虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

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3話 中二病の夢を見て良いのは高校生まで 大人は黙って現実を見ろ

 

 

 

 

─────逢魔ヶ刻(おうまがどき)が迫るお台場の海沿い。

情熱の炎に燃え盛る女子高生・優木(ゆうき)せつ()─────(もとい)中川菜々(なかがわなな)は、今日も全力で《大好き》を叫ぶための新曲について考えながら、一人で歩いていた。

彼女の頭の中はアニメやヒーロー、そしてスクールアイドルの情熱で溢れている為、学園では誰よりも冷静(クール)、しかし裏は誰よりも情熱の炎を燃え盛っていた少女である。

 

そんな彼女の前に、突如として時代錯誤な集団が現れた。

 

中心にいるのは、派手な蝶の刺繍が施された紫の着物を羽織り、左目に包帯を巻いた男・高杉晋助(たかすぎしんすけ)

その傍らには、三味線を背負った男、二丁拳銃を腰に下げた女、そして何処からどう見ても堅気には見えない、強面な男が控えていた。

 

せつ菜の目が輝く。

その格好、その立ち居振る舞い。

 

 

せつ菜「・・・・・・っ!ま、まさか・・・本物の《ダークヒーロー》、あるいは・・・秘密結社の方ですか!?」

 

 

せつ菜が興奮気味に詰め寄ると、晋助は煙管きせるをくゆらせ、この世の全てを悟ったかのような薄笑いを浮かべた。

因みに彼の眼帯は、吉田松陽(よしだしょうよう)が健在であるこの平和な世界においては、単なる『カッコつけ』のアクセサリーに過ぎなかった。

 

 

晋助「・・・・・・俺はただ、壊すだけだ。この腐りきった世界を─────そして、新たな夜明けの鐘を鳴らす」

 

せつ菜「『世界を壊す』・・・!なんて壮大な覚悟!まさに情熱の極致ですね!」

 

 

晋助が言ってることは全て、ただの『カッコつけたくて言いたいだけ』であり、テロリストでも何でもない。

彼が率いる鬼兵隊(きへいたい)も、ただの晋助に憧れてる中二病集団。

 

 

女「晋助様、今日もキマってるっす! 痺れるっす!」

 

 

女・来島(きじま)また()が頬を染めて叫ぶ中、晋助はさらに中二病的な台詞を続ける。

 

 

晋助「ククク・・・この瞳に映るものは、漆黒の絶望と、微かな希望の残滓(ざんし)のみ・・・お前のような光を纏う小娘には、この深淵は深すぎるかもしれねェな・・・」

 

せつ菜「深淵・・・!光と闇の相克・・・!素晴らしいです、その設定─────いえ、生き様!」

 

 

せつ菜が感動に打ち震えていると、背後で控えていた強面の男・武市変平太(たけちへんぺいた)が、目を怪しく光らせながら一歩前に出た。

 

 

変平太「─────これはこれは、実に可愛らしい女子高生ですね。最近の高校生の女性もまた、花のように可愛らしい・・・実に素晴らしい教育環境だ」

 

また子「武市先輩・・・またロリコンっすか。いい加減にするっす。通報されるっすよ」

 

 

また子の冷ややかな視線を浴びても、変平太はどこ吹く風で、(自称)紳士的に微笑んだ(無表情だが)。

 

 

変平太「失礼なことを言わないでください。私はロリコンじゃない、女尊主義者フェミニストです。純粋に、子ども達が大好き─────謂わば、未来を愛する女尊主義者(フェミニスト)なのですよ」

 

また子「いや、それがもうロリコンって言うんっすよ!キメェっす!」

 

 

変平太はまた子のツッコミを無視し、せつ菜に向かって、どこから取り出したのか、豪華なお重や炊きたてのおにぎりを差し出した。

 

 

変平太「さあ、女子高生さん。好きなだけ食べてください。高校生は高校生らしく、元気にたくさん食べるのが一番です。成長期を応援することこそ、真のフェミニズムなのですから」

 

せつ菜「えっ・・・あ、有難う御座います! 丁度お腹が空いていたので・・・頂きます!」

 

 

せつ菜は疑うことも知らず、出されたおにぎりをパクパクと元気いっぱいに食べ始め、頬張る。

その姿を変平太は至福の表情(無表情だが)で、見守っていた。

 

 

また子「武市先輩・・・やっぱりどう見ても餌付けしてる不審者っす!完全に幼い子を狙う不審者の手口っす!犯罪臭がプンプンするっす!」

 

変平太「心外ですね、ロリコンではないと言っているでしょう?私は幼気な女子高生に手を出しておりません─────迷える幼き者達に、温かな食事という名の『救いの手』を差し伸べているだけです。これが大人の余裕というものです」

 

また子「いやどっちにしろロリコンっす! 結局言い方変えてるだけでキメェっす!」

 

変平太「黙れ猪女」

 

また子「お前が黙れ!」

 

 

また子が銃を抜こうとしたその時、ずっと黙って三味線を爪弾いていた男・河上万斉(かわかみばんさい)が徐ろに顔を上げた。

彼はヘッドホンを直し、せつ菜がご飯を頬張る様子と晋助の中二病発言、そして変平太の変態的行動を静かに観察していた。

 

 

万斉「─────拙者、良い曲メロディーを思いついたでござる」

 

 

万斉が三味線を一掻きする。

 

 

万斉「この混沌カオスな状況・・・そしてこの少女から溢れる、無鉄砲なまでの熱量。今の拙者の魂に響く曲のタイトルは─────」

 

 

万斉は鋭い眼光をせつ菜に向け、断言した。

 

 

万斉「─────《情熱(ピー)陸》ならぬ、《情熱少女》。これでござる」

 

また子「パクリじゃないっすか!アウトっす!」

 

せつ菜「情熱少女・・・! 私にぴったりのタイトルです!」

 

また子「賛成するな!」

 

 

せつ菜は口に米粒をつけたまま、拳を握って叫んだ。

その後ろで、晋助は─────

 

 

晋助「フッ、情熱か・・・それもまた、一つの壊し方かもしれねェな・・・」

 

 

と、誰も聞いていないのに格好良いポーズで海を見つめていた。

お台場の夜は、今日も今日とて、平和な(?)中二病集団と情熱アイドルの邂逅によって更けていくのだった。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 





次回は某女好き社長と鐘嵐珠の邂逅となります!
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