墓標の寄せ山   作:鳥屋敷

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「『小さな魔法使いのための魔法論』」「杖」「折れた杖」〜ハリー・ポッター

「まず…どうしようか」

 

 老人は辺りを見回し、一冊の本を手に取った。英語だ。筆記体で書かれているが、magicが魔法であることはわかる。

 

「これだ。英語で書かれているが…英語、わかるのか?、まあ、これは『小さな魔法使いのための魔法論』と書かれている。多分魔法がある世界のものだ。中も全部英語なんだが…時間はたっぷりあったから、全部読んだんだ。えーっと、実演するのが一番いいかな」

 

 老人は机の上に置いてある棒を一本手に取った

 

「これは魔法の使い方の基本が書かれている。魔法は、ごく簡単に言うと起こってほしいことを強く念じて使うんだ。ついでにいくつかの呪文も書かれているんだが… どれにしようか…よし、これが説明しやすいな。例えば、」

 

 老人は杖でページを叩く。ページは特に動くことはなく、ただおとなしくしていた。

 

「ウィンガーディアムレビオーサ、ものを浮かせる魔法を使うとしよう。魔法を使う時は、この呪文を唱えながら、専用の杖で、決まった軌道を書く。大人の魔法使いは杖を軽く振るだけでものを浮かせて運んでいるんだが、それもこの呪文を使っている」

 

 老人は生き生きと話し続ける。心なしか、背筋も伸びている。

 

「フィニート、これは終われ、と言う意味だが、何が終わらせるかは、自由だ。拘束を解くでも、バリアを割るのでも。ただ何かを終わらせるための呪文だ。かなり何にでも適用できる」

 

 老人は一息置いて、湯呑みから一口飲んだ。

 

「…しかし脳内で現象をイメージすることを考えると、これは少し使い所が多くて初心者には難しい。先に言った方も慣れるまでは結構難しい。そこで呪文だ。呪文を唱えるのは、呪文と現象を結びつけることで、頭の中でその魔法を使うことで起こる現象をイメージしやすくするためだ。呪文以外に杖の振り方を教わったりもするらしいんだが、それも同様だ。だから訓練を積むと何も言わずとも素早く多様な魔法を使うことができるわけだ」

 

「……と言うのはこの本の受け売りだがな。こんなことを書いてあるんだ」

 

 老人の背中は元のように、曲がった。

 

「この棒も本の近くに落ちていたんだ。整っているし、この本にもある杖だろう。本当はもう一本あったんだが…これだ。この綺麗な糸、これは多分芯みたいなものだろうな」

 

 老人はベッド横の引き出しを開けて、細い繊維で繋がった棒切れを取り出し、私に手渡した。繊維は白くすらりと長く、一本でも美しさがあった。磨かれたその杖の装飾を指で撫でる。杖の持ち手であろう部分は心地よく手に馴染んだ。

 

「フィニート!」

 

 老人が唐突に叫んだ。その杖先は自分自身を向いていた。しかし何も起きなかった。

 

「いくら想像しても、杖を使っても、ちゃんと杖を動かしても、呪文を言っても…能力がなければできないらしい。この本ではマグル、って呼ばれてるよ」

 

 私は折れた杖に視線を落とした。老人は何を終わらせたかったのだろう。

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