努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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つまらない最強

禪院真という名を五条悟の前で出してはいけない。

 

「あ?」

 

出すとキレる。物凄くキレる。良い歳した大人の癖してケーキを取られた子供みたいに切れ散らかす。

それで最後にはマジビンタだ。機嫌が悪い時はそれがグーになる時もある。

 

本人と直接顔を会わせようものなら、開幕直後に無量空処である。

縛りにより五条側から仕掛けることは出来ないが学生の時の屈辱的すぎる敗北をバネに鬼のような鍛練を重ねた五条は去年のクリスマスイブでミゲルを瞬殺した。

そのお陰で比較的早くに高専に戻ることが出来、

「純愛だよ」「ならば大義だ!」

の高エネルギー砲の間に割って入って、親友を無事五体満足で捕縛することが出来たのだが、未だ当時の屈辱と怒りが鎮火する様子はない。

 

恐らく縛りを取り払い、再戦すれば同じ状況でも百回やって百回五条悟が勝利するだろう。

 

禪院真と五条悟は同程度の才能の持ち主だが、前者は才能にかまけて努力を怠り、後者は血の滲むような努力を重ねたので残当である。

 

しかしながら、お昼休みに昼寝をしてたら魔虚羅を三連続でけしかけられた。当時の五条悟は命までは取られない代わりに理不尽過ぎる縛りで雁字搦めにされてしまったのだ。

 

だから五条悟は禪院真には勝てない。絶対に。

それを禪院真は全力で煽る。ので、冷めるほうがおかしかった。

 

 

「今、何つった?」

「だから、その……禪院真様が見学にこられます」

「は?なんで?ふざけるなよ。アイツどこまで僕をバカにすれば気が済むんだ、白髪はストレスじゃなくて地毛ってんだろ!!!ああ!!!!!……ふぅ。伊地知、必殺マジシリーズ、マジ殴りの刑ね」

「いきなり落ち着いたと思ったら、すっごい理不尽!!?」

 

数ヶ月前。両面宿儺の指を食べた青年、虎杖悠仁は呪術総監部に秘匿死刑を決定され、五条悟による強権で執行猶予付きで高専に通うことが決まった。

 

年齢としてはタメであり、かの両面宿儺の器として適合した存在がどのようなものなのか興味を抱いたらしい。

 

「断れないの?と言うか断れなくてもいいから今日から貯まりに貯まった有給消化していい?ちょっと本場のケバブ食べたくなってさぁ……憂太の顔もついでに見てくるから、1ヶ月ぐらい」

「冗談でも止めて下さい。今、貴方に高専を抜けられたら、あの方の魔の手が高専にまで及んでしまいますよ!」

 

まるで真のことを魔王のように語る伊地知であったが、色欲魔であることを抜きにすれば五条よりも聞き分けがよく、また女性が本気で嫌がれば自制も利くため、あまり警戒はしていなかった。

 

彼が焦ったのは最強である五条悟が1ヶ月高専を留守にするという『空白』である。

 

まだ呪力がなんたるかも理解していない虎杖悠仁は当然として、高専の地下に収容されている『夏油傑』を奪取せよと、あらゆる勢力が高専に襲撃をかけてくる可能性があった。

 

五条悟は最強になった。原作の1.5倍ぐらい。

こっちでの宿儺戦は彼に風向きが変わるかもしれない大きな成長だが、その成長がより彼を孤独にした。

 

……五条は思う。

 

もし禪院真が才能にかまけず、努力を怠らなければ、親友は無理でも切磋琢磨しあえるライバルになれたのではないかと。

性格はドブカスでも、同じ空を見れる相手として多少印象も変わっていたかもしれない。

 

「あー。アイツのことはムカつくけど、恵の先生役にもなるし、今回ばかりは我慢してやるか。ほんとうに嫌だけど、僕って大人だしね」

「一応、伏黒君達と同い年なんですけどね、彼」

 

禪院家当主に禪院真がついてから一年。遂に運命の歯車は回り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?禪院真?あー『十種影法術』の使い手ねぇ。魔虚羅を調伏したのは評価するけど、それで満足しちゃった時点で興味を失っちゃったなぁ。いやー術式に対する解釈とか面白かったし、多分、逆に才能なかったら化けるタイプの才能とかあったと思うよ。そんなのより今は五条悟の対策でそれどころじゃないんだ」

「ふむ、ではそやつは宿儺の指何本分じゃ?」

「魔虚羅だけで12、いや……何か奥の手を隠していそうだし、それも見積もって15本かな。天逆鉾を破壊しちゃえば漏瑚でもワンチャンあると思うよ」

 

興味は失ったが、それでも彼が最強という問題に出した答えは笑い飛ばして済ませられるものではない。

 

「15本……それほどか。しかし天の逆鉾……その呪具は欲しい。あくまで術師本人ではなく、魔虚羅という式神を呼び出した前提の実力であるならば、その前に叩けば……うぅむ」

「あれ?もしかしてやる気?」

 

「(魔虚羅と呪霊との相性は最悪だからぶつけたくはないけど、彼への相手は漏瑚達じゃなきゃ務まらない。……うーん、勿体無い気もするけど、真人だけ生き残れば、計画に支障はないし必要経費と割りきるか)」

額に縫い目のある呪詛師は内心そう呟き、延焼する喫茶店の中で注文したコーヒーを啜った。

 

「どうしよっかな。五条悟……万全の宿儺でも果たして倒せるかどうか……」

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