努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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渋谷事変

──後にそう呼ばれる渋谷で起きた有象無象の大災害。それは当然、前兆を掴んだ優秀な窓により禪院家の耳にも入る。

 

「直毘人が行ったんやろ?何でボクが行かんといけんの?」

 

御三家当主かつ、五条悟に比肩する()()最強の呪術師、禪院真は金さえ積めば取り敢えず動いてくれるという手軽さから呪術総監部から重宝されていた。

だが今回、数千万という大金を積み上げたものの、返答はまさかの拒否。

 

「やることあんねん。足りないなら炳の誰かを貸すから勘弁してや」

 

だがやはり禪院真は禪院真だった。1億。それだけ出せるなら出ると言われたが、既に五条悟が動くことが決まっている以上、総監部は無駄な出費は抑えたかった。

恐らく別口で実入りの良い依頼が入ったのだろう。

タイミング的に呪詛師による分断の可能性も疑ったが、やはりそれでも一つの任務に特級クラスの呪術師を複数派遣するのは過剰戦力だった。

 

それに認めたくはないが、五条悟は最強の呪術師だ。

禪院真のようなケースを除いて、彼が遅れを取るような状況を誰も想像出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

2018年10月31日19時丁度。

東急百貨店東横店を中心に半径およそ400mの帳が降ろされる。

 

街はハロウィンの熱に狂わされた非呪術師で溢れ、その中で一際注目を集める二人がいた。

 

「うわっ、スゲェ……巨神兵だ」

「巨神兵っぱねー。いくらしたんだろ?」

「自作かな?プロの人?」

「隣の人は何のコスプレ?」

「早川アキ?」「ぜんぜん似てねぇだろw」

 

 

「あーあー。こんなに目立っちゃって、どうすんだよこれ。俺、非呪術師を殺したら縛りで死んじゃうんだよ?何でこんな目立つ呪骸にしたのかなぁ~」

「残穢を誤魔化すなんて無茶な仕事を10日で押し付けられたんだ。小型化なんてする暇はなかった。窮屈なら脱げばいい。その瞬間、お前はこの渋谷に集まった術師達に囲まれて終わりだ」

「何スカしてんだよ。今の俺とお前は対等だろ?呪霊を裏切った俺と、呪術師を裏切ったお前。一人だけ助かろうなんて水くさいじゃないか。俺が殺される時はお前も呪詛師として道連れにしてやる」

「……チッ」

 

特級呪霊 真人

そして準一級呪術師の与幸吉だ。

 

あまりに異色な組み合わせだが、彼らに共通しているのは禪院真に命を握られているということだった。

真人は言わずもながだが、与幸吉は高専の情報を呪霊側にリークするという失態をおかした。

高専には東京と京都にそれぞれ彼の姉が通っている。そして京都にいる姉は彼が玉のように大切にしている嫁さんだった。何やら京都高の人間には手を出さないという縛りをしていたようだが、普通に破られた為、彼の処刑は決定した。

 

『ま、待ってくれ!チャンスが欲しい!必ずアンタの役に立ってみせる!!』

 

そして彼に科されたのは虎杖悠仁の抹殺であった。

下手人を真人とし、与幸吉は自身が出来うる限りのサポートをすること。

失敗しても絶命するような理不尽な縛りでなかっただけマシだが、命だけ助かっても総監部に突き出されたら与幸吉は終わりだ。

そしてこの件に加担する以上、五条悟とは敵対することになる。今後も彼が生き残るにはここで禪院真の信頼を勝ち取るしかなかった。

 

「(せめて、五条悟の封印の件だけでも誰かに託さないと……クソっ。五条悟が封印されたら、あんなやつが呪術社会のトップになってしまう!)」

 

与幸吉から見て、禪院真の印象は最悪だった。

女であれば実の姉弟であろうと見境がなく、現に京都の女子は全員口説かれている。

 

禪院真は女は全員自分に股を開いて当然と思っているイカれ野郎だ。

 

今は五条悟と呪術総監部が上手く牽制しているので、強く出れないだろうが、その片割れが消えれば、強引に娶ろうとしてくるかもしれない。

 

故に与幸吉は虎杖悠仁の抹殺に加え、五条悟の封印阻止という二つの任務を達成しなければならなかった。

 

「なぁなぁ、どこにいるんだよ。虎杖悠仁」

「うるさい。今、探してる」

 

幸いにも、真人と直接結んだ縛りは生きていた。

今の自分は天与呪縛から解放されて五体満足だ。操作範囲は『日本全土』から『東京都をカバーしきれないぐらい』と大幅に縮小したが、まだ呪力の貯蔵がたんまりとある。

 

真人のサポートをする裏でメカ丸を操作し、高専の誰かと接触する。虎杖悠仁の暗殺については抜け目なく縛られているが、五条悟の件は別だ。

 

京都にあるボディには接続することは出来ないし、今手持ちのメカ丸を出して、単独行動させるのはリスクが高すぎる。だが与幸吉はこんなこともあろうかと、全国各地にメカ丸のボディを隠していた。もう少しで東京に潜ませていたそのうちの一体の操作範囲に入る。

 

「ん?何だろうあれ?」

 

真人の見つめる先、呪霊のような何かが術師達と戦闘を繰り広げていた。

 

「あんなやつ知らないなぁ……もしかして俺の代わり?」

「バカな特級呪霊だぞ。そんな簡単に補充出来るわけがない」

 

だが、呪力探知で感じる呪力量は間違いなく特級クラス。術師の方は高専関係者だろう。見覚えのある顔ぶれだった。

 

「虎杖悠仁じゃないからいいや。先行こうか」

 

……真人達自然呪霊という手札を失い、やつはもしかしたら今回の事件を引き起こさないのではと思っていた。

起きたとしても、もう今さら止まれないからというやけくそで、案外楽に片付くのではないかと、淡い期待をしたいたが、どうやら事はそう簡単には済まなそうだ。

 

「(あの額に縫い目のある虎杖悠仁に似た顔をした呪詛師。他人の空似とは思えない。やつは何者なんだ?虎杖悠仁が両面宿儺の器になったのは狙い通りなのか?)」

 

複数の思惑が錯誤する渋谷。

未だ最強が不在のその街の深部に二人は侵入する。

 

それからまもなくして

 

20:31 五条悟 現着

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