努力しない禪院、だが、最強 作:禅院炉
ボクは生まれながらに特別やったが、何も生まれながらに最強だった訳やない。
でも確信はあった。ボクは最強になるべくして生まれたと。禪院家はボクが最強になるための踏み台やと。
「この痴れ者が!」
だから甘んじてお父さんからの虐待は受け入れた。
自身の子種から生まれた長男に嫉妬するどうしようもない男やったが、幼子であるボクに躊躇なく殺意をぶつけてくれるという意味では優秀だった。
炎の術式による火傷も、刀による切り傷も、剣術は大したことなかったけど、お父さんから受けたものは全部糧とした。
お父さんに片腕を切り飛ばされて呪霊を詰め込んだ倉庫に放り込まれた時は死ぬかと思ったけど、そのお陰で死の縁に立つことが出来、ボクは領域展開を取得することが出来た。
正直、領域展開なんて使わなくても勝てたけど歴代の十種影法術の術師には使えた人がおるみたいやねん。
使わないのではなく、使えないとなるとボクが無能みたいやん?
ボクの才能なら地道に努力すれば元服する頃には習得出来たが、その地味な努力が馬鹿らしくてわざと片腕が切られるという敗北を演じた。
追い詰められると人って普段出せない力を出せると聞くが、本当やったね。
でもお父さんはアカンかった。
善意でボクと同じ状況にしてお父さんを倉庫に放り込んだら、芋虫になってしもうた。
四肢欠損や。これだけ追い詰めたら反転術式を習得出来るかとも思ったができなかった。仕方なく気絶したお父さんを引き上げたが、結局目覚めることはなく、今は
哀れなものや。お母さんに文句垂れる癖に自分一人じゃ、糞尿の始末も出来ひんのだから。
ボクなら恥ずかしくて舌を嚙みきって死んどる。あのまま死なせてやった方が面子は守れたかもしれんと、そのことについては反省してるわ。
あぁそれでボクが最強になった時の話やったか。
八歳の時や。天才であるボクは六歳で領域展開を習得したが、それだけじゃ五条悟には敵わへん。
そこで禪院甚爾……婿に入ったから伏黒?は?どっちでもええやろカス。
最強になるため、癪だがそのカスと穏便な交渉をすることになった。
「あぁ……約束だからな。呪具は返す。ついでだ。
いや、影あるからそんなキモい呪霊要らんわ。あと特級呪具だけでええ。
甚爾君は無能やから呪具がないと何も出来ひんやろ?ボクは最強やから、一級以下の大した能力のない呪具とか必要ないねん。甚爾君は無能やから真面目に働くとか無理そうやし、これからも闇バイト頑張ってな。
「お前……マジで、あの家の血筋だな。もし、出る前に会ってたらお前だけは殺していってたわ」
はいはい、負け惜しみ乙。
呪力のない存在なんて人間やあらへん。
そんなカスにボクが負けるわけあらへんやろ?
ボクが名実ともに最強になるためにどうしてもこのカスが禪院家からパクった呪具が必要やった。
ボクは女の子に優しいから死んだ甚爾君の奥さんを
呪力は腹で練り、頭で回すと言うが、やっぱ呪力がないと頭が回らないのだろうか。
フィジカルギフテッドなんて脅威ともなんとも思ってない。
むしろ、こんなんにビクビク震えてた本家の連中の程度が知れると笑ってやったわ。
まぁそんな訳で、ボクは天の逆鉾と、調伏した九つの式神を破壊し統合して自身に纏わせ、魔虚羅を一撃で調伏させた。
え?十種影法術で一度破壊された式神は召喚出来ない?なのにさっき満象を召喚してた?
誰が決めたねん。そんなゴミみたいなシステム。
調伏の儀を失敗すれば、例え木っ端微塵になっても式神は再召喚出来る。
つまり調伏後も召喚出来なくなっただけで破壊されたわけでも術式から消去されたわけやないねん。
そもそも十種影法術は影から式神を召喚する術式。式神は影法師……つまりは偽物や。本体は別のところにあると、よっぽどのバカでもなければ考え付くことやろ?
術式のルールで調伏した後にやられた式神は鍵をつけられて呼び出せなくなっただけで別の空間。十種影法術の根源とも言える場所にそいつらは存在しとる。
だから天の逆鉾で、鍵をブスってやって元通りや。
魔虚羅を調伏するためやなくて天の逆鉾の本命はこっちやね。
これのお陰でボクは十種影法術の式神を常に万全の状態で使えるようになった。
これでボクは最強になった。
いや、正確にまだだった。
その時点でボクは五条悟に負けていた。
術式の強さはボクの方が上やけど、六眼。あれはいかんわ。反則や。もう一個脳ミソが……それもスパコンみたいに賢い自分を内に飼ってるのと変わらへん。
無下限も侮れんし、なにより彼は地道に鍛えているようで、さしものボクも努力なしでは敵わへん。だから努力しなきゃいけない
そんな面倒なことするわけないやろ。
ボクが魔虚羅を調伏したのは、歴代の十種影法術の使い手が調伏出来なかったからでも、こいつの強さに惹かれたからでもない。適応という唯一無二の術式に惹かれたからや。
ボクは天才やから式神本体を呼び出さなくてもその一部を自身に纏わせて使うことが出来た。
それを使ってボクは魔虚羅の法陣を呼び出し……くどいよなぁ。それで無下限の術式に適応出来るまでボク自身が勝負を挑むなんて努力はめんどくさい。
だから普通にふるべゆらゆらして魔虚羅を召喚して、五条悟にけしかけた。
一回、二回と、あちらも魔虚羅の特性は知っているので、一撃で祓われたが、ボクは天の逆鉾で何度でもリトライ出来る。
ボクが最強という問題に出した答えは、適応するまで魔虚羅ブッパや。
連戦による消耗もあるだろうが、それで無下限の明確な弱点。強力な術式だが、六眼がないとろくに扱えず、また強力であるが故にバリエーションが少ないというそこをついて、三回目にして五条悟を詰ませることが出来た。→適応リセット?そんなん対策済みや。
もし、十種影法術ほどバリエーションがあれば、途中で本体であるボクを仕留めようと方向転換することも出来ただろうが、まだ反転術式も覚束ない高校生の五条悟にはそれが限界だった。
殺しはしない。だが、縛りを設けて五条家は禪院家の命令に逆らえないと上下関係を結ばせた。
これから先、ボクと同じぐらい才能のある五条悟がどれだけ無下限の可能性を見出だしても、呪力の核心に至ったとしても未来永劫覆ることのない制約である。
あの屈辱に歪んだ顔は今でも思い出す。酒は飲まないが、10杯はいけただろう。
最強である五条悟を下し、これでボクは最強になった。
禪院直毘人の爺さんから当主の座を貰ったのはこの頃やね。
酒浸りでどうしようもない爺さんやったが、
実の姉弟やったし、一人目は血が濃すぎて死んでしまったが、二人目は順調に育っとる。
相伝ではなかったが、そこそこ強力な術式や。炳入りは確実やろう。
「奥様」
「奥様!!」
「奥様」
見てみぃ。ちょっと前まで、腫れ物みたいに扱われてた真依お姉ちゃんが今ではこんなに持ち上げられとる。
これも全部ボクのお陰やね。
……真希お姉ちゃんもボクの子を孕めば、もうちょっと扱いはマシになるのに、身持ちが固いからなぁ。
直哉君ならそれを蔑むだろうけど、ボクは強要はせぇへえん。
20代だろうと30代だろうと、子を孕めるなら何歳でも受け入れるつもりや。
大丈夫。腹を痛めて産んだ子供が女だったり、術式を持ってなかったり、最悪甚爾君みたいなカスでもボクは失望したりせぇへん。ボクの子を産んでくれただけでその人には価値があるし、子供なんてなんぼでも使い道はあるからな。
え?真希お姉ちゃんがこのまま閉経したり、戦闘で怪我して孕めなくなったら……?死ねばいいとちゃうかな?
子を残せなくなった女に価値はないもん。
いくら綺麗だろうと、ゴミはゴミやで。
いくら姉弟でも許容範囲はある。
ちっちゃい頃は、よく遊んで貰ったが、いつまでも子供のままではあかん。
ボクなんて精通した次の年には嫁を貰ってたのに、いつまで処女拗らせるつもりやろ?
呪霊の被害は年々上昇しとる。だから真希お姉ちゃんみたいな頑丈な母体が一番役に立てるのは、優秀な術師の子供を孕むことなのにいつになったら理解してくれるんかな?
まぁボクはスパダリや。今は目先のことに手一杯でもそのうちお姉ちゃんもボクに股を開くのが最適解だと気付いてくれるだろう。
昔話はこれぐらいにしようか。
これから任務やねん。
ボクは優秀な術師なので、無力な民間人を守る為に働かないけん。
嫁も年々増えるからな。その分稼がないけんし、モテる男は辛いわぁ~
特別一級術師『禪院真』
北海道を除き、日本に発生する呪霊被害の9%を年間で解決する異端児。呪霊の強さが四級~特級であろうと任務遂行への速さは変わらない。呪術総監部は彼を特級術師として認定するか否か、日夜激しい議論を交わしている。