時々聞く言葉がある。人生には避けては通れない決断を下さなければならない時がある。拓海は今までその言葉にあまりリアリティを感じたことはなかったがここに至って言葉に実感が宿ってくるのを感じざるを得ない。乾坤一擲の勝負をウルトラマンカイナに仕掛けるか否か。すぐに決められるはずがない、そもそも倒せる自信もない。ただこのまま手を出さずにいれば元の世界に戻る機会を逸してしまう。袋小路に迷い込んだ気分だった。拓海は無意識に何かに縋りつくかの様に胸元にあるペンダントに触れる。すると青白い光が輝き拓海の脳裏に鮮明な映像が流れ出した。
その映像は映画のワンシーンを切り取って無理矢理繋げた様な断片的なものだった。
怪人を辛うじて退けたカイナの前に現れるヴァルナ。2人は死闘を繰り広げ街が壊されていく。街を失いながら悲鳴にも似た声援を送る群衆の姿にヴァルナは自らの行いの正しさが揺らぐ。その弱さを不屈の闘志を持つカイナが突かないはずもなく反転攻勢を仕掛けカイナが勝利する。青白い光となって消えるヴァルナ、月島小夜。廃墟と化した街を目の当たりにしカイナの怒りと絶望を込めた咆哮が夜の闇の中に消えてゆく。それを遠くから眺めたロクノスは負けちゃったけどいいもの見れたから温情かけてあげるねヴァルナと呟く。
場面は切り替わり、来る日も来る日も怪獣達と戦い続けるカイナ。それをほくそ笑むロクノス。ロクノスが指を鳴らすと白い渦が空間に現れその中から怪獣が出現し街を破壊する。疲弊するカイナ。狼狽する人々そして愉悦に浸るロクノス。
次に脳裏に流れてきたのは暗い会議室の様な場所にスーツを着た壮年男性、淑女が重苦しい表情で席についている。その壁には日本やアメリカ合衆国やイギリスといった先進国と呼ばれる国々の国旗が立てかけられている。どうやら首脳会議の様だ。
「全世界規模で『異世界』からの侵略者が増加して来ている。それも爆発的な速度でだ!」
「侵略者など…彼等にも人権がありますわ!」
「食料問題や居住や雇用問題。侵略者達によって本来生きていた我々の世界の人間が不利益を被りかねない。これを侵略者と言わずして何だと言うのだ!?」
「何より共存することの難しさは我々各国首脳が最も理解しているはずだ…同じ世界を生きる者同士ですら争いや諍いが起こると言うのに違う世界を生きて来た者達と分かり合うことなど…。」
「各国のBURKに指示を出せ。侵略者達を隔離収容し、我々の世界で生きる為に『修正』を行える設備施設の設営を大至急進める様にと。侵略者達が『修正』を断った場合は粛清も厭うなとな。」
「そんな…そんな馬鹿げた話がありますか!?僕らが戦うべきは異世界から来た人々ではなくこの事態を招いた元凶のはずだ!」
「それがどこの誰か分かっていれば苦労はしない!BURKからも正体不明の異星人だとしか伝わっていないからな。戦う土俵すら立っていないのだ我々は!」
「とにかく首脳会議の決定事項だ!異論は許さん!」
「そ、そんなバカな。」
分断せれて行く世界。異世界からの来訪者だと知られぬ様に息を潜め生きる人々。それを密告し金を得る者。BURKからの追跡を逃れる為に高所から海に飛び込む母親と幼い息子。異世界の来訪者に食べ物や仕事を与えていた男が地域住民から袋叩きに遭い血だらけで路上に放置される姿…異世界人に人権をと訴えるデモの民衆に浴びせられる放水、そして弾丸…。それをビルの屋上からフェンス越しに眺めるロクノス、時々欠伸をしながら群衆を流し見る姿は興味のないテレビ番組を無理して見せられているかの様な退屈さと気怠さを感じさせる。
「ああーこの世界にも飽きて来ちゃったな。カイナは倒せなかったけど楽しかったからそれはそれでいっか!ボクは別の世界で遊ぶことにするよ。この世界を壊すキッカケをくれた協力者ヴァルナ。彼にはお礼を言っておかないとね。」
フフフと含み笑いをすると自身が起こした白い渦の中に入りそして消えてゆく。
最後に現れたのは水瀬拓海、自分自身の姿だった。昼間だと言うのにカーテンが閉め切られた部屋にはゴミが散乱し足の踏み場もない。壁にはオレは世界を壊した。罪から逃げるなと書き殴るような筆跡で記された紙が無数に貼られている。無精髭を生やし虚な目をした水瀬拓海はベットに横たわりただ木目調の天井のシミを眺めている。枕元に置いてあるスマホには月島小夜からの無数の着信が来ているが水瀬はそれを手に取ろうともしない。しばらくしておもむろに立ち上がると散乱したゴミを蹴り飛ばす様にして部屋を出てキッチンに向かう。そこには鋭利な包丁。ギラリの光る刀身を冷め切った瞳で見つめるとそれを手に取りそして自身に向ける。
「オレ…じいちゃんのところに行くよ。きっと…許してくれるよな。許して…くれよ。」
そしてその刃先は迷うことなく…。
「オレの選んだ決断は本当に正しかったのか…?」
ーーーーーー
「水瀬くん!ねぇ水瀬くん!」
月島の鬼気迫る声で拓海は我に帰り振り返ると彼女は心配と怒りが入り混じった表情をしながらこんな時にボサってしてないで!逃げるよと拓海の手を引っ張って駆け出して行く。拓海は遊園地で子どもに連れ回される疲れ切った父親の様に無抵抗で引き摺られてながら自身の脳裏によぎった映像が一体何だったのか思案した。
幻と言うにはあまりにも生々しく禍々しいそれは最早悪夢と言ったほうが適切かもしれない。
もしかしたらカイナと戦うことで起こり得る未来を垣間見たと言うことなのかもしれない。一応自分は神の依代になっている、こう言う説明のつかない奇跡が一つ二つ起こっても不思議はない。と言うかそう納得しないとやっていられない。我ながら難儀な立ち位置になってしまったなどと勝手に的外れな恨み節を並べ始めた頃には地下シェルター内に2人は辿り着いていた。既にシェルター内にいた綾川、尾瀬の両名とも合流し一先ずの安全を確保した。
シェルターは300人は優に入れる様な一邸宅が持ち合わせるには余りにオーバースペックと言える巨大なものだった。壁には巨大モニターが設置されており外の様子がモニタリング出来るようになっている。有事の時は避難所としてだけでなく情報収集、情報共有や何らかの作戦立案を行える秘密拠点としての一面もあるのかもしれない。流石はBURKの指揮官を輩出した名家、その家名に偽りない危機意識の高さである。今、そのモニターに映しだれているのはもちろんウルトラマンカイナの勇姿だ。BURKの戦闘機と協力しミイラの怪人と対峙している。
状況を見るにカイナは優勢に戦闘を進めているように見えた。
ーーーーーーウルトラマンはこの地球を守る希望の一つに過ぎないのかもしれません。地球の人たちの希望はもっと力強くて大きい…。
脳裏に浮かぶウルトラ記念館での綾川の言葉。彼女はウルトラマンを希望の一つと評し自分はそれを砕かんとしている。出来るのか、いやして良いのか。
「ああっ、ヤバいよ!ヤバいよこれ!」
モニターを見ていた小さな子どもの声が響く。
拓海や下を向いていた人々が声に釣られてモニターを視線を移す。そこには空間に突如として現れた白い渦から恐竜の姿に似た怪獣が出ている姿が映しだれている。拓海はその光景に見覚えがあった。あの悪夢の中出て来た怪獣を呼び出すワープホールだ。どうやらロクノスが今回の怪獣騒ぎを引き起こしているようだ。もしかしたら昼間の怪獣騒ぎもロクノスの仕業なのかもしれない。
ミイラ怪人の包帯がカイナの両手首をまるで生き物のように絡め取り投げ飛ばす。投げ飛ばされた先にはティラノサウルス型の怪獣が待ち構えており鋭利な爪が目立つ両手をX字に交差して飛んできたカイナを容赦なく切り裂き地面に叩き落とした。
ピコンピコン
カイナの胸元の青い水晶が赤く点滅し始める。弱弱しくファイティングポーズを取る姿に昼間の時のような余裕は微塵も感じられない。正真正銘虫の息と言える。昼間も戦って疲弊していることに加え今は一対多数の戦いを強いられているこの状況は劣勢であることは明白だ。おそらくロクノスは怪獣を複数呼び出し戦わせることでカイナを追いつめ、その仕上げとしてヴァルナと戦わせ打ち倒そうとしているらしい。
(この状況ならばカイナに勝てる可能性はある。お膳立てでもしているつもりなのかロクノス…。)
拓海はカイナの苦戦を画面越しに食い入るようにして見つめる。その視線は鋭く眉間には深い皺がより、祈るようにして戦況を見守っている周りの聴衆達との温度差がハッキリと現れていた。
「水瀬君大丈夫?そんな怖い顔して…もしかして怖いの?」
月島…怖いかだって?怖いに決まってるじゃないか。オレの決断が戦況の全てを握っているんだぞ!祈り嘆願している方がよほど気楽で葛藤もないだろうさ。そう叫びたくなる気持ちを抑えて、怖くないわけないだろ。月島だって怖いだろうと問いかけた。今は深く気持ちを開示したくない。出来るだけ話をそらしたかった。
「怖くないよ。だってあたしには何も出来ないから。皆もただ見守りながら何とかしてほしいって気持ちを託すくらいしか出来ない…水瀬君だってそうでしょ?」
「今を変えることが出来るのは変えられる力とそれを負う責任を持ってる人だけ…そうでしょ?」
ーーーーーー我々に出来ない何かが君になら考え実行出来るかもしれない。
ーーーーーー今の小娘の側に居てやれるのは重光でもワシでもない。タクミ、お主だけなんじゃ。それは忘れるな。
ーーーーーーオレの選んだ決断は本当に正しかったのか…?
弘原海やヴァルナの言葉、そして先ほど見た幻が自分自身に問いかけた言葉が頭を駆け巡る。オレは…どうしたい?
数秒の間目を閉じて考えを巡らせると拓海はカッと目を見開きシェルターの出入り口に向かって駆け出す。水瀬君どこ行くのと同期生の突然の奇行に困惑した声を出す月島に拓海は
「月島、オレ会場に忘れものして来たみたい。すぐ戻るからここで待ってて!」
とだけ伝えるとシェルターの外へと消えていった。
「水瀬さんどうしたのでしょう、忘れものも何も手ぶらだったような…?」
「なんかアイツ不思議よねーまぁ初めて会った時から思ってはいたけど…。小夜、アイツって昔からあーなの?」
綾川と尾瀬の言葉は拓海にも月島にも届かない。月島はただ茫然と走り去った拓海が月島に見せた顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。
(悩んでるわけでも怒ってるわけでもなかった。それなのになんとなく怖かった。何か強い意志というか何というか…あんな水瀬君初めて見た…。)
拓海は地上へと上がるためシェルターへ降りる階段を駆け上がって行く。カンカンカンとアルミ缶を足で踏みつけた様な乾いた音とハアハアと少し情けなく弱々しい息切れの吐息が鉄製の階段に響く。薄い月明かりだけが照らす階段はどこか幻想的でもあり、不気味でもあった。
「決断したみたいだね、ヴァルナ。答えを聞こうか。」
月明かりを背に白コートの男ロクノスが階段の踊り場に立ち拓海を静かに見下ろしている。その表情は周りが薄暗く、その全て見ることはできないが差し詰め余裕満面でニヤケ顔しているに違いなかった。
「ああ、決めたさ。オレはーーーーーー」
ーーーーーー
『ユズル…これは久々に大ピンチだぜ。』
(こんなに追いつめられたのは本当…新人の頃以来かもな!)
ティラノサウルス型怪獣の攻撃をいなし、ミイラ怪人が触手のように伸ばしてくる包帯を掴み逆に投げ飛ばす。しかしその姿は洗練された歴戦の戦士の動きというよりは時代劇の劇中で討ち取られる寸前の武将が雑兵を薙ぎ倒していく必死の悪足掻きの様に見える。そんなダメージの蓄積が隠しきれていないキレのない動きはやがて怪人に躱され逆にティラノサウルス型怪獣の爪がカウンターの形でカイナの顔面に入り、カイナはそのあまりの威力にふらつき地面に膝をついた。息をつかせる間も与えず、そこに容赦なくミイラ怪人の包帯が伸びてくるとカイナの両腕を絡め取り身動きを封じ込める。ミイラ怪人はグフィフィフィと奇怪な声を上げたかと思うと紫色の電撃を包帯伝いにカイナに浴びせ掛ける。デァァァァァァとカイナの叫びが闇夜に響く。ウルトラマンカイナの命が、風祭弓弦の命の灯火が消えかけようとしている。誰もがその信じ難い事実を突き付けられたその時、2体の怪獣の背後から音もなく青の巨人ヴァルナが現れた。
人々は絶望した。偽ウルトラマンの再来だと、他のウルトラマンは何をしているのか、この星はもう終わりだなどと先ほどまでの殊勝な態度は何処へやら言いたい放題言葉を並べ受け入れられない現実を怒りで誤魔化そうと躍起になっている。そんな間にもヴァルナはゆっくり歩を進めカイナの眼前でその足を止めた。すると右腕が青白い光を纏い始める。そしてその腕を手刀の要領でカイナに向かって振り下ろした。スパンと乾いた音が夜に響いた。
グフィフィフィフィ〜!?
悶絶の声を上げたのはミイラ怪人だった。地面にはつい先程までカイナに巻きついていた包帯。ヴァルナはカイナではなくカイナに絡みついていた包帯を切り払ったのだ。ヴァルナは両手をカイナにかざす。白い光がカイナを包み込んだかと思うと赤く点滅していた青い水晶がもとの輝きに戻り傷付いたカイナの身体も癒されていく。カイナは自分に起こった出来事に驚きながらヴァルナの方を見る。その顔には偽ウルトラマンであろう奴が何故自分にそんな事をしたのかという戦士として当然の疑問だった。
しかしヴァルナはただ黙って頷くと二体の怪獣に戦闘体制を取る。まるでこの戦いをまず終わらせなければいけないのだとカイナに示すかの様に。
(これがオレの答えだヴァルナ。力貸してくれるよな…?)
(タクミ。ワシは…今お主のことを心から誇りに思う。戦おう!ワシらの全てをかけて!)
偽ウルトラマンと目されていた青の巨人の予想外の行動に群衆は驚愕しつつ、勝ってこの街を護ってくれと思いを込め声援を送り始めていた。
尾瀬は群衆の変わり身の早さに少し辟易しながらモニターを見つめている。右隣を見れば親友が両の手を合わせまるで祈りを捧げているかの様な格好で不安そうに見つめている。これが今生きている世界の実情だ。この数年で当たり前になってしまった歪な現実。この現実が非現実へと戻る日は来るんだろうか。もしかしたら文明の進化によって廃れた文化芸術がある様に、かつて過ごしていた平穏も廃れ消えゆく儚いものでもう元に戻ることはないのかも。きっとそれは隣にいる愛おしい親友も少し感じている部分があるのかもしれない。だからこそ祈っているの?平穏の尊さを理解し潰されてしまうことのない様に。
いやきっとそれだけじゃない。地下シェルターを作り人々を避難させられる設備を整えたり、晩餐会を催しBURKとの結びつきを強めようとしてたりして自分の立場で出来る精一杯を尽くそうとしている。ウルトラマンやBURKにただ求めるのではなく自らも人に尽くす。綾川梨々子はきっとスーパー金持ちではなくてスーパーお人よしなんだ。なんと言っても行き倒れていた見知らぬ男を介抱し世話焼きするくらいには善性の強い娘なのだから。そんな娘だから小さい頃からずっと一緒にいられたのかも…いやこれからも一緒に居たいと心から思えるんだ。
尾瀬は右隣にいる親友を安心させる為に言葉を紡き両手にそっと手を添える。
「大丈夫、勝つよ。ウルトラマンは強いんだから。」
「そうそう!青の巨人だって強いんだから!」
左隣にいたメイド系友達、月島小夜も励ます様に声をかける。その言葉に尾瀬は少し引っ掛かりを覚えた。偽ウルトラマンではなく青の巨人と彼女は呼んでいるし、カイナを助けたことを彼女は自分たちと違い驚くこともなく見守っている。まるで青の巨人に何度か会ったことのある様な立ち振る舞いだ。晩餐会前に智花からの話だと、青の巨人が現れたのは今日の昼間でカイナと戦いしかも負けている。とてもではないが強い印象は持てない。智花を励ますための方便なのか、それとも…。
僅かに芽生えた疑念を振り払う様に尾瀬は再びモニターに視線を視線を移したが、視界に入る月島の姿に心は微かに波打っていた。
「やっぱり出逢えた…青の巨人。」
そう呟かれた月島の言霊は緊迫した戦況を見守る群衆の誰の耳にも届くことなくシェルターの空間に消えていく。それは夜の海岸線に波打つさざなみの様だった。
ーーーーーー
2対1の戦いは2対2の数的同数の戦いとなりプロレスのタッグマッチの様相を呈し始めた。ミイラ怪人に対するは青の巨人ヴァルナ、ティラノサウルス型怪獣に対するはウルトラマンカイナ。当初は逆だったのだがヴァルナがティラノサウルス型怪獣のパワーに圧倒されマトモに相手することが出来ず、カイナもまたミイラ怪人の包帯を伸ばして戦う搦手主体の戦法に苦戦を強いられ得意の手刀や殴打を中心とした近接格闘(インファイト)を十分に発揮出来なかった。
状況の打開に動いたのはカイナだった。ハンドサインで相手の交代を伝えると、ヴァルナは一度首を傾げたが何とか理解したらしくそれに応じ戦況の打開に成功した。
『やっぱりオレ達にはこのスタイルだよなっ!しっくり来るよな?』
ティラノサウルス型怪獣を持ち上げ地面に叩きつけながら満足気に弓弦に問いかけるカイナ。
先程まで好き放題されていたことにフラストレーションを溜めていたのかいつもより動きが荒々しく容赦がない。地面に伏した怪獣に馬乗りになってパウンドする姿はややサディスティックだ。
(これ以上怪獣達の好きにはさせない!何としても…ここで倒しきる!!)
怪獣も起死回生を狙い大口を開けると口腔内に紫色のエネルギーが収束していく。殆どゼロ距離との言える至近距離で光弾をお見舞いしてやろうという腹づもりらしい。しかし多くの戦いの荒波を越えてきたカイナはそれに冷静に対処する。光弾が口から発射される刹那に両腕で大きく開いた口をギロチンの様にして挟み込んだ。本来放出される光弾は行き場を失い怪獣の口腔内で暴発したことをキッカケに身体中に亀裂が走り派手な爆発と共に内部崩壊を起こし自壊してしまった。
(あんな力技ありなのかよ…!?)
ウルトラマンカイナの脳筋的とも言える強引な討伐に拓海は戦いながら呆然とした。あんな戦い方をいつもしているなら昼間自分が負けたのは当たり前だろう。こっちはミイラ怪人の包帯攻撃に苦しめられ四苦八苦しているというのに。ヴァルナは空へと飛び出すとそこで浮遊し相手の出方を伺う。ミイラ怪人はグフィフィフィと奇声を発しながら包帯を触手の様に操りヴァルナの方に伸ばしてくる。その包帯を躱しながらミイラ怪人の周りを旋回しているばかりのヴァルナにミイラ怪人はまるでヴァルナを逃げてばかりの弱虫だと嘲笑う様に再びグフィフィフィと奇声を上げて今度はヴァルナに直接手を下さんとする為その足を一歩前に踏み出そうとした。
しかし動かない。一歩たりとも身体が進まないし戻れない。ミイラ怪人の奇声にもハッキリと戸惑いが感じられる。
(ふー、やっと動けなくなってくれた。どう?自分の包帯に自分で縛り付けられる気分は?)
対して拓海の声には安堵に満ちている。ただ闇雲に逃げていたのではない、自身を追いかけてくる包帯を敵に逆に巻きつけて古本や雑誌を括りつける様にして結ぶ。そうすれば相手は攻撃手段もなければ身動きも取れない。搦手には搦手で対応した戦法は功を奏した様だ。
(それはそれとして随分みみっちい戦い方な気がするがの…。)
(良いんだよ、マトモに相手してもオレじゃ勝てないんだから。)
拓海はヴァルナの苦言に苦笑いしながら弓を射る様な仕草を空中で作る。すると青白い光が仕草通りの一本の矢となりミイラ怪人の腹部を貫通しその数秒後爆散した。
ヴァルナの戦いぶりにカイナと弓弦は戦い慣れてはいなさそうだが決して弱くはない。ああいう戦い方は逆に自分達は不得手だろうという印象を持った。今まで出会って来たウルトラマンとは違う異質なスタイルと風貌に2人はこの青の巨人が果たしてウルトラマンなのかを疑い始めていた。
そんな中カイナとヴァルナ両者の視線が交じり合う。お互い無言で頷くとカイナは轟音と共に空へと飛び立ちヴァルナは流水の様な静けさで光の粒子となって闇夜に消えて行く。その様を群衆は感謝と労いの言葉共に見送るのだった。
ーーーーーー
「ヴァルナがボクの敵方に回っちゃうなんてね〜。まぁ全然有り得た話なんだけどショックだなぁ。」
人気のない廃ビルの屋上でロクノスは仰向けに寝そべり夜空を見上げる。ヴァルナの離反は少し想定外ではあったが、自分が子飼いにしている怪獣の中でも1番強い個体をぶつけても倒し切れなかったという事実はロクノスをより興奮させた。ウルトラマンとはこうでなくては張り合いが無い。ロクノスの脳裏に水瀬拓海が自分に啖呵を切った場面を過ぎる。
「ああ、決めたさ!オレはお前と戦う!きっとこの判断は大馬鹿も良いところなんだろうな。けど、今この人たちの希望を潰してまでロクノス、お前に従いたくない!この状況を変えれるかもしれない力を持ってるオレがそれに逃げちゃダメなんだ。勝ち負けじゃなくてオレはお前に立ち向かう義務があるんだきっと…!!」
(立ち向かう義務…ね、本当にあるの?この世界に君がボクに立ち向かう義務が。その言葉後悔しないといいけどね。)
ロクノスはニヤリと微笑む。新しいおもちゃを見つけた様な無邪気な微笑みの下あるのは夜の闇より深い邪悪。時計の文字盤の様に白と黒が入り混じるロクノスの真意を理解出来るものはまだ誰もいない。
対決ルートに進んだ場合の荒すぎるあらすじ
カイナがヴァルナに勝つ→水瀬、月島は元の世界に戻る(ロクノスの慈悲)
→ロクノス、カイナに執着する様になり異世界からバンバン人や怪獣を呼び付けてカイナ世界の地球を破壊→世界秩序が崩壊してしまいヘイトクライムや分断が加速し国家もそれを容認しないと国体を維持できない異常事態になる→ロクノスがカイナに飽きてカイナ世界を放置(事の詳細を水瀬に伝える)→元の世界に戻った水瀬拓海、ロクノスから真相を告げられ精神が追い詰められて自◯騒動を起こす→心配して部屋を訪れた月島がそれを止めてエンディング
みたいな流れでした。自分で本文書いてて分かりにくいというか意味が分からない内容になってた気がしたのでここに捕捉しときますね。
対決ルートと今回の共闘ルートどっち転んでも話が重いのは何故なのか…。