努力しない禪院、だが、最強 作:禅院炉
ボクに暇はない。
年がら年中、お盆に正月と(流石に正月で午前中で切り上げる)休みなく全国各地を走り回っとる。
御三家の当主だからとか、呪術総監部に嫌がらせをされとるとかではないで?
特級呪術師かつ御三家当主&呪術総監部からめちゃくちゃ嫌われとる五条悟ですら週一で休みはあるし、盆や正月はよほどのことがない限りは休みになる。
ボクの場合、進んで依頼を受けとるねん。
無償のやつは絶対に手を付けないが、1万でも貰えるなら飛び付いとる。
何でかって?
それは最強としての責務。非術師達を守る為……やあらへんよ?
うちの家訓知ってる?
禪院家にあらずんば呪術師にあらず
呪術師にあらずんば人にあらず
ボクはそこまで非呪術師のことを下に見ているわけではないけど、彼ら100人の命より呪術師一人の命の方が価値があると本気で思ってる。
夏油君は非術師のことを猿って言ってたけど、ボク的な感覚で言わせて貰えば、猫や犬みたいな感じかな?
従順であれば庇護するし、呪霊という糞尿を撒き散らしても、仕方ないかで片付けたる。
だけど、それだけなら週休三日はないとやってられんわ。
ボクががむしゃらに働く理由はな。
……ここだけの話。借金があるんよ。
利子はほぼないに等しいし、返済期限も60年近く待ってもらってるけど300億ある。
笑うやろ?しかもこれ、カジノとか詐欺で騙されたとかではなく、ボク個人の『買い物』をした結果やねん。
これの返済の為に年がら年中、呪霊狩りや。
株とか、投資、新興宗教に、ベンチャー企業の社長など色々やっとるさかい、手元から完全に資金が失くなることはないんやけど、月々の返済額を安定して返そうと思ったら、とても悠長には構えてられへん。
幸いにも、その『買い物』のお陰で式神達は日本全国へ派遣に出すことが出来る。
今で返済出来たのは30億ぐらいかな?
特別一級呪術師の年収+依頼の報酬+ボクの事業
禪院家の裏に屋敷を建てなければ50億は返せてたんやけど、そこは必要経費ってやつやからな。そういうのには妥協はせぇへん。
あと禪院家の金には一切手をつけていないで。
当主やし、呪具の管理も分家からのおみまい金も全部思いどおりに動かす権利はあるし、考えなしに換金したら300億の借金は返せるかもだけど、彼らには関係ないことやからね。
それに今の禪院家は弱すぎる。術式を持たない連中が多すぎるねん。せめて信朗君ぐらい動けたら文句は言わんけど、呪力操れる癖にその中では真希お姉ちゃんが上澄みって言うんやから酷さが分かるやろ?
数の利を生かすにしても、最低限の質すら保証出来んと論外や。
おまんら禪院家の看板背負ってるやで?
分家だなんだとほっそい血筋を辿ってかき集めても、その看板に泥を投げつけるだけや。
才能ないやつは切ればいいのに、躯倶留隊なんて組織を作ってしまったせいで、雑魚で溢れかえっとる。
ハッキリ言って落ち目の時や。そんな時に金をむしりとったら、そのまま腐り果ててまう。
何れはボクの子供達でそのしみっ垂れた空気は一新する予定やけど、せめてそこまでは持ってもらわなあかん。
理想は躯倶留隊の入隊基準の引き上げと、信朗君クラスなら術式の有無関係なしに炳に入れるようにすることかな?
まぁ信朗君は教官として躯倶留隊に残ってもらわなあかんけど、高専の一級呪術師に、術式はないのにめっちゃ強い人おるやん?
ボクは術式がなくても呪術師として実力があれば評価されるべきだと思ってる。
まぁボクのお気に入りの漫画を参考に言わせてもらうと、本来誰もが持ちうるべき『個性』を持たないって意味では劣ってるのかもしれんけど、総合力で優っとるならそこまで気にする必要はないんじゃないかな。
そんで、躯倶留隊に入れなかった術式なしで雑魚の皆さんは禪院家から追放やね。術式があれば雑魚でも次世代に期待して、残してやるけど、見込みがないと判断したら腐りかけの枝はへし折る。
禪院家という看板をボクの代で引き上げるねん。
それこそ御三家やなくて、禪院家こそが呪術師の頂点と位置するように。
「残念だが、それは叶わぬ願いだ。貴様はここで死ぬ。我々の手によってな」
……いつものように任務帰り。RV車の後部座席で寛いでいたら、車ごと焼かれてしもうた。
運転手は死んだが、所詮補助監督や。ボクが無傷で助かったんやからどうだっていい。
目の前の……火山頭。火山、火、それとも噴火か?何の恐れの集合体かわからんけど、特級呪霊は好戦的や。
その後ろにいる寄生されたカタツムリみたいなキモい目をした植物の呪霊、そしてツギハギだらけの呪詛師……いや、呪力の質からして呪霊か。そいつら三人と、後方に弱そうなタコがいる。
多分。今喋ってるやつが一番強いな。
ここまで明確な意志疎通の出来る呪霊なんて見たことないけど、突然変異やろうか?
取り敢えず、自己紹介しよか。ボクは禪院真や。
「……儂は漏瑚」『私は花御』「俺は真人。奇遇だね?一文字違いだ」「だぶぅ」
なるほど、火山頭だけやと思ったが全員会話出来るレベルか。
ここまで多いと、突然変異やなくて新種かもな。
全員が特級……それも呪霊基準やなくて呪術師基準のそれだ。頭が痛くなるが少なくとも個人の意志がハッキリしとるってことは、呪霊操術の支配下にはない。
面倒臭いし交渉して見逃してくれへんかな?
「「「駄目だ」」」
……そか。
「領域展開!」
いきなりかい。やっぱり漏瑚って呪霊が先人を切るようやね。
やりにくいなぁ。まとめてかかってこないだけ助かるけど、これ多分。こっちが魔虚羅出して勝ち目がないと分かったら、逃げるやろ。
相手は知性のある呪いや。正面から勝ち目がないと分かったら、あとで何をされるかわかったもんじゃない。
はぁぁぁ……。今は夕暮れや。
ボクは久しぶりに印を構える。
────領域展開。
そして広がる火山地帯。
漏瑚は笑う。あまりに呆気ない。
領域に対抗するには領域を使うしかない。だから禪院真が領域を出すのは当然で、強く身構えたが、自身の領域は何の隔たりもなく展開された。
領域の押し合いすら発生しなかった。
やはりこの男は最強を自称するだけの凡夫。五条悟には遠く及ばない。
拍子抜けだ。
魔虚羅を召喚する隙すら与えるものかと、巨大な岩石を投げつける。
「危ないで?影が出来とる」
は?
漏瑚は見た。
必中の筈のその岩石を受け止めるのではなく容易に避けた禪院真。そして自身の影から飛び出し、胸を突き破った妖刀を。