虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

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6話 借りたものは返せ

 

 

 

 

─────お台場の喧騒から少し外れた一角に、その古びた店はあった。

一階は《スナックお登勢》、二階には《万事屋銀ちゃん》という怪しげな看板が掲げられている。

 

虹ヶ咲学園の規律に厳しい女子高生・三船栞子(みふねしおりこ)米国(アメリカ)出身で十四歳にして大学に飛び級、現在は虹ヶ咲学園の高三になってる女子高生・ミア・テイラーは、厳しい生徒会業務と新曲制作の合間に、静かな休憩場所を求めていた。

 

 

栞子「─────ミアさん、ここはどうでしょう?趣のある和風喫茶に見えますが・・・」

 

 

栞子は《スナック》のことを《菓子》だと勘違いをし、喫茶店なのではないか?と思っていた。

しかし、ハンバーガーを愛するミアにとっては、あまりに乗り気ではなかった。

 

 

ミア「僕はハンバーガーを食べたいけど・・・まぁいいや・・・」

 

 

栞子が引き戸をガラガラと開けると、そこにはカウンターの奥で紫煙を燻らす、迫力満点の老女が座っていた。

 

 

老女「あら。この店に大人だけじゃなくて、子どもも入るなんて珍しいじゃないかい」

 

 

老女・お登勢(とせ)が、煙草を吸いながら低く酒焼けした声で二人を迎える。

その隣では、機械でありながら温かく、メイド風の少女ロボット・たまと、猫耳のような髪型をし、片言で喋る女性・キャサリンが品定めをするように目を細めた。

 

 

キャサリン「女子高生デスネ。此処ハ、アンタタチミタイナ『ピチピチ』ガ来ル場所ジャアリマセンヨ。間違エテ迷イ込ンダナラ、向カイノクレープ屋ニデモ行キナサイヨ」

 

栞子「いえ、道に迷ったわけではありません。休憩ができる場所を探していたのです」

 

 

栞子が背筋を伸ばして丁寧に答える。

ミアはその異様な雰囲気に少し気圧されながらも、ヘッドホンを首にかけ直した。

 

 

ミア「・・・・・・何か、思ってた『和風』と違う。でも、このおばさん、プロの匂いがする」

 

 

お登勢はふっと笑い、煙草を灰皿に押し付けた。

 

 

お登勢「ふん、生意気な子どもだね。だけど、アンタらみたいなガキには嫌いではないね。ま、アタシゃ二階に用があるからさ。たま、その子らにジュースでも出しときな。金は取らないよ、出世払いでね」

 

 

そう言い残すと、お登勢は階段をドシドシと上がっていった。

 

 

たま「了解しました─────栞子様、ミア様、此方へ」

 

 

数分後、栞子とミアがたまの出した、妙に色の濃いオレンジジュースを啜っていると、天井を突き破らんばかりの怒鳴り声が響いてきた。

 

 

お登勢『一度しか言わねぇぞ腐れ天パ!!!先月と今月の家賃!!!耳と腎臓を揃えて今すぐ持ってこんかいぃ!!!』

 

 

続いて、聞き覚えのない男の情けない程にだらしのない声が聞こえてくる。

 

 

男『っせーなァ、ババァ!!!今いいところなんだよ!!!ジャンプの懸賞で当たった『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』のプラモ、最後のパーツをはめようとしてたんだよ!!!集中力切れたらどうしてくれんだ!!!』

 

お登勢『そんなもん知るか!!!自分の家賃も組み立てられない奴がプラモ組み立ててんじゃねーよ!!!このクソガキが!!!』

 

男『誰がクソガキだ!!!俺は大人だっつってんだろクソババア!!!』

 

お登勢『大人なら大人らしくさっさと家賃を払わんかいって言ってんだよ!!!』

 

男『あー聞こえない!!!俺、今から耳の中に苺牛乳流し込むから何も聞こえない!!!』

 

 

ドタバタと何かが壊れる音と、激しい罵り合い。

普通なら恐怖を感じるような怒号だが、それを聞いている栞子の表情は、なぜか穏やかだった。

 

 

栞子「─────不思議ですね。あんなに怒鳴り合っているのに、まるで漫才コントを聞いているような、不思議な安心感があります」

 

ミア「YES、分かる。不快じゃない。寧ろ、すごく感情が解放されてる・・・信頼し合ってるからか、あんまり遠慮が無くて仲が良いと感じるよ」

 

 

二人は顔を見合わせ、微笑んだ。

見ず知らずの男の叫び声が、彼女たちの張り詰めていた心を解きほぐしていく。

 

その時─────店の端の方の席で、ずっと気配を消していた二人の客が動いた。

 

一人は、サングラスをかけたホームレス風の男・長谷川泰三(はせがわたいぞう)

もう一人は、油汚れのついた作業着を着た老人・平賀源外(ひらがげんがい)である。

 

 

泰三「─────なあ、源外さん。彼奴ら、またやってるよ。何時もの光景だけどさ、平和だよな」

 

 

泰三が空になったコップを見つめて呟く。

 

 

源外「カカカ! あの馬鹿弟子の声を聞かねぇと、お台場の夜は明けねぇからな。それより長谷川よ、さっき言ってた『ダンボールハウスを全自動で畳む機械』、予算一円でいいなら作ってやるぞ?」

 

泰三「一円もねーよ! 俺が今持ってるのは、この希望っていう名の無一文だけだ!」

 

 

栞子とミアは、そんな彼らの会話を横目に見ながら、最後の一口のジュースを飲み干した。

 

 

ミア「栞子─────ここ、また来てもいいかもね。少し、お台場の深淵を見た気がする」

 

栞子「ええ、ミアさん。規則正しい生活も大切ですが、たまにはあのように、魂の赴くままに叫ぶことも必要なのかもしれません。ご馳走様でした」

 

たま「またご来店をお待ちしてます。ありがとうございます」

 

 

二人が店を出る時、上階からはまだ『ババァの(ケツ)に苺牛乳ぶっかけるぞ!!!』『やってみろ!!!その前にその天然パーマを全部パンチパーマにしてやる!!!』という、生命力に溢れた不協和音が鳴り響いていた。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 

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