努力しない禪院、だが、最強 作:禅院炉
禪院真希の凶行により禪院家が大きく傾くことになってから早数日。
「それで、お前はどのコロニーを目指すんだい?」
「東京第二かな?京都の方は直哉達、炳が向かうことになった。(あと丁度観光してたそうで鹿児島には
それと真依お姉ちゃんの形見を捨てる縛りも結んだから、領域展開直後で弱ぁなってる呪力ガードを突破して心臓一歩手前まで貫けたんやろう。もし、才能にかまけてもう一度ボクの前に現れんだとしたら、きっと一秒もお姉ちゃんは立ってられへん。姉弟として本当に最後の情けや。あえて居そうな場所は外したる。第二にいたら運悪かったとして、普通に殺すけどな」
「そうか。ならば最早何も言うまい。浄界の破壊も許容しよう。ここでお前の夢が叶うことを願っているよ」
「あんがと。天元様もお体に気をつけてな」
「この見た目で、年寄り扱いされたのは初めてだよ。心配しなくてもお前よりは長生きするさ」
禪院家の建て直しを並行しつつ高専で天元との交渉を終えた禪院真は、死滅回遊への参加を決めた。
本編とは違い、無為転変がないので口説いてはいないが、中々の好感触。思惑はあれど社会の歯車として進んで身を捧げる二人の相性は素で良かったのだろう。
真は内心凄く勿体ないなぁと極上の母体(になえりえる)を前に溢れる涎を飲み込んで、やるべきことに思考を切り替える。
死滅回遊は天元の作った巨大な浄界(結界)を基礎に築き上げられている。
その1つを壊すことで死滅回遊に意図的なシステムエラーを起こし、『希望すれば死滅回遊を離脱出来る』という永続を謳うルールから逸脱したログアウトボタン(バグ)を差し込む。
禪院真も結界術には長けている方だが、これは天元と九十九由基が共同で考えた作戦だ。恐らく失敗はすまい。
「問題があるとすれば、天元ではなく部外者が破壊しようとした場合だ。既に梵界へと転じたこれを紐解くのではなく、力任せに解除しようとした場合、星を破壊するほどの力が必要となる。それも完全に制御したものでなければならない。用意するだけなら私でも出来るけど、そのまま地球を道連れにしてしまうからね。完全制御した星を砕く一撃、それを君は用意出来るのかい?」
「条件さえ整えばそれぐらい出来る。でなきゃ最強なんて名乗ってないわ」
禪院真は縛りで優位を維持しているだけで五条悟より実力では劣ると周囲からそう思われているが、仮に縛りを取り払って百/零に勝ち目がないようなら最強を名乗ろうとはしない。薄いとはいえど勝ち目はある。ならば自分はそれを必ず引くので自分の方が上だと、確かな自負と揺るぎない自信があった。
「んじゃ、またな」
「待て」
「なんや?確か、脹相だっけ?」
早速向かおうとする真を呼び止めた脹相。
「次、会ったら姉を殺すと言ったが、それは本気か?」
「そうやよ。不安なら縛ってもいい」
何を言い出すかと思ったら、なるほど、と真は勝手に納得する。
禪院真希は少し前までは彼らの仲間であったが、今は何を仕出かすか分からない爆弾そのものだ。ただでさえ死滅回遊でそれどころではないのに、禪院真が仕留め損なって、後ろから刺されでもしたらたまったものではない。
「フィジギフの身体能力にも適応したから、次は絶対に逃がさへん。だから君らは安心して、天元様の護衛に専念してな」
「違うっ!!!!」
「おわっ、どうしたん?」
「姉弟で殺し合うんだぞ?何故それを当たり前のように受け入れる?禪院真希は本心でお前を襲ったのか?誰かに誑かされた線や洗脳された可能性はないのか?」
「ん~。誑かされたって言うんなら、真依お姉ちゃんかな?多分、絶命の縛りを使って呪具を用意したほどだし、これを使って、ボクらを皆殺しにして~とか、言ったんやない?死んでもうたから答え合わせは出来んけど」
「その真依も姉なのだろう。そいつはお前を恨んでいたのか?」
「どうやろう?少なくとも一人目を産むまではすっごい愛されてたし、二人目を産むまでは、執着はされてた……かな?別にボクはいいんやけど、やっぱり弟を利用して、禪院家での地位を磐石にしたってのが、後々になって負い目に感じたんやないやろうか?」
「弟を襲っただと!?」
「あ、そこは流してくれん?今さらやねん」
「……分かった。しかしならばこそ、真依が真希を誑かしたというのはあり得ない話ではないか?何故、負い目を感じている弟を殺せと姉に託すのだ?」
「分からんで?人間限界まで追い詰められると突拍子もないことをしよる。それが一族郎党だったって話やろ」
「それ以外の可能性を模索しないのは何故だ?真希は渋谷で意識不明の重態だったのだろう。奇跡的に生を繋いだそうだが、その間に呪詛師や呪霊に何か仕込まれたのかもしれない。それこそ今回の覚醒も仕組まれたものだとしたら?」
「そんなタラレバ、一々検証してたら何年かかるか分からんやん」
「思い付く程度のことを試さないで、姉を殺そうとするなど正気の沙汰ではないと言っている。これは忠告ではない、経験則だ。兄弟を失うというのは魂を引き裂かれるような痛みを永遠に胸へ刻むということだ」
それは環境や兄弟仲次第で変わるとは思うが、軽はずみな否定は許さない、そんな瞳をしていた。
「ジブンはボクに何をさせたいんや」
「お前は弟の恩人だ。しなくていい後悔はして欲しくないと思っている」
……弟?呪胎九相図は禪院家では管理していないが、何のことを言っているのだろうか?
「あっそ。何があったか知らんけど、他人の家庭環境に口を出す兄貴は普通に嫌われると思うよ」
「それでも構わん。悠仁ならこうした。それだけさ」
「ゆうじ?虎杖悠仁のこと?……何で兄弟?え?本当にどういうこと?」
もしかして虎杖悠仁の術式だろうか?
そう言えば京都との交流戦でもブラザーって呼ぶ変態が現れたそうやけど、洗脳系の術式か?
(相手の中に自分の存在を植え付けるとか……なにそれ、こわっ。ただでさえ宿儺を内に飼ってるのに、そんな強力な術式まで持ってたら怪物やん)
(例えるならBLEACHの月島さんや。人気のない章やったけど、こういう術式持ちがいたら御三家と言えど、簡単に滅ぶやろうなって、本誌読んでる時に思ってたんよなぁ)
確定ではないが、これからは少し用心して当たろう。それこそ虎杖悠仁が術師として覚醒したのは最近だ。本人が意図せず、術式が暴走してる可能性もあるかもしれない。
「少しでもいい。自分の知る姉と今の姉に違和感を感じたのなら、早まるな」
「はいはい。頭の片隅ぐらいには入れとくわ」
何にせよ禪院真がこれ以上、真希に情けをかけることはない。
立ち塞がるようなら、伏黒達だって敵として判断するだろう。
「伊地知さん。忠告やけど、今日は早めに寝ることをおすすめするで」
「え?」
「遅くなっても、月だけは見上げたらいかんよ。伊地知さんって意外と図太いし大丈夫かもしれんけど、心弱い人が見たら、壊れちゃうかもしれんからな」
限界まで呪力を温存するために高専の車で第二コロニーへと向かう。
その道中、彼は意味深な言葉を残して、死滅回遊へエントリーを決めた。
「よう!俺はコガ「よぉ、オマエ強いだろ?」」
「はぁ。さっそくかいな」
日が沈むまで10分を切った夕焼けの頃。
鹿紫雲一と禪院真は邂逅する。