ゾンビランドサガ~生きがいを求める元男はゾンビとなる   作:武藤 桜

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第六話

愛視点

久中製薬の仕事から数日。私達はこれからの目標を考える為巽が風呂に入っている隙に部屋にあるパソコンで佐賀のイベントを調べていた。

 

「おっ、サガロックってなん⁉︎面白そうやん‼︎」

 

 サキがある記事に目を輝かせた。

 

「サキちゃん、ロック好きと〜?」

「おう!九州っつったら、明太ロックやろがい!」

「なんそれ?」

「お前、ぶっ殺すぞ‼︎」

「ホント口悪いな………」

 

調べてみるとサガロックは九州最大の野外ロックイベントらしく各地から名のあるグループが出場するらしい。その中には「アイアンフリル」も…。

 

「マジか⁉︎アタシらも出ようぜ‼︎」

「まあ、大きな目標を立てることに文句はないけど………」

「きっと凄いね〜。目の前にこんなお客さんおったら〜!」

「リリィは舞台挨拶で慣れてるから全然平気!」

「こういう場に合う曲選んどかないとな…」

 

 いきなり出るのは正直無理な話だ。今のクオリティでは足りないのは当然として、開催日までにこの舞台に立てるクオリティになるのすらもキツい。だからいずれの目標として設定するならいいかも。例えば今年は見に行くだけ見に行って、来年出る事を目指すとか。それが現実的かな?

 

「頑張って行こうよ!もっともっと練習すれば、いつか行けるよ!」

「そう簡単ではありません。これだけの会場でコンサートを開くには、当然それに伴う実力が必要なんです。希望的観測はやめて、謙虚に一歩一歩進むべきです。」

 

 ただ、純子の通りやってたら何もせずに終わってしまう可能性がある。これだけ移り変わりの激しい時代には、ある程度のスピード感も必要になってくる。彼女の言いたいことも分かるけどね。

 

「分かるけど、昔と違ってそんなじっくりやってる余裕は無いの。まずは、とにかく多くの人に知ってもらわないと。奈々子が拡散してるSNSでも、そろそろ動画を挙げていかないとね。」

「SNS………?私たちのあのコンサートを広げているのですか……?」

「こんな感じで〜、よく見える瞬間だけ切り取ってるよ〜。」

「そう、ですか…………」

「元々私がいたグループだって、デビューから1年後には数万人の前でやってたんだから。」

「1年⁉︎それでお客さんは満足を⁉︎」

「最初から完璧なんて求めていたら、何もできない。むしろファンは私たちの成長過程を見守ってくれるし。育ててくれるの。」

「それって…………」

「・・・」

 その後日、私たちはいつものようにミーティングをすることになった。

 

「皆の衆〜!あぁ〜ふら………」

「せからしい!さっさと始めろ!」

「はい!今日はお前らに、嬉しいニュースがありま〜す‼︎え〜なんとフランシュシュに〜、ファンが出来ましたぁぁぁ‼︎」

 

 おっ。ようやくこのレベルになったのね。久々に出来たファンは、なんだか嬉しかった。

 

「竜輝のガタリンピックでの映像が受けて一気に火が付いた。それより今日は、ファンの皆と交流してもらいまぁぁぁぁす‼︎」

「交流?もしかしてチェキ会のことか?」

「そうでぇぇぇぇす‼︎話が早くて助かるぞぉぉぉい‼︎」

 

 チェキ会からやるんだ。意外。まずはミニライブと物販をやって欲しかったのに。まあいいか。とりあえずここでファンの人と交流するしかないでしょ!

 

「チェキ会………?」

「ファンの人と一緒に写真を撮るんだよ!」

「なるほど、ポラロイドでプロマイドする感じですね!」

「…、まぁそんなとこだ」

 

「というわけで、お前らチェキチェキしてこぉぉぉぉぉい‼︎」

 

 まあいいや。ということで、私たちはチェキ会の会場へと向かったのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

篠崎視点

ミニライブが終わった後、チェキ会が始まった。生前は家族以外と写真を撮るのはほとんどなかったが愛達の対応を真似して少しぎこちないができたと思う。

 

「嫌です‼︎私には出来ません!」

「ちょっと、4号!ほら、並んでるファンの方もいるんだし………」

「ステージの上からファンを魅了するのがアイドルです‼︎これのどこに、アイドルがあるんですか⁉︎」

 

他の皆が元気に写真を撮る中、純子は恥ずかしがって一向に進まない状態だった。

結局そのままチェキ会は終わってしまい俺らはこっぴどく幸太郎に怒られた。

 

「自分が何をやったか、純子が1番分かっているはずよ。仕事の放棄はアンタ1人の問題じゃない。」

「あれが仕事だっていうんですか。」

「立派なね。」

「あんな破廉恥な真似、私はしたくないです。」

 

「いい?私たちはまず、いかにファンに知ってもらえるか、身近な存在になれるかが大切なの‼︎」

「それです!昨日もデビューから1年でと自慢していましたが、ファンに媚びさえすれば、実力が伴わなくてもいいと思ってるんですか⁉︎」

「はぁ⁉︎誰がそんな事言った⁉︎喧嘩売ってんの⁉︎」

「その辺にしとけ。」

「愛ちゃん、純子ちゃん!」

「2人とも落ち着いて〜!」

 

そのまま話がヒートアップして二人の仲は完全に険悪になり愛は部屋を飛び出していった。

 

「天気予報でもうすぐ雨だ。サキ、一緒に探すぞ」

「おう!!」

 

俺とサキが愛を探すと雨が降ってメイクが落ちてきた。

 

『急いで探さないと誰かに見られるな…』

 

焦りつつしばらく探すと工事現場の巨大パイプの中で愛が震えているのを発見した。

 

ドカァァァァアン‼︎

 

「意外だな、雷が怖ぇなんて」

「私、それで死んだの」

 

話によると愛は野外ステージで歌っている最中に落雷で死んだらしい。

 

「すげぇ…!おまえ、マジ伝説やん」

「そんなの…、全然嬉しくない!私はまだ終わってない。絶対もう一度あのステージに立つ!」

「なるほどねぇ。それが、あれだけ努力する理由か…」

 

色々合点がいった。彼女はメンバーの中で誰よりも「これから先どうするか」を考え誰よりも早く行動していた。

 

「まぁ、何にしてもまずは純子の件をどうにかしないとな」

「分かってるけど、あいつはこの時代と価値観が全くあってない!!いつかどこかで必ずまた不和を招く!!一体どうすればいいのよ!?」

「んなの決まってんだろ。・・・どうしたいのか伝えたいこと真正面から全力で伝える。それだけだ」

「そ、そんなことで伝わるの!?」

「面と向かったぶつかってみないと伝わらないことだってある。例えば、どれだけ自分が本気か…、とかな」

「俺が言える立場じゃないかもしれないけど。投げ出したり切り捨てたりした先に自分の望んだ夢なんて無いことは良く知ってる。自分の望んだ夢を叶えたいなら全部拾いきって前に進むしかないんだ」

「そんな、無茶苦茶な道。本当に進む気なの…?」

「一回死んで分かったんだよ。足抱えて蹲ってたって絶望したって何も変わらない。ずっと自分は出来損ないだって思って生きてきたけど、お前らを見て偶然で得た二度目の人生。一度くらい本気で何かをしようって思ったんだよ。無茶かもしれない、無謀かもしれない。でも、ここで妥協したり諦めたら俺らただの歩く屍になるだけだぜ」

 

「「……!!!」」

 

「純子のことは俺が何とかする。だからお前らはお前らのやるべきことをやれ」

 

気が付くと雨はやんでいた。愛とサキも決意の灯った表情になっている。

俺達は人が来る前に急いで屋敷に戻り練習を再開しのだった。

 

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