努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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世界最強(時間制限有り)

──ホワイトハウス

 

「大統領!何故、直前になって軍を止めたのです!このままでは我々米国が新エネルギー産業の開発に遅れを取ってしまう!既に中国、ロシアの軍は日本の排他的経済水域を越えたとの報告がありました!今すぐ!前言を撤回して下さい!!!」

 

統合特殊作戦コマンド(JSOC)司令官

陸軍 中将 ギャリー・K・ジョンソンはとても自国のトップに対する態度とは思えないかなきり声を上げながら、扉をぶちやぶる。

 

「あぁ、やっと来たのか。思いの外遅かったな」

 

それを出迎えたのは他ならぬ米国大統領ケンタッキー・チェスだ。

彼の側には見慣れない日系人が二人仕えている。

 

「(……誰だ?)」

 

スーツを身に纏い、直立不動。まるで大統領の影のように付き添っている。

当たり前だが銃を携帯している様子はない。けれどここはホワイトハウス。自分の知らない存在を警戒しない理由はない。彼が無線で副官を呼び寄せようとした時、紅茶のふんわりとした匂いが彼の鼻腔を擽った。

 

「キミもどうだい?娘が送ってきたんだ」

「この有事に紅茶で一時ですと!?何を考えているのですか!?」

「まぁ、《座りたまえ》」

「──はっ」

 

一国の主の《命令》だ。それを断ることは《出来ない》。

ジョンソンは日系人が誘導した席に座り、改めてこの騒動の真偽を問うた。

 

「そもそも、だ。あのケンジャクという男が持ち込んだジャパンの人民をエネルギー資源として利用する試み、『保護』という建前はあれど、その実態は人体実験用の大量拉致……北のブタのことを笑えんな。あまりに人道に反している。それに我々、USAだけに情報を流したと言っていたが、各国の動きを見るに、それも恐らく嘘だったのだろう」

「ですが全く新しいエネルギー、それも資質によれど、たった一人で国のエネルギーを賄えるほどですぞ。そんなもの遅かれ早かれ、各国が飛び付くのは目に見えている」

「……ふぅ。キミはコミックは見るかね?アイアンマンやスーパーマンは映像派か?」

「まぁ、嗜む程度には」

「ならキミはアイアンマンやスーパーマンに同じようなことが出来るか?アイアンマンのその類稀なる頭脳を解体し、スーパーマンの常軌を逸したパワーでタービンを回して電力を供給でもしてみろ……それが『出来た』として国は発展するかもしれないが我々はきっと人として大切な何かを失ってしまうのだろうね。まるで悪魔だ、いや悪魔ですら契約の対価を払うのだから、私たちはそれよりも醜い存在だろう」

「それは論点のすり替えでは?彼らは我が国の民でありますし、英雄でもある。そしてそもそもがフィクションの存在だ」

 

大統領はジョンソンを気だるげに見る。

まるで何もわかっちゃいない。そう告げているようだった。

 

窓の外を見る。

 

「いやね、元々この作戦には私は反対だったのだよ。戦後からジャパンとは友好関係を続けてきた。それに娘のフィアンセの母国、そして孫の生まれ故郷でもあるそこに、こちらの一方的な理由で攻めいるなど許される筈がないと思っていた。だが、あの国は戦後から徹底した核軍縮により(これを指示したのは我が国だが)恐らくは世界各国からの脅威には抵抗しきれない。ならば我らが先んじてやるべきだと……バカなことを考えたものだ」

「大統領、先程から何を」

「そっちは見ない方がいい」

 

大統領の視線に釣られ、窓の外を見ようとして咎められる。

 

「心臓に悪い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禪院真は十種影法術の領域を取得し、魔虚羅を調伏した。更には強力であるが故に一度壊されれば二度と召喚出来ない。それを《術式のルール(縛り)》と解釈して、天の逆鉾で無効化した。

これで術式は極めたと五条悟を倒した時彼は確信した。

 

だから一切の努力を捨て、やりがいのある呪術界の改革という一手に興じることにした。

 

だがふとした時、彼は思った。

 

魔虚羅ってどこまで大きくなるのだろう。と

 

 

歴代の十種影法術の使い手で魔虚羅を調伏出来たのは禪院真をおいてただ一人。だが、魔虚羅特攻を仕掛けた過去の術師などの記録はあり、呼び出された魔虚羅の大きさは3メートルだったり5メートルだったりと様々。

ちなみに禪院真は9メートルだが、調子の悪い時に呼び出すと5メートルだった。

 

これってもしかして呪力量次第で大きさが変わるのでは?

 

この推測は半分当たりだった。

 

色々と検証していった結果、どうやら十種影法術で呼び出す式神の質は呪力量と呪力出力に依存するらしい。

正確には呼び出す時に造る影の大きさだ。

 

これが小さいと、式神はスケールダウンし、逆に大きければ大きいほど、式神の格も大きくなる。

 

魔虚羅以下の式神達にはどれだけ影を大きくしても、それ以上大きくならない、限界があったが、魔虚羅にはそれがなかった。

いや、真の術師としてのレベルが完全体魔虚羅を呼び出すに足りていないのだろう。

 

──力とは重さとデかさ。

 

ならばだ。もし完全体魔虚羅を呼び出せたのなら、禪院真はまごうことなき最強と言えるだろう。

 

 

 

この日、世界中の人間が月を見て、固まった。

 

「なにあれ、」

「人?月に人がいる!?」

「んなばかな。宇宙飛行士だとしても肉眼で見えるわけ!」

「あれが本物だとしたらどれだけでかいんだよ!?」

 

「え、ちょっと待って……だんだんでかくなってない?」

「は?え……うそ、ウソウソウウソ!!!?」

「こっち来てる!?こっち来てるよ!!?」

「やばい地球終わる!!!!?」

「うわぁぁぁぁ!!!!母さんー!!!」

 

月より舞い降りる最強の化身。

適応による補助がなければ、着地時の衝撃で地球に壊滅的な被害をもたらす、歩く厄災。

 

 

「その名も、八握剣異戒神将魔虚羅大将」

 

全長300キロメートル(伸縮可)

史上初、魔虚羅の完全体である。

 

日本を踏み潰してしまうので、50メートルにサイズを縮小し、東京第二コロニーの結界を踏み潰して、顕現。

 

「……ハハッ」

 

鹿紫雲は術式を発動しながら敗北の二文字が脳裏を過る。

間違いなく両面宿儺以上の怪物。瞬間的火力とはいえど、これを上回る存在がこの星にいるだろうか。

 

『ジュアっ!』

 

 

術式を発動したのは間違いだった。鹿紫雲は逃げて、機を待つべきだった。

取り返しのつかないミス。あぁ鹿紫雲はこれに殺される最後までこの選択を後悔し続けるのだろ「イイネェ!!!最高っだ!!!!」

 

鹿紫雲のボルテージが天元突破する。

顕現した自らの死神は張り裂けそうなぐらい胸を高鳴らせてくれる。

 

彼は自らを殴る。

 

 

 

黒い閃光が走った。

 

「ぐはっ」

 

 

また殴る。黒い閃光が走る。

また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。また殴る。黒い閃光が走る。また殴る。

 

 

崩れる肉体を術式が生を捨てた怪物へと作り替え、彼の肉体は膨れ上がっていく。

 

 

黒閃28連続。その他、数千の打撃。

 

 

その全てを鹿紫雲の術式『幻獣琥珀』は電荷(じゅりょく)に変換し、魔虚羅と並び立つ巨人へと変貌させた。

 

 

「死ぬまで殴り合おうぜ?」

「……この、戦闘狂め」

 

この日、初めて禪院真の表情から嘲りが消える。

もって1分。巨神同士の殴り合いは世界中にその圧を轟かせた。

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかやるやん。まぁボクほどではなかったけどな」

「何がボクほどだ。反則だろあれ」

「勝てばええねん。勝利こそ揺るがない絶対の正義や」

 

誰もいない丘の上。二人の最強が語り合う。

 

「それで、えっとなんやったっけ?どうやって他者を慈しむ?女なんて元から男が殴ったら壊れるガラス細工やん。手加減下手すぎるねんジブン」

 

「はっ、何だそれ」

 

「箸の使えん子供やあらへんし、ジブンはただ手加減すれば良かったんや。ちょうど良くな。女ってのは特別扱いされると直ぐに股開くし、そういうやつの抱き心地は案外悪くないで。人生適当に本気でやるのが一番面白い」

「……そうか。肩の力を抜くか……思えば張り詰め過ぎてたのかもしれないな」

「次は気ぃつけな」

「だな。次があればだが、参考にはなったよ」

 

 

鹿紫雲の意識が薄れていく。

 

悔いはない。自分の全てをぶつけて敗れたのだ。その相手は宿儺ではなかったし、答えもとんだ酔狂な物だが、得ることは出来た。

 

だからこれで終わっても悔いはない。

 

 

 

 

 

「いや、逝かせへんで?ジブンの100点使わせろや」

「……悪いが、無理だ……これ、は……そういう……術式、で……な」

「いやいやいや。宿儺戦まで取っておこうと思ってた魔虚羅大将まで出したんよ?これ次出せるの早くても1ヶ月後やねん。また借金もせないかんねん。そんで報酬なしはキツすぎるわ」

 

そうは言っても好きで死ぬわけではない。鹿紫雲は意識を手放す。

 

 

「ハァァァァァ~!なら一か八かや!!!!鵺!!!!!」

 

 

彼が最後に見たのは禪院真が鳥の式神を呼び出し何か施そうとしている所だった。

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