デジモンポリスメン   作:namco

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主人公側の簡易設定

ユーリ・・・主人公 23歳
・元不良の現警察官。性格は大門大に近い。色々と問題を起こす。

ブイモン
・ユーリのパートナーデジモン。やんちゃな性格。戦うときはアーマー進化して戦う

ミカ・・・ヒロイン 21歳
・ユーリの恋人 幼稚園の職員として働いてる。過去に虐められていたところをユーリに助けられ、そこから交際が始まる。

テイルモン
・ミカのパートナー。お姉さんみたいな性格。

ナオヤ・・・ユーリの仲間 21歳
・ユーリの仲間。犯罪被害者のカウンセリングの仕事に就いている。過去に両親から虐待を受けたことがあり、そこをユーリに助けられ、彼の仲間になる。

テントモン
・ナオヤのパートナー。本編には直接出て来ないが関西弁で喋る。

原田部長・・・ユーリの上司 46歳
・ユーリの所属する部署の部長。ユーリの事を息子のように気にかけており、ユーリが何か問題を起こすとよく怒鳴りつける。本編には出てきてはいないが、部長にもパートナーデジモンはいる。

星野署長・・・警察署署長 52歳
・ユーリの勤務先の署長。ユーリを孫のように気にかけており、ユーリのやんちゃっぷりにも寛大な心で接する。

ベアモン
・星野署長のパートナー。普段はスマホの中にいる。


本編
デジモンポリスメン


「この世界は、間違っている。」

 

「正しい事が否定され、間違ったことが受け入れられる。」

 

「正しさを悪意で塗り潰し、正義の定義を履き違えた腐った世界は・・・。」

 

―――すべて破壊し、作り直す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サイバー技術が発達した近未来。人々は、発達したテクノロジーと共に生活基盤が底上げされ、豊かな生活を送っていた。

 しかしある時、このサイバー技術が発達した世界で奇妙な生物が現実で目撃されることになった。

 それはプログラムデータで構成されていながらも生物のように行動する存在『デジタルモンスター』、略称は『デジモン』。

 彼等は、こことは違う世界、「デジタルワールド」という世界から来た存在であり、データ的存在でありながら物理的に触れることができるという特性を持ち合わせていた。

 この事に目を付けた政府は、すぐさま彼等との調査と交流を図り、自分達に対して友好的な存在なのか、危害を加える存在なのかを見極めることにした。

 調査の結果、彼等には知性が存在し、交流を深めることに成功したのだ。

 しかしその一方で、獣のような本能を持つという側面も存在し、政府は交流を深めると同時に襲い掛かってくるデジモンの対抗策を練ることになったのだ。

 そこで立ち上がったのは、最初にデジモンと対話を試みた政府の一員にして研究者である「神山ユウジ」と、デジモン側の統率者の一人である「イグドラシル」が、共同して開発したプログラムを一般人に普及することにしたのだ。

 デジモンとパートナー関係を結び、デジモンと共に戦うアプリケーションシステム『デジヴァイス』。

 この開発したプログラムによって、人間達はデジモンに対抗する手段を手に入れ、襲い掛かってくるデジモンに対して不安度は大きく下がった。

 それと同時に、このプログラムを悪用する人間が現れることを危惧した政府は、デジモンとデジモンを悪用する人間達に対抗する組織を立ち上げることにしたのだ。

 それがデジモンを使役し、デジモン犯罪に立ち向かう警察組織『Digital-Defender』、略称『DD』である。

 この組織の立ち上げにより、人間とデジモン、双方の秩序が保たれるようになり、崩れかかっていた互いに均衡を保つことに成功したのだ。

 

 

 

 そしてデジモンとの交流が始まってからしばらくの時が経ち、物語が動き出す―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 満月が地を照らし、夜でありながら昼のような明るさで周りを照らす町中で、複数の警官らしき男達が走り回っていた。

 

「くそっ、どこ行った!?」

 

「まだ近くにいるはずだ、探し出せ!」

 

 どうやら追跡対象を見失ったらしく、警官達は散り散りになって対象を探し始めた。

 その時、路地裏にある巨大なゴミ箱の蓋が開き、隙間から周囲を見渡し、誰もいなくなったのを確認するとゴミ箱から出てくる。

 

「へへっ、警察は間抜けだな。こんな簡単な隠れ方でも直ぐ逃げられる。」

 

「警察が無能なのか、俺達の隠れ方が上手いのか、どっちだろうな?相棒。」

 

 ゴミ箱から出てきたのはニット帽を被った全身黒尽くめの男と、カメレオンのような姿をしたデジモン、「カメレモン」だ。

 

 

 

カメレモン

 

アーマー体 爬虫類型 フリー

 

必殺技 タングウィップ 

 

・優しさのデジメンタルのパワーによって進化した、カメレオンのような姿をしたアーマー体の爬虫類型デジモン。ステルス能力に優れており、自身の身体のテクスチャーを張り替えて周囲の景色と同化してやり過ごして敵から逃げる能力を持っている。難攻不落なセキュリティを突破してデータベースに侵入することができる、プログラム技術が発達した現代社会においては恐ろしい能力を持つデジモンだ。

必殺技は、鞭のようにしなり、伸縮自在な強力な舌で攻撃する「タングウィップ」だ。

 

 

 

「へへ、これだけあれば、しばらくは遊んで暮らせるぜ。」

 

 ニット帽の男は黒いバッグを取り出してチャックを開けると、そこには大量の宝石が詰め込まれていた。

 

「宝石強盗とは今時古いかもしれねえが、それをやることで得られる満足感てのがあるよな。」

 

 カメレモンがそう言うとニット帽の男は頷く。

 

「お前と組めば、真面目に働かなくてもこんなに大金が手に入るんだからな。さて、アジトに帰ろうぜ。今夜は夜通し飲み明かそうぜ。」

 

「残念だがお前等は此処で終わりだ。」

 

「あ?」

 

 ニット帽の男がアジトに帰ろうとしたその時、後ろから別の男の声が聞こえてきた。

 声が聞こえた方向に顔を向けたその瞬間、ニット帽の男の顔面に拳が突き刺さり、その衝撃でニット帽の男は吹っ飛んだ。

 

「がっ・・・!?」

 

「相棒!?」

 

「フレイドラモン!!」

 

「おう!」

 

「ぎゃぁっ!?」

 

 カメレモンも同じく殴られるような感触を顔面に感じ、ニット帽の男と同じく吹っ飛ばされる。

 

「ようやく見つけたぜ、宝石泥棒!お前には強盗の容疑とデジモン犯罪の容疑がかかってる!さっさとお縄につきやがれ!!」

 

「デジモンを連れてる・・・まさか、DDか!?」

 

「フレイドラモン!いつも通りのパターンで行くぞ!カメレモンを頼むぜ!」

 

「任せろ!ユーリ!」

 

 赤い鎧を身に纏った竜人型のデジモン、「フレイドラモン」がパートナー―――「ユーリ」の言葉に返事をし、拳をカメレモンに向かって突き出した。

 

 

 

フレイドラモン

 

アーマー体 竜人型 フリー

 

必殺技 ファイアロケット ナックルファイア

 

・勇気のデジメンタルのパワーによって進化した、赤い炎の鎧を身に纏ったアーマー体の竜人型デジモン。炎の力を操り、近接格闘に優れた戦闘能力を持っている。

必殺技は、拳に炎を纏わせて敵に叩き込む「ナックルファイア」と、全身に炎を纏って敵に向かって突撃する「ファイアロケット」だ。

 

 

 

「くそっ!こんな所で捕まってたまるか!カメレモン!」

 

「タングウィップ!」

 

 カメレモンが長い舌を鞭のように振るって、フレイドラモンへ向かって攻撃するが、フレイドラモンは両腕で舌を捕まえ、逆にカメレモンを振り回して地面に叩きつける。

 

「ぎゃあっ!?」

 

「ナックルファイア!」

 

 地面に叩きつけたあと、フレイドラモンはカメレモンの舌を引っ張って引き寄せ、拳に炎を纏わせてカメレモンの土手っ腹に叩き込む。

 

「ぎゃあああ!?」

 

「カメレモン!?」

 

「よそ見してる場合か!?」

 

「ぐええっ!?」

 

 ユーリはニット帽の男に向かって拳を突き出し、顔面を殴って再び吹っ飛ばす。

 顔を殴られた事によって怯んだニット帽の男は意識を飛ばし、仰向けに倒れて無防備な姿を晒す。

 

「午後7:39分、お前を宝石強盗とデジモン犯罪の容疑で逮捕する。」

 

 気絶した男にユーリは手錠を掛け、逃げられないように追加で持参していた縄で縛り付けた。

 

「ファイアロケット!!」

 

「ぎゃあああ!!」

 

 フレイドラモンの炎を纏った突撃によってカメレモンは燃やし尽くされ、致死量のダメージを受けた事によって電子分解されてタマゴ―――デジタマに戻ってしまった。

 

「やったな。フレイドラモン。」

 

「ああ。」

 

 この後、騒ぎを聞いて駆け付けた警察にニット帽の男を引き渡し、ユーリ達は帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――某県 某所 DD本部 デジモン事件対策課

 

「ただいま戻り・・・。」

 

「バッカモーーーン!!」

 

 ユーリが仕事場に戻り、自身が所属している部署の扉を開けると怒鳴り声が響いてきた。

 

「うわっ、何ですか部長!?いきなり怒鳴らないでくださいよ!」

 

「怒鳴りたくもなるわい!!貴様、出撃する前に何をしでかしたか覚えておらんのか!!」

 

「え?出撃するとき?俺、何かマズイことしましたっけ?」

 

「マズイも何も、貴様の出撃前に、警視庁から派遣されてきた監察官を殴り飛ばしたろうが!!」

 

「ああ、あのおっさんですか。ネチネチと厭味ったらしいことを繰り返して言ってくるもんでムカついたんで殴っちゃいました。」

 

「ムカついたからって殴るな!!タダでさえ警視庁に目を付けられているというのに、さらに問題を起こすような事をするんじゃない!!そのせいでこの部署が解体されたらどうすると言うんだ!!」

 

「大丈夫ですよ。そうならない様にあのおっさんの、裏でコソコソやってた悪事を証拠付きでバラした事によって帳消しになりますよきっと。」

 

「そういう問題じゃない!!まったく貴様ときたら、その誰にでも噛みつく性格をどうにか出来んのか!!」

 

「どうにかしたくないです。でなきゃ、現場に出たとき悪党に逆に殺されますよ。」

 

「それとこれと話は別だ!感情のコントロールをしろと言ってるんだ!!ましてや、上官に歯向かえばクビにされても文句は言えないんだぞ!!」

 

「その時はその時ですよ。便利屋とか開いてフリーで動いて悪党共をぶっ飛ばしますよ。」

 

「き・さ・ま・は〜!!」

 

「またやってるの?毎日飽きないわね。」

 

 その時、部屋の入り口から穏やかな女性の声が聞こえてきた。

 

「あ、ばあちゃん。」

 

「こら、失礼だぞ!!申し訳ありません星野署長!とんだ無礼を!」

 

 その人物はこの警察署の署長である初老女性、「星野」と呼ばれる署長であった。

 

「いいのよ。若い子はこのくらい元気でなきゃね。」

 

「甘すぎですぞ署長!いくら実績を叩き出しているとはいえ、組織に属している以上、しっかりとルールを教えなければなりません!いい事をしたら褒めるのはともかく、悪い事に対して甘やかすのは一番いかんことです!善悪の基準をしっかりと教えなければ、いずれ牢屋に入れることになります!」

 

「確かに、ルールを守ることは大事よ。けどね、この子は一度だって、一般市民に対して自分から手を挙げたことはないのよ。」

 

「確かにそうですが、それだと監察官を殴り飛ばしたことに対してどう説明を・・・。」

 

「あの子が殴り飛ばした監察官については現在持ってる全ての地位と権限を剥奪して、階級を一番下に下ろすことが決定したわ。」

 

「え?」

 

「実はあの監察官、裏で賄賂を受け取って犯罪の証拠を揉み消したり、捏造したりして捜査を撹乱したりしていることが分かったのよ。それにいち早く気付いて証拠をかき集めてくれたのがユーリなのよ。」

 

「ああ、先程ユーリの口からそのような事を聞きましたが。」

 

「そのお陰で、今まで不審に思ってた捜査記録を洗い出すきっかけになったから、真犯人を捕まえる本当の意味で事件解決に貢献してくれたのよ。」

 

「ユーリ、お前・・・いつの間にそんな大事件を。」

 

「別に。あのおっさんから妙なニオイがしたから調べただけですよ。」

 

「お前のそのカンには心底驚くぞ。」

 

「それはともかく、犯罪を犯したとはいえ、監察官を殴り飛ばしたことに関してはしっかりと罰則を与えなければいけません。」

 

「あー、やっぱマズかったか。」

 

「当たり前だ馬鹿者!これを期にしっかり反省しろ!」

 

「というわけでユーリ捜査官。貴方には罰則として、明日一日かけてこの署全体のトイレ掃除と廊下掃除を命じます。」

 

「了解。その罰則、謹んで受け入れます。」

 

「よろしい。では、今日は上がってもいいわよ。」

 

「え?いいのか?報告書とかは?」

 

「自宅で書いて明日の朝には提出しなさい。」

 

「わかった。じゃあお疲れー。」

 

「こら!敬語は使わんか!」

 

 そう言ってユーリは荷物を纏めて自宅へと戻って行った。

 

「まったく、あいつと来たら・・・。」

 

「けどあの子、最初の頃よりはかなり丸くなったわよね、原田君。」

 

 「原田」と呼ばれた部長は椅子に座り、こめかみを押さえながら言い、それに返すように星野は言った。

 

「確かに、あいつを保護した頃は本当に大変でしたな・・・。」

 

 椅子から立ち上がって来客用の茶菓子を用意するためキッチンに向かいながら、ユーリと出会った当初を思い出す。

 

「今からだと、7年前でしたかな。あいつがまだ16歳だった頃の。」

 

「ええ。彼が当時通っていた学校で冤罪事件が発生して、その濡れ衣を着せられて退学させられて、親や親友、そして当時交際していた恋人からも絶縁されて、何もかもに絶望して復讐に走っていたわね。」

 

 お湯が沸き、お茶を用意してテーブルの上に茶菓子とともに並べる。

 

「その時にあいつのパートナーデジモンと出会い、そのデジモンの力を使って自身の無実の証拠と、真実の証拠を手に入れ、マスコミにバラ撒いて、自分に濡れ衣を着せた主犯と、話をまともに聞かずに退学に追いやった教師と、自分を信じてくれなかった人達に復讐を果たしたのでしたな。」

 

「その後、あの子は似たような境遇の仲間を集めて不良集団みたいなのを作ってたわね。」

 

「ええ。自身と同じ境遇の仲間を集め、我々警察では目の届かない、または手の出し辛いイジメや親からの虐待問題、様々な企業や政治家の不正を暴いて世の中を正すという目的のもとに集まっていましたからな。」

 

「懐かしいわ。それでそのチームがデジモンも使っている以上、私達に声が掛かったわね。」

 

「ええ。そして、不良集団でありながら一人一人の実力や連携する力が高く、訓練を受けた警察官ですら手古摺りましたな。」

 

「殆どの警察官が倒れていく中で、あなただけは倒れなかったものね。」

 

「長年警察官をやってると、色々見えてくるんですよ。ユーリは本当は、誰かを信じたいと。でも信じるのが怖いと。あそこで倒れてしまったら、ユーリは本当の意味で間違った道に進んでしまい、二度と戻ってこれなくなると。警察官として、子供達の未来を守る責任がある大人として、倒れるわけにはいかなかった。」

 

「激しい殴り合いの末にあの子が倒れた後、あの子と、あの子の仲間の面倒を見るって言い出して、それから、言葉による説得を重ねたんだったわね。」

 

「ええ。そして今では、凶暴さは鳴りを潜めて、その力を警察と、市民の安全と平和のために使ってくれていることに私は嬉しく思っています。ですが・・・。」

 

 一泊おいて、お茶を一口飲んだ原田は言った。

 

「デジモン対策課に所属してから、一般市民に手を挙げることはなくなったものの、それでもあの暴れようですよ!ひとたび出撃すれば、デジモンを使って犯罪を犯している人間を殴っては怪我をさせて病院送りに!市民に被害を出さなかったものの、周囲の物品の破損は激しく!酷いときには大きなビルを木っ端微塵に破壊するなどの損害が大きすぎるんです!!」

 

「あらあらやんちゃね。」

 

「笑い事じゃありませんよ所長!お陰でこのデジモン対策課がイコール問題児の集まる部署という認識が広まってしまったんですよ!」

 

「でも活動するには問題ないわよね?」

 

「確かにそうですが、そういう認識が広まってしまえば、我々警察は犯罪者達に舐められた態度を取られてしまい、犯罪が発生しやすくなってしまうのですよ!だからこそ警察官としての礼儀をしっかりと教え、威厳というものを見せなければ!」

 

「確かに、威厳は大事にね。犯罪者達の抑止力にも繋がるわ。」

 

「わかっているのでしたら何故!?」

 

「けど、あの子の行動のお陰で、大きく動いた出来事がもう一つあるわ。」

 

「え?」

 

「さっき、あの子が道を踏み外したきっかけの話をしたわよね。」

 

「ええ、そうですが。」

 

「実はあの子、デジモン事件の他にも、冤罪事件や虐めの事件、そして親からの虐待事件の解決に非常に大きく貢献しているのよ。そのお陰で、警視庁でそう言った目に見え辛い事件に目を向けることになってね。その対策内容を強化する話が上がってるの。」

 

「そうなのですか?」

 

「だから、あの子の行動は多少は大目に見てあげて?きっかけを作ってくれたあの子には感謝してるの。」

 

「署長がそこまで言うのでしたら・・・ですが、行き過ぎた行動を取ったら即座に罰則を与えます!それだけは譲れません!」

 

「ありがとう原田君。さあ、もうこんな時間だから、今日はもう上がっていいわよ。」

 

「あ、もうこんな時間ですか。では、報告書を書き上げてから。」

 

「ユーリにも言ったけど、明日の朝に提出してくれればいいわ。今日は帰ってしっかり休みなさい。」

 

「わかりました。では、お先に失礼します。」

 

「ええ。お疲れ。」

 

 そのやり取りを最後に、原田も荷物を纏めて自宅へと戻って行った。

 

「ふふふ。ホント、見てて飽きないわ。ね?ベアモン。」

 

『確かにね。』

 

 星野以外、誰もいないはずの部屋に第三者の声が響く。

 星野はポケットからスマホを取り出し、画面に映った誰かに話しかける。

 画面に映っていたのは帽子を被ったクマのようなデジモン、「ベアモン」であった。

 

 

 

ベアモン

 

成長期 獣形 ワクチン

 

必殺技 小熊正拳突き

 

・帽子を被った子熊のような姿をした獣型デジモン。ちょっと臆病なところがあるが、いざ戦いが始まると勇敢に立ち向かう根性と体力を持ち合わせており、そのパワーは成長期と言えど侮れない。

必殺技は、相手の懐に入り込み、強烈な正拳突きを食らわせる「小熊正拳突き」だ。

 

 

 

「ユーリが原田君に対してあの態度を取るのは、一種の信頼の証だと思うのよ。誰も味方がいない状況で、唯一真正面から彼等の苦しみを受け止めて、改心させたのだから。」

 

『俺も見てみたかったな〜。苦しみを抱える男と、苦しみを受け止める男のぶつかり合い。映画にしたら絶対涙が止まらなくなるやつだよ。』

 

「確かに。不謹慎だけど、あたしも見てみたかったわ。」

 

『そう言えば、ユーリの仲間だけど、そいつ等は今何してんだ?』

 

「かなりの数がいたから覚えるのが大変だったけど、集まった子達は元々根が優しい子達だったから、一般教育を改めて受けさせたあと、それぞれの得意分野や長所を活かした仕事に就いているわね。」

 

『確か何人かはウチに協力者として動いていたりしてるんだっけ?』

 

「正確には、不良時代のチームリーダーであるユーリにね。あの子、チーム内の面倒を見ていたからか慕う子が多かったわ。」

 

『カリスマがすげえな。』

 

「彼のチームの対処に当たった警察の殆どを返り討ちにしたあの実力と統率力を見込んで、あたしも含めて原田君と一緒に後見人なるって決めたのよね。」

 

『んで、アンタの見込み通りDDの一員になって、デジモン犯罪を次から次へと取り締まっていったんだよな。』

 

「それだけじゃなく、子供の泣いている姿や悩みを抱えている学生達を見ると、その原因を取り除くべくあちこちに走り回るのよね。」

 

『そのお陰で、あいつが担当する地区は笑顔で溢れているんだよな。』

 

「誰よりも心が苦しい時代を生きたからこそ、自分と同じ境遇の人達を救いたい。そんな思いに溢れているあの子こそが、あたし達にはない、真の警察官なのかもね。」

 

『まあ、やり過ぎて潰した学校とか企業とか、建物とかも計り知れないけどな。』

 

「それは言わないお約束よ。」

 

 そんな会話をしばらく続けたあと、2人も自宅へと帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ユーリ自宅

 

 

 

「ただいまっと。」

 

「お帰りなさい。」

 

「お、ミカ。起きてたのか。」

 

 自宅の扉を空けると、出迎えてくれたのは同居人の「ミカ」だ。

 彼女は、ユーリが立ち上げた不良チームの最初期のメンバーであり、現在はユーリの恋人でもある。

 

「うん。お腹空いてるだろうと思ってご飯作って待ってた。」

 

「お、ありがとうな。すっげー腹減ってたんだ。」

 

「なら早く食べよ。今温めるから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それでな、部長に怒鳴られちまったんだ。」

 

「それはさすがにユーリが悪い。」

 

 テーブルの上に広げられた料理を食べながら今日起こった出来事を話すユーリ。

 

「でも、俺とユーリの活躍のお陰でそいつの不正を暴くことができたんだろ?」

 

 そう言ってきたのは、一緒に食事をしている青い竜のようなデジモン「ブイモン」だ。

 

 

 

ブイモン

 

成長期 小竜型 フリー

 

必殺技 ブイモンヘッド ブンブンパンチ

 

・青い体の小さなドラゴンの姿をした成長期の小竜型デジモン。やんちゃな性格でいたずら好きだが、正義感の強い一面を持っている。デジメンタルと呼ばれるアイテムを使って、様々なアーマー体に進化することが出来る。

必殺技は、強力な頭突きをお見舞いする「ブイモンヘッド」と、両腕をグルグル回してパンチを繰り出す「ブンブンパンチ」だ。

 

 

 

「まあな。けど、殴ったのは流石にダメだって言われてな。明日一日、警察署のトイレ掃除と床掃除を言い渡されたよ。」

 

「署長、よくそれだけで済ませたよね。」

 

「ユーリは良くも悪くも自分のやった事を受け止めるからな。それで強く言っても意味はないって分かっててそのくらいの罰で済ませたんだろう。」

 

 3人とはさらに違う声がこの部屋に響く。その声の主は白い猫のようなデジモン「テイルモン」だ。

 

 

 

テイルモン

 

成熟期 聖獣型 ワクチン

 

必殺技 ネコパンチ キャッツ・アイ

 

・白い猫のような姿をした成熟期の聖獣型デジモン。体は小さいが見た目にそぐわないパワーを秘めており、油断すると返り討ちにあってしまう。神聖系なデジモンであり、ホーリーリングを身に付けている。好奇心旺盛でいたずら好きな性格である。

必殺技は、鋭い爪の付いたグローブで敵を攻撃する「ネコパンチ」と、鋭い眼光で敵を操り、混乱させて自身を攻撃させる「キャッツ・アイ」。

 

 

 

「そりゃぁな。何はともあれ、やったことに対してはキッチリと落とし前は付けなきゃいけないからな。」

 

「そう言う潔さ、ホント好き。」

 

「・・・不意打ちで好きって言うな。照れるぞ。」

 

「あ、ユーリ顔赤くなってるー。」

 

「からかうんじゃねえブイモン。」

 

 温かい風景を繰り出しながらも食事を終え、他にも何があったか、これから何をやろうかと雑談を広げながらも全員が眠りに付き、明日の仕事に備えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれ・・・元は社会のゴミクズ風情の若造が・・・!ワシのメンツを潰した挙句にエリート街道をぶち壊すとは・・・!」

 

 暗い路地裏で、一人の中年の男が恨みのこもった言葉を吐き出す。

 

「だいたいあの署長も署長だ!なぜあんなゴミクズを気にかけるというのだ!」

 

 その男の正体は、ユーリに殴られた挙句に提出された証拠によって平に降格された元監察官だった。

 

「今に見てろあの若造め・・・社会の厳しさというものを思い知らせてやる・・・!」

 

「何か困ってるようだな。」

 

 恨み言を吐いていた元監察官の前に一人の謎の人物が現れる。黒いコートに、フードを深く被っていて顔がよく見えない。一つ分かるのは、声からして男のようだ。

 

「む?誰だ貴様は?」

 

「俺の事は、そうだな・・・ジョーカーとでも呼んでくれ。

 

「ふん!ふざけるのも大概にしろ。ワシは貴様と違って名誉あるエリート警官なのだぞ!」

 

「元、エリートだよな。」

 

「なんだと!?」

 

「そう怒るな。アンタにいい取引を持ってきたんだよ。」

 

「取引だと?」

 

「ああ。コレをアンタに渡したくてね。」

 

 黒コートの男、「ジョーカー」が取り出したのは、黒いUSBメモリであった。

 

「こ、コレは・・・?」

 

「それをアンタのスマホに接続してデジヴァイスと連動すれば、素晴らしい力が手に入る。」

 

「力だと?」

 

「そう。それを使えばアンタは、落とされたエリート街道をもう一度歩き出すことができる。」

 

「・・・バカバカしい!そんなもの、信じられるものか!」

 

「信じる信じないは自由だ。だが、このまま負け犬としての人生を歩みたいなら、止めないよ。」

 

「負け犬、だと?」

 

「そう、せっかくのエリート街道に戻れるチャンスを捨てるのならば、アンタはこれからずっと、負け犬の汚名を背負い続けることになる。それでもいいのなら、この話はなかったことに。」

 

 そう言ってジョーカーは踵を返して路地裏の奥へと姿を消そうと歩き出す。

 が。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 その時、元監察官が呼び止める。

 

「本当に、俺は戻れるんだな?」

 

「ああそうだ。」

 

「なら、そいつを寄越せ。幾らだ!!」

 

「代金はいらないよ。これは元からアンタにやるつもりだったからな。」

 

「ふん、タダでとは気前がいいじゃないか。いいだろう、寄越せ!」

 

「なら交渉成立で。」

 

 そう言ってジョーカーはUSBメモリを渡し、今度こそ路地裏へと姿を消した。

 

「クククク・・・ハハハハハハ!今に見ていろ!社会のクズ共!!真のエリートに相応しいのは、このワシだーーー!!!」

 

「・・・フッ。」

 

 この時、ジョーカーが口元に笑みを浮かべたのを誰も見なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――翌日 DD本部

 

「えーっと、次は何処だ?」

 

「次は二階の東だぜユーリ。」

 

 掃除用具を持って、次の掃除箇所を探すユーリとブイモン。

 昨日、署長に言い渡された罰則を遂行するため、署内全体のトイレ掃除と床掃除を行っていた。

 

「つーかブイモン。コレは俺に言い渡された罰なんだぜ?お前まで手伝う必要なんてないぞ?」

 

「何言ってんだ。俺達は一蓮托生。何をやるにしても共に分かち合おうって、最初に出会った時にそう誓っただろ?だから、お前の苦労も、一緒に背負わせてくれよ。」

 

「・・・フッ、ありがとな。ブイモン。」

 

 そう言って次の掃除箇所に向かおうとしたその時。

 

 

 

―――ビー!!ビー!!ビー!!

 

 

 

「何だ!?」

 

 突如として警報が鳴り響き、署内は混乱状態に陥る。

 

『緊急警報発令!全職員は、直ちに作戦会議室へ集合せよ!繰り返す!全職員は、直ちに作戦会議室へ集合せよ!』

 

 館内放送の指示に従って署内の警官達は一斉に作戦会議室へと向かう。

 

「どうやらただ事じゃなさそうだな。行こうぜブイモン!」

 

「おう!」

 

 そう言って二人は掃除用具を道脇に置いて作戦会議室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――作戦会議室

 

「全員集まりましたね。これより、緊急作戦会議を始めます。」

 

 星野署長がそう言うと、プロジェクターを操作してスクリーンに映像を映し出す。

 

「今から30分前に、横浜の港にて巨大デジモンが出現しました。名は「キメラモン」。強力な戦闘能力を持ったデジモンです。」

 

 

 

キメラモン

 

完全体 合成型 データ

 

必殺技 ヒート・バイパー

 

・様々なデジモンの体のパーツを組み合わせて作られた合成型デジモン。恐るべき破壊力と闘争本能を持ち合わせ、その強さは完全体でありながら究極体に匹敵するほどである。

必殺技は、4本の腕から放たれる死の熱線「ヒート・バイパー」。この熱線を受けたものは、見るも無残にバラバラに四散してしまう恐ろしい技である。

 

 

 

 映し出された映像は、見るにも痛々しい、それでいておぞましい姿をしたデジモンであった。

 様々なデジモンの体のパーツを継ぎ接ぎに繋ぎ合わせられ、恐ろしい怪物へと変貌したデジモンであったからだ。

 

「キメラモンは、通常の方法では進化せず、人工的に作り出さないと生まれない特殊なデジモンです。そのデジモンがなぜ生まれたのかは今は置いて、現在の状況を映し出します。」

 

 星野署長は再びプロジェクターを操作し、キメラモンの現在の状況を映し出す。

 

「横浜の港に出現したキメラモンは、出現すると同時に暴れ始め、港の倉庫や繁華街を破壊しながらDD本部へと向かって進行中です。」

 

 映像の中では、キメラモンが4本の腕から熱線を発射し、街を破壊しながらもDD本部のある方向へと進んでいた。

 

「周辺の地域にいたデジモンを所持している警官も応戦しましたが、キメラモンの戦闘能力に敵わず全滅してしまいました。よって、警視庁からキメラモンを討伐するために、DDに出動要請が発令され、部隊を編成し、キメラモン討伐作戦を開始します。」

 

「ばあちゃ、じゃなくて署長!俺を先に行かせることは出来ませんか!俺とブイモンなら、奴の足止めをすることが出来ると思います!」

 

「もちろん、それは考えています。あなたには先に現場に行き、部隊の編成が完了及び到着するまでの時間稼ぎをしてもらいます。」

 

「よっしゃ、任せろ!」

 

「では皆さん、各自行動を開始してください!」

 

『はい!!』

 

 各職員が会議室から出ると、原田部長がユーリに声をかける。

 

「ユーリ。」

 

「部長?」

 

「今回の作戦は今までと違って、かなり危険な作戦となる。ワシらも必ず後から追い付くから、それまで死ぬんじゃないぞ。」

 

「言われるまでもねえですよ。オレとブイモンのコンビなら、どんな相手だって軽く一捻りですよ。」

 

「そうか。本当に気をつけるんだぞ。ワシにはまだお前に対して言いたい事が山程あるんだからな。」

 

「心配しすぎですよ。それじゃ行ってきます!!」

 

「頼んだぞ。」

 

 そうしてユーリは、会議室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、行くぜブイモン!」

 

「いつでも行けるぜユーリ!」

 

 ユーリはスマホを操作してデジヴァイスを起動させると、アプリの中に保存してある、あるデータを起動する。そして画面に表示された映像をブイモンに重ねて起動する。

 

「デジメンタルアーップ!!」

 

 スマホをブイモンに向けて、スマホから放たれる光をブイモンに浴びせる。

 

「ブイモン、アーマー進化ー!!」

 

 ブイモンに光が浴びせられると、ブイモンの姿に変化ご起こる。

 ブイモンの体にスパークが走り、二本の足で立っていた体は、両手を地につけたことによって四足歩行となり、体が獣に近い姿へと変化する。

 そして、黒い鎧が形成され、頭部には稲妻を模したブレード状の角が、背中には三本の稲妻状の突起が形成される。

 

「轟く友情、「ライドラモン」!」

 

 

 

ライドラモン

 

アーマー体 獣型 フリー

 

必殺技 ライトニングブレード ブルーサンダー

 

・友情のデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体の獣型デジモン。稲妻のようなスピードと、電撃を利用した攻撃で敵を倒す。

必殺技は、頭部のブレード状の角から電撃の刃を放つ「ライトニングブレード」と、背中の三本の突起から強烈な電撃を放つ「ブルーサンダー」だ。

 

 

 

 ユーリはライドラモンの背中に乗り、ライドラモンもユーリが乗ったのを確認すると駆け出した。

 

「急ぐぞ!ヤツがここに来たら一巻の終わりだ!」

 

「わかってる!フルスピードで飛ばすから、しっかり捕まってろよ!!」

 

 そう言うとライドラモンはさらにスピードを上げ、キメラモンに向かって全速力で駆け抜けた。

 

「見えた!キメラモンだ!!」

 

 ライドラモンが走り出してしばらくすると、キメラモンが熱線を放ちながら歩いてきているのが目に入った。

 

「近くで見るとでけーな。」

 

「救助隊の人達がいるのも見えた。キメラモンのせいで迂闊に近付けないらしい。」

 

「なら、俺達が奴の目を引き付けようぜ。そうすれば救助に専念できるだろう。」

 

「わかった。まずは救助隊の人達に話を付けに行こう。」

 

 ユーリとライドラモンは行き先を変更し、救助隊の隊長らしき人物へと声を掛ける。

 

「くそ!奴の放つ熱線のせいで近付けん!」

 

「失礼するぜ!」

 

「君は?」

 

 ユーリは警察手帳を見せながら名乗った。

 

「俺はDD所属のユーリ捜査官だ。アンタ達は救助隊か?」

 

「ああ、そうだが。」

 

「俺が奴の目を引き付ける。その間に逃げ遅れた人達の救助を頼む。」

 

「君達だけでか!?危険すぎる!」

 

「今はそれしか方法がねえ。応援も後から来る。それまでの辛抱だ。ここで死ぬつもりはない。」

 

「しかし!」

 

「頼む。あんた達が早く避難を終わらせられれば、全力で戦うことができる。だから、力を貸してくれ!」

 

 そう言ってユーリは救助隊の隊長に頭を下げる。

 その姿を見た隊長は少し考え、決断を下した。

 

「・・・わかった。けれど約束してくれ。絶対に死なないと!」

 

「ああ!」

 

「全員聞いたな!あの警官が囮になっている間、逃げ遅れた人達の救助をするぞ!一分一秒を争う!今すぐ準備しろ!!」

 

『はい!!』

 

「よし、行くぞライドラモン!」

 

「ああ!」

 

 救助隊達と話を付けたあと、ユーリとライドラモンは再び走り出し、キメラモンの元へと向かっていた。

 

「ギャオオオオ!!」

 

「よし!一発かましてやれ!!」

 

「ブルーサンダー!!」

 

 ライドラモンが背中の突起から電撃を放つと、キメラモンの目元に命中する。

 攻撃を当てられたキメラモンは、自分に攻撃を当てた元凶であるユーリとライドラモンを睨みつける。

 

「ギャオオオオオ!!!」

 

「よし!コッチに気を引けた!このまま海の方に誘導するぞ!!」

 

「わかった!!」

 

 ユーリとライドラモンは、視線をこちらに向けてくるキメラモンを誘導するために鬼ごっこを始めるのであった。

 

「こっちだデカブツ!!」

 

「グオオオオオ!!」

 

 ユーリの挑発にキメラモンは怒りを抱き、腕から熱線を放ちながらユーリ達を追いかけ回す。

 

「当たってねーぞ!もっとちゃんと狙えよデカブツ!!」

 

「グオオオオオオ!!!」

 

 このままでは当たらないと学習したのか、キメラモンは熱線を出すのは止めて、今度は口から火炎放射を放つ。

 

「あっつ!火まで吹くのかよ!?」

 

 背中に迫ってくる炎の熱を感じながらユーリは言う。

 

「もう少しで海だ!そこで増援が来るまで持ちこたえよう!!」

 

「ああ。あとちょっと頑張ってくれ、ライドラモン!」

 

 そうして走り続けて行くと、広い場所に飛び出した。

 

「広い場所に出れた!!」

 

「ここなら周りを気にせずに戦える!!」

 

「よし!思いっきり暴れてやるぞ!ライドラモン!」

 

「ああ!」

 

「グオオオオオオ!!!」

 

 キメラモンは、ライドラモンが戦闘態勢に入ったのを確認すると、全力で潰してやると言わんばかりに全身に力を込めた。

 

「ブルーサンダー!!」

 

 ライドラモンが電撃を放つと、キメラモンは二本の腕でそれを防ぎ、残りの二本の腕から熱線を放つ。

 

「くっ!」

 

 迫ってくる熱戦を回避し、辺りを走り回りながら狙いを付けられないようにする。

 

「流石は完全体だな。器用な戦い方するぜ。」

 

 ユーリはそう呟き、ライドラモンと共にキメラモンと向き合う。

 

「このままむやみに攻撃しても、何のダメージも与えられないな。何かいい方法は・・・ん?」

 

 この時、ユーリの通信機に連絡が入り、ユーリはそれに応答する。

 

「はい、こちらユーリ。」

 

『ユーリ、聞こえる?部隊の編成が終わったわ。今からそちらに向かわせるから、もう少し耐えてちょうだい!』

 

「具体的にはどのくらい?」

 

『大体5分って所ね。出来る?』

 

「出来る!」

 

『お願い!』

 

「聞いたなライドラモン!あと5分は耐えるぞ!」

 

「ああ!」

 

「ギャオオオオオ!!」

 

 キメラモンが再びライドラモン目掛けて熱線を放つ。

 着弾と同時に爆発を起こすが、煙の中からライドラモンが飛び出してきた為、腕で防ごうとするが、スピード戦が得意なライドラモンの前では遅すぎる。

 

「ライトニングブレード!!」

 

 頭部の角に電撃を集中させ、キメラモンの腹に突き刺して内側に向けて放電する。

 

「ギャオオオオ!?」

 

 内側から焼かれる痛みに耐えられず、キメラモンは地に伏せ、荒い呼吸をする。

 

「よし、効いてるぜ!」

 

「このまま追撃して弱らせる!」

 

 地に伏せているキメラモンに向かって、ライドラモンは追撃するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 港の戦闘がハッキリと見えるビルの屋上にて、ジョーカーがその様子を見ていた。

 

「流石は、ユーリと言ったところか。強力なデジモン相手に一歩も引かないとは。」

 

 双眼鏡でその様子をより詳しく観察していると、男は懐からスイッチらしき何かを取り出した。

 

「君には悪いけど、実験台になってもらうよ。」

 

 そして、そのスイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブルーサンダー!!」

 

「ギャアアア!!」

 

 激しい戦闘の末に、キメラモンは荒い息を吐きながらも立ち上がり、咆哮を上げる。

 

「クソ!なんてタフネスだ!」

 

『ユーリ、聞こえる!?増援部隊が今到着したわ!』

 

「ホントか!助かる!」

 

 聞こえてきた朗報に、ユーリは後ろを見ると、増援部隊がこちらに向かってきているのが確認される。

 

「待たせたな!今から俺達でアイツの動きを止める!!その間にトドメを刺してくれ!!」

 

 神話に登場するペガサスのような姿をした黄色のデジモン「ペガスモン」に乗った増援部隊の隊長らしき人物が、スフィンクスのような姿をした白いデジモン「ネフェルティモン」と、ジェット機のような姿をした紫の複数のデジモン「プテラノモン」を引き連れながら、空を駆けながらユーリ達に言った。

 

 

 

ペガスモン

 

アーマー体 聖獣型 フリー

 

必殺技 ロデオギャロップ シルバーブレイズ シューティングスター サンクチュアリバインド

 

・希望のデジメンタルのパワーによって進化した、神話の獣ペガサスのような姿をしたアーマー体の聖獣型デジモン。邪悪な存在に対して絶対的な強さを発揮することが出来る。

必殺技は、後ろ足で強烈な一撃を繰り出す「ロデオギャロップ」と、額から聖なる光線を放つ「シルバーブレイズ」と、両翼の内側に宇宙空間を作り出し、流れ星を撃ち出す「シューティングスター」だ。

さらに、ネフェルティモンと連携することで相手を拘束する「サンクチュアリバインド」も使える。

 

 

 

ネフェルティモン

 

アーマー体 聖獣型 フリー

 

必殺技 カースオブクィーン ロゼッタストーン サンクチュアリバインド

 

・光のデジメンタルのパワーによって進化した、スフィンクスのような姿をしたアーマー体の聖獣型デジモン。光のデジメンタルのパワーを身に付けたものは、強力な光の力で闇の力を浄化する能力を持てるようになる。

必殺技は、額の飾りから高熱の赤い光線を放つ「カースオブクィーン」と、デジ文字が刻まれた古代碑文を召喚して敵を攻撃する「ロゼッタストーン」だ。

さらに、ペガスモンと連携することで相手を拘束する「サンクチュアリバインド」も使える。

 

 

 

プテラノモン

 

アーマー体 翼竜型 フリー

 

必殺技 ビークピアス

 

・愛情のデジメンタルのパワーによって進化した、ジェット機のような姿をしたアーマー体の翼竜型デジモン。空を飛べるデジモンの中で最も高い高度で飛行することができ、姿を見せずに敵をピンポイント爆撃することができる。

必殺技は、上空から垂直落下し、その鋭い鼻先で敵を射抜く「ビークピアス」だ。

 

 

 

「ペガスモン!ネフェルティモン!まずはヤツの動きを封じるんだ!」

 

「わかった!」

 

「行くわよペガスモン!」

 

「「サンクチュアリバインド!!」」

 

 ペガスモンとネフェルティモンがキメラモンの周囲を旋回すると、光のリングが出現し、それが一気に縮んでキメラモンを拘束する。

 

「グオオッ!?」

 

 体を拘束され、身動きが取れなくなったことに驚いたキメラモンはバランスを崩し、地面に倒れる。

 

「今だ!プテラ部隊!ミサイル発射!!」

 

『ミサイル発射!!』

 

 隊長の合図で、プテラノモンの部隊は一斉に両翼に搭載されているミサイルを発射する。

 

「グオオオ!!」

 

 拘束された上に、無防備な状態で大量のミサイル攻撃を受けたことによって、もはや虫の息となっているキメラモン。

 その様子を見た隊長がユーリに言う。

 

「今だ!トドメを!!」

 

「ライドラモン!最大火力でぶっ放せ!!」

 

「ライトニングブレ・・・!!」

 

 ライドラモンが頭部のブレードに電撃を纏わせ、キメラモンに突き刺そうとしたその時。

 

 

―――ビシャーーーン!!!

 

 

 突如として上空から赤黒い稲妻がキメラモンに降り注いだ。

 

「何だ!?」

 

 その時キメラモンに異常が起きた。

 今までの戦闘で負傷した傷が回復し、自身を拘束していた光の帯を力尽くで破壊したのだ。

 

「■■■■■ーーーーー!!」

 

 拘束から抜け出したキメラモンは、上空に向かって大きく咆哮を上げる。

 それだけでなく、キメラモンにさらなる異常が起きた。

 全身が黒く染まり、赤いひび割れのような模様が浮かび上がる。目は赤く染まり、より凶悪な目付きとなってユーリとライドラモンを見下ろす。

 

「何だ、コイツは・・・!」

 

『・・・フハハハハ!ようやくコントロール出来るようになったか!』

 

「っ!喋った!?」

 

『先日ぶりだな若造!ワシを覚えているか?』

 

「その声、聞き覚えが・・・あ、思い出した!厭味ったらしい監察官のおっさん!!」

 

『一言余計だ!!』

 

「どういう事だ!?何でキメラモンからおっさんの声がするんだ!?」

 

『そうさなあ。一言で言えば、ワシは力を手に入れたのだ。貴様に復讐するためにな!』

 

「復讐だぁ?」

 

『そうだ。貴様のせいで、ワシの約束されていたエリート警官としての道を閉ざされ、平に降格され、惨めで負け犬な底辺な歩まされることになったのだ!!』

 

「んだよそれ。元はといえば、アンタが監察官の立場を利用して捜査を撹乱したり、証拠を捏造したりしたのが悪いんじゃねえか。」

 

『黙れ!貴様のような社会のゴミクズが、何故エリート街道に乗ることが出来たのだ!?ワシは警官として、社会のクズどもを排除しようと動いていたと言うのに、なぜワシが処罰を受けねばならん!?こんなのは間違っておる!だからワシは復讐を誓った!ワシをこんな目に会わせた貴様を排除し、もう一度エリート街道に戻り、そして警察のトップとなって社会のクズ共を裁くのだ!!』

 

「なんつー無茶苦茶な理屈・・・聞いて呆れるぜ。」

 

『何とでも言え!!貴様を始末したあと、その後はあの署長と貴様の部長だ!!社会のクズを庇うのならばそいつもクズ!!ワシが真の正義の鉄槌を下すのだ!!』

 

「おい。今のは聞き捨てならねえな。」

 

 ユーリは一歩前に出て、怒りを浮かべながら監査官に言い放つ。

 

「アンタが俺をどう言おうが構わねえよ。確かに、俺は一度は不良に身を落としたさ。仲間を集めて、悪さも散々やらかしたさ。けどな、それでも、部長やばあちゃんは、俺と、仲間達の苦しみを真正面から受け止めてくれたんだ!濡れ衣着せられて、迫害を受けて、誰も信じることが出来なくなった俺達を、もう一度人を信じてみようっていう気にさせてくれた!!そんな俺達の恩人を、お前の私怨で傷付けようってんなら、俺が絶対に許さねえ!!」

 

『フン!若造が、青いのう。そんな情熱は、時間と権力と共に消え去るものだ。何なら今ここで、貴様のその青臭い情熱を消し去ってくれるわーーーー!!!』

 

「いいえ、消え去るのは貴方よ。」

 

 突如として、上空から白い光が降り注ぎ、キメラモンの体を焼く。

 

『グアアア!?な、何じゃ!?』

 

 その場にいる全員が上空を見上げると、そこには薄桃色の体毛の龍が空を泳ぐように浮かんでおり、その龍の背には一人の女性が跨っていた。

 

「ホーリードラモン!てことは、ミカか!!」

 

「やっほー。助太刀に来たよユーリ。」

 

 

 

ホーリードラモン

 

究極体 聖竜型 ワクチン

 

必殺技 ホーリーフレイム アポカリプス

 

・神獣デジモンの究極の形態であり、四大竜デジモンに数えられている聖竜型デジモン。その雄々しい姿は空の王者を思わせる。その姿を見た者は少なく、普段はどこにいるのかさえ全く判明していない。しかし、ひとたびデジタルワールドに巨大な悪のエネルギーが発生するとどこからともなく現れ、その巨大な力で悪を無に帰すと言われている。

必殺技は、光の炎を相手に向けて口から放つ「ホーリーフレイム」と、いくつもの魔法陣を展開し、聖なる光を相手に向けて放つ「アポカリプス」だ。

 

 

 

「お前、なんでここに?幼稚園の仕事はどうしたんだよ?」

 

「園長先生が「ココは大丈夫だから、彼を助けに行きなさい」って、後押ししてくれた。それに、コイツを放っておいたら幼稚園にいる子供達にも被害が広がりそうだから、アタシも加勢しに来た。」

 

「そうか。助かるぜ。お前がいれば百人力だぜ!」

 

 ユーリがそう言うと、ミカは意味深な笑みを浮かべる。

 

「誰がアタシだけって言った?」

 

「へ?」

 

「ボクもいるよ。」

 

「ギガブラスター!!」

 

『グアアアア!?』

 

 またもや別の方向からキメラモンに向かって攻撃が降り注いだ。

 今度は強力な電撃のようだ。

 

「やあ。」

 

「ナオヤ!それに、ヘラクルカブテリモンも!」

 

 この場にもう一人の人物とデジモンが現れる。

 ユーリより体格が小さいメガネをかけた男と、コーカサスオオカブトのような、三本の角と六本の両手足を持った黄金に輝く巨大な昆虫型のデジモン「ヘラクルカブテリモン」だ。

 

 

 

ヘラクルカブテリモン

 

究極体 昆虫型 ワクチン

 

必殺技 ギガブラスター

 

・コーカサスオオカブトのような姿をした、黄金に輝く体を持つ究極体の昆虫型デジモン。昆虫型デジモンにおける究極の姿の一つであり、驚くべき飛行能力を用いて超音速で空をを駆け巡る。

必殺技は、超強力な電撃を相手に放つ「ギガブラスター」だ。

 

 

 

「お前等も来てくれたのか!」

 

「ボクだけじゃない。アイツ等も来た。」

 

「「「アニキーーー!!助けに来やしたーーーー!!」」」

 

 ナオヤが指をさすと、その方向から不良時代の仲間達が駆けつけてきた。

 それぞれの後ろには、ヤドカリのような姿をしたデジモン「シェルモン」と、雪だるまのような姿をしたデジモン「ユキダルモン」と、背中に火山を背負った大男のようなデジモン「ボルケーモン」がいた。

 

 

 

シェルモン

 

成熟期 軟体型 データ

 

必殺技 ハイドロプレッシャー

 

・ヤドカリのような姿をした軟体型デジモン。穏やかそうに見えて意外と好戦的な性格なため、出会ったら注意が必要だ。

必殺技は、口から高圧力の水を吐き出す「ハイドロプレッシャー」だ。

 

 

 

ユキダルモン

 

成熟期 氷雪型 ワクチン

 

必殺技 絶対零度パンチ

 

・雪だるまのような姿をした氷雪型デジモン。その性格は温厚で心優しいデジモンであり、自ら戦うことを好まないデジモンだ。身体が氷でできているため、熱いところは苦手である。

必殺技は、その拳に冷気を集めて相手を氷漬けにするパンチを放つ「絶対零度パンチ」だ。

 

 

 

ボルケーモン

 

完全体 サイボーグ型 データ

 

必殺技 ビッグバン・ボイス ビッグバン・タックル

 

・大きな体を持ち、巨大なパワーが自慢のサイボーグ型デジモン。怒りやテンションのボルテージが頂点に達すると、背中の火山が爆発し、とてつもないパワーを発揮するのだ。

必殺技は、とてつもない大声を相手に聞かせ、放心状態にさせる「ビッグバン・ボイス」と、背中の噴火の勢いを利用して強烈なタックルを食らわせる「ビッグバン・タックル」だ。

 

 

 

「お前等どうして・・・?」

 

「ユーリが大変だって言うから、緊急で招集をかけたんだ。集まることが出来たメンバーはこれだけだったけど。」

 

 ユーリの疑問にナオヤが答える。

 

「オレはこの騒ぎで仕事先が臨時で休みになって、その時ナオヤさんから招集がかかったんでココに来ました。」

 

 ボルケーモンのテイマーがここに来た理由を言った。

 

「俺は丁度仕事が休みだったんで、その時ナオヤさんから招集がかかったんで来ました。」

 

「おれも同じで、ナオヤさんからの招集でココに来たッス。」

 

 ユキダルモンのテイマー、シェルモンのテイマーも順に答えた。

 

「どう?過剰戦力気味だけど、この三人と僕らなら行けると思うけど。」

 

「・・・へっ!ありがてえ!これなら百人力どころか

千人力だぜ!」

 

「アニキ、指示を出して下さい!」

 

「わかった。まずお前ら三人には、逃げ遅れた人達の救助を手伝ってほしい。救助隊がキメラモンの攻撃のせいで、手間取ってるんだ。救助が終わったら、ナオヤか俺に連絡してくれ。」

 

「「「了解です/ッス!アニキ!!」」」

 

「よし行け!」

 

 ユーリの指示に従い、三人は逃げ遅れた人々の救助に向かっていった。

 

『ぐぬぬぬ・・・おのれ、ワシをここまでコケにしてくれおって・・・!』

 

「あ、起きた。」

 

 三人に指示を出し終えた丁度その頃、ダメージが回復したキメラモンが立ち上がって、ユーリ達に向けて恨みのこもった言葉を吐く。

 

『次から次へとゴミ共が集まりおって・・・まあいい。纏めて片付ければ問題ない。』

 

「ゴミゴミって言うけどさ、アンタ、自分の今していること顧(かえり)みたことないの?」

 

 ミカがキメラモンに向かって言う。

 

『ん?』

 

「警察でありながら悪いことして、悪いことバレたら八つ当たりして街をこんなふうにして、やってることかアンタが嫌ってるゴミクズと同じだって言うことに何で気付かない?」

 

『何だと?』

 

「アンタは正義の為にやってるのかもしれないけど、証拠を捏造したり、捜査を撹乱してる時点で、アンタのやってる事は立派な犯罪なんだよ!正義と悪の意味を履き違えたアンタが、誰かをバカにしたり、貶(けな)す資格なんてない!」

 

『小娘風情が・・・そんなにワシを怒らせたいか!!』

 

「図星突かれたら今度はアタシに八つ当たりするの?この際だからはっきり言ってやるわ。」

 

 ミカは大きく息を吸って、キメラモンに向かって言い放った。

 

「アンタは!!正義の味方である警察じゃない!!!立派な犯罪者だ!!!!」

 

『おのれーーー!!!!』

 

 ミカが言い放った言葉によって、キメラモンもとい元監察官の男は四本の腕に力を込め、八つ裂きにすべくエネルギーを溜め込む。

 

『そんなに死にたければ、望み通りにしてやる!!死ねーーーーー!!!』

 

 四本の腕から放たれた死の熱線は、ミカ目掛けて放たれる。デジモンですら重傷を負いかねないその熱線を、人間であるミカが受けたら間違いなく死亡してしまう。熱線がミカに直撃しようとしたその時。

 

「ホーリーフレイム!!」

 

「ギガブラスター!!」

 

「ブルーサンダー!!」

 

 ミカの背後から放たれたデジモン達の技が熱線の衝突し、爆発を起こして相殺された。

 

『何!?』

 

「・・・おい、おっさん。とうとう超えちゃいけねえ一線を超えちまったな。」

 

 ミカの近くにいたユーリが、キメラモンに向かって言う。

 

「普段から自分の感情に従って動いている俺だが、超えちゃならない一線ていうのは弁えてるつもりだ。けどな、アンタはどうだ?」

 

 その目に静かな、それでいて燃えるような怒りを宿しながら続ける。

 

「自分の思い通りにならねえからって、八つ当たりで街を破壊して、終いには人を殺そうとしやがって・・・!」

 

 そして、力の限りを込めて言い放つ。

 

「ミカの言う通り、今のアンタは正義の味方どころか、人間ですらねえ!身も心も、悪魔に売り渡した化け物その者だ!!ミカを殺そうとしたその落とし前、絶対ぇつけさせてやる!!!ライドラモン!一度退化だ!!」

 

「アレ、やるんだな!!」

 

「あのおっさんに分からせてやろうぜ・・・誰に喧嘩を売ったのかをな!!」

 

 ユーリはデジヴァイスを操作し、ライドラモンを一度ブイモンへと退化させる。そしてスマホの画面を操作して、ブイモンに一つの映像を重ねてを選択する。

 

「デジメンタルアーップ!!」

 

「ブイモン!!アーマー進化ーー!!」

 

 ユーリのスマホから放たれた光を浴びると、ブイモンの体は黄金に輝き、体の各所が大きく変化していく。

 体は成人男性のような体格に成長していき、体の各部位に黄金の鎧が取り付けられ、最後に黄金の仮面が装着される。

 奇跡を体現する黄金の聖騎士がここに顕現する。

 その名は。

 

「奇跡の輝き!マグナモン!!」

 

 

 

マグナモン

 

アーマー体 聖騎士型 フリー

 

必殺技 シャイニングゴールドソーラーストーム プラズマシュート エクストリーム・ジハード

 

・ブイモンが奇跡のデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体の聖騎士型デジモン。他のアーマー体とは違い、その戦闘能力は究極体に匹敵する。絶対的な防御能力を持ち、その身体に傷を付けることは至難の技と言える。さらにデジメンタルに宿った奇跡の力であらゆる困難を乗り越え、退ける奇跡の体現者でもある。

必殺技は、ボール状のプラズマ弾を発射する「プラズマシュート」と、空間を急速圧縮し、一気に膨張爆発させ、黄金のレーザー光で周辺の敵を一掃する「シャイニングゴールドソーラーストーム」。そして、デジメンタルのパワーを100%解放し、鎧から光線を放つ「エクストリーム・ジハード」だ。

 

 

 

 誰もがその輝きに目を奪われた。

 絶望的な状況において、ピンチを救ってくれるヒーローが現れたかのようなその奇跡に。

 黄金に輝くその姿に、その場にいた人間達の目は、マグナモンに釘付けとなる。

 その輝きが、その背中が、言葉にしなくても語っている気がした。

 

 もう大丈夫だ。俺が、俺達が来たと。

 

「行け、マグナモン!」

 

「はあっ!」

 

―――ドン!!

 

 まるでジェット機が通り過ぎたかのような衝撃音が辺りに響き渡り、キメラモンに向かって一直線に突き進んでいく。

 

「なっ!?」

 

 キメラモンからすれば、瞬きしている間に目の前にマグナモンが迫ってきたことに驚きを隠せない。

 しかし、マグナモンはそんな相手の状態に構うことなく、握り締めた拳をキメラモンの顔面に放った。

 

「マグナムパンチ!!」

 

―――ダンッ!!

 

『ガァッ!?』

 

 マグナモンの体格の数倍もある巨体と重量を誇るにも関わらず、まるで力強く蹴られたボールの様に遠くへ吹っ飛ばされるキメラモン。

 しばらく対空した後に海へと着水し、巨大な水飛沫を上げて沈んで行く。

 が、キメラモンはすぐに起き上がり、大きな水柱を立てながら水から飛び出し、その背の翼を使って空を飛ぶ。

 

『おのれ!よくもこのワシを!!』

 

「プラズマシュート!!」

 

『ガアアア!!?』

 

 マグナモンがボール状のプラズマ弾を放つと、それがキメラモンに着弾し、バチバチと大きな閃光と電撃音を立ててその身を焦がす。

 通常のプラズマシュートならここまでの効果は起こらない。だが、その身体が海水で濡れていたことによって電気の通りがよくなり、あそこまでの派手な攻撃へと仕上がったのだ。

 

『・・・グゥッ!喰らうがいい!!』

 

 キメラモンは四本の腕をマグナモンに向けて熱線を放つ。

 しかし、マグナモンは慌てることなく両腕を前に突き出し、黄金のオーラの膜を張って攻撃を防ぐ。

 

「この程度か?」

 

『バ、バカな!?』

 

「この程度で俺に傷を入れようとするとは、笑止千万!!」

 

『なら、もっと火力を上げれば・・・!』

 

「アタシ達もいることを忘れないで!」

 

『何!?』

 

「ホーリーフレイム!!」

 

『グアアア!?』

 

 キメラモンの身体に炎が降り注ぐ。その炎の正体はミカと、ミカのパートナーデジモンのホーリードラモンだった。

 

「おまけの追撃。」

 

「ギガブラスター!!」

 

 ヘラクルカブテリモンの放った強烈な電撃が、キメラモンを襲う。

 

『ガアアア!?』

 

 追撃で強烈な電撃を浴びたため、キメラモンは耐えられず、海へと落ちて行った。

 

「皆、来てくれたのか。」

 

「アンタが予想以上に遠くに吹っ飛ばしてくれたお陰で、来るのに時間がかかったわ。」

 

 マグナモンの言葉にホーリードラモンが答えた。

 

「でもまぁ、あんさんがキメラモンを現場から離してくれたお陰で、救助活動が予想以上にスムーズに進んましたわ。」

 

 ヘラクルカブテリモンも続けて言った。

 

「あの三人組の活躍は素晴らしかったよ。三人が自分にできることを冷静に分析、及び役割を分担して行動してくれたお陰で、被災地の火災の鎮火や、今にも崩れそうな建物から救助者を守ったり、避難ルートを確保したりなど、最高とも言える結果を出してくれた。」

 

「そのお陰で、あの被災地における死傷者はゼロ。これで心置きなくアイツをぶっ飛ばすことが出来るわ。」

 

 ナオヤとミカが最高の朗報を持ってきてくれたことにより、マグナモンの心には大きな安心感が広がった。

 

「さあ、後は最後の仕上げだ。マグナモン。」

 

 ミカと一緒にホーリードラモンの背に乗っていたユーリが言った。

 ユーリの言葉を聞いたマグナモンは頷き、その身を引き締める。

 

『ハア、ハア・・・貴様ら・・・何故そこまでワシの邪魔をする・・・。』

 

 ダメージがある程度回復はしたが、疲労が蓄積している様子でキメラモンは再び空に舞い上がる。

 

「何で邪魔するかって?そうだな・・・色々と理由が思い浮かぶけど、一番しっくりくるのがこれだな。」

 

 ユーリは息を吸って、言い放った。

 

「アンタがムカつくし、許せねえから。それだけだ。」

 

『そうか。ならば・・・。』

 

 その時、キメラモンの身体にさらなる変化が起きる。

 

『最早ワシのエリートの道だの、復讐だの、もはやどうでもいい・・・!』

 

 キメラモンの赤黒い肌に、赤黒い閃光がバチバチと走る。

 

『こうなれば、全ての力を使い!この命と引き換えに!!自爆してでも貴様らを道連れにして始末してやるわーーーーーー!!!』

 

 その言葉を皮切りに、キメラモンの体から膨大なエネルギーが発せられ、辺りに閃光が撒き散らされる。

 

『うおおおおおおおお!!!!』

 

「物凄いエネルギーだ・・・!」

 

 ナオヤがキメラモンの様子を見て呟いた。

 

「これじゃ近付けない!」

 

「クソ、何か手は!?」

 

 三人が何か手がないか考えていたその時。

 

「我々に任せてくれ!」

 

 ユーリ達の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。後ろを振り返ると、先程の増援部隊であった。

 

「我々が先程と同様、奴を拘束する!その隙に、トドメの一撃を叩き込んでくれ!」

 

 ペガスモンに乗った増援部隊の隊長が、ユーリに向かって言う。

 

「大丈夫か!?今度はさっきと違って難しくなってるぞ!?」

 

「心配無用だ!この程度の困難、我々もいくつも乗り越えてきた!!それに・・・。」

 

 隊長は一拍置いて言った。

 

「若者達ばかりにいい格好させたくないのでな!!我々にも出番を譲ってくれ!!」

 

「ふっ、何だそりゃ。」

 

「我々は君達を信じてる。だから、君達も我々を信じてくれ!!」

 

「わかった!頼んだぜ!」

 

「行くぞお前達!奴の動きを止めるのだ!」

 

『了解!!』

 

 ペガスモン、ネフェルティモン、プテラノモンの部隊がキメラモンに向かって飛んでいき、それを見届けたユーリ達は必殺技を放つ体勢に入る。

 

「いいか。今の内に力を溜め込んでおけ。あの人達がキメラモンの動きを封じ、離脱したその瞬間にドデカい一撃を叩き込む。」

 

「わかったわ。ホーリードラモン。力を溜めて。」

 

「ええ。」

 

「ヘラクルカブテリモンも。」

 

「任せとき。」

 

「マグナモン。」

 

「ああ。派手にブチかましてやる!」

 

 そうして、三体のデジモン達は強大な一撃を叩き込む為に、体内でエネルギーを練り上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グオオオオオ!!!』

 

「気合を入れろ!!奴から漏れ出る攻撃に当たらないようにするんだ!!」

 

 力を練り上げているキメラモンから溢れ出るエネルギーを回避しながら、隊長はペガスモンと共にキメラモンの周りを旋回する。

 

「ネフェルティモン!そっちは大丈夫か!?」

 

「大丈夫よ!アンタこそ当たらないように気を付けなさい!」

 

「愚問だったな。プテラ部隊!ミサイルはどのくらい残ってる!?」

 

「残り合計十発!少ないです!!ミサイルの威力を考えれば、怯ませるチャンスは一回きりになると思います!!」

 

「それだけあれば十分だ!ペガスモン!もっと近付いてくれ!!」

 

「わかった!!」

 

 閃光を掻い潜りながらキメラモンに近付くペガスモン。

 ネフェルティモンと連携するにはもっと近付く必要があるのだ。近付けば近付くほど閃光が激しく走り、当たる危険度も高くなってくる。

 だがペガスモンは、神業ともいえる回避能力で閃光を避け、技の射程圏内に確実に近付いていく。

 そしてついに、射程範囲内に到達する。

 

「ネフェルティモン!こっちは位置に付いた!そっちは!?」

 

「こっちも付いたわ!行けるわよ!」

 

「よしやるぞ!!」

 

「隊長!キメラモンが!?」

 

 その時、キメラモンの動きに変化が起きた。自身の周りを飛ぶ存在が目障りとなり、打ち払うことにしたのだ。

 腕を振り回し、その内の一本がペガスモンに襲い掛かる。

 

「マズイ!」

 

 キメラモンの腕が当たろうとしたその時。

 

「ミサイル発射!!」

 

 ペガスモンに迫っていた腕が放たれたミサイルによって弾かれ、ペガスモンへの危機は去った。

 

「お前達・・・助かった!」

 

「申し訳ありません隊長。今ので全てのミサイルを使い切ってしまいました。」

 

「責めはせん。お陰で助かった。プテラ部隊、全員帰投せよ!!後は俺達で十分だ!!」

 

「わかりました!ご武運をお祈りしています!!」

 

 命令を受けたプテラノモンの部隊は全員帰投し、DDの本部へと帰っていった。

 

「よし!改めてやるぞペガスモン、ネフェルティモン!奴の動きを止めるぞ!!」

 

「ええ!!」

 

 隊長の号令により、ペガスモンとネフェルティモンは再び配置に就き、光の帯を出しながらキメラモンの周りを飛び回る。

 キメラモンは飛び回るペガスモン達をのデジモンを振り払おうとするが、二体の回避能力が高く、振り回される腕を紙一重で回避していく。

 そして、ある程度旋回した二体のデジモンは、幾重にも巻いた光の帯を締め上げてキメラモンを拘束する。

 

「「サンクチュアリバインド!!」」

 

『ガアアッ!?』

 

 光の帯で締め付けられ、動きを封じられたキメラモンはその拘束を解こうと腕に力を込める。

 

『お、おのれーーーー!!』

 

 先程よりも更に多くの回数を巻いた為、最初に巻いた頃よりも頑丈だ。

 だが、それも限界が訪れる。

 

「今だあああ!!!やれえええええ!!!」

 

 隊長がユーリ達に向かって大声で叫ぶと、隊長達はその場から離れ、ユーリ達はそれを聞き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備できたみたいだな。今だ!!ぶっ放せえええ!!!」

 

 隊長の合図を聞いたユーリ達は、全員に号令を出し、デジモン達は限界まで溜め込み、練り上げたその力を解放した。

 

「ホーリー!フレイム!!」

 

 大きく開いた口から強力な白い炎を吐き出し、キメラモンに向けて放つ。

 

「ギガ!ブラスターーー!!」

 

 溜め込んだ電気エネルギーを放ち、一筋の閃光となってキメラモンに向かって行った。

 

「エクストリーム・ジハーーード!!」

 

 極限にまで高めた黄金の輝きを鎧から放ち、極太のビームとなってキメラモンへと向かって行く。

 

「「「行っけーーーー!!!」」」

 

 キメラモンに向けて放たれた三つの技が合わさり、一つの閃光となってキメラモンを飲み込む。

 

『ガアアアアアアッ!!?』

 

 三体のデジモンの必殺技を受け、致死量を超えるダメージを受けたキメラモンは、光の奔流のなかで電子分解されてその命に終わりを告げ、デジタマへと戻る。

 そして、キメラモンと融合していた元監察官の男と分離するのであった。

 

「キメラモン、討伐確認。任務完了。」

 

 ユーリはそう締め括り、任務を終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからの出来事をここに記載しよう。

 キメラモンの討伐が完了した後、元監察官も回収され、酷く衰弱していた為、警察病院へと入院することになった。

 あの戦闘が激しかったせいなのか、キメラモンと融合していたせいなのか、元監察官は昏睡状態に陥ってしまい、いつ目覚めるのか分からないのだそうだ。

 あのキメラモンはどうやって手に入れたのか、あの異常な力の出処は何処なのか、元監察官が目覚めない限り調査は進まないだろう。

 

「ふう。こんなもんか。」

 

 DD本部にて報告書を書き上げたユーリは、先日起きた出来事を思い出していた。

 救助活動を終えた三人組と合流した後は、救助した人達の護衛とアフターケアに努めて欲しいと要請し、三人を港に残してホーリードラモンに乗ってマグナモンの元へと向かったのだ。

 作戦が終わった後、三人組は警察署から被災者の救助に協力してくれた礼として感謝状を渡され、金一封を貰ったのだ。

 

『また力が必要になった時は呼んでください/ッス!!』

 

 そう言って自宅へと帰っていった。

 ナオヤも自分の仕事先に戻っていった。

 ナオヤは現在、犯罪被害者の心のケアをするカウンセリングの仕事に就いていた。何時までも仕事先を空けるわけには行かないと言って、さっさと帰ったのだ。

 ミカも、事件が終了すると同時に、子供達を安心させる為に仕事先の幼稚園に戻ったのだ。

 そしてユーリは、DD本部にて事件の後始末の為に対応に追われ、やっと落ち着いたので報告書を書き上げていたのだ。

 

「む、まだ居たのか。」

 

「あ、部長。」

 

「にしても、いつになく大規模な事件だったな。」

 

「確かにですね。あのおっさんの裏でやってた犯罪がバレた事がキッカケで、このような大事件が発生したんですからね。」

 

「そして、ユーリに復讐するべく、出所不明の力に手を出し、結果、自業自得とも言える最後を迎えたな。」

 

「・・・ずっと思ってたんですけど、どうして、犯罪者は生まれるんでしょうかね。」

 

「唐突だな。一概にこれだと断言はできんが、親を含めた育ってきた環境や、培ってきた常識、善悪の基準を正しく教えてくれる人間が居なかったことの、言わばツケというものが、犯罪者を生み出しているんじゃないだろうか。」

 

「でもそれだと、警察官はそれに当て嵌まりませんよね。警察って、言ってみれば法律違反をした人達を取り締まる組織であって、善悪の基準は、法律と言うことになるから、それらをわかった上で犯罪を犯しているってことになりますよね。」

 

「確かに、お前の言う通り我々警察官は、市民達が安全に平和に暮らせるよう、法律違反が起きないように取り締まっている。だが、そんな警察でもあの監察官のように法律を平然と破る人間がいるのも事実だ。誰よりも法律を守る者が、法律を破るなど、あってはならないことだ。」

 

「そう考えると、俺もそうなのかなって。だってほら、犯罪者を取っ捕まえるために必要以上に痛め付けたり、器物損壊なんて当たり前にするし、酷いときには、犯罪者の根城だったビルまで破壊したことありますし。」

 

「自覚あったのか・・・。」

 

「だから、そう考えると俺もあのおっさんと変わらないのかなって。」

 

「それは違うぞ。確かにお前は大きな問題ばかり起こすが、お前は不正を絶対に許さない男だ。あの監察官と違って、調査する時や報告書を書く時は誤魔化しはしないし、目の前の事実からは逃げたりしないんだ。そして今回のことだって、あの監察官の不正を見破り、警察内で起きた不正をまた一つ正したじゃないか。それは立派に誇っていいんだ。」

 

「部長・・・。」

 

「だから、あの監察官と同じだと思うな。お前はお前らしく、自分の信じる正しさに従っていいんだ。」

 

「自分の正しさに・・・。」

 

「かと言って、何事もやり過ぎるとせっかくの正しさが裏返って悪になってしまう。正しさイコール何をやってもいいと言う免罪符にはならんのだ。その事を肝に銘じることだ。」 

 

「はい!」

 

「さ、今日はもう遅いし、帰るんだ。報告書の提出は明日の朝でいい。」

 

「あ、はいわかりました。では、お先に失礼します。」

 

「明日も頑張るんだぞ。」

 

「はい、お疲れ様でした!」

 

 そう言ってユーリは荷物を纏めて帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~ん、結局こうなった訳ね。」

 

 廃れたバーにて、ジョーカーは昼間の戦闘の様子が映し出された映像を観ていた。

 

「試作品だったとはいえ、あそこまでの力を発揮するとは・・・コイツはいい収穫だな。」

 

「あ、ジョーカー。帰ってたの?」

 

「ダイヤか。」

 

 バーの一室に、ダイヤと呼ばれた女が入ってくる。

 

「どうだったの?実験とやらは。」

 

「予想以上の結果だよ。あのおっさんに渡した試作品でこれ程の完成度なら、このまま量産しても問題ないと言える程にね。」

 

「確かに、あれ程ならば量産してもよかろう。」

 

 続けて、初老の男も入ってくる。

 

「あ、クラブ。アンタも帰ってたの?」

 

「表の仕事が片付いたのでな。まったく、老人をこき使いおって。あの生意気な小僧社長め。」

 

「そう言うな。その無能社長のお陰で、色々と実験台がこっちに回ってきてるんだ。ソイツに気付かれないためにも、今はまだソイツの秘書でいてよ。」

 

「まあ、あの小僧がバカなおかげでこっちとしてはやりやすいんじゃがの。そこら辺は目を瞑るわい。」

 

「・・・戻った。」

 

 さらに続けて寡黙な大男が入ってくる。

 

「スペード。またマフィア潰ししてきたの?」

 

「・・・数ばかりで歯応えがなかった。」

 

「ちょっと、血生臭いからシャワー浴びてきて。」

 

「・・・すまん。」

 

 ダイヤに言われてシャワールームへと歩いて行った。

 

「たっだいまー。」

 

 その時、スペードと入れ替わるように一人の少年が入って来る。

 

「あら、ハート。今日は早いのね。」

 

「うん。今日は予定してた商談が早く終わったからね。今日は早く切り上げてきたんだ。」

 

「で、取引はどうだった?」

 

「バッチリだよジョーカー!商談が成立して、莫大な資金を提供してくれるって!」

 

「そうか。そいつは最高の朗報だ。よくやった。」

 

「えへへ〜。」

 

「後でスペードには言わないとね。マフィア嫌いのアイツが、そこの商会だけは潰さないようにってね。」

 

「・・・心配するな。そこは弁えている。」

 

「うわっ!?いつの間に上がったの!?」

 

「・・・軍人たるもの、シャワーも手短に済ませるものだ。」

 

「ちゃんと石鹸とシャンプー使ったんでしょうね?」

 

「・・・ああ。しっかりな。」

 

「ならいいけど。」

 

「にしても珍しいのぉ。こうしてメンバーが全員集まるのは。」

 

「みんなそれぞれだったもんね〜。表の仕事が手放せなかったり、任務に行ってたりして。」

 

「・・・。」

 

「こうして集まったのも何かの縁だし、何か作りましょうか?」

 

「え?いいの?じゃあ僕はホットケーキ!ホイップたっぷりアイス乗せで。」

 

「ワシは何かカクテルを頼む。ツマミもお前さんのお薦めで。」

 

「・・・ビールを頼む。それとピザ。」

 

「ジョーカーは?」

 

「ニコラシカ。」

 

「・・・!?」

 

「ほう?」

 

「へえ?」

 

「それを出すってことは、やるのね。」

 

「ああ。期は熟した。」

 

「そっか。とうとう始まるんだね。」

 

「立ち上げてから早五年。長かったような、短かったような、そんな感じじゃのう。」

 

「・・・やっとだ。」

 

「待ちわびたわ。」

 

 ジョーカーがイスから立ち上がり、グラスを持って宣言する。

 

「これから俺達は、世界に向けて宣戦布告をする!俺達の名誉を地の底に叩き落とした世界を破壊し、正しい世界へと作り直す!!何をバカなと思う者や、出来るわけがないと思う者も出てくるだろう。しかし、俺は本気だ。その為の準備をしてきた!お前達だってそうだろう。何の悪事をしていないのにも関わらず、表社会から追放され、日の当たらない暗い世界を歩く羽目になった。思い出せ!その屈辱を!その怒りを!これから先は、乗ってしまえば後戻り出来ない道だ。それでも、俺と命運を共にする覚悟はあるか!?命を懸けるのではなく、最期まで共に戦う覚悟だ!!俺と命運を共にするというものはこの酒を飲み干せ!!」

 

「当然よ!」

 

「当然だよ!」

 

「当たり前じゃ!」

 

「・・・ああ!」

 

「ここに、世界を破壊し作り直す組織「RE:BIRTH」の立ち上げを宣言する!!同志よ、俺達の野望を叶えるぞーーー!!!」

 

『おおおおお!!!』

 

 ここに、世界を揺るがす巨大組織の産声と、世界を巻き込んだ戦いの幕が上がるのであった。




敵側の簡易設定

いずれも理不尽な目にあって表社会から追放された。

ジョーカー・・・今作のボス 男 25歳
・今作のボスキャラ。そのカリスマで仲間を率いる。ユーリとほぼ同じ境遇ではあるが、その違いは手を差し伸べる人物がいなかったこと。
 その結果、その精神は悪に落ち、世界に対して怒りを抱き、復讐をすることを誓う。


ダイヤ・・・ジョーカーの愛人 女 23歳
・ジョーカーの最初の仲間。クズの両親の間に産まれ、闇市場に人身売買されていたところをジョーカーに助け出され、ジョーカーに絶対の忠誠を誓うようになる。

クラブ・・・元科学者 男 46歳
・元は名の知れた科学者であったが、研究成果を盗まれた挙句に原案者であるクラブが研究成果を盗んだ泥棒だという濡れ衣を着せられて表社会から追放された。
 ホームレス生活していたところをジョーカーに拾われる。

スペード・・・元軍人 男 34歳
・自衛隊出身の元軍人。自身が所属していた軍の上司がマフィアと癒着関係にあり、その調査をしてきたところを罠に嵌められ、逆に自分がマフィアと癒着があるという濡れ衣を着せられ、軍を追放された。
 後にそのマフィアと、マフィアと繋がりのあった上司を暗殺したあとジョーカーに拾われる。

ハート・・・男の娘 男 18歳
・並の女が嫉妬するほどの可愛さと美貌を持つ男。その美貌に嫉妬した裏社会と繋がりのある同級生の女達によって売り飛ばされて娼夫として働かされていた。
 後にハートが働かされていた店と、自身を裏社会に売り飛ばした女達をジョーカーが始末して助けてくれたことによって、ジョーカーに恩を感じてついていくことにする。


作中に出てきた酒の名前
・ニコラシカ
・酒言葉 決行 覚悟 決心
・ブランデーが注がれたグラスの上に輪切りにしたレモンと砂糖を乗せたカクテル。飲む時はレモンと砂糖を口の中に入れて数回噛み潰し、その後にブランデーを流し込んで一緒に飲む。
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