・時空の壁に穴を空けて世界を移動するパラレルモンをどうにかできるのは、時空を操作出来るクロノモンしかいないと思ってクロノモンを選出しました。
―――ミラーワールド
「・・・・・・。」
正確な場所が不明なミラーワールドのとある場所。そこに
一体のデジモンが身を屈めて休んでいた。。
名はパラレルモン。
ユーリ達との戦闘で技同士がぶつかった事によって発生した爆発に巻き込まれてこの世界に転移し、戦闘で負ってしまった傷を癒す為に人やデジモンの気配が無いこの異空間にて身を休めていた。
傷を癒し始めて早数日。体力も大分回復し、完全復活まであと少しだという所に、自身の周りに異変が起きる。
「・・・・・・?」
何やら足音が聞こえる。閉じていた目を開き、その正体を確かめる。
「見つけたぜ!新種のデジモン!」
「コイツを倒せば100億クレジットが手に入るんだよな!」
「俺達で倒そうぜ!そして賞金は山分けだ!」
パラレルモンの目に入ったのは、複数の人間と、それに付き従っているデジモン達だ。会話の内容からして、自分を討伐しに来たらしい。
あと少しで傷が癒える所だと言うのに思わぬ所で邪魔をされてしまい、それに怒ったパラレルモンは仕方なく相手をすることにした。
「邪魔を・・・するな・・・。」
「へっ!関係ないな!行け、ガルルモン!!」
「うおおお!!」
「ユニモン!ぶっ飛ばせ!!」
「はあああ!!」
「トータモン!突撃だー!!」
「おりゃあああ!!」
ガルルモン
成熟期 獣形 ワクチン
必殺技 フォックスファイヤー
・青白銀色の毛皮に体を覆われた、狼のような姿をした獣型デジモン。その体毛は伝説のレアメタルと言われている「ミスリル」のように硬く、肩口から伸びているブレードは鋭い切れ味を持っており、触れるものを寸断してしまう。極寒の地で鍛えられた筋肉と激しい闘争本能を持ち、肉食獣のような敏捷性と標的を確実に仕留める正確さを持っており、他のデジモンからは恐れられている存在。しかし、知性が非常に高く、主人やリーダーと認めた者に対しては忠実に従う。
必殺技は口から吐き出す高熱の青い炎『フォックスファイアー』。
ユニモン
成熟期 聖獣型 ワクチン
必殺技 ホーリーショット
・伝説の聖獣、ユニコーンの角とペガサスの羽を持ち合わせた合成デジモン。背中に生えた大きな翼で、コンピュータネットワークの世界を瞬時に駆け回り、額から伸びた鋭い角で敵を突き刺す。野生(?)のユニモンは暴れ馬のごとく気性が荒いが、手なずけてしまえば手足のように扱うことができる。
必殺技は大きな口から吐き出される気功弾『ホーリーショット』。
トータモン
成熟期 爬虫類型 データ
必殺技 シェルファランクス
・鋭いブレードの生えた甲羅で武装した陸亀タイプのデジモン。甲羅も本体も高密度で形成されているため、見ためより重く、歩く度に凄まじい地響きを起こす。また、鳴き声は金属的で甲高く“騒音デジモン”の異名を持っている。通常の歩行動作は極めて遅いが、手足を引っ込めて円盤状になり回転すると、通常の10倍以上の速度で移動できる。
必殺技は、甲羅のブレードを多弾頭ミサイルの様に発射する『シェルファランクス』。
三体のデジモンがパラレルモンに向かって突撃し、仕留めようと襲い掛かる。が―――。
「ふん!」
「があっ!?」
パラレルモンに取っては鬱陶しく飛び回るハエのようなものであり、目障り+耳障りなのもあってその腕ではたき落とした後、その巨体で踏み付けて一瞬で抹殺したのであった。
「え、え?」
次の目標に定めたのは、そこに居た人間達だ。彼等を確実に葬る為、自らの身体を砲台を支える台座にし、顔を突き出して単眼にエネルギーを集約させる。
「お、おい!やめてくれ!!」
「消え失せろ・・・アブソーベント・バン!!」
『うわああああっ!!』
極太の閃光が放たれた後、そこには何も存在せず、ただ破壊の跡が残るだけであった。
「・・・ちっ!」
この時、パラレルモンは舌打ちをした。本来アブソーベント・バンは、その光線を当てた相手を吸収するか平行世界へと飛ばす技であったが、何故かわからないが本来の機能が発動せず、ただの強力な破壊光線と化していた。
「何者かが・・・私の能力を封じている・・・。」
異変に気付いたのは先程の人間達と戦闘に入る前であった。
戦闘をするのが面倒だったのでいつものように平行世界へと移動しようとしたが、何故かそれが出来ず、空間に穴を空けて移動することが出来なくなっていた。
能力を封じているのがクロノモンだと知らないパラレルモンだが、このままでは平行世界への移動ができない。
仕方なくこの世界で力を蓄える事に専念し、積極的に人間とデジモンを襲ってエネルギーを集める事に切り替えたのだった。
「私が・・・最強となる・・・。」
いつからこの胸(デジコア)に刻まれていたのか知らない本能に身を任せ、パラレルモンは休んでいた地を後にしたのであった。
―――グローイングドーン アジト
「ほらよ。今日の稼ぎだ。」
「ありがとう。」
ユーリが金の入った封筒をキョウに渡し、それを見たレーナは喜びを顕にする。
「ありがと!コレで家の古くなってた箇所が修理できるわ!」
「あんまり彼等を当てにしちゃダメよ?レーナ。彼等だって何時までもここにいる訳じゃないから、安定した収入を得る為に少しでも彼等から学ばないと。」
「うっ、わかってはいるんだけど・・・。」
喜んでいた所をプリスティモンが釘を差して忠告する。
「人やデジモンなど、意思のある者は楽な方へと流れて行ってしまうものだ。だからこそ己を律して物事を見極め、心と感情をコントロールする事が大事だ。」
クロノモンが緑茶を飲みながらレーナに心得を教える。
「あ、はい。その通りでございます。」
レーナがクロノモンに対して敬語で返す。初めて顔を合わせた時からクロノモンに対して崇拝するかのような態度を取るようになったのだ。
理由を聞いてみたら、何だか失礼な態度を取ったらマズイ気がするとの事らしい。
「ていうかクロノモン、お前何でここに居るんだ?結界の維持の為に何処か行ってたんじゃないのか?」
ユーリがクロノモンがここに居る理由について尋ねると、クロノモンは答えた。
「結界自体は張り終えた。そして現在も維持する為に集中している。」
「集中って、俺には茶を飲んでゆっくりしてるようにしか見えないんだが?」
「集中している。現在、私の本体は宇宙空間から世界全体に結界を張り巡らせ、パラレルモンがこの世界から逃げないようにしている。」
「本体?てことはここにいるアンタは分身か?」
「そうだ。結界を張ったことを知らせに来たのだが、そこのキョウと言う人間に茶でもどうだと誘われてな。こうして饗されているという訳だ。」
「超究極体を相手に茶に誘うって、どんな肝をしてんだか・・・。」
そうしている間にクロノモンは緑茶を飲み干し、湯飲みをテーブルの上に置く。
「馳走になった。では、私は本体に戻る。何か変化があればすぐに知らせよう。」
「ああ。またな。」
その会話を最後にクロノモンは光に包まれ、一筋の光となって空へと昇っていった。
「・・・所でユーリって、どうやってクロノモンと知り合ったの?」
レーナがユーリに対してクロノモンとの出会いを聞く。
「ああ、それはな。昔、俺が警察官になってから間もない頃にデジタルワールドに行く機会があったんだ。」
「え?ユーリさんって警察官なんですか?」
警察官と言うワードにマコトが反応して聞いてきた。
「あれ?言ってなかったっけか?ここじゃ役職や肩書きなんて名乗っても意味ないなって思って言わなかったんだ。」
「初耳です。」
「警察官って言ってもかなりの問題児よ。犯罪者の病院送りは当たり前、物は壊すし、酷い時には犯罪組織のアジトのビルを破壊した事もあったわ。」
ミカが補足し、ユーリがどれだけの事をしでかしてきたかをマコトに教えた。
「どれだけ問題起こしてるんですかユーリさんは!?」
「話を戻すぜ。んで、俺がデジタルワールドに行った時、一体のデジモンと出会ったんだ。名はヒョコモン。次代のクロノモンとして育てられていた弟子のデジモンだったんだ。」
「次代の、ですか?」
「ああ。その時の先代のクロノモンは、近い内にデジモンとしての寿命が尽きるのを薄々感じていたんだ。それで、自分の後継者を育てる為に修行の旅に出させていたんだと。んで、俺もデジモンの事をもっと詳しく知る為に、ブイモンと一緒に旅する事にしたのさ。」
「それが、ヒョコモン。後のクロノモンとの出会いですか。」
「懐かしいなぁ。目を閉じれば、あの頃が目に浮かぶぜ。」
マコトが言うと、ブイモンも釣られて目を閉じて思い出しながら言う。
「それからの事だが、ヒョコモンは順調に旅を進めて、ヒョコモンは成熟期のブライモンに進化して、その後完全体のブテンモンに進化して、修行の旅を終わらせたんだ。」
「あれ?究極体に進化してないのに旅を終わらせたんですか?」
「いや、むしろここからが本番だった。修行を終えたブテンモンは、先代クロノモンから最後の修行として自分を倒せと言ってきたんだ。当然、究極体にすら進化していないブテンモンはこれを拒否。だけど先代クロノモンは自分と戦わせて、倒される事によって自分の地位と力を継承させようとしたんだ。このままじゃやられる。師匠の期待に応える為にも、ようやく戦う決意をしたんだ。だが、クロノモンの力は絶大で、圧倒的な力の前に心が折れそうになった。けど、その時俺達がブテンモンに喝を入れてやったんだ。」
『お前は何の為にここまで来たんだ!?師匠を超える為だろ!?後を継ぐ為だろ!?だったら!漢なら、師匠だけじゃなく、自分さえも超えていけ!!』
「それがきっかけになったのか、ブテンモンは新たなクロノモンに進化して、先代クロノモンを倒して、本当の意味で修行を終えて、今の力と地位を受け継いだんだ。」
「それが、あの今代のクロノモン何ですね。」
「今でこそ滅多に会うことは出来なくなっちまったが、アイツとは友達さ。会えなくなったとしても、お互い元気でやってるなら寂しくないさ。」
「何だかすごいですね。そこまで壮大な冒険をしていたなんて。」
「以上、俺達とクロノモンの旅の物語でしたっと。」
ユーリがそう締めくくると、出口へと歩いて行く。
「何処か出かけるんですか?」
マコトが聞いてきたのでユーリは答える。
「ああ。この辺りの地理をまだ完璧に覚えられてなくてな。散歩も兼ねて覚えてくる。」
「わかりました。行ってらっしゃい。」
マコトはそう言って見送る。
「ミカ、ナオヤ、ここの守り頼むぜ。」
「わかったわ。」
「なるべく早く帰って来てよ。」
ユーリの頼みにミカとナオヤは承諾して見送った。
「よせ・・・やめろ・・・!」
「・・・・・・。」
場所が何処なのか不明なミラーワールドにて、パラレルモンは自分を狩りに来たクリーナーとデジモンを返り討ちにしていた。
自分に襲い掛かってくるデジモンを力尽くで叩き潰し、力を得る為にデジモンを吸収(データロード)し、クリーナー達も自分の力とする為にその場で喰って来た。
相手にするのは殆どが成熟期だが、稀に完全体も存在しており、幾分かは腹は満たされた。
そして、今度はその場に尻餅をついている人間に目を付け、ゆっくりと歩いて行く。
「やめろ・・・やめてくれ!!」
「・・・いただき・・・ます・・・。」
「うわーーーー!!?」
この世界に来て、人間から感情エネルギーを吸収する技術を見て学んだパラレルモンは、対峙した人間からe−パルスを根こそぎ吸い上げると、凍結してコールドハート状態となった人間を放り出して、次の獲物を見つける為にその場から離れるのであった。
「・・・もっと・・・もっと力を・・・。」
―――グローイングドーン アジト
「先程、国民保護省から連絡が来てな。」
ユーリとブイモンが散歩から帰ってくると、キョウが話を切り出す。
「ここ数日間、多数のクリーナーがコールドハートされる事件が多発している。容疑者と思わしきデジモンの姿が確認されたから見つけ次第、即排除して欲しいとの事だ。」
「まさか、それって・・・。」
トモロウが聞くと、キョウは頷いた。
「おそらくパラレルモンの仕業だろう。」
「とうとう動き出しやがったか・・・絶対倒してやる!」
ユーリは拳を掌に打ち付けると絶対に倒すという決意を固める。
「今、パラレルモンは何処にいるのかわかるの?」
ミカがそう言うと、キョウは頷いた。
「奴は現在、ミラーワールドを徘徊中で、クリーナーやデジモンを見つけ次第捕食していっているようだ。そしてルートを計算したところ、シャングリラエッグに向かっていってるようなんだ。」
「シャングリラエッグ?何だそりゃ?」
ユーリは気になる単語を聞いて質問する。
「シャングリラエッグは、この世界の理想郷そのものであり、あらゆる幸福が約束された場所なんです。犯罪歴のある人間は入れず、内部で犯罪を犯したら即座に追放される、セキュリティが完璧な施設なんです。」
マコトがそう説明すると、ユーリは疑いの目を向ける。
「あらゆる幸福だぁ〜?余計胡散臭えな。この世に絶対的な幸福なんてあるわけ無いだろ?あったとしたら絶対何か裏があるだろ?」
「まあ、ユーリさんからすれば疑うのも無理はありませんが。」
「つーか、何でお前そんなに詳しいんだ?」
「実は僕、シャングリラエッグ出身なんです。」
「何だって?だったら何でクリーナーなんてやってんだ?」
「僕のサポタマからキロプモンが生まれて、それがきっかけで追放されたんです。」
「マジかよ。こう言っちゃ何だが、お前は戻りたいって思ったことは?」
「いいえ。だって、あそこで暮らすよりキロプモンと一緒に居るほうが大事だったから。」
「そうか。お前がいいなら何も言わねえよ。」
その会話を最後に、キョウの話へと戻った。
「話を戻すぞ。そこには住民がたくさん住んでいる。デジモンによる被害を出す訳には行かない。よって、五行星含む名のあるクリーナーに対してパラレルモンの討伐依頼が出されてるんだ。」
「なるほどな。ヤツの目標はわかった。で?何処で迎撃するんだ?」
「すでに五行星が向かっている。他にも多数のクリーナーが出撃している。だが、もしパラレルモンだとすれば、今のクリーナー達では勝てない。このまま突破されるのも時間の問題だろうな。」
―――タクティクス アジト
「それで、あの自称天才くんに続いて君まで失敗したと?」
「申し訳ありません、クレイ様・・・!」
内藤からの失敗報告を聞いたクレイではあるが、怒りや失望感などこれっぽっちも浮かばなかった。むしろ、素晴らしい情報を持ち帰ってくれた事に機嫌を良くしている。
「いや、構わないよ。むしろよく無事でいてくれた。君が対峙したデジモンは想像以上の強さを持っていたのだろう?なら、私は君を責めないよ。むしろ素晴らしい情報を持ち帰ってくれたことに特別ボーナスを出したいくらいだ。」
「では・・・!」
「ああ。目当てのデジモンではなかったが、これはこれで使い道がある。場所や関係者もはっきりしている。ならば多少揺さぶりをかければ、我々の手駒として莫大な利益を齎してくれるのは間違いないだろう。」
「奴らはグローイングドーンに身を寄せているようです。今から襲撃を仕掛ければ・・・。」
「丁度、我々が観測したデジモンも奴等のいる場所付近を通過するようだ。そのついでに奴等向けて戦力を―――。」
『残念だがそれはさせない。』
「誰だ!?」
この場に第三者の声が響き渡る。聞こえてきた声の主に反応し、内藤はすぐに警戒して辺りを見渡す。
「姿を見せろ!!」
『よかろう。』
内藤の要望に応えると、声の主は眩い光とともに現れる。
「お前は、デジモンか?何者だ!」
「我が名はクロノモン。貴様らに忠告をしに来た。」
「忠告だと?」
クロノモンの言葉に内藤が反応するが、それに構わずクロノモンは続ける。
「奴等に、グローイングドーンに身を寄せている者たちに手を出すな。貴様らに手を出されてはこちらのやる事に支障が出てしまう。手を出さないのなら貴様らのやる事には目を瞑ってやる。ただし手を出すのなら、そちらの事情がどうなろうと容赦はせん。」
「いきなり出て来てふざけた事を!ギガスモン!迎え撃て!!」
「うおおお!!」
ギガスモンがその剛腕を振りかざし、クロノモンを殴ろうとするが、クロノモンは慌てることなく腕を突き出し、力を発動させる。
「むん!」
「・・・・・・。」
「ギガスモン!?」
ギガスモンの動きが、静止画のように止まってしまうと、内藤はその様子に動揺し、動きを止めてしまう。
「今のは警告だ。これ以上こちらに牙を向けるというのならば、貴様等の存在を歴史上から消滅させる・・・!」
クロノモンは両腕の袖を合わせると、袖に描かれた太陽の紋様から炎を噴出させ、次は攻撃するという意思を見せる。
その様子を見ていたクレイは、表情を変えることなく立ち上がり、クロノモンと向き合う。
「わかった。そちらの要望に従おう。」
「クレイ様!?」
「構わない。奴の力は未知数だ。プロガノモンを仕掛けても勝てる未来がみえない。ここは大人しく引き下がった方が一番賢い選択だ。だから内藤、君も手を引くんだ。」
「・・・わかりました。」
「要望を受け入れてくれて感謝する。」
クロノモンは炎を消すと同時に、ギガスモンの状態も元に戻す。
通常の状態に戻ったギガスモンは、何が起こったのがわからずに混乱するが、内藤が嗜めて手を引かせる。
「ちなみにこの忠告は他の五行星やワールドユニオン、国民保護省の連中にも行なった。故に、余計な真似はしない事だ。さらばだ。」
そう言ってクロノモンは再び光に包まれ、その場から去ったのであった。
「・・・ふう。」
クレイは大きく息を吐くと、力が抜けたように椅子に座り込む。
「あのクロノモンとか言うデジモン・・・途轍もない力を秘めていたな。あのままぶつかっていたら、我々だけでなく文字通り全てを失っていた。」
「申し訳ありませんクレイ様。私の力が及ばず・・・!」
「謝る必要はない。あんな風に時間を止めるような攻撃を仕掛けられると、私も対処のしようがない。ここはあのデジモンの要望に応えるとしよう。」
そう言ってクレイは、自分の机から何やら計画書のようなものを取り出し、シュレッダーに投入して破棄するのであった。
「さて、私は五行星の仕事に向かわなければならない。近隣の住民の避難をよろしく頼むよ。」
「はっ!」
そう言ってクレイは内藤に命令し、アジトから出て行ったのであった。
―――グローイングドーン アジト
「・・・以上が通達された作戦の内容だ。」
「・・・言わせてもらうぞ。無謀すぎる。」
キョウが話した内容は、あまりにも無謀すぎる内容であった為、ユーリは無謀だと一蹴した。
「迎え撃つ為にルートの先回りをするのはいい。だけど、相手の戦力に対して質も量も圧倒的に不足している。しかも、奴は究極体の中でも上位に位置する程の戦闘能力を持っている。このまま突っ込ませても奴に一蹴されるだけだ。」
「俺もそう思ってる。だが俺達の戦力の質を考えると、コレしかないんだ。」
「改めて聞くとこの世界のテイマーのレベル低過ぎだろ。」
「だからこそ、君達を本当の意味での最終防衛ラインとし、パラレルモンの力をなるべく削ぎ落としてぶつけたいんだ。負担がかなりかかることもわかってる。だがそれを承知の上で頼みたい。力を貸してくれ!」
キョウが頭を下げ、ユーリ達に頼み込む。
「頭下げる必要はねえよ。元々俺達はパラレルモンを倒す為にここに居るんだからな。」
「言われるまでもないわ。」
「ボクも全力を出す。」
「・・・ありがとう。」
ユーリ達三人は快く引き受け、キョウは感謝の言葉を述べる。
「ねえ、そろそろ行った方がいいんじゃない?いくら五行星が強くても、そう長くは保たないんじゃない?」
レーナがそう言うと、キョウはグローイングドーン全員に向かって言う。
「全メンバーに告げる!俺が出す命令は、一つだけだ。全員、生きて帰るぞ!!」
『おう!/ええ!/ああ!』
「ムラサメモン、頼む。」
「わかった。はあっ!」
ムラサメモンが太刀を振るうと、ミラーワールドへの道が開かれる。
「行くぞ!!」
キョウの号令と共に、全員がミラーワールドへと突入するのであった。
―――ミラーワールド
「クソが・・・!」
「コレは予想外ですね・・・!」
五行星のメンバーであるカイトと、同じく五行星である「金田ゲンジョウ」が、目の前にいるパラレルモンに対して悪態をつき、自分のパートナーデジモンがやられた事もあって苛立ちを隠せないでいた。
「そんな・・・カイト様がやられるなんて!」
「それだけじゃない・・・私のライラモンまでやられたわ!」
五行星の一人の「沙海ホノカ」が、心底心酔しているカイトが倒された事にショックを受け、同じく五行星の「ローズ・ウッドヴィル」が、パートナーデジモンが倒された事にショックを受けていた。
「いやはや、まさかこれほどの強さを持っていたとは・・・。」
クレイも、自身のパートナーであるプロガノモンが倒された事によって自身の末路を悟り、静かに項垂れるのであった。
「貴様ら全て・・・私が喰らう・・・。」
「ざけんな!フレアモン!!さっさと立て!!前みたいな無様な姿は見せんな!!」
「ぐうぅ・・・うおおおお!!紅蓮獣王波!!」
まだこの場に残っていたフレアモンが炎の獅子を飛ばしてパラレルモンにぶつけようとするが、パラレルモンはつまらなそうに炎の獅子をはたき落とし、フレアモンには目を向けずに技を撃つ体勢に入った。
「ぬるい・・・エンドレストランス!!」
パラレルモンが空間に穴を空けて、その穴に両腕を突っ込む。その瞬間、五行星達の周囲に無数の穴が開き、その穴からパラレルモンの腕が飛び出して来ると、文字通り「袋叩き」にした。
『ぐあああああっ!?』
『きゃああああ!?』
無数の腕から袋叩きにされた五行星はその場で倒れ、意識を失う寸前となる。
「貴様等の感情・・・貰うぞ・・・。」
パラレルモンが五行星のe−パルスを喰らおうと腕を伸ばしたその時―――。
「シャイニングVフォース!!」
「!!」
どこからともなくV字型の光線が一直線にパラレルモンに向かって飛んでいき、それに気付いたパラレルモンがその場から瞬時に離れる。
「やっと見つけたぜ!パラレルモン!!」
五行星が戦っていた戦場にユーリが駆け付けると、続いてアルフォースブイドラモンもこの場に現れる。
「もうお前は何処にも逃げられない!大人しくするんだな!」
アルフォースブイドラモンがビームソードをパラレルモンに突き出しながら言い放った。
「ちょっとユーリ、足速いって。」
少し遅れてミカもホーリードラモンに乗ってやって来る。
「早く倒したいのはわかるけど、皆のペースも考えてよ。」
ナオヤもヘラクルカブテリモンに乗りながらユーリに言う。
「コイツがパラレルモン・・・近くにいるだけで凄いプレッシャーだ・・・!」
トモロウも実際に対峙してその存在感を感じ取る。
「すっげぇでっけー・・・今の俺達じゃ勝てそうにないってな・・・!」
ゲッコーモンもその身でパラレルモンの強さを感じ取り、身を震わせる。
「パラレルモン・・・この強さ、未知数・・・!」
「そうですねキロプモン。ですが、僕達の役目は直接戦うことじゃない。」
キロプモンがその目で見た情報を解析するが、まともに分析できずにいた。
その様子を見たマコトが自分達の役割を言う。
「あたし等の役目は、五行星の連中を逃がすこと。ユーリ達が心置きなく戦えるように。」
「その通りよレーナ。無理して参戦すれば逆に足手まといになっちゃうわ。」
レーナの言葉にプリスティモンが同意し、気絶している五行星を一か所に集める。
「ミラーワールドから出せば、後は国民保護省が何とかしてくれる。だから心配はしないでくれ。」
キョウもカイトを担いで一か所に集めて、全員が揃った所でキョウがムラサメモンに命令する。
「頼む。ムラサメモン。」
「わかった。はあっ!」
ムラサメモンが太刀を振るってゲートを開き、五行星を退避させた。
「これで心置き無く戦えるな。さあ、あの時の続きと行こうぜ!」
ユーリがスマホを構えると、ミカとナオヤも同じくスマホを構え、パートナーデジモンも戦闘態勢を取る。
「貴様等・・・私の邪魔をするな・・・。」
パラレルモンが睨みつけるが、それに怯むことなくユーリは言い返す。
「へっ!何度だって邪魔してやるよ!お前を倒して、元の世界に帰る!行くぜ、アルフォースブイドラモン!」
「おう!」
決意表明するかのように二人は気合を入れてパラレルモンへ拳を突き出した。
「・・・今はまだ・・・万全ではない・・・。」
パラレルモンが呟くと、何かを思い付いたのか手元に何かを出現させる。
「ソイツは!?」
トモロウがパラレルモンの手に持っている物を見て驚愕する。
「サポタマ!?何をする気!?」
レーナがサポタマを見て何をするのかを聞く。
「実験だ・・・出でよ・・・我が下僕・・・。」
パラレルモンがサポタマにエネルギーを送ると、サポタマが怪しく光り、不気味な鼓動と共に強く光ってデジモンが誕生する。
「うおおおお!!」
誕生したのは、装甲服に身を包んだケンタウロスの様な姿をしており、両腕にガトリングガンを装備したサイボーグ型デジモンの「アサルトモン」であった。
アサルトモン
完全体 サイボーグ型 ウィルス
必殺技 ジャスティスマサカー サプライズアタック
・装甲服で戦闘力を高めた特殊機動デジモン。上半身が人型、下半身が4足という姿のため、中身はケンタルモンの特殊部隊ではないかと噂されているが、確認したものはいない。
必殺技は、正義の名のもとに両腕のガトリングや腹の機銃などを叩きこむ『ジャスティスマサカー』と、気配を消して背後から襲い掛かる『サプライズアタック』。
「デジモンが、生まれた!?」
「コレは予想外・・・!」
マコトとキロプモンが、デジモンがサポタマを使ってデジモンを生み出した事に驚愕する。
「実験は成功・・・十分な収穫だ・・・撤退する・・・。」
「逃がすかよ!アルフォースブイドラモン・・・うおっ!?」
ユーリが指示を出してパラレルモンを倒そうとするが、その前にユーリ達の足元に弾丸が放たれ、動きを妨害する。
「目標捕捉・・・殲滅する!」
アサルトモンが戦闘態勢に入り、両腕のガトリングガンを回転させて弾丸を撒き散らした。
「テンセグレートシールド!!」
アルフォースブイドラモンがVブレスレットからシールドを発生させ弾丸を防ぐ。
「さらばだ・・・。」
「待て!!」
「ユーリ!危険だ!!」
ユーリが前線に出ようとするとアルフォースブイドラモンに押さえられ、その隙にパラレルモンはこの場から去っていった。
「クソッ!逃がした!!」
「ユーリ、今はコイツを片付けるのが先よ。」
「パラレルモンの事は後で考えよう。だから今はコイツを!」
悔しげな表情を浮かべるユーリに対してミカとナオヤがフォローを入れる。
二人に言われた事によって幾分か落ち着きを取り戻し、ユーリはアサルトモンに目を向ける。
「・・・そうだな。今はアイツだ!」
「ユーリ!俺達も戦うぞ!」
「やっと出番だってな!」
トモロウとゲッコーモンがユーリと並んでサポタマを取り出しながら言った。
「あたしもやるわ!行くわよ!プリスティモン」
「最近あんまり戦ってなかったし、サビ落としにちょうどいいわ!」
「僕達も戦います!」
「たまには体、動かしたい・・・!」
レーナとプリスティモン、マコトとキロプモンも前に出て戦う意思を見せる。
「俺達も行くぞ、ムラサメモン。」
「ああ!」
キョウとムラサメモンも、サポタマと太刀を構えてアサルトモンに向ける。
「よし!なら、さっさと片付けるぞ!!」
ユーリが同意し、目の前のデジモンを倒す事に専念する事にした。
「行くぞゲッコーモン!打ち鳴らせ!」
「気張るわよ!プリスティモン!」
「キロプモン、行くよ!羽ばたけ!」
三者がそれぞれのサポタマにe−パルスを込め、それを高く放り投げる。放り投げられたサポタマをそれぞれのパートナーデジモンが飲み込み、取り込んだe−パルスを全身に巡らせ、進化する。
「ゲッコーモン進化!」
「プリスティモン進化!」
「キロプモン進化!」
光に包まれ、強い鼓動を打ち鳴らしながら光が弾け、進化が完了する。
「アルマリザモン!!」
「ウルヴァモン!!」
「ナイトキロプモン!!」
全身がピンク色の硬い鱗に包まれた爬虫類型デジモン、「アルマリザモン」と、両腕が武装化されたクマの獣人のような姿をしたサイボーグ型デジモン、「ウルヴァモン」と、黒いヘルメットと隠密性の高い黒いスーツを身に纏った成人男性のような姿をした獣人型デジモン、「ナイトキロプモン」が戦場に降り立った。
アルマリザモン
成熟期 爬虫類型 データ
必殺技 ニュートロンレイザー ニュートロンデフューザー ニュートロンブレイド デスロールプレス
・ゲッコーモンが進化した硬質な鱗を全身にまとった爬虫類型デジモン。その戦闘能力は成熟期でありながら完全体をも倒せる程のものであり、そのポテンシャルは計り知れない。
必殺技は、体内の粒子加速器で生成された荷電中性子を口から放つ『ニュートロンレイザー』、威力は弱まるが拡散ビームを放つ『ニュートロンデフューザー』、両腕の鱗を展開することで荷電中性子を放出し形成されるビーム状の刃『ニュートロンブレイド』、全身を丸めて転がり体当りする『デスロールプレス』だ。
ナイトキロプモン
成熟期 獣人型 ウィルス
必殺技 プロビデンススキャン シャドウアーツ ジャイアントラング メズマバースト
・キロプモンが進化した隠密性の高いスーツを全身にまとった獣人型デジモン。キロプモンの時と同じく、夜間の偵察や情報収集を得意とするデジモンであるが、高い敏捷性から繰り出される体術を使った格闘戦にも長けている。
必殺技は、頭部に装備したヘルメットで対象の内部透視まで含めた解析を先んじて行う『プロビデンススキャン』、解析が完了すると背中の巨大なブーメランによる遠隔斬撃『ジャイアントラング』、超速の打撃と蹴撃の近接攻撃によって対象の弱点をピンポイントで破壊する『シャドーアーツ』、指先から照射される超音波で対象を一時的に麻痺させる『メズマバースト』。この技は両手の指すべてから放つことが可能である。
「デスロールプレス!!」
アルマリザモンが体を丸めて高速で回転しながらアサルトモンへと突撃していく。アサルトモンは自分に向かってくるアルマリザモンを排除しようとガトリングガンを放つが、硬い甲殻に阻まれて弾丸が弾かれてしまう。
「んなもん効かねえよ!!」
「ぐぅっ!?」
強烈な体当たりを喰らったアサルトモンは攻撃を中断し、敵の周囲を旋回して移動しながら銃撃を行おうとする。
「好きにはさせないよ!スキャッターロケット!!」
ウルヴァモンがミサイルを放ち、アサルトモンの足元に着弾させ、足止めする。
「ジャイアントラング!!」
ナイトキロプモンが背中に背負った巨大なブーメランを投げ付け、両腕のガトリングガンを両断し、使用不能にする。
「トドメだ!ムラサメモン!!」
「柔ノ斬・月時雨!!」
「ぐああああ!!」
太刀を振り下ろし、アサルトモンを一刀両断すると、致命傷を負い、電子分解されて幼年期デジモンへと退化する。
「クラ〜。」
クラモン
幼年期Ⅰ 不明 属性なし
必殺技 グレアーアイ
・コンピュータネットワーク上に突如出現した正体不明のデジモン。コンピュータネットワークを悪用する人間の悪意や、ネットワーク上で繰り広げられる争いによって発生する攻撃性が具現化し、一つのデジタマが生まれた。そのデジタマには人間の破壊本能が凝縮されており、そこから生まれたこの謎のデジモンは非常に危険な存在である。コンピュータネットワークの中で病原菌のように繁殖して、軽度のネットワーク障害を引き起こす。
必殺技は巨大な目から泡状の物体を出す『グレアーアイ』。
アサルトモンからクラモンに退化すると、トモロウ達はサポタマとクラモンを回収し、戦闘態勢を解いた。
「やるじゃねえかお前等。俺達が出るまでも無かったな。」
ユーリ達がアサルトモンを倒した事に感心し、トモロウ達を褒め称える。
「大したことないさ。それよりも、パラレルモンを逃がしちまったな。」
「ああ。奴は実験がどうのこうの言っていたが。」
トモロウがパラレルモンを逃がした事を残念に思い、キョウが気になる事を言う。
「確かに、その気になればあたし等を潰すことだって出来たはずなのに、何でしなかったんだ?」
「恐らくですけど、ユーリさん達の戦力を警戒していたんだと思います。ユーリさん達を確実に倒す為に、その実験とやらを行ったんだと思います。」
レーナはパラレルモンの行動に疑問を持ち、マコトが考察する。
「その実験とやらが、サポタマを使ったデジモンの出現。自分でも使えるかどうか検証したんだろう。」
そしてキョウがマコトの考察に自身の考えを述べる。
「その結果が成功・・・まずいわね。次戦う時軍団で攻めてくるかもしれない。」
「それだけじゃない。最悪の場合、究極体のデジモンも出てくるかもしれない。」
ミカとナオヤが最悪の展開を想像し、その表情を強張らせる。
「だとしてもだ。俺達は戦うしか他にない。どれだけの数が来ようと、どれだけ強い奴を向こうが用意しようと、俺達はパラレルモンと戦うしかない。そうだろ?」
ユーリがそう言うと、ミカとナオヤは一瞬だけ不安な表情を浮かべるが、すぐに戻して決意を固める。
「そうね。アタシ達が元の世界に戻る為にも。」
「ボク達には迷っている時間はない。」
「なら、腹括ろうぜ。そして、生きて帰るぞ。」
ユーリがそう締めくくると、二人は決意を固めてパラレルモンと戦う事を決めた。
「ちょっと、あたし等の事も忘れないでよね。」
この時レーナがユーリ達に向けて言い放つ。
「俺達にも手伝わせてくれ。」
トモロウが。
「戦闘ではあまり役には立たないかもしれませんが、ここまで来たら最後まで貴方達と戦いたいんです。」
マコトが。
「俺からも手伝わせてくれ。パラレルモンを放っておけば、俺達の世界が滅茶苦茶になってしまう。だから・・・!」
キョウが手伝わせて欲しいと言ってきた。その言葉にユーリは。
「ここから先は、何があったとしても全て自己責任だ。その上で聞くぞ。失敗すればデジモンだけじゃなく、自分の命すら落とすかもしれない。それでも来るか?」
グローイングドーンのメンバーにそう問いかけた。そして返答は―――。
「ああ!」
「ええ!」
「はい!」
「ああ!」
肯定だった。
「正直言うと、警官としては来て欲しくはないが、腹を決めたんなら何も言わねえよ。」
「行こう。今日は帰ろう。」
「帰ったら色々と備えなきゃ。」
そう言ってユーリ達はミラーワールドから抜け出し、アジトに帰っていずれ来るパラレルモンとの決戦に備えるのであった。
次回、ビートブレイク編(多分)最終回。
これ終わったら次は何とクロスしよう?