努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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真なる最強

「どんな女がタイプだ!男でもいいぞ」

 

それは。禪院真にとって、未知との遭遇であった。

 

「ボクってあんまり容姿とか、性格とかは気にせぇへんのよ。抱くとアンアン猿みたいに喘ぎよるから、みんな同じかなって。だからタイプって言うなら、頑丈な子がええ。タッパはボクと同じぐらいあって、程よい筋肉と少し多めの脂肪。そんで安産型のケツなら言うことないな」

 

 

高専が急遽召集した京都の学生。

一級呪術師 東堂葵

 

成る程。中々強い。イロモノ術式と侮っていたが、実際に見れば実戦レベルまでとことん磨き上げていると禪院真は感心していた。

彼は強者には一定の敬意は払うタイプだ。努力はしないが、彼も禪院の血。呪術師として強さを何よりも重んじている。

だから初対面でいきなり意味不明な質問を投げ掛けられてもちゃんと返した。

 

「……そうだったなぁ。お前はいつだって、俺たちの目の届かないところで泥を被って。自分一人で抱え込み過ぎる」

「え?どないしたん?」

 

東堂葵は涙を流していた。

流石にこれは困惑する。まさか何か地雷を踏んだか?

 

「弟よ!もう大丈夫だ!俺が来た!!!」

「はい?」

「俺と二人でブラザーを救いに行くぞ!!!!」

 

ドブカスと狂人。まさに火と油だ。

自らが築き上げた16年間のノウハウが全く通用しない。

渋谷事変を機に、彼は東堂葵を何よりも怖れるようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真が禪院家の連中を引き連れて高専に向かっただ!?どういうこと……え?傑の仲間が先に侵入した?それなら……おいまて、まさか禪院家に見張りをさせてアイツ一人で傑の元に向かった訳じゃないよな?……は?その通り?──ザケンナ!!!一人でもいいんだよ!一人でも見張りがいればアイツは何も出来ない!!逆に言えば見張りがいなけりゃ、傑を殺すんだよ!アイツはそういうやつだ!」

 

その連絡は五条悟の冷静さを奪うには十分な報告だった。

自分たち、高専の実力者が軒並み渋谷に派遣された中に起きた夏油一派による高専への襲撃事件。

一度あったのだ二度目があっても驚きはない。

だが、その対処に当たった存在が問題だった。禪院真は強者としての責務を果たさなかった夏油傑を心底嫌悪している。

 

夏油傑の術式があれば全国47都道府県、他市町村に一級以上の使役した呪霊を配備させ、呪いによる災害に迅速に対処する防衛システムを築ける筈だったのだ。

 

それを個人の……それも、自分が笑える世界にするために非術師を皆殺しにするという酔狂な理由で全てを台無しにした。

 

呪霊の生まれない社会を作るという思想は素晴らしい。その点だけは評価しているが、手段は最悪中の最悪だ。

彼は僅か1万にも満たない呪術師だけで現代文明を維持出来るとでも思っているのだろうか?

もしそうならお笑い草だ。分かってやっているなら自分の子孫達に原始人の暮らしを強要しているわけで、アタカタと嘲笑を禁じ得ない。

 

こんなゴミはさっさと死んだらええ。彼は一年前、五条悟が夏油の秘匿死刑を庇った時からずっとその機会を狙っていた。

 

まさか嫁さん二人の嘆願で、それを諦めたなど夢にも思わない五条悟には、親友の命が危ないと気が気ではない。

 

「誰でもいい!直ぐに現場に向かわせろ!」

 

一方的にそう告げて切る。続けて、少ない知り合いに高専に向かうように連絡を……いや、自分で向かった方が確実か?

黒幕のことなど忘れ、任務を放棄しようとした五条。

 

「五条先生ー!!!」

 

そんな彼の元に虎杖悠仁が現れる。

 

「……悠仁、どうしてここに?」

「どうしてって、任務だから?それより大変なんだ。高専に禪院真が!」

「それはさっき聞いた。そうだ、今から高専に向かうから悠仁はみんなにそれを説明しててくれないかな。大丈夫。傑の無事を確認したら直ぐに戻るから」

「え?何で?」

「何でって、傑は僕の親友だから」

 

そうだ。孤独を生きる五条悟にとって今でも彼は親友だった。……あるいは彼がそう思いたいだけなのかもしれないが、少なくとも任務の為に見捨てられるほど、五条は薄情になれない。

 

不思議そうな顔をする悠仁には悪いが、ここは彼らに任せ──。

 

獄門疆、開門

 

 

五条の正面に展開された獄門疆。六眼は直ぐ様それが、最強である自身にも干渉しえるものだと見抜いて、彼の足を一歩下げる。

 

「夏油傑は、もう禪院真に殺されたのに」

 

「は?」

 

虎杖悠仁の発言が足を止める。

その瞬間。五条悟の脳内に満ちる僅か三年にも満たない青い青春の記憶。

 

 

 

「(呪力が練れない。力も入らない……詰みか)で、お前誰?」

「誰って?だから俺は虎杖悠仁だって。忘れたの?」

「肉体や呪力、この目に見える情報はお前が悠仁だと言ってる。けど、悠仁がこんなことするかよ。僕はあの子達の先生だぞ」

 

獄門疆に縛られ、身動きの取れない五条は額に縫い目のある虎杖悠仁に唾を吐く。

 

「……あぁうん。その通り。この体は謂わばスペアだ。虎杖悠仁が何らかの要因で宿儺の指を食べる前に死んでしまった時の為に用意した」

「双、子か」

「そう言えば君の生徒にも一人居たね。その通り、この身体は虎杖悠仁の双子の兄だよ。そういう術式でね。脳を入れ換えれば肉体を転々と出来るんだ。勿論、肉体に刻まれた術式もね」

「悠仁が宿儺の器になれたのもお前の仕業ってわけ?えらく上機嫌じゃないか。ベラベラとそんなに喋ってもう俺たちに勝ったつもりか?」

「そうとも。君さえ取り除いてしまえば後はどうとでもなる。君強すぎるんだよ。私の目的に邪魔なの」

「ふっ、僕を倒して終わりは気が早すぎるんじゃないか?こっちには憂太や傑がいる」

「乙骨憂太か……彼の無条件の術式コピー、底無しの呪力。どちらも最愛の人の魂を抑留する縛りで成り立っていたに過ぎない。そして夏油傑は論外さ。例え高専の術師が間に合っていたとしても、去年のクリスマスで彼の貯蔵は底を突いたからね。残ったのはせいぜい三級や二級の寄せ集めだろ?反転術式も辛うじて使えるといった感じで、彼は乙骨憂太以下の凡才だ」

「チッ……禪院真はどうだよ。アイツはお前の百倍は腹黒いぞ」

「そうだね。君ほどではないにしても、彼は私の脅威たりえる。...全く、先日の襲撃の件はこちらの見積りが甘かったせいで痛い目を見せられたよ。だが、私の推測が正しければ、彼の強さはその秘匿さ故にあると思う。種さえ分かれば、案外呆気ないんじゃないかな」

「はっ。良いね。その根拠のない自信のまま突っ込んでいって、お前らが共倒れしてくれれば最っ高だよ!」

「君、禪院真のこと嫌い過ぎでしょ。年齢で言えば君の生徒になるかもしれないんだから、もっと優しくしたら?」

「そうか?これでも友人以上、親友未満だとは思って接してるんだけどな」

「腐れ縁ってやつかな。私には理解出来ない関係だ」

 

『虎杖』はそこで言葉を区切る。

 

「…………」

 

時間稼ぎもここまでか。……クソ、真の野郎、傑を殺してたら許さないからな。

僕が封印されれば間違いなく調子に乗るのは禪院真だ。乗るなら乗るで、最強の務めを果たしやがれ。

五条悟は自らに比肩しうる禪院真へ届かぬ呪いを叫ぶ。

 

「じゃあお休み五条悟。新しい世界でまた会おう」

 

 

 

 

獄門疆、閉門。

 

 

「がっ!?何だ……目が!!!焼ける!!!」

「どうした弟よ!?」

 

 

そして『虎杖』は再び過ちを侵した。

五条悟を封印しても、天元と六眼の因果関係は破壊されていない。

星漿体の暗殺を依頼する前から伏黒甚爾は伴侶の魂を複製した呪骸と共に隠居中だった。

殺しても新たな六眼が自らの野望を阻むというのなら、封印すればいいと判断したが、一番大切なのはその因果を破壊することだった。

星漿体との同化を防いだだけでは、不完全だったのだ。

 

 

世界から六眼が失われた時、新たな六眼が生まれ出る。

 

 

最強(ドブカス)が真なる最強(ドブカス)として再誕する。

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