げ、物凄いスピードで逃走を開始する。

その後を叫びながら桂が追い、更に殺気立った真選組が追いかけていく。

 

─────夕暮れのお台場。

彼方は、自分を抱えて走る巨大ペンギンの背中で、揺られながら再び深い眠りへと落ちていった。

 

 

彼方「・・・よくわからないけど・・・このペンギンさん・・・タクシーより、速い・・・おやすみ・・・なさい・・・」

 

 

結局、彼女がこの騒動の真相─────この国に侍がいて、警察が刀を振り回しているという現実を正しく理解することは、この先もついぞなかった。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 





次回は鬼兵隊✕せつ菜の予定です!
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