努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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夏油一派

「いらんわ。ジブンなんてババァ」

 

何やら渋谷では色々と騒がしいことになっとるようやけど、それにしたって高専の守りを疎かにしたらアカン。

 

殺そうとしてなんだけど、ぶっちゃけ今の虎杖悠仁はそこまで危険視してへんねん。人柄もボク好みやし、もうこれ以上『宿儺の指』を食べず、このまま天寿を全うしてくれゆうなら見逃してやってもええと思っとるぐらいや。

まぁどうせボクが何言うたって指を食べるの辞めへんのは分かっとる。蘭太と同じや。あぁ言うんは普段は素直なくせに、変に頑固なところがあるから面倒くさいねん。 

せやから今回で失敗しても、そのうちボクが直接殺そう思てる。

 

このまま指を食べて……そうやな。18本を越えると対処出来るんはボクと五条悟ぐらいやろうか。

五条悟は20本宿儺にも「勝つさ(笑)」とか言うてるけど無理や。断言してもええ。仮に完全に受肉してしもうたら、(絶対嫌やけど)五条悟と二人がかりで当たらなアカン。

それで五分五分、場所とか時間とかこっちの条件に合わしてくれるなら、八割ってところや。

 

せやから限度は18本……いや、大事を取って15本かな?

 

え?そんなに高い勝算があって共闘して倒せるなら全部喰わせてやったらええ?

 

アホなんジブン?それで負けたらどうすんの?呪術師はな。負けたら絶対アカンねん。ボクらみたいな上澄みは尚更や。その尻拭いでどれだけ血が流れるかわかる?

そりゃボクだって負けるにしても、ただで負けるつもりはあらへんよ。腕の1本や、2本、反転術式でも治さへんように()()()持っていくつもりやけど、それでもボク以下の呪術師達がどれだけの犠牲を積み上げることになるかは想像も出来ひん。

もし両面宿儺がボクみたいな黒閃に愛されたもんやったら?無下限ごとぶったぎられて五条悟がアッサリ死んだら?ボクの腹の調子が悪かったら?そういうタラレバを全部想定して、確実に勝てるラインが15本や。

 

……五条悟と共闘するのが嫌やから早めに殺そうとしてるわけやないで?

 

あくまで保険や。ボクは最強やけど、五条悟みたいに死んだら死んだでまぁええか。で終わらすような無責任な最強やない。

負けへんから最強なんや。最強やから負けるわけにはいかんのや。

 

 

ほんで、ええっと……そもそも何の話してたっんやっけ?

 

「頼む。もう止めてくれ!!!」

 

どうしたん夏油君?頭を地面に擦り付けて。

 

「夏油様!」「「夏油様!!!」」

 

 

……あぁ、そやった。高専から呪術師が離れるこの一隅のチャンス。

夏油傑の家族が助けにくるのではと、山勘張ったら大当たりやったんや。

 

そんで閉経したババアが色目使いおって、キモすぎるから踏んずけとったんやった。

 

「あんたの名前、なんやったっけ?菅田真奈美?若返り……いや、その感じからして、老化を遅らせるタイプの術式か?夏油君達の目は誤魔化せてもボクの鼻は誤魔化せへん」

 

初めから勝ち目がないと分かって遜るのはええ。弱者の特権や。

頭を擦り付けて、懇願するのもええ。例え剥げ散らかしたデブでも、強者としてそれをされるのは当然や。

受け入れるかどうかは別でも、それだけのことでボクは腹をたてん。

 

せやけど、足にしがみついたらアカン。そん時点でそれは弱者やのうて、ただの重石や。

弱者に許されるのは、強者の邪魔にならない範疇で遜ること。一線越えたら、ゴミカスや。

 

ほんでこのババアはその一線を越えた。閉経したババアの癖して、あろうことかボクの子供を産んでやるから夏油君を解放しいと、舐め腐ったことを言いやがった。

 

ギルティーや。死んだらええ。

 

「待って。嘘は言ってない……まだ私は30よ……」

 

は?嘘やろ……じゃあ若年性なんちゃらってやつ?

それか夏油君の家族は術師やのに呪詛師やっとるどうしようない連中の集まりや。

もしかしたら昔、何かあったのかもしれん。

きっと目も当てられへん悲しい過去があったのやろう。

 

……そやから何なん?閉経が去勢にけったいなだけやろ。

母胎にもなれんかったゴミがいきんなや。何が「アンタの子供を産んでやる」や。どの面下げてそないなウソついてんねん。

 

「止めてくれ!彼女に罪はない。全ては私が引き起こしたことだ!」

 

夏油君もさっきから頭下げるのやめや。

それは弱者の特権。キミはこっち側やろ?

なんぼ厳重な結界で縛られとっからかって、何にも出来ひんわけやない。それこそ自滅覚悟で、体内に収めとる呪霊を解き放ったらいいねん。

 

「ッゥ!」

「乗せられないで夏油ちゃん!この子は貴方が自害するように誘導しているだけよ!!!」

 

……チッ。ダボが。そのかえらしいニップレスを着けていいのはボクの嫁さんみたいな可愛い子だけやろうが。

 

心配せんでも。ジブンら全員。ここで殺したる。夏油君みたいに殺したら呪霊が飛び出したりすることもないからな。

夏油君もその狭い結界の中じゃ、全部潰れて終わりや。

 

夏油君を本気で助けたいんやったら、ミゲルを連れてくるんやったな。

アイツは夏油君を見捨てて五条悟についたようやから、お願いしてもついてきてくれたかは分からんけど、夏油の家族でボク相手に戦闘が成立するのは万全の夏油君とミゲルだけや。

 

「わ、私は!私はまだ生理きてるし、子供作れるよ」

「私も!!!」

 

……ん?

男どもの影に隠れとったが、えらいべっぴんさんな二人が前に出てきた。

 

「やめなさい!菜々子!美々子!」

 

黙れ。でも、二人は菜々子ちゃん美々子ちゃんって言うんやね。このババアの視線から読み取るに、茶髪の気の強そうな子が菜々子ちゃんで、黒髪ロングの大人しそうな子が美々子ちゃんか。

 

「子供なんていくらでも産んであげるから!だから、ね?」

「夏油様を助けてくれるなら、何でもする!」

 

ほう。どうやら嘘やないみたいやな。このババアとは違ぉて、母胎としての価値はあるようや。

見たところ、タメか?術式持ちの嫁さんはうちでも少ない。

 

そうやなぁ。でも、無理やりって言うのはなぁ……ボクのポリシーに反する。それに、ここで夏油君逃がしたらボクが下半身で物事考えてるみたいやん。

 

「じゃあせめて!アンタが夏油様を匿ってよ!!!ここにいたら夏油様はいつ殺されるか分からない!私たちは夏油様が生きていればそれだけで……!」

「あと、こんなお札だらけの部屋じゃなくて、もう少し良い部屋に移してあげて欲しい!」

「美々子!何言ってんの!?」

「だって私たち身売りするんだよ。夏油様もこんな場所に押し込めるだけじゃ、生きてるって言えない!」 

 

成る程。飲めない話やない。悪くない条件や。

 

「「なら!」」

 

でも、こいつらは殺すで。高専に侵入者が入ったのは既に上にも伝わっとる。

生かしてもいいが、庇わん。そしたら秘匿死刑は確実や。それでもええ?

 

「「………………」」

 

二人は無言で、後ろを振り返った。

そんでボクが踏みつけてるババアを見て、顔を上げる。

 

 

「いい」

「別にこいつらは私の家族でもなんでもない」

 

 

うん、賢い選択やね。欲張りはいかん。

 

「な、え……」

 

夏油君を見るとこの世の終わりのような顔しとる。ショックのあまり声も出ないとみた。

 

でもこれで取引成立や。

ボクは二人の手を取る。末長く宜しくな。

これから今での人生が禪院真に出会うまでの前座だったと思えるぐらい幸せにしたる。もちろん、夏油君もこんなカビ臭いところやなくて、高級ホテルのスイートルームみたいな部屋を用意したるからな。毎日は無理やけど、たまになら面会も出来るようにするから。

 

「え、う、うん」

「ありが、とう」

 

うんうん!『家族』は大切にしないとな。

そんでジブンらはどうする?ダメ元で逃げてみるか?

 

足を退けると、ババアは転がるように走っていく。

残りの呪詛師達もそのあとに続いた。

 

そか……逃げるか。

 

上には灯と躯倶留隊を控えさせとるが逃げきられたら困るので脱兎を呼び出し、追いかけさせる。

ボクの脱兎は指ぐらいなら簡単に噛み千切る。そんで群れでの狩りを得意としているから、捕まったらかなりグロいことになるが……まぁせいぜい頑張りや。

 

「何でこんなことに……私は、こんなことをしたかったわけではないのに!」

 

夏油君。いや、お義父さん。それに気付くのは一年遅かったな。

 

何がしたいんか。そういう迷いが人生をかき乱す。

ボクみたいに何をするべきなのか、先ずはそれを考えて動いたら、少なくともキミは今でも五条悟の側におれたと思うし、この子達も、キミ以外を簡単に切りほる薄情もんになる人生は歩まんかったろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20:40 都心メトロ渋谷駅

B5F 新都心線ホーム

 

「何て言うかさ。キミ、自分のこと高く評価し過ぎなんじゃないの?」

 

───パンッ。

「言葉は無用。全力で押して参る!!!」

 

呪胎九相図『脹相』

 

孤立無援。絶対的不利。

 

たった一人で最強へ挑む。

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