虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

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20話 大費いより小費い

 

 

 

 

─────前回の『迷子猫捜索』という名の『大人組の失態ショー』から一夜明け、お台場の海風が心地よい公園の東屋。

昨日の今日で気まずいかと思いきや、厚顔無恥な四人組はちゃっかりとスクールアイドル同好会の面々と合流していた。

 

 

晋助「・・・フッ、昨日は不覚を取ったが、今日はこれを持ってきた。我が鬼兵隊の英知を結集し、深淵の闇で練り上げた禁断の果実─────食うがいい」

 

 

高杉晋助が、仰々しく風呂敷を広げた。

中から出てきたのは、禍々しいほどに真っ黒な、しかしどこか甘い香りの漂うクッキーのような物体。

 

 

銀時「・・・何これ、石炭? それとも高杉の魂の焦げカス・・・?」

 

 

銀時が死んだ魚のような目で問いかけると、晋助は煙管をくゆらせ、低く、重々しい声でネーミングを告げた。

 

 

晋助「その名は─────『虚無を抱きし堕天使の吐息~漆黒の輪舞曲(ロンド)仕立て~』だ」

 

銀時「うるせぇぇぇよ!!!何だそのスカした名前は!!!普通にチョコクッキーって言えバカヤロー!!!」

 

 

銀時のツッコミが炸裂する中、かすみが恐る恐る一口かじってみると、その瞳が驚きで大きく見開かれた。

 

 

かすみ「・・・美味しい?!何これ、すごく優しいミルクの味がしますぅ!」

 

せつ菜「意外です!見た目と名前に反して、物凄く家庭的な味です!」

 

 

せつ菜も感動して食べ進める。

どうやら『鬼兵隊』という名の中二病集団は、意外にも手先が器用で、かつ家庭的な味覚を持っていたらしい

そのギャップに、歩夢たちは「高杉さんも、実は良い人─────なのかも?」と首を傾げていた。

 

そんな和やかな空気の中、小太郎が再び《軍師》の顔をして立ち上がった。

 

 

小太郎「よし、お菓子も食べたところで、此処からは再び大人組と子ども組に分かれるぞ。大人組には大人の嗜みがある─────そう、酒だ。酒と共に、語り合おうではないか」

 

 

小太郎の号令と共に、辰馬が何処からか豪華な木箱を取り出した。

中には、芸術品のような輝きを放つ日本酒のボトルが収められている。

 

 

辰馬「アハハハ!今日はとっておきを持ってきたぜよ!日本一高い酒、『零郷(れいきょう)』じゃ!わしと高杉の二人で飲もう!」

 

銀時「零郷・・・? おい、それいくらすんだよ。一万円くらいか?」

 

 

銀時が鼻をほじりながら聞くと、辰馬は笑顔でとんでもない数字を口にした。

 

 

辰馬「一本、三十八万五千円じゃ!」

 

銀時「高ぇぇぇよ!!!何だその値段!!!酒一滴が俺の一日分の労働賃金より高いじゃねーか!!!テメェら、そんなもん真っ昼間からお台場の公園でラッパ飲みしようとしてんのか!!!」

 

 

晋助は当たり前のようにその高級酒をグラスに注ぎ、優雅に口をつけた。

 

 

晋助「・・・・・・フッ、悪くない・・・俺ァ、ただこの高級な酔いに身を任せ、理性を壊すだけだ・・・」

 

銀時「壊すのはテメェの金銭感覚だろうが!!!」

 

 

隣で辰馬も豪快に煽りながら、銀時の肩を叩く。

 

 

辰馬「金時〜、気にするな!おまんも覚えてるじゃろう?わしと高杉は、実家が太い『ボンボンコンビ』じゃきに!金なら腐る程あるぜよ!」

 

銀時「だとしても!!!限度があるだろうが!!!何だその『俺たち上級国民(セレブ)ですから』みたいな空気は!!!腹立つわ!!!侍の魂は何処へ置いてきた!!!全部金塊に換金したのか!!!」

 

 

このセレブな光景に、スクールアイドル同好会のお金持ちトリオ─────ランジュ、栞子、ミアも呆然としていた。

 

 

ランジュ「─────ランジュの実家も大概だけど、あんな無駄な金の使い方、流石に真似できないわ・・・」

 

栞子「三船家としても、教育上よろしくない贅沢ですね・・・」

 

ミア「・・・狂ってる(Crazy)。あの酒一本で、僕の最新機材がいくつ買えると思ってるんだい・・・?」

 

 

お台場のセレブ女子高生たちが、江戸(東京)のボンボンたちの財力に圧倒されるという奇妙な構図が出来上がっていた。

すると辰馬は、酔った勢いで懐から札束─────一千万円分を取り出し、歩夢たちに差し出した。

 

 

辰馬「アハハハ!お嬢さんたち、これはわしからのお小遣いじゃ!好きなだけ使って、わしの嫁になる準備をせんか!」

 

歩夢「ア、アイドルはお嫁さんにはなりません!」

 

 

歩夢が顔を真っ赤にして叫んだ。

そして、彼女は迷うことなく、その札束を辰馬の手へ押し返した。

 

 

歩夢「辰馬さん、ありがとうございます─────でも、私たちにそんなお金は必要ありません。私たちにあるのは、お金では買えない『友情』と『大好き』の気持ちなんです─────だから、そのお金は辰馬さんの大切なお友達の為に使ってください!」

 

 

歩夢の、あまりに純粋で、聖母のような真っ直ぐな言葉。

その眩しさに、辰馬と高杉は持っていたグラスを落としそうになった。

 

 

辰馬「・・・・・・友情・・・大好き・・・」

 

 

辰馬が呆然と呟く。

 

 

晋助「・・・ククク・・・俺ァ、ただ・・・自分が、どれだけ汚れた大人だったかを思い知らされるだけだ・・・」

 

 

晋助が本当に、本当に心の底からダメージを受けたような顔をしてうなだれた。

銀時はそれを見て、ニヤニヤしながら、「ざまーみろ」と吐き捨てる。

 

 

銀時「・・・お前ら、気づくのが遅せーんだよ。こいつらはな、お前らみたいな痰を吐き合って喜んでるドブネズミとは魂の純度が違うんだよ」

 

小太郎「・・・お前が一番ドブネズミだろう、銀時」

 

 

小太郎が冷たく突っ込むが、銀時と小太郎と晋助の三人は、お台場の夕日に照らされる少女たちの笑顔を見て、かつて自分たちが松下村塾で抱いていた、あの汚れなき志をほんの少しだけ思い出していた。

 

 

侑「・・・ねぇ、銀さん。今度はみんなで、美味しいレストランにでも行きましょうよ! 勿論、お酒じゃなくてジュースでね!」

 

 

侑が明るく提案すると、銀時はふっと笑って立ち上がった。

 

 

銀時「おう、いいぜ─────但し、奢りは辰馬、テメェな」

 

辰馬「アハハハ!任せるぜよ!お台場のレストラン、丸ごと買い占めてやるき!」

 

銀時「買い占めるんじゃねーよ!!!普通に食え!!!」

 

 

ギャーギャーと騒ぎながら、大人たち四人と少女たち十三人は夕暮れの街へと歩き出す。

その背後で、晋助だけが「・・・零郷の領収書、経費で落ちるか、悩むな・・・」と、実に現実的で汚い大人の悩みを呟いていた。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 

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