努力しない禪院、だが、最強 作:禅院炉
十種影法術の強味は魔虚羅である。
ボクは器用やから魔虚羅ぶっぱの一芸では終わらんけど、魔虚羅が切り札かつ最強の手札であることは変わらん。
だから魔虚羅への投資は惜しまんし、自らの呪力の殆どは魔虚羅の呼び水にする為に縛りで制限されている。
不便なようだけど、地球を走り回るだけで死の星に変えてしまうようなバケモンが手に入るんや。月一という使用制限はあれど(無理すれば二回いける)十分過ぎるぐらいお釣りはくる。
「おい、何でオレは生きてる?」
お?起きたか。鹿紫雲だっけ?術式に救われたな。絶命まで込みであの出力ならどうしようもなかったが、身体を作り替えるだけで、魂の形まで変えてしまうようなもんやなかったからギリ元の形まで修復出来たわ。
「は?……いや、ありえねぇだろ。反転術式をフルで回してもあんなん追い付けるかよ」
それが出来たから今があるんやん。現実を直視して?
「それに肉の殆どを
はぁ、そんなに死にたかったん?理屈なんてどうでもええやろ。
まぁ気持ちは分かるで。これがボクの術式によるものではなく、あくまで技術によるものならば、その術式を好き放題使えるようになるかもしれんもんなぁ。
適応前(現在は適応済)かつ致命傷には程遠いがボクの魔虚羅大将に傷をつけるほどの強力な術式だ。
磨けば五条悟をも上回るに違いない。
「分かってるなら教えろよ。オレにも出来んのか」
教えるわけないやん(笑)ボクの奴隷として生きるって言うんなら考えてやってもええけど。
「あーくそっ。100点を使うんだろ?追加する
最初っからそれでええねん。助かっただけで万々歳、それ以上欲をかくと長生き出来んで。
「コガネ、ルール追加。死滅回遊の
鹿紫雲は自らの百点を消費し、
「
「だとよ」
「じゃあ残りのコロニー、ボクが全部潰すわ」
その横に立っていた真がニヤリと笑う。
「………死滅回遊から
「なんや、そのふざけた暴利?つうか、一人辞めさせるのに最低20人も殺してたら、
「泳者《プレイヤー》は新規
「話にならんな。ちょっくら東京第一も潰してくるわ」
「し、死滅回遊から
「まぁ、それでええか」
もう少し脅してもよかったが、ここで羂索やその手駒がぞろぞろと出てこられても困る。引き際というやつだ。
ログアウトボタンとまではいかなかったが、コロニーを刑務所代わりに犯罪者でもぶちこんどけば暫くは何とかなるだろう。
「
そのアナウンスを聞いた虎杖達はえ?誰がやったの!?とさぞ驚いている頃か。
あとはコロニーの核を破壊して第二のコロニーの復元を不可能にすれば終わりだ。
「んじゃ、またな」
「何処にいく?」
「さっき言わなかった?コロニーの核の破壊や。それが終わったら第二コロニーは消滅する。ジブンは他のコロニーに行くんでも、外でつつましく暮らすんでも、あとは好きにしたらええんとちゃう?」
「何故殺さない?オレはもう点は残ってないんだぞ」
てっきり100点を使わせてから、理不尽な縛りを科せられるか殺されるかと思っていた。
そうでなくとも地下牢か何かには閉じ込められると思えば、好きにしろだと言う。
鹿紫雲は生前、御三家と深い関わりがあったわけではないが、いわば呪術界の警察代わりの真が好き勝手やった自分を放任するとは信じられなかった。
「ん~、そうやなぁ。確かにボク的には珍しい行動やと思うで。特級クラスの術師を逃がすとか、平時であったら絶対にやらへん失態や。でもな。魔虚羅大将……ボクの切り札を前にして、心折れるのではなく、自爆覚悟で術式を切ったジブンを見て……久しぶりにビリッときたんよ。今、最高に気分がいいねん。まるで初めて『閉じない領域』を形に出来た時みたいな爽快感や。だから見ないふりしてやるうちにさっさと消えな」
「はっ。オマエも同類じゃねえか。何が、肩の力を抜けだ───宿儺を殺したあと、もう一度オマエに勝負を申し込む。それまで死ぬんじゃねぇぞ」
鹿紫雲はそれまでは現代の術師と非術師は殺さないと、自ら縛りを課す。
真は目を見開いた。
「ほぅ。それってつまり、宿儺を術式なしでやるってこと?」
「一度使ってみて感覚は掴めた。全開で使おうとすれば死ぬだろうが、腕や足だけに絞れば何とかなるだろう。それなら最悪、戻せなくても、切って新しいのを生やせばいい」
「……いいねぇ。楽しみにしとるわ」
両者は笑い、雷鳴が轟く。
次に相対するときは敵か、味方か。
少なくとも今の二人の心は、雲ひとつない青空のように澄みきっていた。
同時刻 鹿児島コロニー
「ハァ……ハァ……ハァ」
「おいおい、アイツの心臓を潰したって言うから少しは期待してみれば、弱いなお前。不意をつこうにも、アイツの影なら気づいただろうに」
あれ?術式が焼き切れた直後を狙ったんだったか?
それなら俺もいけるかも?と芋虫のような呪霊を肩に巻き付かせる男は手をたたく。
「まぁいいや。アイツには恩もあるし、もう殺す理由もねぇ」
ハッ!!!と男の背後から飛び出し安物の刀の呪具を振りかぶる老人が、ノータイムで切り刻まれる。
「にしても、お前みたいなのに領域と魔虚羅まで出したなんてアイツらしくもねぇ。流石のアイツでも姉が猿になって動揺したか?」
はっけよい!のこった!と飛んできた河童を鎖で巻き付け、何処へと放り投げる。
「選べ。ここで俺に殺されるか、それともアイツに首を差し出すか」
「何なんだよ、お前は!」
真希の首に突きつけられたのは釈魂刀、その本物である。
「ガキほっぽりだして、嫁と世界旅行中のクソ親父だ」
男はどこまでも冷めた目をしていた。
これより2日後、最高万全の状態で姉弟は殺し合うことになる。