デジモンポリスメン   作:namco

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今度こそ最終回のつもりがまた完結しなかった。
前編と後編に分けます。




デジモンポリスメン 最終回 前編

「来たわね。」

 

 一番の部屋に入ったユーリとミカが対峙したのは、ジョーカーの愛人であるダイヤだった。

 

「改めて歓迎するわ。私はダイヤ。「RE:BIRTH」の幹部にして、ジョーカーの愛人よ。」

 

「そうか。俺はユーリだ。お前等をとっ捕まえるから大人しく投降してくれ。」

 

「嫌よ。」

 

「なら鍵を今すぐ渡せ。でなきゃ実力を行使する。」

 

「それも嫌。」

 

「だと思ったぜ。この手の交渉が上手く行った試しがない。」

 

「そう思ったならさっさと来れば?こっちは準備万端よ。ジョーカーの理想のために、ここで消えてちょうだい。」

 

「そうか。なら、遠慮なくやらせてもらうぜ。アルフォースブイドラモン。」

 

「ああ。」

 

 ユーリの声でアルフォースブイドラモンが前に出て戦闘態勢に入る。

 

「戦う前に一つ聞かせて。何故、貴方はテロ組織の仲間になったの?」

 

「そうね。別に答える義理はないけど、特別に教えてあげる。ジョーカーの作戦の時間稼ぎがてらにね。」

 

 ミカの質問にダイヤが答える。ダイヤの口から語られたのは、壮絶な過去であった。

 

「今から何年前だったかしら・・・私がまだ学生だった頃の話よ。」

 

 当時の彼女の両親は、お世辞にもいい親とは呼べなかった。

 家は貧乏で、父はギャンブルと外で会った愛人に夢中でまともに働きもせず、母は他の男と会っては金を貰って生活費を稼いでいた。父と母は口喧嘩が絶えず、時には互いに暴力で黙らせ合うようなそんな間柄だった。

 どちらかが喧嘩に負ければ、負けた方が自分に飛び火して八つ当たりの標的となった。

 家にいれば父と母の喧騒が響き渡り、部屋に閉じこもっても喧嘩する音が聞こえてくる毎日だった。

 そんなある時、生活費が底を突いた事で、両親が彼女を闇市場に売って生活費を稼ごうとしたのだ。

 闇市場に売られ、買い手が付いていざ出品されそうになった所にジョーカーが現れ、人身売買の闇市場を潰した上に、両親の悪行を世間に晒した事で彼女は解放され、両親は逮捕された。

 その後、自分を助けてくれたジョーカーに一目惚れし、運命の相手だと感じてジョーカーに絶対の忠誠を誓うようになった。

 

「だから私は、私の事を助けてくれたジョーカーの目指す理想世界の為に戦うって決めたのよ。彼の理想を叶える為ならこの命、惜しくなんてないわ。」

 

「それが、貴方のテロに加担した理由。」

 

「そうよ。思ったより長く話したわね。そろそろ、始めましょうか。」

 

 そう言ってダイヤはスマホを取り出し、さらにはデジメモリを取り出してデジヴァイスに接続する。

 

「今回使うデジメモリは、今までと違って特別製よ。出力も貴方達が戦ってきた奴等とは大違い。精々祈る事ね。楽に死ねますようにってね!!リアライズ&マトリックスエヴォリューション!!」

 

 ダイヤのスマホから一体のデジモンが出現し、完全に実体化する前にダイヤの体に纏わりつく。

 光りに包まれ、ダイヤの体はデジモンと一体化し、融合したデジモンとしてその場に出現する。

 光が晴れると、そこには蜂を模した機械鎧に身を包み、二本のビームソードその手に持った人型のサイボーグ型デジモンがそこに立っていた。

 

『タイガーヴェスパモン!!』

 

 

 

タイガーヴェスパモン

 

究極体 サイボーグ型 ウィルス

 

必殺技 マッハスティンガーV(ヴィクトリー)

 

・二本のビームソード「ローヤルマイスター」を携えて戦うサイボーグ型デジモン。タイガーヴェスパモンは見た目の細く鋭いシルエットからは想像が出来ないほど驚異的なスタミナを誇り、戦闘中に決して動きを止めることはない。 必殺技は、「ローヤルマイスター」で敵を連続で突き刺した後、V字型に切り裂く「マッハスティンガーV(ヴィクトリー)」だ。

 

 

 

『彼の理想の為に、ここでくたばりなさい!!』

 

「ホーリードラモン。やりましょう。」

 

「ええ。絶対倒しましょう!!」

 

「俺達も忘れるな!行くぜアルフォースブイドラモン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく来たのぅ。」

 

「初めましてだね。」

 

 二番の部屋に入ったナオヤはクラブと対峙していた。

 

「さっきのジョーカーの放送を聞いたじゃろ?ワシを倒さん限り、鍵は手に入らんぞ。」

 

「だからこそ、さっさと始めようか。」

 

 ナオヤはスマホを構えてヘラクルカブテリモンと共に戦闘態勢に入る。

 

「そうじゃな。もはや言葉は要らんじゃろ。やる事はシンプルじゃ。貴様がワシを倒すか、ワシが貴様を倒すか。それだけの事じゃ。」

 

「けど、戦う前に聞きたいんだ。何故テロ組織に入った?」

 

「何故その事を聞く?」

 

「ボクは職業柄カウンセリング関連の仕事をしてるんでね。ただ戦って叩き潰すのは、相手を理解する事を放棄するのと同じだ。ボクの自己満足だけど、相手を理解しないまま叩き潰すような事をしたくないからね。」

 

「・・・ふん。変わったやつじゃの。いいだろう。この爺の昔話に付き合ってもらおうか。ワシがこの組織に入る切っ掛けは、ワシの研究成果を他人に奪われた事じゃ。」

 

 クラブが言うには、彼がまだ三十代になったばかりの頃の話だった。

 幼い頃から誰よりも頭の回転が速く、飛び級で海外の名門大学に入学し、首席で卒業して、海外の有名な研究機関に化学者として働いていた。

 誰よりも天才であるが故に周りから妬みを買うことが多かったが、特に実害は無く、ましてや誰かに危害を加えた訳ではない為、他人に関しては無沈着であった。

 ある時、クラブがその機関で研究中に、完治が困難な病気である癌に対して新しい薬の作り方を発見した為、それを学会で発表しようとレポートを纏めた。

 それが現代医学をさらに進化させる希望の光となる事に期待を寄せられ、クラブ自身も、自分の研究が世界に大きく貢献する事に誇りを持っていた。

 学会での発表の日が近付き、クラブが世界の医療機関に大きな革命を齎(もたら)そうとしたその時―――。

 

『博士。貴方には研究データを盗んだ疑いが掛かっている。よって、貴方のこのレポートは没収させてもらう。』

 

 研究機関の上層部がクラブに覚えの無い無実の罪を突き付け、研究データとレポートを根こそぎ奪い取り、研究機関から追放されたのだ。

 後から知った事だが、クラブの頭脳に嫉妬した同僚の研究者が、クラブの研究成果を奪うべく裏で手を回し、嘘の密告をして研究機関から追い出し、そして奪ったのだった。

 自分は無実だと何度訴えても、上層部の決定は覆ることはなく、クラブは濡れ衣を着せられて追放されたのだ。

 その後、クラブはホームレス生活を強いられるようになり、その日暮らしの僅かな金を稼ぎながら生活していたが、そこでジョーカーと出会ったのだ。

 何もかもに自暴自棄となっていたクラブは、ジョーカーの野望を果たすことに協力することを引き換えに復讐を依頼し、自分の研究成果を盗んだ研究者と研究機関の闇をマスコミや情報サイトにバラ撒き、全ての真相が表に晒された後に成果を盗んだ研究者とクラブを追放した研究機関を始末したのだ。

 

「じゃからワシはこの頭脳を、ジョーカーの為に使うと決めたのじゃよ。ワシを暗闇から救ってくれた恩を返す為にな。」

 

「成る程。そのニュースは知ってるよ。世界中で連日で報道されてて、最終的に殺されたって話。アレってジョーカーの仕業だったんだね。」

 

「そうじゃ。自分で言うのもなんじゃが、ワシは自分を天才じゃと思っとる。自分の実力がワシに届かないからと言って、裏から卑怯な手を回すような奴が憎くて仕方ないんじゃ。そういう意味ではワシはジョーカーに感謝しておる。ワシの復讐を果たしてくれただけではなく、新しい居場所をくれたことにな・・・長く話しすぎたな。そろそろ行くとするかの。」

 

 そう言ってクラブはスマホを取り出し、デジメモリをデジヴァイスに接続する。

 

「リアライズ&マトリックスエヴォリューション!!」

 

 クラブのスマホから一体のデジモンが出現し、完全に実体化する前にクラブの体に纏わりついていく。

 光がクラブの体を包み、装甲が体を覆っていき、最後に右腕に巨大なランスが取り付けられる。

 光が晴れると、そこには紺色の身に纏ったドラゴンの姿をしたサイボーグ型デジモンがそこに居た。

 

『ダークドラモン!!』

 

 

 

ダークドラモン

 

究極体  サイボーグ型  ウィルス

 

必殺技  ダークロアー  ギガスティックランス

 

・暗黒エネルギーの塊である「ダークマター」を大量に使われた上で進化したサイボーグ型デジモン。「ダークマター」の影響で暴走する危険性があったが、クラブの改造と調整によってエネルギーが安定し、暴走することなく強大な力をフルスペックで発揮できるようになった。 必殺技は、右腕のランスを敵に突き刺す強烈な一撃「ギガスティックランス」と、「ダークマター」をエネルギー弾として右腕のランスから放つ「ダークロアー」だ。

 

 

 

『ワシの研究成果・・・得と味わうがいい!!』

 

「行くよ!ヘラクルカブテリモン!!」

 

「了解や!全力で行かせて貰いまっせ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ちゃったね。」

 

「ああ。来たっすよ。」

 

 三番目の部屋に入ったユウヤを待ち構えていたのは、ハートだった。

 

「一つ聞きたいっす。何故アンタはテロ組織に入ったんすか?」

 

 ユウヤがハートに対して質問をする。そしてハートは答える。

 

「そうだね・・・一言で言うなら、恩返しかな?」

 

「恩返し?」

 

「そう。話すと少し長くなるけど。」

 

 ハートが語ったのは、彼がまだ中学生だった頃の話だった。

 ハートは、自分の容姿が少女のような見た目をしているのを、コンプレックスとまでは行かないがそれなりに気にしていた。

 だがある時、男性が女装すると言うバラエティ番組を観た事によって、自分のこの顔は決して悪いことではない、男でも可愛い事に興味を持ってもいいのだと自信を持つ事が出来たのだ。

 それからのハートは、自身の容姿を含めて可愛さを極める日常が始まった。

 男でも可愛いものを極める為に仕草や化粧、お菓子作りや手芸、ファッションや作法、流行りのトレンドを仕入れる等の可愛さに関連する情報や技術を自身に叩き込んでいった。

 そのお陰で、通っていた学校からは可愛い男子一位の座を勝ち取り、自分を誇れるようになったのだ。

 だが、それをよく思わない人間が現れたのだ。

 ハートはある日、その日も可愛く化粧して学校に通おうとした所、突然誘拐されたのだ。

 誰も寄ってこない倉庫で縛り付けられ、自身もよく理解できていない内にあれよこれよと話が進み、裏社会の連中が経営する娼館にて働かされるようになったのだ。

 

 『後から知った事だけど、ボクの可愛さに嫉妬した女子が裏社会に繋がりを持つ友人に話をして、ボクを誘拐して裏社会に売り飛ばしたんだって。』

 

 娼館に売り飛ばされてからは地獄の始まりだった。

 売り飛ばされてから相手をしたくない客の相手をされられるようになり、やめてと叫んでも暴力でねじ伏せられ、仕事が終われば、ボロボロの部屋に放り込まれて同じように誘拐されてきた仲間達と身を寄せ合って壊れそうな心を繋ぎ止めた。

 そんな毎日が続くと思っていたある日、ハートが働かされていた娼館をジョーカーが潰したのだ。

 しかもご丁寧にその店の悪事を働いている証拠を掴み、裏社会の関わりのある人物全員を特定して処刑したというのだ。

 自分を含めた仲間達は解放され、警察に保護されたと言う。

 

『ボクが何故保護されてないかって?いや、一度は保護されたんだよ。一度家に帰ったんだけど、ボクの誘拐を手引きした女達の手によって殺されていて、ボクの居場所はなくなっていたんだ。』

 

 ハートが保護された後、彼の親戚達が引き取るのを渋っていたそうだ。

 女装という気味の悪い趣味を持った彼を引き取りたくない、無理矢理働かされていたとはいえ娼館で働いていた彼を引き取りたくないと言う声が上がっていた。

 親を殺され、まだ守るべき未来のある子供を守るより世間体を気にしていたという。

 

「施設から抜け出して街をフラフラしていたら、偶然ジョーカーを見つけたんだ。その時のボクは大人達に失望していてね。お礼も兼ねて助けてくれたジョーカーに着いていくことにしたのさ。」

 

「それが、アンタがテロに加担する理由っすか?」

 

「まあ他にも理由はあるけど、一番の理由は、ボクみたいに変わった個性を持った人間達が自由に謳歌できるような世界にしようって約束してくれたからかな。だからボクはその理想を叶えるためにジョーカーのやることに加担したってわけ。」 

 

「理想自体は素晴らしいっす。けど、こうしてテロに加担して、暴力で捻じ伏せるのは間違っているっす。」

 

「でも実際は気に食わなければあらゆる手を使って排除しようとするでしょ?暴力だったり、権力や金を使ったり。ボクはそれで表社会から弾き出された。自分の個性を全面的に押し出して自分の魅力をアピールしていただけだっていうのに、それを気に食わないっていう奴は必ず出てくる。だからボクは誓ったんだ。そっちが力尽くで排除しようって言うなら、ボクもお前達と同じ方法でやり返してやるって。よく言うでしょ?撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだって。」

 

「だからといって、こんなやり方間違ってるっす!例えこんなやり方で成功したとしても、誰も本当の意味で理解してくれないっす!理解して欲しいなら、それこそ同じ境遇の人を集めたりしてサークルとか作って、デカいホールとかで講演会を開いたりするとか!」

 

「そうだね。それも手段の一つだ。けど、それを成し遂げるのにどれだけの時間と資金がかかると思う?少なくとも大昔から続いている人の個性の差別問題は今もなお解決されていない。人は自分とは違う人種を排除しようとする。同じ人間であっても、その中身が違えば気味悪がって除け者にしようとする。今でこそある程度緩和されたけど、人の個性を受け入れられない奴は消えるべきだと思わない?むしろ、今の人類の全てを破壊しない限り、人間同士の差別や迫害は絶対になくならない。だからボクは、世界を破壊して、人それぞれの個性が受け入れられるような世界を作り上げる。例えそれが、力による制圧であっても。」

 

「・・・どう言っても、止まるつもりはないんすね?」

 

「止まらないよ。でなきゃ、ボクはここには居ない。」

 

「わかったっす。俺はもう何も言わないっす。なら!」

 

 デジヴァイスを構えて、ハートに強い視線を向ける。

 

「俺達のありったけで、アンタを止めるっす!ムゲンドラモン!!」

 

「ああ!エンジンフルスロットルで行くぜ!!」

 

「そうこなくっちゃ!リアライズ&マトリックスエヴォリューション!!」

 

 ハートのスマホから一体のデジモンが飛び出し、完全に実体化する前にハートの体に纏わりついていく。

 光がハートの体を包み、身長が高く伸び、髪は金髪のロングヘアーへと変化し、体は女性特有の体付きへと変化していく。

 光が晴れると、そこには黒いロングコートと黒いマフラーと腹の部分が大きく露出した黒いレザースーツを身に纏った黒い仮面を装着したデジモンが現れる。

 

「ベルスターモン!!」

 

 

 

ベルスターモン

 

究極体  魔人型  ウィルス

 

必殺技  フライバレット  ダブルクロウ  ハリケーンビスショット

 

・二丁拳銃を華麗に操る、その容姿から「ベルゼブモンレディ」とも呼ばれるデジモン。愛用の二丁拳銃「リゾマデロート」はベルゼブモンが持つ「ベレンヘーナ」の妹分にあたる。 誰とでも気兼ねなく打ち解けあえる気さくな性格だが、ただ1人ベルゼブモンとは仲が悪く、実力は認めるものの微妙な距離を取り続けている。 漆黒のレザースーツを身に着け、攻防や翼など用途に応じて変幻できるマフラーを着用する。 必殺技は、「リゾマデロート」から放たれる「フライバレット」で、敵の急所めがけてホーミングする。さらに「リゾマデロート」の仕込みナイフで敵を引き裂く「ダブルクロウ」、俊敏な旋風脚でブーツの踵に潜ませた銃から弾丸を乱れ撃つ「ハリケーンビスショット」。

 

 

 

『さあ、パーティの始まりだ!!』

 

「気合を入れるっすよ!ムゲンドラモン!!」

 

「うおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・来たか。」

 

「お前達を逮捕する。大人しく投降してくれ。」

 

「・・・敵にそんな言葉が通用すると思うのか?」

 

 四番目の扉に入った原田部長は、スペードと対峙して投降を呼び掛けていた。

 だが、スペードは応じる事なく腕を組みながら静かに佇んでいた。

 

「いや、そういう可能性は低いと思ってはいるが、言葉で説得できるならワシはそれに賭けたい。」

 

「・・・甘いな。だが嫌いじゃない。」

 

「君達がテロを起こすのにそれなりの理由があるのだろう?それを理解した上で君達を説得したい。説得をするにしても、まずは相手を理解したい。だから、差し支えなければ話してはくれないか?」

 

「・・・いいだろう。時間稼ぎも兼ねて話してやる。」

 

 スペードの口から語られるのは、自分がまだ軍人だった頃の話であった。

 国を守る自衛官として入隊し、軍の少佐として働いていた頃、自分の上官がマフィアと繋がっているという噂を耳にして、真偽を確かめる為に独自に調査を進めていた。

 そして、上官がマフィアと繋がっているという証拠を手に入れ、上層部に報告し上官を起訴しようとした。

 だが、上官はこのような事になるのを読んでいたのか、上層部にスペードこそが裏でマフィアと繋がっているという偽情報を流したのだ。

 バレないように裏工作をして偽の証拠を作り上げて。

 

『・・・俺はわからなくなった。国を守る軍人である人間が、何故取り締まるべきマフィアと繋がっているのか。何故今まで国と軍に尽くしてきた俺が無実の罪で裁かれなければいけないのか。』

 

 軍をクビになった後、スペードは軍人時代に叩き込まれた技術を独自に昇華し、その力を使って自分を罠に嵌めた上官とマフィアのボスを暗殺し、証拠を表にバラ撒いた後、表社会から姿を眩ませた。

 

『・・・その後俺は、マフィアを潰しながら世界中を旅した。その果てに俺はジョーカーと出会った。』

 

 世界中のマフィアを潰している時にジョーカーと出会い、世界の秩序を守る筈の組織が不正をしているのが許せないという思想に共感し、ジョーカーの理想を叶える為に協力する事にしたのだ。

 

「・・・だから俺は、世界を一度破壊して、裏で悪党と手を組むような奴等は全て消し、正しく国を防衛する組織を作り上げる。それが、俺がココで戦う理由だ。」

 

「君の怒りはよくわかった。ワシも昔は似たような光景を見たことがあった。同じ警察でありながら、裏で悪党と手を組んで法律の穴を潜り抜けるようにして、自分が上に行くように細工をしたり、懐に金が入るように卑怯な手を使ったりするような奴等は居た。だが結局そいつ等は、悪事がバレて捕まったがな。今でこそ警察内や軍隊の中での不正も許さないようなルールも作られた。だが、だからと言って、怒りに身を任せて自分を罠に嵌めた人間を殺して言い訳がない。それだけじゃない。テロに加担して世界を力尽くで変えようとするのは間違っている。君のやっていることは君を罠に嵌めたその上官と同じような事をしようとしているのだぞ。悪い事は言わない。今すぐ投降して、罪を償うんだ。」

 

「・・・甘い事を言うな。テロに加担するどころか人を殺した時点で俺の行く先は決まっている。俺の取る道は二つに一つ。勝って世界を変えるか、負けて全て失うかだ。俺は腹を括った上でココにいる。俺は、俺の正義にかけて負ける訳にはいかん。俺にどんな言葉を投げ掛けても無駄だ。止めたければ倒せ。俺達テロ組織とぶつかった時点で、この結末は避けられない。さあ、構えろ。己の正しさを通したければ、戦え。」

 

「どうあっても、止まらないのだな・・・クレニアムモン。」

 

「ああ。やろう、マスター。」

 

「・・・リアライズ&マトリックスエヴォリューション!!」

 

  スペードがスマホを掲げ、デジモンが出現すると同時に完全に実体化する前にスペードの体に纏わりつく。 光がスペードの体を包み、鋼の体と全身に大量の銃火器が取り付けられる。

 光が晴れると、そこには白銀に輝く二足歩行の機械の竜がそこに居た。

 

『ガンドラモン!!』

 

 

 

ガンドラモン

 

究極体  マシーン型  ウィルス

 

必殺技  ゲヴァルトシュベルマー  プラッツェンクロイツ  デルブリッツ

 

・全身に銃火器が搭載されたマシーン型デジモン。全方位あらゆる方向に向けて砲撃が可能であり、移動スピードも中々速く、総じて隙の少ない強力なデジモンである。 必殺技は、両腕のリボルバーで敵の急所を狙い撃つ「デルブリッツ」と、足で敵を地面に踏みつけ、至近距離から撃ち抜く「プラッツェンクロイツ」、そして銃口を全方位に向けて一斉射撃を行う「ゲヴァルトシュベルマー」だ。

 

 

 

『・・・俺の理想とする正しい正義の為に、貴様等を潰す!!』

 

「これ以上の間違いを犯させない為に、お前をココで倒す!!」

 

「我が槍にて鎮めてくれる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はあっ!!』

 

「ふっ!」

 

 タイガーヴェスパモンが地を蹴りローヤルマイスターを突き出すと、アルフォースブイドラモンはVブレスレットから展開したビームシールドで受け流しつつ、ビームセイバーで斬り付けようとする。

 

『しっ!』

 

 タイガーヴェスパモンは片方のローヤルマイスターでビームセイバーを弾きつつも、もう片方のローヤルマイスターでアルフォースブイドラモンを突き刺そうとする。

 

「ホーリーフレイム!!」

 

 ホーリードラモンがタイガーヴェスパモンの動きを妨害すべく炎を吐き出す。

 

『甘い!』

 

 だがタイガーヴェスパモンは迫ってくる炎に慌てることなく切り払うと同時に斬撃波を飛ばしてホーリードラモンを撃ち落とす。

 

「がぁっ!?」

 

「ホーリードラモン!?」

 

 落とされたホーリードラモンを心配するミカ。だがホーリードラモンはすぐに立ち上がると再び空へと昇り、タイガーヴェスパモンへと迫る。

 

『何度来ても同じだ!』

 

「そうかしら?ミカ!」

 

「ええ!サポートコマンド、スピードアップ!」

 

 ホーリードラモンがミカに向かって叫ぶと、ミカはスマホを操作してホーリードラモンを補助するプログラムを入力する。

 

『何!?』

 

 ホーリードラモンのスピードが上がるとタイガーヴェスパモンは急激な変化に戸惑う。

 

「喰らいなさい!アポカリプス!!」

 

 ホーリードラモンは背後に幾つもの魔法陣を展開して聖なる光の光線を放つ。

 

『くっ!』

 

 迫って来る光線を自慢のスピードで回避する。

 

「俺もいることを忘れるな!!」

 

『はっ!?』

 

 タイガーヴェスパモンが回避した際にはアルフォースブイドラモンがおり、神速のスピードでタイガーヴェスパモンを斬り刻み、その装甲に傷を付けていく。

 

『くっ!舐めるな!マッハスティンガーV!!』

 

「アルフォースセイバー!!」

 

 タイガーヴェスパモンも負けじとローヤルマイスターを高速で振るい、アルフォースブイドラモンもそれに合わせて両腕のビームセイバーを振るっていく。

 

「はああああ!!」

 

『グウウウウッ!!』

 

 刃がぶつかり合う度に閃光が迸(ほとばし)り、火花を散らしていく。

 何度目かの打ち合いの末に、両者は弾かれて距離を取り合う。

 

「ユーリ、頼む!」

 

「ああ!サポートコマンド、分身の術!」

 

 ユーリはスマホを操作し、アルフォースブイドラモンをサポートするプログラムを入力し転送する。

 

『なっ!?』

 

 タイガーヴェスパモンの眼の前に広がるのは、姿が四人に増えたアルフォースブイドラモンだった。

 ユーリの送ったサポートプログラムによってアルフォースブイドラモンは四人に分身し、どれが本物かわからなくさせたのだ。

 

「「「「さあ、どれが本物かわかるかな?」」」」

 

 聞こえてくる四つの同じ声。声まで同じとなると、見分けが難しくなる。

 その事に戸惑っていると、アルフォースブイドラモンがタイガーヴェスパモン目掛けて突撃して来る。

 

『はっ!?』

 

「「「「隙あり!アルフォースセイバー!!」」」」

 

『ああああ!?』

 

 各方向から切り刻まれるタイガーヴェスパモン。

 実際には攻撃は一人で行っているのだが、アルフォースブイドラモンは自慢の神速で瞬間移動に等しい速度で移動している為、全てのアルフォースブイドラモンから攻撃を受けていると錯覚しているのだ。

 

『はぁ、はぁ、はぁ、おのれ・・・!』

 

 体を切り刻まれ、鎧もあちこちにヒビが入って最早鎧としての機能を失っているタイガーヴェスパモン。

 ローヤルマイスターの片方を杖代わりにしながら立ち上がり、蜂の頭部を模した兜の下からユーリ達を睨みつける。

 

「最早虫の息だな。」

 

「虫だけに?」

 

「ぷっ!ユーリ、アルフォースブイドラモン、笑わせないで・・・!」

 

「ミカ。笑いが堪えきれてないわよ。」

 

 ユーリとアルフォースブイドラモンのちょっとしたコントにミカは吹き出し、ホーリードラモンがそれを嗜(たしな)めるが、ホーリードラモン自身も口元がニヤけている。

 

『貴様等・・・私の前で巫山戯るとは言い度胸ね!!』

 

「悪い、悪気はなかった。謝罪の意を込めてトドメを刺してやる。アルフォースブイドラモン!」

 

「わかった!」

 

「ホーリードラモンも!」

 

「ええ。散りなさい!」

 

 二体の究極体デジモンが、トドメを刺すべくエネルギーをチャージし、そしてチャージが完了する。

 

「トドメだ!シャイニングVフォース!!」

 

「ホーリーフレイム!!」

 

 アルフォースブイドラモンの胸部の装甲からV字型のビームが、ホーリードラモンの口から白い炎が吐き出され、二つの必殺技が途中で合わさり、一つの閃光となってタイガーヴェスパモンに直撃する。

 

『嫌ああああ!!?』

 

 許容量を超えるダメージを受けた事によって、光に包まれると同時に変身が解除され、人間の姿へと戻っていく。

 光が晴れると、気を失ったダイヤと壊れたデジメモリが近くにあり、戦いが終わった事を示していた。

 

「鍵は貰っていくぜ。」

 

 ユーリはダイヤの首から下げられた鍵を取り上げ、出口へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダークロアー!!』

 

「ギガブラスター!!」

 

 暗黒エネルギーと高電圧の電撃がぶつかり合い、大爆発が生じる。

 

『ふんっ!』

 

「ふっ!!」

 

 煙の中から飛び出したダークドラモンは、右腕のランスをヘラクルカブテリモンに突き刺そうとするが、体を少しずらして回避すると同時に右腕を掴んで、その勢いを利用して地面に叩き付ける。

 

『ぐおっ!?』

 

「ギガブラスター!!」

 

 ヘラクルカブテリモンは電撃を放つが、ダークドラモンは直ぐに立ち上がって電撃を回避し、体勢を立て直した。

 

『やるのうお主。ただ力尽くで来ている訳ではないようじゃな。』

 

「それなりに修羅場を潜ってきたんや。相手の力を利用するのも立派な戦術や。」

 

「懐に潜り込まれた時の対処法もキッチリ習ってるんでね。そう簡単にはやられないよ。」

 

『なるほどのぅ。甘く見過ぎておったわい。ここから先は気を引き締めんとなぁ。』

 

 そう言ってダークドラモンはランスを構え、背中の翼状のブースターから火を吹かし、ヘラクルカブテリモン目掛けて飛んでいく。

 ナオヤは、向かってくるダークドラモンを見ながらスマホを操作してヘラクルカブテリモンをサポートする。

 

『喰らえ!』

 

「サポートコマンド、ガードアップ!」

 

 ヘラクルカブテリモンが青白い光に包まれると同時に、突き出されたランスを、腕を交差させて受け止めつつも上方向へと力の向きを変えてダメージを最小限に防ぐ。

 

『甘いわ!』

 

「ぐっ!」

 

 ダークドラモンは防がれた事を想定していたのか、脚を動かしてヘラクルカブテリモンを蹴り飛ばし、距離を取る。

 

『ダークロアー連射!!』

 

 右腕のランスからダークマターをマシンガンのように連射して放ち、ヘラクルカブテリモンの行動範囲を狭めて逃げ場をなくしつつもダメージを与えていく。

 

「サポートコマンド、スピードアップ!アジリティアップ!」

 

 ナオヤがサポートプログラムを送ると、ヘラクルカブテリモンは素早いスピードを生かしたバレルロールで暗黒エネルギーの弾丸を回避しながらダークドラモンの懐に潜り込む。

 

『何!?』

 

 気付いたときにはすでに目の前に居て、頭部の三本の角で挟み込み、スピードを維持したままドリルのように高速回転しながら地面へと激突する。

 

「これぞ、昔流行ったゲーム技もどき!カワセミなんとか!」

 

『お、おのれ・・・!』

 

 ヘラクルカブテリモンはダークドラモンを地面に叩き付けた後、トドメを刺すために一度離れる。

 

「ヘラクルカブテリモン!そのままトドメだ!!」

 

「行くで!ワイの全力技!!」

 

『ワシは負けん・・・負けられんのだ!!』

 

 ヘラクルカブテリモンは体内のエネルギーを練り上げ、ダークドラモンに向けて放つ準備をし、対するダークドラモンもボロボロになりながらも右腕のランスにエネルギーを集中させ、ヘラクルカブテリモンを貫く準備をする。

 そして、互いに臨界点に到達すると、一気に放つ。

 

「ギガブラスター!!」

 

『ギガスティックランス!!』

 

 片や強烈な電撃の砲撃、片や暗黒エネルギーを纏った刺突攻撃。迫りくる砲撃をダークドラモンは真正面から受けつつも背中のブースターを吹かしながら少しずつ進んで行く。

 

「うおおおおお!!」

 

『はあああああ!!』

 

 両者が咆哮を挙げながら閃光を撒き散らしていく。このまま両者の力の拮抗が続くかと思ったその時。

 

「サポートコマンド、パワーアップ!ロックオン!」

 

 ヘラクルカブテリモンが赤い光に包まれると、電撃の出力が増幅し、ダークドラモンを押し込み始めた。

 

『何!?』

 

「クラブ、お前の敗因はただ一つ。この場において、一人で戦っていたことだ。」

 

「どれだけ強いデジモンの力を使おうと、あんさんは一人。ワイらは二人で一つ。ワイらなら、何処までも上へと目指せるんや!」

 

『ば、バカな!こんな筈では・・・!』

 

「戦場においては計算なんて無意味だ。予想外の奇跡だって起こるし、一つの些細なきっかけで逆転することだってある。」

 

「絶対的な答えは、この世には存在せえへんのや!覚えておくことやな!」

 

『ぎゃあああああ!!』

 

 ナオヤのサポートによって威力が増大した電撃の奔流に飲まれたダークドラモンは悲鳴を上げ、許容量を超えたダメージによって、光に包まれながら人間へと戻っていく。

 光が晴れると、意識を失ったクラブが倒れており、その側には変身に使われたデジメモリが砕けた状態で残っていた。

 

「鍵は貰っていくよ。」

 

 ナオヤはクラブから鍵を取り上げると、ヘラクルカブテリモンと共に部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三つ目のフロアにて、機械竜と女魔人が激しい戦いを繰り広げていた。

 

「ジェノサイドアタック!!」

 

『フライバレット!!』

 

 ムゲンドラモンの右腕から放たれた有機体ミサイルがベルスターモンの銃撃によって撃ち抜かれ、爆発を起こす。

 

「ガトリングミサイル!!」

 

 ムゲンドラモンの胸のハッチからガトリングガンを内包したミサイルが発射され、銃弾を撒き散らしながらベルスターモンに向かって飛んでいく。

 

『甘いよ!』

 

 マフラーを翼に変化させて空を飛びながら銃弾を回避し、二丁の拳銃でミサイルを撃ち抜いて破壊する。

 

「トライデントアーム!!」

 

『ダブルクロウ!!』

 

 ムゲンドラモンの左腕から放たれたクローを、銃に仕込んだナイフで弾いて返す。

 

「ギガデストロイヤー!!」

 

『ダブルクロウ!!』

 

 放たれた高威力のミサイルをリゾマデロートの仕込みナイフで切り裂いて、真っ二つになったミサイルが不規則に描いて飛び、ベルスターモンの背後で爆発する。

 

「なんつー対応力っすか・・・!」

 

『ただ体や技の威力が大きければいいってもんじゃないよ!』

 

 ベルスターモンはムゲンドラモン目掛けて飛翔し、懐に入り込んだ瞬間に銃撃の体術の乱舞を繰り出す。

 

『ハリケーンビスショット!!』

 

 リゾマデロートの銃撃と、蹴ると同時にブーツに仕込んだ銃で銃撃を放つ乱舞に、ムゲンドラモンは堪らず後退する。

 

「グッ、ウウッ!?」

 

「ムゲンドラモン!?」

 

「大丈夫だ。この程度掠り傷だ。」

 

『無理しない方がいいんじゃない?これかなり痛いよ?』

 

「ふん、この程度痛い内には入らんわ!」

 

『だったらその体がボコボコに凹みまくるまで撃ちまくってやる!!』

 

 再びベルスターモンは飛び上がると、空中から二丁拳銃を連射してムゲンドラモンを撃ち抜いていく。

 鋼鉄の身体の前に殆どの銃弾が弾かれるが、その威力はかなり高く、かの七大魔王「ベルゼブモン」と同等の戦闘能力を持ったベルスターモンの撃つ銃撃の前に、ムゲンドラモンはダメージが蓄積していき、装甲の殆どが凹んでいく。

 

『ホラホラどうしたの?反撃しないならこのまま蜂の巣にしてあげるよ!!』

 

「ぐっ、うう・・・!!」

 

「ムゲンドラモン!」

 

「大丈夫だ!!俺を信じろ!!」

 

「・・・わかったっす!」

 

『何をゴチャゴチャと話してるの!?これで終わりだよ!!』

 

 ベルスターモンは満身創痍のムゲンドラモンに向かって飛び込んで行き、懐に潜り込む。

 

『終わりだ!ハリケーンビスショット!!』

 

 トドメを刺すべく、蹴りを放とうとしたその瞬間。

 

「今だ!!」

 

 

 

―――ガシッ!

 

 

 

『何!?』

 

「うおおおお!!」

 

 突き出された足を右腕で掴み、力尽くで振り回しながら地面にベルスターモンを何度も叩き付ける。

 

『がっ!?ぐっ!?ぐえっ!?』

 

「ふんっ!!」

 

 強大なパワーで地面に何度も叩き付けられたベルスターモンはその後上空へと放り投げられ、平行感覚が麻痺した状態で空中にて隙を大きく晒す。

 

「ナオヤ!!」

 

「サポートコマンド!ロックオン!!高速チャージ!!」

 

 ユウヤはスマホを操作してムゲンドラモンにサポートプログラムを転送すると、ムゲンドラモンは背中の砲台をベルスターモンに向けると、エネルギーを瞬時に充填し一気に放つ。

 

「エネルギーフルチャージ!!ムゲンキャノン!!」

 

 背中の砲台から放たれた超弩級のエネルギー波がベルスターモンを飲み込み、その身を焼き尽くす。

 

『うあああああ!!?』

 

 強力な砲撃を喰らったベルスターモンは地面へと落ち、許容量を超えたダメージを受けた事によって、身体は光に包まれながら電子分解されて人間へと戻っていく。

 光が晴れると、そこには人間に戻り気を失ったハートと、変身に使われた壊れたメモリだけが存在していた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」

 

「お疲れっす。ムゲンドラモン。後でキッチリ修理するっすからね。」

 

 ムゲンドラモンに労りの言葉を投げ掛けると、ユウヤはハートから鍵を取り上げ、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『デルブリッツ!!』

 

「エンドワルツ!!」

 

 ガンドラモンの銃撃がクレニアムモンを襲うが、クレニアムモンは慌てることなく槍を高速回転させて音速の鎌鼬を発生させて弾丸を弾き落とす。

 

『ぬうぅん!!』

 

 銃撃が効かないとわかったのか、今度は近接戦闘に切り替えたようだ。その巨体を生かした体当たりでクレニアムモンに迫り、押し潰そうとする。

 

「くっ!」

 

 クレニアムモンは、自身の倍もあるその巨大に潰されないよう立ち回り、クラウ・ソラスで切り付けていく。

 

『効かん!!』

 

 ガンドラモンは頑丈な防御力に物を言わせ、クレニアムモンの攻撃など気にする様子を見せることなく突進していく。

 

「ぐあっ!?」

 

 巨体の突進を食らったクレニアムモンはその衝撃で吹っ飛び、地面へと横たわる。

 その隙を逃さず、ガンドラモンはクレニアムモンを踏みつけて至近距離から撃ち抜こうとする。

 

『プラッツェンクロイツ!!』

 

「サポートコマンド!分身の術!!」

 

 銃撃される瞬間、原田部長がスマホを操作してサポートプログラムをクレニアムモンに転送する。

 その瞬間、クレニアムモンは自分そっくりの分身を作り出され、偽物の自分が撃ち抜かれて消滅し、本物は少し離れた所で膝を付きながら五体満足でいた。

 

『・・・逃れたか。』

 

「助かったマスター。」

 

「気にするな。ここから巻き返せばいい。サポートは任せろ。」

 

 クレニアムモンは立ち上がり、気合いを入れ直してガンドラモンと向き合う。

 

『・・・どんな小細工をしようが、真正面から叩き伏せてやる。』

 

「我々は負けん・・・負ける訳にはいかん!この背に背負った市民の安全に賭けて!!」

 

「マスターの言う通りだ。我々は負ける訳にはいかない!!」

 

 原田部長が宣言すると、クレニアムモンも同じく言う。

 その様子を見たガンドラモンは、眩しいものを見ているかのように目を細める。

 

『・・・眩しいな。俺も、そんな風に考えていた時期があった。』

 

「今からでも遅くはない。投降して罪を償うんだ!」

 

『・・・言った筈だ。テロ組織に加担した時点で、俺の辿る道は二つだけだとな。勝とうが負けようが俺はもう止まれない。』

 

「この石頭が!!」

 

 原田部長の説得にガンドラモンは一蹴する。ガンドラモンの言う通り、テロに加担した時点でそのメンバーの行く先は二つに一つなのだ。

 勝って生きるか、負けて捕まり、二度と表の世界へと戻れないのどちらかなのだ。

 それをわかっていながらも原田部長は説得を諦めないのだ。

 

『・・・もう止まれない。止められないのだ!この世から悪党共を滅ぼさない限り!!』

 

「このバカ者がぁ!!」

 

 ガンドラモンは砲門をクレニアムモンに向け、一斉射撃の体勢に入る。

 

『・・・コイツで沈めてやる!!』

 

「マスター!」

 

「ああ!サポートコマンド、スピードアップ!ガードアップ!アジリティアップ!」

 

 原田部長も迎撃するべく、クレニアムモンにサポートプログラムを転送する。

 そして、ガンドラモンの砲門が火を吹いた。

 

『方向調整完了!ゲヴァルトシュベルマー!!』

 

「エンドワルツ!!」

 

 ガンドラモンが前方に向けることが出来る砲門を動かして、クレニアムモンに向けて一斉砲撃を放つ。

 対するクレニアムモンはクラウ・ソラスを前方に向け、高速回転させて迫りくる弾丸を片っ端から叩き落とし、ゆっくりとガンドラモンへと近付いていく。

 

『うおおおおお!!』

 

「はあああああ!!」

 

 これは最早根比べだった。ガンドラモンの弾丸の嵐がクレニアムモンを貫くのが先か、クレニアムモンのエンドワルツがガンドラモンを切り刻むのが先か、信念のぶつかり合いだった。

 そして、終焉の時は訪れる。

 

 

 

―――ガチン!

 

 

 

『!?』

 

 

 

―――ガチン!ガチン!

 

 

 

 

 ガンドラモンの砲撃が止まった。弾が尽きたのだ。

 

「はあああああ!!」

 

 弾が尽きた瞬間、クレニアムモンは一気に近付き、クラウ・ソラスでガンドラモンを切り刻んでいく。

 

『ぐあああああっ!?』

 

 超音速の衝撃波と、超音速の斬撃によってガンドラモンは切り刻まれ、許容量のダメージを超えたことによって光に包まれながら電子分解されていく。

 光が晴れると、そこには人間に戻ったスペードと、変身に使われたデジメモリが壊れた状態で地面に落ちており、戦いが終わった事を指し示していた。

 

「・・・負けたか。」

 

「そうだ。お前は負けたんだ。」

 

 地面に倒れたスペードを原田部長は見下ろし、負けた事を伝える。

 

「・・・清々(すがすが)しい気分だ。腹の底に溜まっていた怒りや憎しみが、全部吐き出したかのような気分だ。」

 

「そうか。それは何よりだ。」

 

「・・・アンタが俺の上官だったら、こんな道に進まずに済んだのかもしれないな。」

 

「わからんぞそれは。案外、失敗ごとに怒ってストレスを溜めさせていたのかも知れんぞ?」

 

「・・・それでも、罪をなすり付けられるよりはマシだろうな。」

 

「そうか。」

 

「・・・持って行け。エレベーターの鍵だ。」

 

 スペードが持っていた鍵を投げ渡すと、その場に大の字になって倒れる。

 

「・・・世界の行く先がどうなるのか、ここで眺めているとしよう。行け。」

 

「後で手錠を掛けに来る。それまで逃げるんじゃないぞ。」

 

「・・・ふん。」

 

 鍵を受け取った原田部長はその場を後にし、クレニアムモンと共に部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな無事か!」

 

「何とかね。」

 

「無事勝ったっす!」

 

「全員、鍵を手に入れたようだな。」

 

「行きましょう。時間がないわ。」

 

 最初の広場へと集まった全員は、お互いの持っている鍵を見せ合い、エレベーターの操作盤に向かう。

 それぞれが持っている鍵を操作盤に差し込み、エレベーターの扉を空けて乗り込んでいく。

 全員が乗り込み、扉が閉じると同時にエレベーターが上昇し、最上階へと向かって昇っていく。

 

「後はジョーカーだけか。」

 

 ユーリが呟くと、各々がそれぞれの相手と戦ってきた様子を思い浮かべる。

 

「あのダイヤって人、相当悲惨な過去を送ってきたのね。」

 

 ミカが呟く。

 

「どこまで本当かわからないけど、クラブって男も、何も悪くないのに社会の悪意に狂わされてああなったんだろうね。」

 

「ハートって奴もそうだったっす。自分の個性をただ前面に押し出したいだけだったのに、くだらない悪意で人生を壊された被害者でもあったっす。」

 

「スペードもそうだった。元々の志は国を守りたいというもので、腐敗していた上官のせいで悪に堕ちてしまった。」

 

 ナオヤ、ユウヤ、原田部長が戦ってきた相手の事を不憫に思いながらその思いを口にする。

 

「けど、だからといって、今の世界をリセットしてやり直すなんて間違ってる。そんな急激な変化を、今を生きてる人間達が受け入れる、受け止めることは出来ないんだ。ジョーカー達が歩んできたような過去が繰り返されないように、未来を少しずつでも変えていくしかないんだ。」

 

「ユーリの言う通りだ。こんな世の中でも、今を生きている人間達の未来を潰していい理由にはならない。」

 

 ユーリの言葉に原田部長が同意し、それに続いて全員も頷く。

 

「ここから先は、マジで後戻りできない最終決戦の戦場だ。皆、覚悟はいいな?」

 

 ユーリが全員に問い掛けると、返答は決まっていたかのように言い返す。

 

『ええ!/ああ!/うっす!/もちろんだ!』

 

「行くぞ!最後の決戦だ!!」

 

 エレベーターが丁度停止し、扉が開かれる。世界の命運を決める最後の戦いに、足を踏み入れた。




後編に続く。
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