青の巨人   作:凛九郎

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解釈違いが多々発生しているかもしれないクロスオーバー作品始まるぞー。(白目)
この作品はオリーブドラブ先生の作品
ウルトラマンカイナとコラボとなっています。
ぜひ一度読んでみてくださいね!


白銀と青

「Bureau of Ultra Repose Keeping」――通称「BURK」

世界各地に支部を持つ超法規的活動期間。

彼等は日夜人類を脅威から守る為に奮闘する。

それは悪事を働く人間達からの脅威ではない。悪事を働く異星人や怪獣からである。

BURK日本支部の一室、時刻が真夜中に差し掛かろうとしている頃2組の男女が首を突き合わせて物々しい雰囲気で向き合っている。

 

「これで10人目です…いよいよ奇妙を通り越して危険と言えるかもしれません。」

 

亜麻色のストレートヘアが絹の様に艶めくキャリアウーマンの様な厳格な面立ちで女が椅子に座る男に報告をしている。男は顎に生えた無精髭を親指で撫でながら思案を続けている。その眼光は鋭く、格闘家並みの筋骨隆々な体躯が幾多の戦いを潜り抜けて来た豪傑さを物語っている。

 

「弘原海(ワダツミ)隊長!聞いていますか!?」

 

「ああ、聞いてる。聞いてるとも駒門琴乃(コマカド コトノ)隊員。とてもきな臭い話だとも思う。だからこそ落ち着いて判断しなければことを仕損じる。護る戦いは気持ちだけでは務まるものじゃない。」

 

「……失礼しました。」

 

「とりあえず状況を整理しよう。ここ1ヶ月間の間に世界各国で奇妙な人々が100人近く、日本でも10人が我々BURKに保護されている。共通点は異星人が擬態していない生粋の地球人であること、そして何より『俺たちの生きている世界の人間ではない』こと。有り体を言えばタイムトラベラーとか異世界から来た人間って事になる。」

 

「…はい、そのようです。彼等には歴史認識が違うというレベルではなく歴史自体が我々と異なっています。起きたはずの出来事が起きていなかったり、逆に防がれたはずの事件や事故が発生している。ウルトラマンという存在を認知していないといった具合で。聴取は愚か意思疎通が難しいケースもあるようです。」

 

「それをマスコミには?」

 

「当然伏せています。もしそうでなければ人々は混乱をきたして都市機能、最悪の場合世界が機能不全に陥りかねません。」

 

「機能不全どころか異星人の侵略だと思った世界中の人間が疑心暗鬼になって事態が悪化し続けた場合には戦争すら起きかねない…是が非でも秘匿し続けろ。保護された人々への生活配慮も忘れるなよ。」

 

「しかしっ!!このペースで保護が続けば収容や情報統制にも限界があります!!そんな場当たり的な対処でどうしろと言うのです!」

 

駒門は弘原海の日和見的な意見に弘原海の座る机に手を叩きつけ、やや気色ばんだ様子で部屋を後にした。弘原海はその様子を顔色一つ変えずに見送る。頭に血が登った駒門は落ち着くまでそっとしておいた方が良い。弘原海が駒門との付き合いの中で導き出した関係の作り方だ。

 

(この事件には間違いなく異星人や何ならの外的要因が絡んでいる…ウルトラマンの力が必要になるだろうな。今の俺たちに出来ることはその尻尾が出てくるのを待つだけ…果報は寝て待てってな。)

 

弘原海は隊員服の胸ポケットからアイマスクを取り出すと弘原海は浅い眠りへと落ちて行った。

 

ーーーーーー

 

とある海辺。トングと大口の黒ポリ袋を持ってゴミ拾いに勤しんでいる青年の後ろを同い年くらいの若年女性が興味深そうに後をついて回っている。側から見ればボランティアに勤しむ好青年とその友人、もしくはパートナーに見えることだろうが実情は異なっている。青年と女性はパートナーなどではない。ただ下宿先と大学の所属ゼミが同じなだけのただの同期生である。

 

「なぁ…月島。どうしていつもオレの後ついて回ってくれるんだ?」

 

トング片手に青年、水瀬拓海(みなせ たくみ)はついて回る同期生の月島小夜(つきしま さよ)に声をかける。月島との出会いは初めて女神ヴァルナと共に戦った次の日だった。ゼミが始まる前に月島に怪獣騒ぎについて話題を振られ自分もその場に『偶然』居合わせたんだと自分なりに当たり障りのない返答をした事をきっかけに仲良くなった。所謂大学デビューのタイミングを祖父、重光との死別で逃していた拓海にとって月島は初めての友達だった。

 

月島は社交的な性格で友達作りに長けていた。そんな月島と行動を共にしている内に拓海にも何人かの友達が出来て学生生活に活気と充実感が生まれ始めていた。そのことを拓海が月島に感謝を伝えると月島は笑って、いいのいいの、お節介焼くのあたしの趣味みたいなもんだし。それに水瀬くんってどこか放っておけないっていうか良い人なんだけど人見知りしそうなタイプかなって思って。そういう人が独りぼっちでいるのってスッゴイ勿体無い気がするんだよね。と快活な笑顔で応えた。拓海は月島の懐の深さに感謝し恩すら感じた。

 

ただ、そう良いことばかりではない。

月島が拓海の行く先々について来すぎなのだ。

被っている講義はもちろん学食や帰宅する電車も一緒で下宿先のアパートも向かい部屋ときている。一緒に夕食食べようと誘われる事すらある。大学生活のほぼ全てを月島と過ごしている現状に拓海はいたく困惑していた。

 

「えー?別にあたしが暇だからって理由じゃいけない?」

 

「月島はオレ以外にも友達が多いじゃない。他の友達とはいつ一緒にいるんだよ?」

 

「それは水瀬君が1人でいる時に話したりメールしたりしてるよ?当たり前でしょ?」

 

(それはいつなんだよ…ここ最近大体一緒にいる気がするんだけど…。)

 

「いやー水瀬君役得だねぇ〜。あたしの単独指名権獲得してるわけだし。」

 

一つ付け加えると月島はどういうわけか自信家だ。デニム生地のキャップに黒地に白ドット柄のブラウスに紺色のベルト付きキュロットスカートという方向性がとっ散らかっているファッションを173cmという拓海と殆ど差がない身長で着こなすあたり自信の大きさが伺える。

 

「単独指名ってドラフトじゃないんだから」

 

「じゃあ水瀬くんは会いたい人いるの?後をついて回りたいくらい会いたい人。」

 

「そ、それは…」

 

拓海は祖父の重光の名前を出しかけたが言葉に詰まり口籠る。会いたいが会えない。どんなに願っても叶う事のない望みを口にすることは塞がり始めていた傷にまた塩を塗ることと同じことだ。

海のゴミ拾いを時々しているのも海が好きだった祖父の面影を僅かでも感じていたいという拓海の個人的な思いで行っているものに過ぎない。それほどまでに祖父の存在は拓海にとって大きなものだった。

 

「ぼくなら誰にでも会わせてあげられるよ〜今なら無料大サービス〜♪」

 

不意に拓海達の背後から呑気な男の声が聞こえる。白いコートを羽織り黒シルクハットを目深く被る怪しげな男。少なくとも海岸沿いを歩くにはTPOを弁えていない服装である。そんな男からの言葉など大抵の人間は聞き流すか知らぬ存ぜぬを決め込むだろう。しかし、月島小夜は違う。彼女は社交性が高い、逆説的に言えば他人への警戒が異常に低いのである…。

 

「えー!ホントですか!あたし絶対会いたい人がいるんですよ!サービスして欲しいです!絶対!」

 

「スッゴイやる気だねーお姉ちゃん。そのやる気に免じておじさん頑張っちゃおうっかな〜?」

 

「お、おい!月島何そんないかにも怪しい奴相手にしてんだ!?絶対碌なことにならねーって早く離れよう!」

 

「ひっどいなぁお兄さん、デリカシーとかないの?そんなお兄さんにもボクの力見せてあげるよ〜!!」

 

(タクミ!離れよっ!)

 

拓海が身につけている祖父の形見のペンダントに宿る海の女神ヴァルナの声も虚しく真っ白な渦が現れたかと思うと瞬く間に拓海達を呑み込み、海岸沿いには持ち主をなくしたトングと黒ポリ袋、そして白いコートの男が胸にぶら下げた懐中時計を手に持ちほくそ笑んでいた。

 

「2名さまご案内〜ってね。さぁ遊びの駒は揃ったね。楽しみ楽しみ♪」

 

ーーーーーー

 

「はぁ…朝から相当歩いても状況が全然掴めないんだけど…もう一体何がなんだか。」

 

拓海は街の雑踏の中1人ため息を吐く。得体の知れない男の口車に乗せられ目が覚めたら人気のいない路地裏。スマホも何故か使えず街を歩く羽目になり早2時間。分かったことは現在地が渋谷であることと財布の中の現金で買い物はできるがお金を引き出すことは出来ないと言うこと。そして何より街を歩く人の中に軍服の様な着て徘徊しているものものしい集団がいると言うことだ。

 

(今日は何かミリタリー系のイベントでもやるのかな。東京だからそう言うのありそうだけど…人数多くないか?)

 

(そもそもスマホは使えないわ、お金は降ろせないわ。これじゃ下宿先に戻れない。ヒッチハイクするしかないのか?)

 

「ふーむ。実に訳の分からんことにまきこまれてしまったのぉ。タクミのガールフレンドにも困ったものじゃ。」

 

「ヴァルナ、月島はガールフレンドじゃなくて下宿先の部屋のお向かいさんで同じゼミ生なだけ……ってえええ!?」

 

拓海の驚愕の声に周囲の人は一瞬足を止めるが、その後何事もなく歩き始める。この街にとっては青年の大声は些事なのだろうが拓海にとっては大事だ。それもそのはず、腰まであろう程の水色の長髪とあやめ色の瞳を持つ少女ーーー女神ヴァルナが自分の隣にちょこんと立っているからである。

 

「ヴァルナ、ペンダントの外から出られるのかよ!?」

 

「出られぬわ!ワシはお主の持つペンダントを依代にしている存在。ワシが人間体で居れるのはお主と私のみの隔絶された世界のみのはずなのじゃ。人間界では声は出せても実体は保てぬはずなのに…。」

 

「じゃあ何で隣に!?」

 

「知らぬわ!それを考えるのはお主の役目じゃろうが!」

 

「神様が思考投げんなよ!?神様って何で知ってるんじゃないの?」

 

「ワシが何でもかんでも知ってると思ったら大間違いじゃ!神は全知全能ではないないんじゃ!」

 

「なに開き直って威張ってんだぁ!?全知全能じゃない神様とかもう神様って呼べないだろ!」

 

言い争う2人を口を止めたのはグゥーと音を立てた拓海の腹の虫だった。そう言えばここに来てから飲み物は飲んだが何も食べてはない。財布の中の現金が使えるなら喫茶店に行くのも良いかも知れない。いや1人分だけならファミレスで食事をすることも出来るはずだ。

 

「タクミ…お主、ワシの分の飯はないのかの?」

 

「ヴァルナって神様でしょ。そもそもお腹空くの?」

 

「ほーう?ほーう?そんな口を聞いているならワシにも考えがある。今夜お主の枕元に立って恨みつらみを吐き続け眠りを妨げてやっても良いが?」

 

「なーにが神様だ。これじゃ悪霊じゃないか。…それで何が食べたいんです?」

 

「海のものは見慣れておる。陸じゃ陸の食べ物を所望する!」

 

「なんだそのざっくり過ぎる要望は!?ストライクゾーンが広すぎるって!」

 

2人がとりあえず飲食店を探しに再び雑踏の中に紛れようとしたその時、けたたましい咆哮が街に響き渡る。その咆哮は犬猫のものではなく、一声聞いただけで人智を超えた種ーーーー怪獣であると判断出来る獰猛なものだった。雑踏は瞬く間に修羅場と化し秩序が一瞬にして無に帰ってしまったのではないかと思わせる混乱ぶりだ。拓海とヴァルナはお互い無言で頷くと拓海はヴァルナの依代であり亡き祖父の形見である胸元のペンダントに手を添える。

 

(力を貸してくれ、ヴァルナ!)

 

拓海を暖かな光が包み込んだかと思うと微睡みに落ちるかの様に体から力が抜けて行く…

研ぎ澄まされたダイアモンドの様な丸いながら僅かに凹凸がある目を持ち頭部には鋭利なトサカ状の刃。ダークブルーのボディーに足から胴の側面にかけて白波の様な紋様。胸部にはアメジストにも似た水晶が埋め込まれている青の巨人。それは水面に落ちる落葉の如く音もなく真昼の渋谷に舞い降りる。群衆からは得体の知れない巨人の出現に戸惑いの声をあげる者や新手の怪人の出現だと慄く者が多くいた。

 

「何だアイツは!?」

 

「『偽ウルトラマン』って奴じゃないのか!?ウルトラマンは本物のウルトラマンは来ないのかっ!」

 

(ウルトラマン…?何だそれ?)

 

ウルトラマンという聞き覚えの無い言葉に戸惑いながらも青の巨人は怪獣の戦いに心血を注ぎ怪獣の進撃をかろうじて押し留めていたが戦況は徐々に怪獣優位に傾き出し、怪獣の猛攻を凌ぎ攻撃に転じようとするヴァルナを怪獣は頭つきで跳ね飛ばし反撃の機会を与えない。ゴシャッと派手な音と共に吹っ飛ばされたヴァルナは倒れてきたビルに身体を挟まれうまく身動きが取れない。

 

(強い、強すぎる…!!この前戦ったイルカみたいな奴と訳が違うっ…!!)

 

(うーむ、このままではジリ貧じゃ。どうしたもんかのー。)

 

狼狽する拓海とは対照的に女神は随分と呑気に頭を悩ましている。お気楽な女神もいたものである。その安穏とした思考を掻き消す様な咆哮が聞こえたかと思うと怪獣がヴァルナ目掛けて走り出した。頭突きでこんな状態にされたのだ突進なんて喰らおうものなら勝算はゼロに等しくなってしまう。最悪の想像が拓海の頭を掠めたその時、怪獣の咆哮とはまた異なる声が聞こえた。

 

シェァッ!

 

白銀の無骨な肉体に上半身を覆う真紅のプロテクター。同じく真紅の手足を持ち、丸い目に、頭部に閃くトサカ状の刃。白銀の巨人の登場に民衆は快哉を叫ぶ。民衆の中には感動からか安堵からか涙すら流しているものまでいるほどだ。

 

「カイナ…!!ウルトラマンカイナが来てくれた!!」

 

「頼む怪獣をぶっ潰してくれカイナ!!」

 

「カイナが来たらもう大丈夫だ!」

 

(すごいもんじゃのー正しく救世主の到来と言ったところか…。ワシらの時とは雲泥の差。全く不敬な民もいたものよ。)

 

(そんなこと言ってる場合じゃないって女神様!オレたちも早く戦いに戻らないと。)

 

(分かっとるがなかなかダメージが大きくてな…)

 

ヴァルナと拓海が問答を続けている内にカイナは神速の勢いで怪獣を圧倒し遂には爆散させ街に平穏がもたらされていた。民衆の歓喜の声が響く。ウルトラマンカイナは民衆の間違いなく英雄なのだろうと拓海は思ったが、それと同時に強い違和感を感じた。自分はウルトラマンカイナを知らないしウルトラマンと呼ばれるものも自分の生きる世界では知られている存在ではなかったからだ。しかし街並みは間違いなくネオン輝く日本の渋谷だ。これは一体どういう事なのだろう。拓海の疑問は深まるばかりだったが、その疑問もすぐに頭の片隅に追いやられる。

 

怪獣と戦い終えたカイナがくるりと向き直ったかと思うと腰を僅かに屈め右手を前方に左手を自身の首の前に構えたのだ。謂わゆるファイティングポーズ、相手に警戒と敵対を示す無言の合図である。そしてその姿勢のままジリジリと間合いを詰めにかかってくる。どうやらカイナはヴァルナを2匹目の怪獣と捉えた様だ。

 

(ちょっ!?ちょっと待ってくれ!なんで戦わないといけないんだ?)

 

(タクミよ、民衆が言っておったろう、「偽ウルトラマン」ではないか…と。今のワシらはその「偽ウルトラマン」とやらに分類されるらしい。)

 

(ちょっとちょっと!何冷静に分析してるんだよ!そもそも白コートの不審者は何者でウルトラマンってなんなんだよ?渋谷には軍服姿の人がそこら中に居るし、ケータイも使えない。もう訳が分からないって!)

 

狼狽える拓海とは対照的に女神ヴァルナは凛とした声色を崩さず子どもの癇癪を諌める母親の様に拓海に語りかける。

 

(ワシも分からぬ。だがそれを知る機会は必ず来るはずじゃ。この死地から逃れることが出来たならな。来るぞタクミ!)

 

女神ヴァルナは信じている、自らの女神としての力を何より水瀬拓海とならこの危機を脱することが出来る事を。

 

ーーーーーー

 

 

カイナはヴァルナの闘志を感じ取ったのか一気に駆け出し距離を詰める。ヴァルナはカイナの胴体めがけて回し蹴りを繰り出すがジャンプで躱され逆に背後からのドロップキックを喰らいビルを何軒か巻き込みながら地面に伏す。

早期に勝負を決さんとカイナは伏したヴァルナに馬乗りになろうと飛び掛かるがヴァルナの回避が間一髪間に合い、着地したばかりで無防備になったカイナの顔面に渾身の右ストレートを打ち込む。

 

シェアッ…!

 

カイナが僅かに怯んだ。ヴァルナはここが唯一の好機とふんで攻勢に転じる。素早く間合いを詰めると左ボディーを当て姿勢が崩れノーガードとなった顔面に再び右ストレートを打ち込むがその拳は寸前のところで受け止められたかと思うと足を払われる。けたたましい轟音と共にヴァルナは再び地面に叩きつけられる格好となった。

純粋な能力差、格の違い。拓海はただ愕然と屈強な白銀色の巨人を伏して見上げる事しかできない。その時カイナの胸に光る水晶が赤色の光が点滅し始める。カイナはヴァルナから数メートル距離を取り徐ろにポージングをし始める。

真紅のプロテクターがバラバラになったかと思うと変形し弓の形へと変貌する。

 

何かが来る。とてつもなく大きな力を込めた何かが!拓海の本能がそう告げている。ボロボロな身体に鞭を打ち立ち上がるも上手く力が入らない。何故なのかと自身の手を見た拓海は自身の体が粒子状となりながら消え始めているのを見て愕然とする。

 

(この身体はもう持たん、活動限界じゃ!彼奴の攻撃を防ぐことに全力を尽くす!ありったけの力をぶつけてやるのじゃ!)

 

女神ヴァルナのいつになく真剣な声を聞いてタクミは無言で頷くと弓を引く姿勢に酷似したポージングを取る。カイナの赤い閃光とヴァルナの青白い閃光が放たれ衝突したのはほぼ同時だった。

 

ドゥハババババババッ!!

 

ドゴーーーン!!

 

数秒の押し合いの末に大規模な爆発を起こした2つの眩い光はどこか幻想的ですらあった。

その爆発の末に立っていたのは白銀色の巨人ただ1人。民衆の大歓声を背にシェァッと力強い声を上げながらウルトラマンカイナは真昼の上空へと飛び立って行った。

 

ーーーーーー

 

『やったなユズル!オレたちにかかれば怪獣2体なんて敵じゃないぜっ!』

 

「……ああ。そうだな。」

 

頭の中に響く声に曖昧な受け答えする、黒髪の男、風祭弓弦(かざまつり ゆずる)。BURK隊員だった亡き父の遺志を継いでBURK隊員となった19歳の若者。父に似た負けん気の強さと精強な身体つき。しかしながら顔つきは柔和でいざという時以外は、どこか安穏としているせいか周りからは天然で少し残念な男という評価を受けている。ただこの天然男が地球を守る使命を帯びたウルトラマンカイナであることは誰も知らない。

 

『何だか嬉しそうじゃないなユズル。何か気になることでもあるのか?』

 

ユズルの脳内に再びハツラツとした声が聞こえる。彼がウルトラマンカイナ。弓弦にも負けず劣らずの負けん気の強さと頑固さを持ち合わせており、やや無鉄砲。地球にやって来た当初は幼さを感じさせた言動も武者修行と弓弦との関係性の中で多少の落ち着きは見せているものの、まだまだヒヨッコと他のウルトラマン達からは思われている。

 

「いやさ。あの青い偽ウルトラマン…何者だったんだろうって。」

 

『倒した敵のことより、守れた星のことを考えようぜ!地球を護る事がオレたちウルトラマンの使命だし、BURKの使命。そうだろ?』

 

「それはそうなんだけど…なんだかなぁ。」

 

どこか釈然としない弓弦に背後から声がかかる。雑踏の中にいても不思議と響くその声に弓弦は思わず振り返る。目の前には白いコートに黒いシルクハットを目深に被り胸元には懐中時計がぶら下がっている奇妙な男。

 

「あのー…何か?」

 

その珍妙な格好に戸惑いながら弓弦は懸命に平静を装うが表情は引き攣っている。

 

「そんな顔する事ないじゃん〜折角の遊びなんだからもっと楽しんでよ〜」

 

 

ねぇ、ウルトラマンカイナ?

 

 

 

虚を突かれた弓弦は目をカッと見開くと本能的に男と距離を取る。どうして。何故自分の正体を知っている?もしかして変身の姿を見られた?いやそれはない。周囲への警戒には日頃から細心の注意を払っている。それなのに何故?…この男を最大限に警戒しなければならない。この男の真意を推し量る事ができれば打つ手立てはあるはず。

 

「邪推しても無駄だよ。ボクはなんでも知ってるのボク神様だから。」

 

「はっ?」

 

「ボクはロクノス。時間と空間を司る神…どう?カッコいいでしょ〜。サイン欲しい?残念〜ボク忙しいんだよ、でも大丈夫そのうちまた出会えるよ〜じゃあねぇ〜」

 

ロクノスは衝動性を抑えられない子ども様に一方的に捲し立てた後に音も光もなく消え失せた。弓弦は背中に冷や汗が流れるのを感じた。

得体も知れず、自身を神と宣う子どものように無邪気を持つ男。これほどまで不気味この上ない存在に弓弦はかつて出会った事がなかった。また会える、その言葉がただの妄言には思えない。もしかしたらロクノスと青い偽ウルトラマンは何だかの繋がりがあるのではないか…確信はおろかただの突飛な想像でしかないのだが弓弦のウルトラマンとして戦い培われた勘が確かにそう告げていた。

 

ーーーーーー

 

薄暗い路地裏。そこに生傷だらけで息も絶え絶えに歩みを進める男がいた。水瀬拓海である。彼はカイナとの閃光が衝突し爆発した瞬間に変身を解き間一髪逃げ仰せていた。

しかし戦闘ダメージの蓄積は甚大で傷ついた身体を引き摺りながら歩くことが精一杯の有り様だった。

 

(何でこんなことになったんだよ…もう何も何も分からない。この世界のこともウルトラマンカイナのこともなにもかも。ヴァルナには何度呼びかけても反応ないし…ああ、もう足も動かなく…なって…。)

 

拓海は薄暗い路地裏で1人倒れ込み、その顔面にシトシトと振り始めた雨が滴ってくる。オレが最後に見る景色がコレかよどうせなら海の近くで最後迎えたかったな…。そんな呑気なことを思いながら拓海は意識を失った。

 

日本都心のど真ん中渋谷。そこは幾多のビル群がまるで摩天楼の様に聳えるビジネス街とイケてるもの可愛いものが集まるポップカルチャーの発信地という相反するものが時に迎合し、時に反目する。そんな独特の風土をもつ場で相対した2体の巨人ーーーカイナとヴァルナ。2人の行く末は反目かそれとも…。




暑いですね、今の時期自分の小さい頃は外で遊ぶことが出来ましたが今は無理ですね…。お仕事と帰省以外は夕方から動きましょ!
皆で夜行性になりましょ!笑

暑さに気をつけてどうかご自愛ください。
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