努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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覚醒真希VS禪院真 中

気付けば私は海岸沿いで寝そべっていた。

 

……あれ?

 

直前の記憶が曖昧だ。

確か本家に呪具を借りにきて……それでお母さんに戻れって言われて、扉を開けたら真依が……っ!

 

そうだ。真依はクソ親父に斬られて、それで私も……。

 

「真依!!!!」

「そんなに叫ばなくても聞こえてるわよ」

「っ!真依、良かった!怪我はないか!?」

「怪我?そうね、怪我自体は大したことないわ。新しい手足に慣れてないのか、アンタも私も傷は浅かった。もうすぐ真が駆けつけて、あの人を肉片も残らず消し去ってくれる」

 

そうだ。昔、調子に乗って達磨にされた親父の手足が生えていたことに驚いたが、どうにも動きがぎこちなかった。術式で不意をつかれたが、それでも防御はギリギリ間に合っていた筈だ。

 

まるであの世に旅立つ岬のようなこの場所は、夢か何かだろう。

バクバクとうるさいほど鳴る心臓を抑えて、ホッと息を吐いた。

 

「でも、やっぱり割に合わないのよね」

「何が?」

「……最後だから言うけど、私のせいなのよ。あの子がおかしくなったのは。小さい頃からなんでも出来て、血縁だからって、身を挺して守ってくれる。そんな王子様に、頭のおかしい私は本気で恋をした。──だからね、レイプしちゃったの」

「……何言ってるんだ?」

「初めての夜に出来た子供。今まで見向きもしてこなかった、みんなが奥様、奥様って私を持ち上げてくれて幸せだった。まるでこれまでの人生がこれからの幸せの為の伏線だったんじゃないかって浮かれてたわ。けど、その子が死産した時ね。目が覚めたの。本当はみんな私を腫れ物のように扱ってて、そして、()()()()()()()()()弟は化け物のように恐れられてた」

 

何を、言っているのだろうか?まるで分からない。

 

「それでも私は弱かったから、また夢を観たくて、アイツを誘ったの。そっちも天才だったのか、何もかも忘れるくらい気持ちの良い夢だった。けど、アイツの顔を見たらさ……とんでもなく酷い顔をしてて、思わず言っちゃったのよ。アンタも楽しめって。……あの子は勝手に壊れたんじゃない。壊したのは私だった」

「それで、お前……お前!それで自分で勝ち取った未来だとか言って、海外に逃げようとしてんのか!?頭おかしいんじゃねえの!?自分のせいだって思ってるなら、ちゃんと向き合えよ!!」

 

いや、こんな業。背負いきれる訳がない。

私だったら首を吊って死んでいる。

 

こいつが海外に行くのは……本当に平穏な余生を過ごす為なのか?

誰にも知られず、ひっそりと命を断つつもりではないだろうか?

 

ぶわりと嫌な汗が吹き出した。

 

「私の術式はもうだいたい分かってるでしょ?でも大きい物とか複雑なものとかは作れないのよ。少し早くなったけど、これ作ったら私死ぬから。じゃああとは一人で頑張んなさい」

 

徐に立ち上がった真依は地平線の先へと歩き始める。

 

「!?おい、待て!」

 

どうにも足が重い。それを知らないふりをして背中を追いかけた。

 

「分かった!分かったから…私もお前の罪を背負う。だから、とにかく戻ってこい!」

「私、随分前から分かってたのよ。何で呪術師にとって双子が凶兆か」

 

何かを得るには何かを差し出さなければならない。これは縛りだけの話ではない。

痛い目をみて、強くなるのだって理屈は同じだ。

 

「その利害がいちいち成立しないのよ、双子の場合ね。だって一卵性双生児は呪術では同一人物として見なされるから、分かる?」

 

禪院真希が血反吐吐いて頑張っても禪院真依にその意志がないから無効となる。

そんな不公平な話があるかと彼女は笑った。

 

「そんなことどうでもいい。戻れって!」

「これだけは置いていくわ。あとは捨てなさい。呪力も何もかも私が持ってってあげるから」

 

まるで鉛のように重くなった足を引きずり、何とか手を掴んだと思ったのに。その手の中にあるのは葦の葉だけだった。

 

「ただ、一つだけ約束して。いつの日かの私みたいに、止まれなくなったアイツをぶん殴って止めてやってよ。それでアイツを縛る全部壊して、解放してあげて……お願い、お姉ちゃん」

 

 

 

 

 

 

目が開く。

 

 

そこには冷えきった妹が横たわっていた。

 

 

「……バカやろう」

 

 

 

 

 

 

「こいっ/

 

出来損ない!!!」

 

呪力の一切を失い、伏黒甚爾以来のフィジカルギフテッドの完成形へと至った禪院真希。

彼女はそのまま躯倶留隊の過半数、そして禪院家最強の部隊である炳三名の命を奪ってしまう。

 

「真希お姉、ちゃん?」

 

最早弁解など不可能、その状況になって最強とその右腕と会合するに至った。

 

「何で、これ……何かの冗談よね?」

非道(ひど)いなぁ……人の心とかないんか?」

 

「あぁ。アイツが持ってちっまったからな」

 

「当主様は下がっとき、ここは僕が相手したる」

「いや。これ以上の損失は無視出来ない。蘭太達には悪いけど、死んだのがこいつらで良かった。真希お姉ちゃんは…………このサルはボクが殺す」

 

 

「領域展か」

「やらせるかよ」

 

領域展開を阻止すべく飛び出した真希は地面に倒れた。

 

「(なんだ?何かに足を引っ張られた)」

「サル対策は過去に済ませてるねん。何があったか知らないけど、あの世でみんなに懺悔する言葉、今のうちに考えとくことをお勧めするで」

 

未だ頂きに届かない未完成の最強同士がぶつかり合う。

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