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かつて天井を覆う岩盤に吊るされた巨大な灯籠が、地上の太陽を模した赤々とした光を街に投げかけていたが、今はそれが無く、蒼穹が広がっていた。
華やかな着物、行き交う人々、そして甘く濃厚な香水の匂い。
その異様な熱気に、迷い込んだ二人の長身の少女は立ち尽くしていた。
少女「果林ちゃん・・・本当に、こっちで合ってるの? 何だか、今までの場所とは全然雰囲気が違うんだけど・・・」
赤い髪をツイン三つ編みに結った女子高生・エマ・ヴェルデが、不安げに周囲を見渡す。
その隣では、藍色のボブウルフカットを揺らしながら歩く女子高生・
果林「おかしいわね・・・スマートなモデルなら、こんなところで迷うはずはないのだけれど・・・この《桃源郷》っていう場所、観光地としては少しばかり刺激が強すぎるわ・・・」
果林は堂々と胸を張っているが、内心では自分たちが《大人の社交場》のど真ん中に突っ込んでいることに気づき、冷や汗を流していた。
その時、二人の目の前に一本の
???「─────止まれ。ここはお前たちのような子どもが来る場所じゃない。大人の聖域に踏み込むな」
鋭い声と共に現れたのは、金髪ブロンドで妖艶な雰囲気を齎す女性・
彼女は煙管をくゆらせながら、氷のような視線を二人に向ける。
その横には、紫色の長髪に眼鏡をかけた女性・
あやめ「ツッキー、この子たちは何なのかしら?迷子にしてはお洒落すぎるわね。もしかして、何処かのモデル事務所のスカウトに騙されて此処へ?」
果林「し、失礼ね!私たちはただの観光客・・・というか、道に迷っただけよ・・・」
果林が強気に言い返すが、月詠の威圧感に気圧される。
エマは月詠の持っている煙管を珍しそうに眺めながら、おずおずと尋ねた。
エマ「あの、此処におにぎりの美味しいお店とかありませんか? お腹が空いちゃって・・・」
月詠「おにぎり・・・? 此処は男と女が夢を買う場所だ。空腹を満たすなら、地上の定食屋へ行け」
月詠が呆れたようにため息をつくと、背後の建物の影から数人の男たちが現れた。
だが、その威厳は皆無だった。
リーダーの
全蔵「・・・あー、今週の銀魂、またメタ発言ばっかだな・・・っつーか、この吉原に女子高生が二人も迷い込むとか、どんなサービス回だよ」
忍者「全蔵、仕事をしろよ。警備してないせいで、女子高生が迷い込んでるぞ」
脇の忍者がそう言うが、全蔵はページをめくる手を止めない。
全蔵「あー、無理。今、俺の痔が絶好調に暴れてるから。一歩も動けねー。あ、そこの赤毛の子、サンドウィッチ持ってるなら一つくれ」
エマ「いいですよ! はい、どうぞ!」
エマが屈託のない笑顔で鞄からサンドウィッチを取り出し、全蔵に手渡す。
あまりの緩い展開に、果林は頭を抱えた。
果林「ちょっと、エマ! 何で餌付けしてるのよ! というか・・・彼処の人たち、本当に忍者なの?」
その混乱に拍車をかけるように、屋根の上から軽やかな足音が響いた。
???「へぇ・・・女が二人もいるんだ。強いかな?俺と戦ってみない?」
ニコニコとした殺意の塊のような笑顔を浮かべて降りてきたのは、一人の青年だった。
青年・
彼は傘を肩に担ぎ、獲物を見定めた獣のような瞳で二人を見つめる。
月詠「神威!お前、また面倒なことを・・・!」
月詠が警戒して苦無を構えるが、神威は気にした風もなく歩み寄る。
神威「だって、そっちの藍色の髪の子、いい目をしてるじゃないか。戦士の目じゃないけど、何かを射抜こうとするモデル─────だっけ? 魂が強そうだね」
果林「あら、見る目はあるようね─────でも残念、私は拳で戦う趣味はないの」
果林がモデルとしてのプライドをかけて睨み返すと、神威は「あはは」と笑い、突然真顔になって言った。
神威「じゃあ、大食い対決にする? 俺、ご飯に関しては絶対負けないよ」
果林「結局、食べ物の話なの?!!」
神威「まぁね。強い女ならやっぱり見逃しておくよ。将来、強そうな子どもを産めそうだからね。そうじゃないと、俺の楽しみが減る方だから」
果林「そういう問題じゃないでしょ!!!」
果林のツッコミが響き渡る。
月詠は頭を抑え、あやめは納豆を糸引かせながら『もう好きにしなさい』と呆れ果てていた。
煌びやかな吉原の夜。
最強の忍者、戦闘狂の夜兎、そして異世界から迷い込んだスクールアイドル。
噛み合うはずのないパズルのピースが、混沌という名の熱狂の中で奇妙に混ざり合っていく。
エマ「果林ちゃん・・・何だか、この街の人たちも、案外悪い人じゃないみたい・・・」
果林「・・・そうね。常識が通用しないだけよ。さあ、エマ。おにぎりがなくなる前に、ここを出るわよ」
二人が歩き出す背後で、神威の「おかわり!」という声と、全蔵の「ジャンプ返せコラ!」という怒鳴り声が、吉原の喧騒に溶けていった。
次回へ続く・・・・・・