努力しない禪院、だが、最強   作:禅院炉

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最強の呪術師は誰?

最強の呪術師は誰か?

 

禪院直毘人はこう答える

「禪院真。実力なら五条悟」

 

禪院扇はこう答える

「私だ」←炳と特別一級呪術師の資格は剥奪済み

 

禪院蘭太はこう答える

「真様です!あの人のお陰で禪院家の質は上がった。あの人は最強だけど、自分だけが最強であればいいと唯我独尊を駆け抜ける五条悟とは違う。御三家の当主としての責任を果たしてる立派な人だ」

 

禪院甚壱はこう答える

「何故かは分からん。だが、足の遅いやつは死ねばいいと言われた。……直哉ほどじゃないが俺も足は速い方なんだが……顔以外でバカにされたのは初めてだ。あれには何が見えているのだろうな」

 

禪院長寿郎はこう答える

「実力なら五条悟だが、最強としての責務を果たしているのは誰かと問われれば、それは禪院真において他はない」

 

禪院信朗はこう答える

「五条悟じゃないですかね?まぁ過去に結んだ縛りの関係上、実際に戦ったら真様の圧勝でしょうが」

 

 

 

 

そして禪院直哉は───

 

 

「そんなん聞くまでもないやろ?なんであんなドブカスに禪院家が従ってるか分かるか?」

 

 

 

 

「ごはっ……何だ。この刀は?抜けん」

「おもろいやろ?それ。名無しの呪具やし、大した呪力もないけど、刺した相手の肉体に癒着するって面白い能力があるねん。下手に抜くと内臓ごと持っていかれるで?」

 

バカな、何だこれは。ありえん……ここは儂の領域の中。それに十種影法術とは自身の影を媒介にするのではなかったのか?

 

漏瑚は自身の影から出てきたその妖刀を直視する。

そして目の前で薄ら笑いを浮かべる男の動きに注視する。

やはり、何も……していない。やつはただ避けただけだ。影を通じて妖刀を送り込む動作も、儂の影に干渉しようとする呪力の起こりも一切ない。

 

これが、あの額に縫い目のある呪詛師が言っていた奥の手なのか。

 

抜けぬのなら焼き尽くしてしまえばいいと妖刀は焼いて融かす。鉄の融点は1500度を越えるが漏瑚ならその程度の温度は容易かった。

 

「何故、今の隙に八握剣異戒神将魔虚羅を召喚せなんだ。あれがお前の唯一の勝機であるというのに」

 

「マコーラは安売りしていい玩具じゃないんよ。あれは決戦兵器。君たちみたいな雑魚に使うわけないやん」

「ぬかせ!!!!」

 

漏瑚は両手を合わせ、数多の噴石を真へ放つ。

 

それを真は、やはり避けた。

 

「わっ。服に火の粉が。……これ、結婚記念日に貰ったやつなのに。どないしよ。あとで怒られるわ~」

 

避ける余地があるように、わざと疎らに撒いたとはいえ、ここは領域内。

 

(やはり、儂の領域の必中効果を省かれておる!!!)

 

確信した。この男、やはり何かある。五条悟ほどの圧倒的な差は感じないが、得体の知れない何かを持っている。

 

漏瑚は認識を改めた。

禪院真を最強を自称する弱者から、最強を自負するに足る一端の強者へと。

 

「それでも儂がすることは変わらん!!!」

 

五条悟が漏瑚達の目的(呪霊の世界)の障害なら、禪院真は不確定要素だった。邪魔になるかもしれないし、ならないかもしれない。だが、最終的に敵対することは目に見えているので、戦力が整っている今のうちに叩くと決めた。

 

今度は禪院真の全方位を覆う、面の攻撃。

 

「……虎葬」

 

ここで初めて動きらしい動きを見せた。二足歩行の虎の式神が肺から押し出した空気だけでそれらを吹き飛ばす。

 

それでいいと漏瑚は笑う。

やつの十種の式神を全て叩く。そしてやつが式神の修復の為に影から『天の逆鉾』を取り出した時、それを奪う。

 

天の逆鉾は無下限呪術の無限を無視出来る。

近々に控えている決戦を前に、犠牲を覚悟で禪院真を叩くと決めたのにはこれが最大の目的だった。

あの男は破壊することを推奨していたが、漏瑚はこれが対五条悟への切り札だと確信していた。

 

今のままでは、全員でかかっても全滅は必須。ならば自分がここで倒れたとしても、天の逆鉾を仲間に託さねばなるまい。

 

漏瑚の覚悟が呪力を研ぎ澄ます。

 

「隕」

 

出し惜しみはしない。巨大な隕石が拳を振りかぶった虎葬を道連れに砕け散る。

 

「……貫牛」

 

やはり戦闘の最中、式神を修復しようとはしないか。

 

これで十種全てを破壊することは決定事項となった。そして十種を破壊し終えるまで、漏瑚は真を生かしたまま追い詰めなければならない。

 

まるで大型トラックを思わせる巨大な牛の式神が自身を吹き飛ばす。

 

血を吐きながらも漏瑚は立ち上がり、再び突っ込んでくる貫牛に頭突きを食らわせた。

 

「炭になるまで焼いてやろう!!!」

 

頭が裂け、火山が燃える。貫牛から牛肉の焼ける香ばしい匂いを感じたと思ったら消滅した。

 

これで2体目。漏瑚の呪力は既に半分を切っていた。

 

禪院真の召喚する式神は魔虚羅以外も十分に脅威的であった。それこそ漏瑚のような上澄みの特級呪霊でもなければ単体で特級を祓えるほどに粒揃いだ。

 

次はいい。その次も何とかなるだろう。だが、その次は不味いかもしれない。

 

漏瑚の脳裏を過る死の予感。冷静になるならここで花御達と交代し、回復に集中するべきかもしれない。

 

「こい!次だ!!!!」

 

漏瑚のボルテージが上がる。

 

認めよう。禪院真は強者だ。自分よりも強い。

 

彼は高揚していた。五条悟ほどではない、手の届く強敵。百回やって勝てるのは一回か、二回だろう。

 

その一回をここで出すのだ。

 

「脱兎」

 

無限に増える兎の式神の中、自分の世界を瞬く間に埋めつくそうとするそれらの中から、印の付いた本体を見極め、破壊する。

 

そうだ。見極めろ。儂が最強を下す。

 

漏瑚は禪院真を領域内で狙わないという縛りにより、式神への術式の威力を高めていた。

 

不思議と分かる。自分が取るべき次の最適解が。

 

これ程まで死力を尽くし、そして確かに手応えを感じる充実した戦いなど初めてだった。

 

「もっとだ!もっと儂を呪わせろ!!!!」

 

むき出しの悪意。純粋な愛(呪い)

漏瑚という燻っていた呪霊は益々熱を上げていく。

 

「布瑠部由良由良……」

 

禪院真の呪力が不気味に揺れた。

 

遂に、来るか!

 

虎杖からの情報で知る、八握剣異戒神将魔虚羅の召喚法と相違ない。

 

ならばと此方がやることは決まっている。

 

魔虚羅の唯一の攻略法。適応前に一撃で屠る。

 

漏瑚は縛りを追加した最大火力の『極ノ番・隕』で勝負を決めると残りの呪力を振り絞った。

 

「なんてな?言ったろ。マコーラは出さんって」

 

「は?」

 

その瞬間、漏瑚の領域が消失した。

 

「一体何が……この地面は、何だ?」

 

先ほどまでの草原ではない。まだ夕暮れだというのに、地面だけはまるで夜の帳が降りたように真っ黒だった。

 

『漏、瑚……せめて、貴方だけでも』

「花御!!!?」

 

両腕を失い、瞳の枝を抜き取られて満身創痍の花御に駆け寄る。

 

「これはどういうことだ!?真人は?陀艮は!?まさか殺されたのか!?」

 

『真人は影に飲み込まれてしまいました……陀艮は奮闘しましたが、虎の式神に先ほど殺されて』

 

「バカな。虎だと?それは儂が一番最初に破壊した式神ではないか!!?」

 

漏瑚は飄々とした態度で此方を見る禪院真を睨み付ける。

 

「貴様、何をした!!!」

 

「何を?……あぁ、そういうこと」

 

彼の背後に、漏瑚が死力を尽くして破壊した筈の式神達が現れる。

 

……バカな。バカなバカなバカなバカな!!!?

 

天の逆鉾は使っていない。

それなのに破壊した筈の式神達が召喚された。

 

理解不能の状況に漏瑚の熱は上昇を止めた。

 

「便利なもん、ありがと。魂を操る術式……ふふっ、どういう呪具に加工しようかな?」

 

「ッッゥ!!禪院真ォォォ!!!!!」

 

目の奥がカッと赤くなる。『いけない!』花御の制止を振り切ってでも、やつはここで殺さねばなるまいと漏瑚は『絶命の縛り』で最大火力の火炎を放った。

 

それに、やつは呑まれた。

 

確実にやった。黒い炭となって灰になる瞬間を見た。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……花御、あとはお前に、任せ……は?」

 

縛りによる対価で砕け散る漏瑚の体。彼が最後に見たのは花御の頭を踏み潰す五体満足の禪院真の姿だった。

 

 

「お前は、一体……」

 

「ボク?最強」

 

 

 

 

 

 

禪院真が怖いんは十種影法術の使い手なことでも、八握剣異戒神将魔虚羅を調伏してることでもない。

 

八握剣異戒神将魔虚羅は恐ろしい式神やけど、それ一つだったら殺されても従わへんやつは山ほどおる。

 

自分たちの力に誇りを持ってる禪院家が、それぞれの思惑はあれど、あの嘗め腐ったカスに従ってるのはただ一つ。強いからや。

 

禪院真の全ての能力が他の誰ともかけはなれてるからや。

 

十種影法術に用心する?

 

アカン無用心や。

 

他の全てに用心する?

 

アカンまだ無用心や。

 

空が落ちるとか、大地が裂けるとか君の知恵を総動員して、あらゆる不運に用心しても、禪院真の能力はその用心のはるか上や。

 

 

 

まぁ、それでも?あれを下して俺が禪院家の当主になる。

最強は俺や。




直哉はこういう手合いは死んでも認めないと信じてる。
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