努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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冥冥

当然やけど、ボク。子供が6人と1人(故人)いるねん。子沢山やねん。

 

精通した10歳の頃から毎晩のように嫁さん達といちゃこらしてるので、当然と言えば当然やな。それにしては少なくない?とも思うかもしれんが、普段は避妊してるねん。それで「あ、今日仕込んだら当たるな」って感覚になった時に子作りしとる。

なんの根拠もない、ただのジンクスみたいなもんやが、今のところ男5女1で全員が術式持ちや。

 

判明する前に亡くなってしもうたが、あの子も持ってる側の雰囲気を纏ってた。

 

ボクの種が優秀過ぎるだけかもしれんけど、まだ焦る時期でもないし、嫁達だって無限に子供を産めるわけやあらへん。

母胎としての役割を求めていることを否定する気はないけど、それでも嫁だからな。モブでカスのお父さんとは違って、出来る限りは尊重してやりたかった。

だから暫くは、このサイクルを崩す気はない。

 

「どうだい?今なら10億で買われてあげるよ」

 

……ない、んやが。今、めっちゃ迷っとる。

 

 

気が狂ったような前髪をしとるこのおば……お姉さん。一級呪術師の冥冥さんや。

黒鳥操術って言うべらぼうに強い術式の持ち主でな。前々から猛烈にアピールしていたんやが、素っ気なくフラれてきたんや。

 

「私が体を許すなんて、大変珍しいことだよ。次があるとしたら5年先かもっと先か、もしかしたらもう二度とないかもしれない」

 

女性に年齢のことについて話すのは失礼やが、冥冥さんは見た目こそ若々しいが今から子供を作ろうと思ったら結構ギリギリや。相手探しから始めようと思ったら、間に合わへんかもしれへん。

 

晩婚化の深刻化する呪術社会において、男っ毛の一つもなく独身貴族を謳歌していた人や。てっきりもうそのまま墓場にゴールインを決めてしまうのかと思ったが、まさかここに来てチャンスが巡ってくるとは思わんかった。

 

10億で冥冥さんの血筋を取り込めるなら安いぐらいや。

だけど今日の気分は『当たり』ではない。子供が術式は引き継がないぐらいならいいが、冥冥さんとなると当たりが反転して、『ハズレ』が産まれてくる可能性を考えなければならなかった。

 

さっきも言ったが、冥冥さんは子供を生む年齢としてはギリギリ。………最悪、真希お姉ちゃんみたいな半端もんでも喜んで育てるが、それ以上酷いもんとして産まれたのなら面子の為に殺さなあかへん。

 

その場合、最悪やな。

10億失って、冥冥さんからの覚えも悪くなって、ボクの評判もガタ落ち。

冥冥さんは高専関係者やから、総監部からも何かしら圧力をかけられるかもしれへん。

 

……悩ましい。と言うかなんでこんな話の流れになったんやっけ?

 

高専で宿儺の器と伏黒君の様子を見に行ったら急な任務で呼び出された。場所は京都やったけど、偶然居合わせた冥冥さんと晩御飯を食べることになったんよな。

一見さんお断りでボクお気に入りの料亭や。

 

それで、いきなりこれや。

 

 

……アカン。もう回想終わってしもうた。

 

ほんとに何で今なん?酔ってるんか?

冗談なら一笑するけど、目がガチなんよ。

あと新品の請求書を取り出してきてるんよ。ご丁寧に高そうな万年筆まで添えて。

 

マジのガチやん。FXで全財産解かしたりしたんやろうか?それともカジノで大負けか?

 

冥冥さんは数少ないボクが尊敬出来るちゃんとした呪術師や。それならそうで、工面することも吝かではない。

 

「ふむ。……やはり、歳か。自身には最大限投資してきたつもりだが、母胎としての機能低下は避けようがない。改めて実感したよ。私はもう、『そういう』段階にはいないんだね」

 

なるべく遠回しに伝えようとしたが、伊達に人生経験を積んでいないだけあって、丸ごと全部見通されたようだった。

 

いやいやいや。まだまだ全然若いと思うよ?でもいきなりは、なぁ?

 

ジンクスでもなんでもなく、高齢出産はリスクが大きい。母胎もそうだし、子供が術式じゃなくて、『ハズレ』を持って産まれてくると、生かしてはおけんのよ。

 

「すまなかったね。酒の席だと思って忘れてくれ」

 

そやな。それが一番や。

ボクは未成年やし、普通の店で飲むと色々と不味いことになるが、この店は特別や。

 

下戸の五条悟とは違って、ボクは全く酔えへんけど、味の良さなら分かる。

おすすめは日本酒と、刺身やね。

 

冥冥さんが何でこんなことを言い出したのか分からないけど、『当たり』の日ならばっちこいや。

ほな、その日を期待して精一杯のヨイショをやらせて貰おうか。

 

 

 

 

ネタバレになるけど、冥冥さんとそういう関係になることはなかった。

 

 

まぁそういうこともある。気楽に構えて行こうや。

 

 

 

「よぉ。久しぶり」

 

少し憂鬱な気分になった、そんなボクの帰り道。皮肉げな表情を浮かべた男が立ち塞がる。

 

 

マジか……。反転術式!!!

 

 

「せいっっっかい!!!ほな、これでお前をブッころ!!!」

 

 

黒閃!!!!!!

 

「ドブガッッゥ!!!?」

 

 

直哉君は反転術式を覚えた。お父さんとは違って、モブやなかったみたい。

見直したわ。これからは君付けじゃなくて直哉って呼ばせて貰おうかな。

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