努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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努力しない禪院、だが、最強

渋谷で起きた呪霊と呪詛師による呪術界への宣戦布告は、新興宗教が起こした歴史上最悪のテロ事件として処理されることとなった。

 

何故か五条悟及び夏油傑が事件の首謀者だと訴える声が一定数あったが、後日彼らは『人が変わった』ように発言を撤回し、呪術総監部は総力を上げてこれの処理に奔走することとなる。

 

幸いにも渋谷を包んでいた帷が降りたあと、禪院真の■■■■■■■(ひみつや♡)により、渋谷にある全ての電子機器は破壊されていた。

呪霊や呪術は、散布された毒による集団幻覚として処理され、逃げ出した呪詛師の捕縛や、封印された五条悟への扱いなど事後処理も含め、この事件は一年という月日を経て完全に閉幕となった。

 

「んじゃ。解放するで~。もし錯乱して暴れ出したらボクが対処するから。ちょっと過激に見えるかもしれんけど、止めようとか考えんなよ。割って入ったら冗談抜きでミンチになんで」

 

『獄門疆 裏』そして『天の逆鉾』により五条悟 一年ぶりに復活。

 

彼の封印解除は禪院真の六眼や呪術総監部の思惑もあり、皆消極的だったものの、他ならぬ禪院真が強く要望したこともあって、解放されることとなった。

ちなみに表の獄門疆は脹相という呪詛師が身柄の保護の対価にくすねてきたらしい。

 

「あ?」

「ん?」

 

禪院真 高専関係者

そして二人の特級呪術師が見守る中、蒼い目を持つ最強が並び立つ。

六眼の使い手は同時に二人存在してはならない。

その矛盾が一瞬だけ成立してしまったかと思えば、禪院真の六眼はその瞬間、消滅した。

 

「……良かったの?」

「それはジブンが一番上手く使えるやろ?ボクじゃあ持て余す。一度引き受けたやんや。宿儺の相手はジブンでやれ」

「ふはっ。良いね、そうこなくっちゃ」

 

五条悟はそれから益々力を入れて鍛え続けた。

閉じない領域は術式の相性があるのか、どれだけ磨いても辛うじて展開出来る(禪院真が言うには5点)レベルだったが、外郭にも無限を付与するという訳の分からない拡張を経て、閉じない領域の対策を完成させた。

 

「で、宿儺とはいつやるの?」

「いつやろうなぁ~。ジブンらが全盛期のうちにやりたいけど、最悪、虎杖悠仁が死ぬし。せめて高専卒業して、嫁さん作って子供こさえてからにした方がええんとちゃう?」

「お前にしては随分人道的だな。悠仁と何かあった?」

「あったもなにも、虎杖悠仁はブラザーやし」

「は?」

「ん?」

 

禪院真の脳は東堂葵に汚染されていた。

彼はその事を無意識に自覚し、恐怖しているのか、東堂葵が姿を見せると脱兎のごとく逃げている。

 

「それよりジブンどうやねん?結婚しないの?この一年で五条家と加茂家の力は削いだから、ほぼ当主としての仕事もなくなって暇が出来たやろ?興味があるなら見合いの場を整えてやろうか?」

「なんでお前がうちの婆ちゃん達みたいな事言ってくるんだよ。気持ち悪いなぁ」

「知ってる?精子にも老いがあるねん。30代を過ぎると一気に質が落ちる。種を残す気があるなら早いとこ仕込まんと、嫁さんや子供にも悪影響や」

「そんなこと急に言われたって、相手がいねぇよ」

「だからタイプを聞いてんねん。アイドルとか歌手とか有名どころは難しいが、理想に近い子を用意したる。ボクたち強者は血を残していくことも義務やろ?」

「お前のそういう因習染みた思想大嫌い。もうどうでもいいだろ?五条悟(最強)とか。好きな人が出来たら結ばれて、出来なかったら独り身で。血までそれを縛りつけるなよ」

「ボクもお前のそういう軽い考え嫌いや。回りに期待して、自分を低く見積もって、かき回すだけ回して、呪いだけ残して、消えていく。そんなんだから友達少ないねん。同期でお前だけいきおくれんねん」

「勝手に言ってろ。僕はこれからも僕のまま…………何か今、おかしいこと言わなかった?」

「あの二人、デキたらしいで」

 

夏油傑の高級ホテルのスイートルームみたいに居心地の良い独房。高専から近いからとそれに入り浸るうち、そういう雰囲気になってしまったそうだ。

 

外に出すつもりはないが、中に出すなら一向に構わへん。

 

夏油硝子はあそこを牢ではなく家として使うようだし、三人住めるように近々拡張しなけばならないだろう。

 

「いや~残念やったね。

一人だけ置いてきぼりや。今後はたまにきて遊んでくれる謎のおじさんとして、夏油一家とかかわったらええんとちゃう???」

 

 

「!!!!!(言葉にならない絶叫)」

 

 

ネタバレやけど、五条悟はそれから乙骨憂太どころか虎杖悠仁達にも先を越された。

非警戒対象だったパンダにすら置いていかれた時にはこの世の終わりのような顔をしていたが、果たして彼に春がくることはあるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか」

「よっす。元気にしてたか」

 

場所は変わり、高専にある天元の結界の中核に当たる場所。一般人どころか限られた人間でも気軽に立ち入ることが許されていない場所に、禪院真は何でもないように現れた。

 

「それで、酒は持ってきたのかい?」

「だからやめーて。今お腹に子供がいるんやよ?」

 

ほら、と魔法瓶から温かなお茶を注ぎ、それを目の前の『美女』へと渡す。

 

「ズズズ……それにしても、未だに実感がわかないね。まさかこの私がこの歳で子を成すことになろうとは」

「不死の術式のたまもんやな。魂が劣化しないから、老いようとする体を正してやれば、隠れていた全盛期とご対面や」

「それもそうだが、一番驚いたのはまだ私に特定の誰かを愛するような心が残っていたことだよ。てっきりこういった感情はとうの昔に枯れ果ててしまったものかと思っていた」

「それはボクがそれだけナイスガイやったってことやな。ボクの愛は砂漠に花すら咲かせるんやで」

「ほう。この私を砂漠に例えるか」

「おっと。失敬失敬。お詫びに今日の話はいつもよりおもろいもん持ってきたから勘弁な」

 

ならば聞かせてもらおうと、肩を寄せる。

 

「君はどこに向かうつもりなんだい?」

「どこにたどり着くかなんて分からん。けど、最後は嫁さん達と子供達に囲まれて大往生で逝きたいね」

「私より先に死んだら呪ってやるぞ?」

「不死より長生きしろってか。ひゃーボクの嫁さん鬼嫁やわ!」

 

彼は呪術の点ではない。面でもなく、廻る呪いの潤滑油としてその身の一生を捧げた。

 

彼の人生に意味はなかったのだろう。

 

救った分、愛した分だけ、呪いは生まれた。

 

「真は良いやつだぜ。この前も負けた俺にパチンコの景品分けてくれたんだ」

「真さんは良い人だ。特に虎杖と姉の結婚式のスピーチは感動した」

「真?良いやつだとは思うわよ。キッパリ断ったら、それ以降、言い寄ってくることもなかったし。分別がしっかりしてるだけ回りの男どもよりは全然まし」

「真さんか……。真希さんがいる手前、声を大きくしては言えないんだけど、依織(息子)の件でお世話になって以来、頭が上がらないんだよね」

「アイツの話はしたくねぇ。けど、感謝はしてるよ。それに大事な時期に全部ほっぽりだして一人にしちまったことは後悔してる。あの時、アイツも高専に連れていってやれば……いや、なんでもない」

「シャケ」

「アイツの息子が作ったパンダは俺の嫁さんだ。だから義理のお爺さんだな。知ってるか?パンダでも相手側の主には頭が上がらないんだ」

 

「真依ちゃんを傷つけて一人にした最低なやつ。でも真依ちゃんは一人の方が幸せそうだったから、きっとこれが一番良かったんだと思う」

「いつの間にか加茂家を乗っ取られたが、お陰で母達と暮らすことが出来るようになった」

「御祝儀たんまり貰いました!」

「禪院家専属の家庭教師を無償でやらされているが……家に帰ることは許されている。だから現状に不満はない。」

「俺は結婚した。ブラザーの縁が祝福してくれたお陰だ」

 

それでも彼は胸を張る。

ボクは最強や。最強としての責務を果たしつつ、嫁さん達と幸せに暮らす。

 

 

 

 

彼は五条悟のように力のその先を追及しない。

 

 

 

彼は両面宿儺のように悪戯に力を振るうことをよしとしない。

 

 

何かを成し遂げるのではなく、あるものを守り通すことで最強になろうとした。

 

故に禪院真は努力しない。その為のリソースを守り通すことに割いた。

 

「ま、才能ありすぎて鍛える必要がないだけなんやけどな」

 

 

 

努力しない禪院、だが、最強【完】

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