虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

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4話 明るいっていうにも限度がある

 

 

 

 

─────午後の光が降り注ぐお台場の公園。

 

女王のように堂々たる立つ女子高生・鐘嵐珠(ショウ・ランジュ)は、自らの完璧なパフォーマンスを更に高めるためのイメージトレーニングを行いながら、堂々とした足取りで石畳を歩いていた。

 

 

ランジュ「今日もランジュは最高ね!世界中の誰もがランジュの虜になるのは、もう時間の問題だわ!」

 

 

自信に満ち溢れた笑みを浮かべ、海風に長い髪をなびかせる。

彼女にとって、この平和な公園は自分の輝きを再確認するためのランウェイに過ぎない。

しかし─────その前方から、彼女の『完璧な世界観』を真っ向から破壊するような、異様に高い笑い声が響き渡った。

 

 

???「アハハハ!アハハハハハ!」

 

 

爆音のような笑い声と共に現れたのは、ボサボサの天然パーマにサングラスをかけ、真っ赤なコートを羽織った180センチメートル越えの大男・坂本辰馬(さかもとたつま)だった。

その背後には、編み笠を深く被り、冷徹な眼差しを向ける青い着物の女性・陸奥(むつ)が影のように付き従っている。

 

辰馬は、前方から歩いてくるランジュの姿を捉えた瞬間、サングラスがずり落ちるほどの勢いで目を見開いた。

 

 

辰馬「アハハハ!!!女じゃあァァァ!!!わしの大好きな、若くてピチピチした女子高生がおるんじゃあァァァ!!!」

 

 

辰馬は、まるで獲物を見つけた野獣─────というよりは、玩具屋を見つけた幼児のような無邪気さと狂気を孕んだ表情で、ランジュに向かって猛ダッシュを開始した。

 

 

辰馬「待ておんし!!!素晴らしい!!!その自信満々な顔、まさにわしの好みのストライクゾーンど真ん中じゃ!!!名前は何て言うんじゃ?!!わしと一緒に宇宙そらの彼方まで商売しに行かんか?!!アハハハハ!!!」

 

ランジュ「な、何?!何なのよ、この失礼な大男は!」

 

 

ランジュは、かつてないほどの勢いで迫りくる『赤色の塊』に、思わず数歩後退りした。

今まで数々の賞賛を浴びてきた彼女だが、ここまで直球かつ騒々しく《女》として、或いは《性的対象》や《商売道具》として狙われたのは初めての経験である。

 

 

ランジュ「止まりなさい!ランジュに気安く話しかけていいのは、ランジュが認めた特別な人間だけよ!あなたみたいな、笑い声がうるさい不審者は論外だわ!」

 

辰馬「アハハハ!!!言うてくれるのう!!!その気の強さ、ますます気に入ったぜよ!!!陸奥!!!見ろ、この娘は金の卵じゃ!!!わしの新しい宇宙船の看板娘にするぜよ!!!」

 

 

辰馬がランジュの肩に手を置こうと、さらに距離を詰めたその時。

 

ドゴォッ!!

 

鈍い衝撃音と共に、辰馬の背中に鋭い蹴りが叩き込まれた。

蹴りを入れたのは、後ろで黙って見ていたはずの陸奥である。

辰馬はそのまま錐揉み回転をしながら、公園の植え込みへと突っ込んでいった。

 

 

陸奥「─────すまない、小娘。うちの社長(馬鹿)が、珍しく綺麗な個体を見つけて舞い上がってしまったようだ」

 

 

陸奥は、編み笠の端を指でクイと上げ、冷ややかな、しかしどこか同情を含んだ声でランジュに告げた。

 

 

陸奥「あの男は快援隊(かいえんたい)社長、坂本辰馬─────ただの女好きの商売人だ。危害を加える程の度胸はないが、兎に角騒々しいのが欠点でな」

 

ランジュ「快援隊・・・?宇宙船・・・?あなたたち、さっきから何を言っているの?」

 

 

ランジュは混乱しながらも、植え込みから「アハハハ・・・星が見えるぜよ・・・」と呟きながら這い出してくる辰馬を蔑みの極致のような目で、見下ろした。

 

 

ランジュ「いい?ランジュは宇宙船の看板娘になんてならないわ! ランジュがなるのは、全宇宙のトップアイドル、ただ一人よ!あなたたちの低俗なスカウトに乗る暇なんてないの!」

 

辰馬「アハハハ!!!トップアイドル!!!ええ響きじゃ!!!よし、ならわしがその宇宙ツアーのスポンサーになってやるぜよ!!!契約金は・・・うっ、ゲボォォォ!!!」

 

 

興奮しすぎて盛大に嘔吐し始めた辰馬を見て、ランジュは完全に愛想を尽かした。

 

 

ランジュ「・・・・・・最悪だわ。陸奥と言ったかしら?あなた、あんなのを連れて歩くなんて、苦労しているのね。ランジュなら一秒で、あんな社長を解雇(クビ)にしているところよ」

 

陸奥「・・・全くだ、お前の気持ちは分かる。だが、あれでも金勘定だけは天才的なのでな・・・おい、行くぞ。これ以上醜態を晒すと、次はお台場の海に沈める」

 

 

陸奥は辰馬の襟首を掴み、文字通り引きずるようにして去っていった。

遠ざかる「アハハハ!!!また会おうぜよ、お嬢さん!!!」という場違いな明るい叫び声を背に、ランジュは大きくため息をつく。

 

 

ランジュ「・・・全く。世界には嵐珠の理解を超える変な人が多すぎるわ。でも、全宇宙のアイドルっていうのは悪くない響きね・・・よし、次のライブのコンセプトは《銀河(うちゅう)》に決まりよ!」

 

 

ランジュは、不快な出会いすらも自らの輝きへと昇華させ、再び高飛車な笑みを浮かべて歩き出した。

平和な、あまりにも平和すぎて変人たちが跋扈するお台場の午後は、こうして過ぎていく。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 





次回はとあるチンピラ警察と愛&璃奈回となります!
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