努力しない禪院、だが、最強 作:禅院炉
京都との対抗戦の最中に起きた襲撃はハッキリ言って高専側は完全敗北と言っていい。
学生に犠牲を出さなかったとはいえ、それも高専のマニュアル化した防衛対策の結果ではなく、たまたま一級呪術師クラスの若い呪術師が生徒として在籍していたからであり、禁庫は暴かれ、門番は殺され、そしていくつかの呪具と呪胎九相図の三体を奪われた。
特級呪術師、五条悟までいたというのにこの醜態。
高専には天元の結界があるからと御三家から借り受けた呪具なども保管されている。
案の定といった感じで、五条家を除く御三家から激しい抗議が寄せられていた。
せめて、主犯と思われる未確認の特級呪霊、花御だけでも祓えていれば言い訳もたったが、準一級程度の呪詛師を一名拘束しただけである。
高専の面子は丸潰れだった。
「あら?これ、ボクが昨日、祓ったやつやん」
それをこのドブカスが煽りにいかない理由がなかった。
ねぇねぇねぇ、最強さん!今、どういう気持ち?
実力だけは上の最強さん!おかしいなぁ……実力で劣るボクが祓えたのに、どうして逃がしちゃったんやろうね?
「グゥゥゥゥゥ!!!!!」
五条悟。無下限による無限バリアに呪力を込める。
追加した効果は音の遮断である。
教師になって、ボクの真似事しようとしたけど、やったことは、生徒達の成長の機会を奪っただけ?
いや~、誰よりも現場に出てるボクが言うのもなんだけどね?領域は一回ぐらい食らってた方がいいよ。
ボクなら二人の間に割って入って、必中効果は消したからあとは自分たちで何とかしてみな~ぐらいのことは言うけどね。
最強の紫(笑)で一網打尽にしたる!出来ませんでした、高専の庭を無茶苦茶にしましたって、そりゃ笑えんで。
教師失格や。
その肩に手を置いて真は囁いた。
彼は縛りにより、無限バリアの対象に含まれないのだ。
「ぁ、ぁぁ……ごのぅ!!!」
それに、聞いたで。
夏油君が奪われるんやないかって、後手を踏んだそうやないか?
どうせ一生独房暮らしなんや。不安なら足の一つや二つ切っとけばいいのに。
夏油君の反転術式はカスやから、欠損は直せへんやろ?
彼の術式は強いけど、精神性は救いようがないほど捻くれとる。非呪術師が世界にどれだけいるか知ってる?80億人やで?
青い地球を非呪術師の血で赤く彩りたいの?
これだから中卒、高校中退のバカはあかん。自分が世界の中心のように思っとる。
いい加減、親友なんてか細い糸に縋るのは辞めて秘匿死刑を履行するべきだと思うな。
「!!!!!!」
何も言えない。言い返せない。
縛りにより逆らえないのだ。両者の格付けは、あの日に全て済んでいる。
そして五条悟は決して認めないだろうが、禪院真は正論パンチが何よりも好きな為、感情論を抜きにすれば言ってることは大概正しかったりする。
「あの、本日はどのような件でお越し下さったのでしょうか?」
このまま五条悟がストレスで爆発するのが先か、禪院真が飽きるのが先かの究極のチキンレースである。
見かねて話に割って入ったのは補助監督の伊地知だ。
伊地知マジ有能。彼は五条悟で感覚が麻痺しているので、強者を恐れない。普通に怯えているが、やることはキチンとやる。
彼が五条の専属なのはこういう理由である。
あ、そうそう。そっちの不手際からボクが命を狙われるってことになったわけだけど、補助監督さん死んじゃったからさ。
一応、やることはやっとかないとってことで
「申し訳ない」
高すぎず、低すぎず、形式的だが一切の遊びがない謝罪を入れる。
「は、はい……受け取りました」
んじゃ。金はびた一文出さんから。そっちで払ってね。
あと補助監督はもう少し動ける子がいいな。ボクの術式はそこの最強(笑)とは違って、守るのにも向いてるけど、そこまで万能ではない。
せめてボクに助けて!って懇願して背中に隠れるぐらいの、ほんと最低限でいいから呪力を練れる人がいい。
「分かりました。呪術師を引退した者をピックアップいたします。……えっと、女性の方がいいですか?」
いや、別に。可愛い子だったら嬉しいけど、ボクは全国各地を走り回るから、体力あるやつの方が助かる。
あと昼と夜でわけてくれると助かるな。
眠そうな子が来ると、何かこっちが申し訳なくなるねん。
今は昼だから、あの子に連絡すればいい。
今は夜だから、あの子に連絡しよう。
みたいに休みもいれて、五人ぐらいの体制でさ。専属ではなくてもいいから、運転免許を持ってる人を。キャンピングカーを運転出来るとほんと助かるから出来れば中型免許を持ってると最高かな。
「かしこまりました。ではその中に私が入ることになっても大丈夫でしょうか?私ならオールで2日は入れます」
「は!!?伊地知こいつの補助監督なんかになるの!?辞めときなよ!!!絶対ろくな目に遇わないって!」
「で、ですが……元呪術師志望で、五条さんの起こした事後処理で徹夜慣れしてて、五条さんがキャンピングカーを乗りたいからと、半場強制的に中型免許を取らされたのは私ですし」
……うわー。伊地知さん。悪いこと言わないから、五条悟の専属なんて辞めな。
禪院家の専属……は駄目やね。実力のないやつを見下すダボが多すぎる。アイツらマジで適材適所って言葉を理解しとらんから、雑魚でもプライドありすぎて補助監督の代わりなんて絶対出来んのよな。
伏黒君の専属になるといいよ。うん。彼の呪力量じゃ魔虚羅は調伏出来ないと思うけど、将来有望な術師になるで。
「あ、分かります。伏黒君といると何て言うかほっこりするんですよね」
なー。あの子ほんと良い子よな。たまにオラつくけど、自分を守るための背いっぱいの虚勢に見えるって言うか、小型犬みたいな感じで、可愛らしいねん。
言葉遣いも丁寧やし、ちゃんとしとる。多分、あの子だけやで、無償で依頼を引き受けたの。
せいぜい呪霊に呪われて昏睡状態になっている程度かと思ったら、呪物が中に仕込まれてるとは思わんかったが。
まぁそのお陰でこっちは『
「おい!何か二人だけで分かりあってる空気感出すなよ!恵は僕の弟子だぞ!絶対にやらないからな!」
うっさなぁ。そんなんだから結婚出来ないねん。
君はボクと同じ天才タイプだし、六眼もあるけど、教えるのが下手!!!努力してもそれを他者に還元出来ない、教育者として一番大切なスキルが欠けとる。
初めて伏黒君に術式の手解きをした時のことなんて今でも思い出すわ。
『うわっ、分かりやすっ』
枕言葉は五条先生の何倍も、や。君ちゃんと大学通った?教える才能ないにしても学ってものが無さすぎるんやないか?
「こっちは高専の教員採用試験に受かってんだよ!!!てめぇは高卒どころか小学校にすら通ってねぇだろ!!」
残念。海外の大学で飛び級しとるわ。そこで出会ったガールフレンドは今の嫁さんの一人や。
「あぁ!もう死ね!!!!」
はいはい、殴れない。縛りにより君は一生ボクの奴隷。
満足したし、今日はこれぐらいでいいわ。
じゃあ伊地知さん、補助監督の件頼んだで~!
「ねぇ何で俺を殺さず生かしてるの?」
「ん~?だって君の術式。まだ伸び代あるやろ?呪具に加工するにしてももう少し育ててから刈り取らんと勿体ないやん」
「ならここでお仲間達を狩ってレベリングしろって訳?無駄だよ。俺の無為転変は回数を重ねるだけじゃ成長しない」
「そか。じゃあ死の縁にでも立ってみる?」
「アンタとの戦いで死にかけたけど、全く変わらなかった。多分、同じ死の縁に立つんでも、条件があるんじゃないかな?」
「なんや。まるで成功経験でもあるみたいだけど」
「虎杖悠仁」
その名前を出した瞬間。カチャカチャと真人の腹をかっさばいてメスを走らせていた禪院真の手が止まった。
「やっぱりだ。あれ、気にくわないんだろ?消したいんじゃないか?」
「……でも、虎杖悠仁は高専に守られてるからなぁ~」
「あれは存在しちゃいけない化け物だ。両面宿儺が復活したら今の世界は無茶苦茶になる。アンタが動けないって言うんなら俺が代わりにやってやるよ」
禪院真は合理的な人間だ。故に虎杖悠仁という制御出来ない核爆弾は容認出来ない。
どのみち何もしなければこのまま一生こいつのモルモットだ。ならば最後ぐらい、盛大に呪わせろと真人は吼える。
「乗った」
禪院真の手が真人の手を掴む。
「ッゥ!!?」
裏切るつもりはない。反抗したらその瞬間に縛りで自壊してしまう。
だが、呪いとしての反射で禪院真の魂を知覚しようとした時、真人は見た。
まるであらゆる色を抜き取ったかのように真っ白な人の形をした魂を。
(やっぱり、こいつは……化け物だ。『
かくして渋谷にして、呪い現る。