ゾンビランドサガ~生きがいを求める元男はゾンビとなる   作:武藤 桜

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ゾンビランドサガにTSオリ主を突っ込んでみました。
フランシュシュの曲は好きだけどどうせなら歌ってほしいボーカロイドやアニソンを混ぜてみました。


第一話

「大丈夫ですか!?」

「救急車呼んで!!!」

 

遠くからそんな叫び声が聞こえてくる。下半身の感覚は無く指先一本も動かせない。

 

『ああ。ようやく死ねる…』

 

そう思い心から安堵した。何かをしたいわけでもないのに何かができるはずも無いのに文句だけはいっちょ前にしてのらりくらりダラダラと生きてきた人生。

社会に出ても絶対に誰かに迷惑をかけるだけのごく潰しになるだけだろう。そう思っていたのでよかったと思う。

唯一悪かったことは変わろうと努力をせずに親より先に死ぬことだった。

 

『地獄で罪を償おう。そして、もう何物でもない無に還ろう…』

 

視界が擦れていく中でそれだけが頭の中に残っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

・・・キャアアアアア・・・

遠くから悲鳴が聞こえまだ意識があることを認識させた。

・・・どれくらい時間が経ったのだろうか。

どういうわけか手足に感覚がある。どうやら横たわっているのだろう。ごわごわするのはカーペットの上だからか?

ゆっくりと思い瞼を開けるとそこは薄暗い洋館の一室だった。

外を見ると朝日が少し入ってきている。

 

「どうやらまだ、死ねないみたいだな…」

 

何処か内心ほっとしていた俺は小声でそうぼやいた。

だが、どうしてだろう。胸のあたりがやたらと重いし、股のあたりがスースーする。

 

「があああああああああああああああ!!!!!!」

 

大声がして驚いて振り向くと肩だしワンピースをきた生気のない女性が四足歩行で迫ってきたのだ。彼女の顔は完全に獲物を狩る肉食獣そのものだった。大口を開けて飛びかかってきた。

 

「うぉ!?」

 

咄嗟に腕を突き出したがなぜか痛みが無い。恐る恐る目を開けると完全に噛まれていた。根元までがっつり。

しばらく噛むと飽きたのか離れていった。

 

「おいおい。考える頭は持ってないし無頓着だけどさすがに痛覚が鈍感になったことなんてなかったぞ!?って…、え」

 

噛まれた腕を確認すると腕には包帯が手までまかれており、格闘技の選手がするようなバンテージ風になっていた。だが、驚いたのはそこではない。指先が生気のない青白い肌なのだ。さらに体全体を確認した。胸は大きくなり肩回りが小さく腰がキュッと曲がり尻もふくよかになっている。髪の毛も腰辺りまで伸びていた。着ている服はスポーツ用のランニングジャージにぶかぶかのロングコートだったのだ。

 

「え、え、えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!?!?!?!?!?!???!?!?!?!」

 

大絶叫である。近くにある鏡で確認したが完全に女の子になっているのだ。それも抜群にスタイルの良い。

 

周りをよく見るとさっきの女の子に恐れて壁際に避難している女の子がちらほら見えた。全員共通しているのは誰一人として生気のない顔だという事、そして何処かしこに古傷の跡があること。

 

「なんや、騒がしいでありんすなぁ~」

「ふわぁ~。良く寝た…」

 

近くで倒れていた女性二人も目覚めた。『本当にどういう状況だよ!?』と内心驚いていると、

 

「お、おっはようございまぁ~す!!」

 

外から同じく生気のない顔をした女の子が入ってきてあいさつした。

 

「いや、マジで何なんだよ…」

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

あいさつしてきた女の子に連れられ地下室に来た俺達。地下室は薄暗く黒板とパイプ椅子が8つあった。

 

「なんなのよこいつら」

「あぁ!?何だとてめぇぶっ殺すぞ!!」

「わ、私、確か死んだはずじゃ…!?」

「ううううううううう・・・」

 

突然目が覚めたら知らない場所にいて全員ゾンビみたいなのでそれぞれ思い思いの心境だった。

 

そうしてしばらく待てば、その部屋の硬そうな扉が開く。そこから現れたのは……。

 

「えー、皆さん。目覚めまして、おめでとうございまーす」

 

サングラスをかけた胡散臭い男。

 

サングラス男はこちらの返事を期待しているのか何も言わない。でもこの状況で挨拶返せるのは相当アイドルだと思う(?)。返答がないと悟ったサングラス男は此方に、というか白髪の女の子に近づく。顔近っ!

 

「おめでとうございまーす!!!!」

 

うるさっ。まるでアイドルだな(?)。挨拶はアイドルの基本だけども。いや、おめでとうございますは果たして挨拶なのか?怪しいラインだな。

 

言い終えれば満足そうに帰っていく。一体今の何が満足したのか?大声出してスッキリしたのか?それとも女の子に嫌がらせできて嬉しいのか?前者ならまだしも後者ならぶっ殺す!

 

「俺は謎のアイドルプロデューサー。巽幸太郎様です。」

 

自分で自分に様付けって……。まるで私だな!

 

「これからお前らには、佐賀を救う為にアイドルをやってもらう。はいドン!」

 

そう言って黒板をひっくり返すサングラス巽。

 

「お前らの伝説的な冠者を活かして、佐賀を一世風靡さすんじゃ〜い!!!」

 

……誰か何か言えよ。無言すぎて黒髪の子がイカゲソ食う音しか聞こえん。

 

 

 

「つーかよー、意味わからんちゃけど」

 

「おう、なんじゃいサキ」

 

最初に切り出したのは金髪ちゃん!サキ……さんでいいのかな?

 

「あたし死んだよな?なんでピンピンしとるとや?」

 

その言葉に俺も考え出す。鉄骨が上から降ってきて押しつぶされて死んだはずなのにどういうわけかこんな知らない誰かの姿で目覚めたのだ。

 

「何やお前、そんなもんも分からんのか?」

 

「ああ!?」

 

ヤンキー煽るな巽サングラス。

 

「ちこーと位考えてみい?」

 

「だから分からんて「ゾンビィだからじゃい!」」

 

「ゾンビになったから何やかんやでピンピンしとんじゃろがい!こんなグリーンフェイスの人間おってたまるかい!」

 

「いいか?お前らは死んだ。そしてゾンビィになった。そんでもってこの現代社会にゾンビィの居場所などない!!そんなお前らにアイドルっちゅう居場所与えてやるんじゃ!感謝しとけボケエェェィ!!」

 

周りを見ると驚きの表情を隠せない者ばかりだった。これを見るに誰一人として生前に了解を得てはいないようだ。

 

「お前たちはこの俺が佐賀を救う為に選び抜き蘇らせた伝説の女達だ」

 

「は?」

 

幸太郎はビシッと両手で指を差す。そこには金髪ポニーテール、頬に傷をつけたゾンビ。

 

『世紀末!九州制覇を成し遂げた、暴走族チーム“怒羅美”!伝説の特攻隊長!【二階堂サキ】!!』

 

次に幸太郎が指を差した先にいるのは顔の半分を縫ったようにつながれた白髪のゾンビ。

 

『1980年代アイドルブームの火付け役にして、一世を風靡!伝説の昭和のアイドル!【紺野純子】!!』

 

続いて指差す先には首に大きな傷をつけた茶髪のゾンビ。

 

『幕末から明治にかけた激動の時代、維新の裏にこの人あり!伝説の花魁!【ゆうぎり】!!』

 

次はハートの心臓が飛び出た青髪の小さなゾンビ。

 

『大河ドラマで大ブレイク、全チャンネルゴールデン主演という快挙達成!伝説の天才子役!【星川リリィ】!!』

 

更に身体中を包帯で巻いた黒髪のゾンビ。

 

『2000年以降のアイドル戦国時代、そのトップに君臨したアイドルユニット“アイアンフリル”不動のセンター!伝説の平成のアイドル!【水野愛】!!』

 

『確かに、どいつもこいつも名の知れる存在なんだな』

 

そして、俺に指を指された。

 

『女子格闘技業界の超新星!事故死するまで生涯無敗!!伝説の格闘家!!【反町茜】!!』

 

『ん!?』

 

そして最後に幸太郎は黒髪のゾンビを紹介する。

 

「伝説の山田たえ!!」

 

「ぇ?」

 

「以上がこれからお前と苦楽を共にする「待って下さい待って下さい!!」ん?」

 

幸太郎の言葉を途中で遮るさくら。

 

 

 

「最後の、」

 

「伝説の山田たえ!!」

 

先程と全く同じ勢い、大きさ、イントネーションで同じ言葉を繰り返す幸太郎。

 

 

 

「あ、すみません、ちょっとよく聞こえ……伝説n「山田たえ!!」」

 

食い気味に答える幸太郎。

 

「あ、ぃやー、もっと何かこう……無いんですか?」

 

そうさくらが言った瞬間さくらに詰め寄る幸太郎。

 

 

 

「無きゃいかんのかい!!」

 

「だって伝説って「伝説の中身が無きゃいかんって誰が決めたんじゃ!?」」

 

「じゃないとただのゾンビ」

 

「じゃあお前は何が伝説なんじゃ!?言うてみろ!?」

 

「え?」

 

「ほら見ろ無いじゃろがい!!もうお前だけ、伝説付けてやらんからな!!」

 

「えぇぇ〜??」

 

そもそもさくらは伝説を名乗った覚えは無いので伝説がないのは当たり前なのだが。そもそも自分の意思がある時点でただのゾンビでは無いのだが。

 

 

 

「とは言え、こいつらとて今は何の変哲もない唯のゾンビィだ。目覚めてはいないからな」

 

「目覚める?」

 

「そうだ。お前と同じようにちゃっちゃと刺激を与えればいずれ皆自我を取り戻すだろう」

 

「……え!?刺激って私何されたんですか!?」

 

幸太郎に聞くも幸太郎は華麗にスルー。寧ろ黒板の文字が逆になっていることに今更気付いたようだ。メンバー紹介の段階で視界に入らなかったのだろうか。

 

「ちょっと待て!!」

 

「ん?なんじゃい?」

 

「アイドルやるってのも、ゾンビになったてのも何となくうなずけるけど少し気になる事が……」

 

「なんじゃい茜「それです!」あ?」

 

 

 

「その反町茜……のことです!?」

 

「茜って言うたらお前しかおらん「違う!」何がじゃい!さっきから言葉遮りよって!」

 

 

 

「俺は反町茜じゃないんだよ!!」

 

「……え?」

 

「そもそも反町茜なんて名前ニュースでも見たことも聞いたことも無いし周りにいる連中だって肩書は仰々しいけど全くテレビで見たことねぇぞ!?」

 

「はぁ!?」

「ど、どういうことですか?」

「えぇ~?リリィ絶対見たことあるでしょぉ?」

 

「じゃぁ何か!?お前反町茜じゃないんか!?」

 

「そうだよ!!っていうか俺は男だ!!!」

 

「「「「「「えええええええええええええええええええええ!!!!!?!?!?!」」」」」」

 

 

 

「つまり茜の体に全く無関係の男性の魂が入ったってことですか!?」

「とんでもないことでありんすな」

「おい!!てめぇその体で変な事したらぶっ殺すぞ!!」

「どうしてくれるのよ!?」

「いや。俺は確かに手順通りにゾンビィにしたはずだ」

 

「そもそも俺はアイドルなんぞに興味は無いんだよ。それよりも、俺をさっさと殺せ…」

 

「はぁ!?何いっとんのじゃい!?アイドルに興味あろうが無かろうがやるんじゃ「あぁ。」っつ!?」

 

「てめぇ勝手に蘇らせといて有無を言わさずアイドルやれってどいう了見だ…?あぁ!?」

 

俺は憤慨していた。やっと死ねたと思ったら今度は他人の体でゾンビになった上にアイドルやれ!?勝手にもほどがある。

 

「俺はなぁ、さっさと地獄に行きたいんだよ!!おい、さっさと俺を地獄に送り返せ!!じゃねぇとてめぇの四肢を一本一本へし折るぞ!!!」

 

胸倉をつかんで俺は幸太郎を脅した。

 

「ちょっと!やめなさいって!!」

「そうです!!暴力はいけません!!」

 

愛と純子の二人に止められ遭えなく手を離した。

 

「もういい。俺は勝手に死ぬ方法を探すよ…」

 

俺はそれだけ言い残して地下室を後にした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

さくら視点

 

地下室での騒ぎの後、ダンスのレッスンが始まったが他の皆は参加せず結局私だけでレッスンが終わった。

「あの人やっぱり怖か…。体洗って少しすっきりしよぉ~…。ってきゃああああああああああああああ!?!?!?」

 

水道で体を洗うため外に出ると二階のベランダから首吊りをしている茜さん・・・?を発見した。

 

「…、ちくしょう。これでもやっぱり死ねない。なら…!」

 

か細いが声を出しているのが聞こえるのでまだ死んでないと分かるが突然首を縛っていた紐を解いて落ちたのだ。

 

ぐしゃ!

 

生々しい激突音がした。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「あぁ~、くそ…。何で…、何で死ねないんだよおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 

茜さんを見ると目から涙を流しながら倒れていた。

 

「あ、あの茜・・・さん?とりあえずいったん屋敷にもどろう?」

 

「はぁ~…。そうだな…」

 

手を伸ばすと茜さんは立ち上がって屋敷の中に戻っていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

愛視点

私は確かライブ会場で歌っていて空に手を突き出した瞬間に轟音が聞こえたと思ったら意識が暗転し気が付いたら訳の分からない屋敷でゾンビになっていた。

集められたメンバーは生まれた時代も経歴もほとんどバラバラで私ともう一人純子は大丈夫だけど歌も踊りも他は全員素人の様だった。

もうやってられないと思い外に出ようとするとゾンビ犬が待ち構えていたので窓から外に脱出した。

 

「愛ちゃん~愛ちゃんいますか?」

 

外からさくら…?だったっけ彼女の声が聞こえるが事得る義理は無かった。

さっさとこんなところ脱出して東京に戻ろう。

そう考えて草むらを這っていると、目の前に傷だらけのゾンビが現れたのだ。

 

「「ぎゃああああああああああああああ!!!!!!」」

 

「あ、愛ちゃん!!あれ純子ちゃんもおる!?二人ともなんしよると?」

 

「出ていくんです」

「出ていくに決まってんでしょ!」

 

どうやら純子も私と同じ考えで脱出しようとしたみたいだった。

 

「ダメダメダメダメダメ!外危ないけん」

「昼間見せられたやつ?あんなこと本当にあるわけないでしょ!?」

「私、あのたえって子怖いんです。追いかけてくるし噛むし…」

「私も最初は怖かったとよでも大丈夫」

 

茶番劇に付き合ってられないので鉄柵を越えて出ようとした私をさくらが必死に止めた。

 

「放して!」

「だめぇ!」

 

引っ張り合いをしているうちに私の腕が何故か取れて地面に叩きつけられた。

 

「おぶぅ!」

「ひぃ!」

 

叩きつけられた衝撃で両目が取れてその目が純子と目が合ってしまい悲鳴を上げる純子。

 

「お前ら。何してんだ?」

 

「あ、茜さん!!」

 

私たちの声に気が付いたのか昼間に皆と距離を取り始めた茜が現れた。

 

「いや、茜はこの肉体の名前だぞ」

「でも、貴方の本当の名前聞いてないから…」

「あぁ、そういえば名乗ってなかったな」

 

「俺は篠崎竜輝だ」

 

「篠崎さん…」

「それで、何してんだ…?」

「出ていくんです」

「そうかい。なら、おれもついてく」

「えぇ!?」

「どういうつもりよ?」

「決まってるだろ。死ぬためだよ」

 

茜、もとい篠崎の言葉に何となく納得した私たち。

そのまま外に出て駅に向かった。

 

「愛ちゃん。危ないけん早く帰ろう?っていうかどこ向かってると?」

「東京!」

「東京!?無理だって私たちお金ないし」

「まぁ、電車に乗るならさっさと乗ってくれ。俺は次の電車に飛び降りて死ぬつもりだから」

「いやいやいや。なにサラッととんでもないこと言ってるのよ!!?」

「何で…、何でそんなに死にたいんですか?」

「そんなのあたりまえだろ。生きてることが何もない空っぽな感情が苦痛なんだよ」

「何もない?」

「俺は生まれてこのから何かに対してしっかりとした努力ができなかった。それどころか自分の心根も分からなかった。月日が経つにつれて分かったんだよ。俺には何もない。空っぽな人間なんだって。だからそれ以来死にたいとばかり思っていた。こんな俺が社会に出たって確実に誰かに迷惑をかけるごく潰しになるだけだって自覚してる」

「そんな、短絡的に考えるなんて…」

「短絡的…。確かにはたから見たら短絡的だよな。でも、何かに対して生きがいを持ってるお前には分からないだろうな。見様見真似で片っ端から何かに挑戦しても「これに人生を賭けてみたい」って思うことが何一つ見つからず、かといって適当に職を選んでも長続きしないってわかっていることが。他人に迷惑をかけてしまうんじゃないかって恐怖を!?」

「…、篠崎さん」

 

わずかな電灯の明かりしかない商店街の通りでそんな口論が響いた。

と、思いきやいきなりラップを歌う男性三人組が目の前に現れた。

それを聞きつけたのか見回り中の警察官まで現れる始末。

 

「警察…?助けてください!!」

「駄目!愛ちゃん!」

 

さくらが何故か止めようとしたのがよく分かった。何故なら、街頭の光の中にいる私たちを見て、ラッパーと警官の目が見開いていく。次の瞬間、全員が叫んだ。篠崎のため息を残して。

 

「「「「ぎゃああああああああああああああ!!!!?!?!?!」」」」

「はぁ…」

 

「む、無理無理!これは無理って!?」

 

まるで化け物を見たかのように後ずさっていく。その姿を見て確信した。

薄暗い夜道で明かりに照らされる私たちの傷だらけの姿を見たら驚くのも無理はない。

実際自分も純子の顔を見て悲鳴を上げたからだ。

 

そんなことを思っているとパン!!という音が鳴り、私たちのすぐ後ろにある窓ガラスが割れていた。よく見ると警官の拳銃から煙も出ている。

それを見て、昼間に幸太郎が見せたゾンビ映画の映像が脳裏に浮かぶ。

 

「「「ぎゃああああああああああああああ」」」

 

「「「「ぎゃああああああああああああああ」」」」

 

私たちも警官もラッパー達も一斉に悲鳴を上げた。警官は震えながらも銃口を確実にこちらに向けた。

 

パンッ!!!

 

「やべぇ!!ぐほぉ!」

「篠崎さん!?」

 

私たちに向けて放たれた弾丸は咄嗟に庇った篠崎の心臓部に直撃した。

警官の三度目の発砲。街頭に当たり、周囲が真っ暗になった。

同時にパニック状態のラッパー達が泣き叫びながら警官に抱き着いた。

私たちはその隙に篠崎を抱えて逃げ出した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

篠崎視点

愛たちに向かって放たれた弾丸を咄嗟に庇った瞬間。着弾し、意識が薄れてきた。

既に止まっているが人間の急所を撃たれたのだ。

『これで、ようやく本当に死ねる』

そう思いながら目を閉じた。

 

「「篠崎さん!!」」

「篠崎!!しっかりして!!!」

 

遠くから俺を心配する声が聞こえてきた。瞼を開けるとそこのは焦りの表情を見せたさくら達がいた。

 

「篠崎さん!!!」

「よかったぁ~!!」

「あんた、大丈夫なの!?」

 

「…、あぁ。悲しいことに意識もはっきりしてきたよ…」

「あんた、なんで私たちを庇ったのよ?」

「決まってるだろ。俺は一人ぼっちで死にたいんだよ。誰かを巻き込んで死ぬなんて絶対いやだからだよ!!」

 

そんな俺の言葉に三人は納得したような表情をした。

 

そんなこんなで俺たちは洋館に戻ってきた。

俺自身ある種の諦めがついた。

銃で心臓を撃ち抜かれたのにも関わらず生きており傷口もいつの間にかふさがっているのだ。この再生力と生命力だと丸焼けにでもならない限り何をしても死なないと理解できた。

 

翌日、幸太郎が言っていた佐賀城でのライブに向かった。

車のバン内で特殊メイクをする幸太郎。

すでにメイクを終えた皆は生気が戻っている。これならゾンビだとは思われないだろう。

 

「終わったぞ」

「うぉ!?これが俺かよ・・・」

 

メイクが終わった自分の顔を見ると顔だつの整った綺麗な女性の顔だった。

 

それからはしっちゃかめっちゃかだった。そもそもこのグループ名前が無く、振り付けどころか歌もまともにできていない為皆バラバラに踊っている。終いにはダンス中にたえの首が飛んでいってしまいさくら達がフォローしたお陰でゾンビバレはしなかった。

さくらとサキの即興ラップバトルで場は盛り上がった。

 

「なぁ、ゆうぎり。その三味線ちょっと貸してくれないか?」

「いいでありんすよ。でも、弾けるんでありんすか?」

「一応基礎は勉強したからな。即興でやってみるよ」

 

俺はゆうぎりから借りた三味線を持ってステージ中央に立った。

はっきり言って無謀も良いところだった。何せ三味線を弾いたのは高校時代の授業以来でちゃんと音を奏でられていたのかも記憶があやふやになっているのだ。

なのに、なぜか手は全く震えていない。三味線の握り方についても誰も注意しない。

深く深呼吸をし、弦をはじく。

曲は「六兆年と一夜物語」

 

「名も無い時代の集落の 名も無い幼い少年の

誰も知らない おとぎばなし

産まれついた時から 忌(い)み子 鬼の子として

その身に余る罰を受けた」

 

生前音楽が好きで色々なジャンルの曲に目を通していて、この場を盛り上げられそうで且つこの場にある楽器で演奏可能なのはこの曲だ。

 

「悲しい事は 何も無いけど

夕焼け小焼け 手を引かれてさ

 

知らない 知らない 僕は何も知らない

叱られた後のやさしさも

雨上がりの手の温もりも

でも本当は 本当は 本当は 本当に寒いんだ

 

死なない 死なない 僕は何で死なない?

夢のひとつも見れないくせに

誰も知らない おとぎばなしは

夕焼けの中に吸い込まれて消えてった」

 

ただ、心の赴くまま三味線を弾き続ける。

「吐き出す様な暴力と 蔑(さげす)んだ目の毎日に

君はいつしか そこに立ってた

話しかけちゃだめなのに「君の名前が知りたいな」

ごめんね 名前も舌も無いんだ

 

僕の居場所は 何処にも無いのに

「一緒に帰ろう」 手を引かれてさ

 

知らない 知らない 僕は何も知らない

君はもう子供じゃないことも

慣れない他人(ひと)の手の温もりは

ただ本当に 本当に 本当に 本当のことなんだ

 

やめない やめない 君は何でやめない?

見つかれば殺されちゃうくせに

雨上がりに忌(い)み子がふたり

夕焼けの中に吸い込まれて消えてった」

 

サビまでの伴奏に入り、より早く、より鋭く弾き続けた。

「日が暮れて 夜(よ)が明けて

遊び疲れて 捕まって

こんな世界 僕と君以外

皆いなくなればいいのにな

 

皆 いなくなれば いいのにな  

 

知らない 知らない声が聞こえてさ

僕と君以外の全人類

抗う間もなく手を引かれてさ

夕焼けの中に吸い込まれて消えてった

 

知らない 知らない 僕は何も知らない

これからのことも君の名も

今は 今はこれでいいんだと

ただ本当に 本当に 本当に 本当に思うんだ

 

知らない知らない あの耳鳴りは

夕焼けの中に吸い込まれて消えてった」

 

歌詞が終わり裏サビ部分。全てを出し切るように全力で三味線を弾いた。

曲を演奏しきり観客に目を向けると、一斉に拍手喝采をした。

 

「うぉ!?」

「すごい。すごいよ篠崎さん!!!」

「まさか三味線をであんな曲を演奏するなんてね」

「すげぇーぞお前!!!」

 

周りにいたメンバーも賞賛してきた。本当に無我夢中で演奏していたのでよくわからなかったが聞いてて楽しい曲だったのは確かな様だった。

 




とりあえず第一話投稿しました。もし「面白いって」評価くれたら書き溜めてどんどん投稿していきたいと思います。
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