虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

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5話 転ばぬ先のチンピラ警察

 

 

 

 

お台場の夕暮れ。

高層ビルが立ち並び、最新のテクノロジーが街を彩るこの場所は、今日も若者たちの活気に溢れていた。

虹ヶ咲学園の授業を終えた、令和の時代に相応しい清楚感の溢れる、ギャル風の女子高生・宮下愛(みやしたあい)とピンク髪のきしめんヘアーに小柄で無表情だが、誰よりも人一倍感情を持つ女子高生・天王寺璃奈(てんのうじりな)は、海沿いのプロムナードをのんびりと歩いていた。

 

 

愛「りなりー!学校終わったし、これからどうする?愛さん、今日は超絶ハッピーな気分だから、どこまでも付き合っちゃうよ!」

 

 

愛は眩しい金髪をなびかせ、隣を歩く親友に満面の笑みを向けた。

対する璃奈は、顔の前に電子式の《璃奈ちゃんボード》を掲げている。

 

 

璃奈「・・・・・・愛さんと一緒なら、何処でもいい。どこに行っても、楽しいから。璃奈ちゃんボード、『ニッコリ』」

 

 

ボードに描かれた可愛い笑顔のマークがピコピコと点滅する。

この平和な時代に生きる彼女たちにとって、最大の悩みといえば『新曲の振り付け』や『放課後のスイーツ選び』くらいのものだ。

かつてこの国が《侍の国》と呼ばれ、血生臭い剣戟が日常茶飯事だったことなど、彼女たちの教科書には載っていない。

ましてや、幕府を守るために刀を振るった人斬り集団の存在など、遠い昔のおとぎ話にすらなっていなかった。

だが、そんな二人の前に、明らかに《平和》という言葉からは程遠い異質な一団が現れた。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

プロムナードの真ん中で、黒い隊服を纏った三人の男たちが言い争っていた。

一人は、鋭い目つきで煙草を咥え、腰に差した刀をガチャつかせている男─────真選組副長・土方十四郎(ひじかたとうしろう)

もう一人は、どこか眠たげな表情をしながら、なぜか巨大なバズーカを担いでいる青年─────真選組一番隊隊長・沖田総悟(おきたそうご)

そして最後の一人は、体格の良く、二人の間に入って必死に宥めている大男─────真選組局長・近藤勲(こんどういさお)

 

 

十四郎「おい総悟・・・テメェ、俺の目の前で堂々と居眠りこいてんじゃねーだろうな。ここはパトロール中だぞ。サボってんじゃねぇ」

 

 

十四郎が、低く凄みのある声で吐き捨てる。

すると、バズーカを担いだ総悟が、感情の消えた声で返した。

 

 

総悟「─────何を言ってんですか土方さん。俺はサボっちゃいやせんよ─────ただ、どうやって死角からアンタを殺そうか、そのシミュレーションに忙しいだけです」

 

十四郎「何がシミュレーションだ!テメェは上司を殺す準備を完璧に整えてからパトロールに来るのが日課になってんのか!?今すぐその大筒を下ろせ!」

 

総悟「─────死ね、土方」

 

 

総悟が無造作にバズーカを十四郎の後頭部に向けた瞬間、真ん中にいた勲が慌てて割って入った。

 

 

勲「まぁまぁトシ!総悟!二人とも落ち着け!俺たちは真選組として、お台場の治安を守らなければいけないんだ。さっき桂を取り逃がしたばかりなんだから、市民に不安を与えちゃいかん!」

 

総悟「・・・・・・近藤さん、アンタのその顔が一番市民を不安にさせてるって気づいてますかィ?まさにゴリラのパニック映画ですよ」

 

 

愛と璃奈は、少し離れた場所からそのやり取りをじっと見つめていた。

彼女たちからすれば、その光景は『本格的なコスプレをした人たちの本格的な内輪揉め』にしか見えなかった。

 

 

愛「─────ねぇ、りなりー。あの人たち、すごいね。何かのドラマの撮影かな?」

 

璃奈「─────ううん、カメラは見当たらない。それに、あのバズーカ、本物っぽくて怖い・・・璃奈ちゃんボード、『ジーッ』」

 

 

愛は好奇心を抑えきれず、ひょいひょいと男たちに近づいていった。

 

 

愛「おーい!そこのおじさんたち!何してるのー?」

 

十四郎「おじ・・・っ!?」

 

 

十四郎のこめかみに青筋が浮かんだ。

彼はまだ二十七歳。

働き盛りであり、江戸(東京)の治安を守る《鬼の副長》として恐れられている男だ。

それが、キラキラした金髪の女子高生に『おじさん』と呼ばれた衝撃は計り知れない。

 

 

十四郎「おい、小娘(ガキ)。俺はまだ二十代─────」

 

愛「わあ、本当だ!近くで見るとその服、すっごく凝ってるね!新選組?あ、知ってるよ!歴史の授業で出てきた気がする! 『新・千組』みたいな?千人も仲間がいるの?どうかな?!」

 

勲「・・・・・・トシ、諦めろ。今時の子どもたちに俺たちの威厳は通じねぇ。それにしてもこの子、眩しいな。お妙さんとはまた違う輝きがある」

 

 

勲が鼻の下を伸ばしてニヤける横で、総悟が璃奈の方へ視線を向けた。

 

 

総悟「おい、そっちのピンク。その変なボードは何だ・・・?暗殺用の武器か?」

 

璃奈「・・・・・・違う。これは・・・表情を作るのが苦手な私の為の、インターフェース・・・お兄さんこそ、その大きな筒で何をするの?」

 

 

総悟と璃奈がそう話している間、勲が「ガーハッハッハ!」と笑いながら言う。

 

 

勲「すまないね、お嬢さんたち!うちの部下が少しばかり、血の気が多くてね。俺たちは《真選組》! この街の平和を、愛を、そしてお妙さんを影から見守る正義の味方─────基、パトロール隊だ! さあ、落ち着けトシ、総悟! 俺たちはパトロールを続けなければいけないんだからな!」

 

十四郎「近藤さん・・・あんたが一番落ち着いてねーよ。あとお妙さんの件はただのストーカーだろ」

 

勲「ストーカーじゃない! 愛の防衛行動だ!」

 

 

十四郎は盛大にため息をつき、手元の警察手帳をポケットにねじ込んだ。

 

 

十四郎「・・・ったく。さっきの桂の件といい、今日はおかしな奴らばかりに遭遇する・・・おい総悟、行くぞ。これ以上女子高生の前で恥をさらすな」

 

総悟「へいへい。土方さんの顔面が一番の恥晒しだってことに、早く気づけるといいですねィ」

 

十四郎「殺すぞテメェ!!!」

 

 

罵り合いながら去っていく十四郎と総悟。

勲は「アハハ、仲が良いだろう!」と豪快に笑いながら、慌てて二人の後を追っていった。

 

嵐が過ぎ去ったような静けさの中、愛は感心したように首を傾げた。

 

 

愛「真選組、かぁ。なんだか、スクールアイドルとはまた違った意味で、キャラが濃い人たちだったね! りなりー、どう思った?」

 

 

璃奈はそっと、璃奈ちゃんボードを切り替える。

そこには、混乱を表すような目を『ぐるぐる』として口を『〜』としてが、描かれていた。

 

 

璃奈「・・・・・・情報量が多すぎて、私凄く混乱してる。でも、あのお巡りさんたち・・・悪い人じゃない気がする。璃奈ちゃんボード『はてな』」

 

愛「だよね! よーし、愛さんも負けてられないな! 明日の練習は、あのお兄さんたちに負けないくらいのインパクト、狙っちゃおうかな!」

 

 

─────《平和ボケ》と言ってしまえばそれまでだが、彼女たちが生きるこの眩しい世界は、そんな『騒がしい大人たち』の奇妙な日常の積み重ねの上に、今日も穏やかに成立しているのだった。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 





次回は某老女と栞子&ミア回となります!
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