努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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出来が違う

私たちの弟は、小さい頃から何でも出来た。

 

「あっちはいや」

「……あそこに、いるのか?」

「……うん」

 

目の前の呪霊が見えず、妹が脅えているのに、何も出来なかった落ちこぼれの私。せめて手を繋いで勇気づけてあげようとしたけど、そんな私が頼りになる筈もなく、その手の震えはいつまでも止まらなかった。

 

「ねぇちゃん。あれ、たおしていいの?」

「危ないよ!前の虫みたいなの(蠅頭)とは訳が違うんだよ!」

「できうって。見てて!」

「おい、待て。危なっ」

 

そんな時、トコトコと子鴨のように私たちのあとを付いてくる小さな背中が私たちを追い越してそう言うのだ。

 

何もないところに拳を振り下ろす。

パンっと何かが弾けるような音を聞いた気がした。

 

「にしし。どう、すごいでしょ!最強でしょ?」

「うん!すごい!真は天才ね!」

 

私の手を振りほどき、弟と手を繋いで跳び跳ねる妹。

なんて仲睦まじい姉弟の光景だろうか。

 

その時感じた疎外感は二人に見える世界を共有出来ない自分への物か、それとも自分たちには出来ないことを当たり前のように成し遂げる弟への物か。

 

彼が三級呪霊を祓ったのはまだ術式にも目覚めていない二歳の頃だった。

禪院真は一卵性双生児で出来損ないの私たちとは出来が違うのだと、物心ついた時から何となくだが、感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

高専にて。

この機会を逃す筈がないとは半場確信しつつ、夏油君の仲間がどれぐらい来るか分からんかったから取り敢えず禪院家の術師を引っ張ってきたけど、これならボク一人でも良かったわ。

彼って意外と人望なかったみたいやね。

噂では特級呪術師『九十九由基』と交流があったそうで、もし彼女が来るならと色々と準備したのに無駄になってしもうた。

 

「真様。夏油一派のメンバーを捕らえました。お姫様方と、死体を含めて、結界内に侵入した数と一致いたします」

 

躯倶留隊の一人が降りきてきた。

思ったより早いやん。ボクが当主になる前から目にかけていた選りすぐりのもの達とはいえ感心やな。

それで、何人ぐらい生きてる?

 

「男と女は死亡。オカマは手と足の指を数本喰い千切られていますが、生死には別状ありません」

 

一人は生かさなきゃアカンと思ってたからベストやね。ババアが残ってたらどないしようかと思ってたけど、運はボクに味方したようや。

と言うか、ジブン。真顔でオカマとか言うのオモロイな。分かりやすいからいいけど、あんま見掛けで人を判断したらアカンで。

ひとまず、ソイツは応急処置して高専の術師に引き渡して。ボクはこれから来る人に説明しとくから。

 

「はっ」

 

さて。渋谷に二級以上の術師を出払ったタイミングでのこの事件。だだっ広い高専の中から秘匿されている夏油君の監禁場所にたどり着いたことで高専側に内通者がいることは最早疑いようがない。

こっちの存在に怖じけづかれてもおもんないから無断(事後承諾)で立ち入った訳やけど、話の分かる人が来てくれたら助かるんやが……。

 

夜蛾さんが無難やけど、渋谷いってるし……伊地知さんは残っとるか?

……ないな。あの人は術師としての才能がまるっきりない代わりにそれ以外の雑務系スキルが飛び抜けてる、ある意味で天与呪縛のような人間や。ボクなら絶対呼ぶ。何も言わんでも気を効かせて避難バスの用意とかしてくれそうだもん。

 

まぁ例に漏れず、東京にいる高専の学生は全員渋谷やろうし、戦力外通告された高専所属の三級か四級そこらの術師やろうなぁ。

 

弁えてる子ならいいけど、高専の笠を借りて威張り散らかす阿呆だとうっかり手が出てまうかもしれん。

 

こういう時、黒閃に愛されるジブンが恨めしい。下手なところ打つと、軽く当てただけでも骨ボキッって言ってそのまま逝ってまう。

 

だから、どうか頼むわ。弱くてもいいから、まともな子来て。

 

祈るような気持ちで、地下から上がる。

そこに待ち受けていたのは、想像もしていなかった相手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、こんなもんでしょ」

 

20:51 都心メトロ渋谷駅

B5F 新都心線ホーム

 

「…………」

 

呪胎九相図 脹相は完全に沈黙していた。

油断や慢心はなく、全身全霊を以てしても彼の全ては無限の壁に阻まれた。

 

(これが無下限呪術……分かってはいたが、まさかここまでとは。動けん!)

 

「突然動けなくなってびっくりしてるかもしれないけど安心しなよ。それ、大事な神経とかが千切れたとかじゃなくて僕の術式によるものだから」

 

(術式だと?何だ?対象を引き込む順転の蒼、対象を吹き飛ばす反転の赫。そして両方の性質を合わせた、茈。それが無下限呪術の筈だ。対象を静止させるものはなかった筈)

 

強いて言えば無量空処による情報の暴力で似たようなことが出来るが、脹相は現在、普通に思考出来ている。

 

(ヤツから聞いた五条家に伝わる無下限呪術の情報にはない、五条悟オリジナルの技とでも言うのか!)

 

『虎杖』の情報にはそれはなかった。それもその筈、脹相の推測通り、それは五条悟が禪院真との敗北を経て血の滲むような努力の果てに開拓した無下限呪術の全く新しい可能性であった。

 

「お前には聞くことがある。今回の事件の黒幕と通じてるんだろ?それを吐くまでは生かしてやるよ」

 

脹相は五条悟を相手取るに少なくない非術師を盾として利用した。今さら助命など乞うつもりはないが、五条悟による温情は期待出来ない状況だった。

 

(ふざけるな!俺は、こんな所で!こんな所で死ぬ訳にはいかない!俺には守らねばならない弟がいる!()()()()()()()()()()()()弟がいるのだぁぁぁぁ!!!!)

 

だが、脹相には死ねない理由があった。

死ぬ前にやらねばならない目的があった。

 

彼の『静止した呪力』が心臓をポンプに全身を駆け巡る。

 

五条悟が敗北をバネに無下限の可能性を見出だしたように、脹相の果てしなき兄弟愛が術式の進化を促した瞬間だった。

 

「血に呪力を巡らせて強引に『黄金(こがね)』を打ち破った?赤血操術ならではの方法だね。でも」

 

「穿血!!!!」

「術式反転 赫」

 

五条悟の才能はそれを優に上回る。

 

壁に打ち付けられた脹相は今度こそ沈黙した。

 

「はぁ。手間かけさせるなよ」

 

20:55 五条悟は余力を残しつつ脹相の迎撃に成功した。

やはり自然呪霊が抜けた穴がでかかったのか、領域は消費せず今の彼には、宿儺を相手取る余裕すらある。

 

ムッチャクチャニシテクレナイカ~

 

「ん?」

 

そんな時である。五条のスマホに着信が入った。

 

 

 

同時刻 二人の最強に最大の危機が迫る。

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