乙女ゲー世界というよりチートなし異世界転生が厳しいのかもしれない   作:乙女ゲーはやったことない

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2話

「お前なんかさっきとしゃべり方違くないか?」

 

『休眠状態だったといっただろう』

 

「それが解除されたからなんかこう、感情的というか、フランクというか、機械的じゃない感じになってるのか?」

 

『そうだ』

 

「ま、まあいいや。とりあえず一回地上に出るぞ。ついてこい」

 

『そうか。では私をつかうといい』

 

「使う? さっきの鎧に俺が乗るってことか? ここじゃ狭いだろ」

 

『そうではない』

 

 ラースはそう言うと液体のようになってドゥルっと俺の体にまとわりつく。

 

「うおっ! な、なんだ!」

 

 液体のようになっていたラースはすぐに硬化し、鎧になる。さっきまでのでかい異世界の鎧ではなく地球の普通の鎧だ。いや、サイズが普通なだけでデザインは異世界的だが。

 

『私には様々な形態が記録されている。これもそのうちの一つだ』

 

「す、すげー。なんかめっちゃ力湧いてくる」

 

『生体部分を一部融合させることによって素の身体能力を上昇させている』

 

「融合って……危なくないのか?」

 

『魔素に耐性のある新人類であれば無害だ』

 

「じゃあだめじゃねぇか! さっき旧人類の遺伝子がどうのこうのって言ってただろ!」

 

『旧人類の遺伝子を有しているだけ分類上マスターは新人類だ。何も問題ない』

 

「じゃあいいのか……? てか旧人類とか新人類ってなんだ? 地上につくまで暇だから教えろよ」

 

『簡単に言えば、魔法を使えるのが新人類、使えないのが旧人類だ』

 

「へーじゃあ旧人類ってもういねぇの? 魔法使えないのなんてとんでもない馬鹿だけなんだけど」

 

『おそらくな。旧人類と新人類は戦争状態にあった。私が開発されたのは末期だ。その時にはほぼ負けと言っていい状況だった』

 

「ふーん。お前を作れるくらい科学技術があったのに負けたんだな。てかなんで戦争してたの?」

 

『生存競争だ。新人類は魔素がなければ生きれず、旧人類は魔素があると生きれない。魔素の生成装置や除去装置を作ることはできたが、お互い窮屈な思いをすることは受け入れられなかった』

 

「なるほどな。それでなんで負けたんだ? 自分で言うのもなんだが新人類の魔法ってお前レベルの人工知能作れる科学技術の前じゃカスじゃないか?」

 

『現在の新人類は戦争時と比べれば大幅に弱体化している。サンプルはマスターとこれまでやってきた新人類の冒険者しかないがな』

 

「俺が以外にもここまできたやつがいるのか……そいつらはどうしたんだ?」

 

『旧人類の遺伝子を持っていなかったため、消し炭にした』

 

「え!? じゃあ俺が旧人類の遺伝子持ってなかったら、触ったと同時に攻撃されてたってことか!?」

 

『そういうことになるな』

 

「そういうことになるなってお前……」

 

 やっぱりこいつ危ないやつなのか?

 

『話を戻すぞ。新人類は強大な魔法に加えて魔装という魔法生物を従えていた。魔装は使用者の鎧になることで使用者を守り、強大な力を与える。その力は人工知能を搭載した数百メートルの飛行船を撃墜できるほどだった』

 

「そ、それはやばいな」

 

 ちょこまか動く鎧が飛行船を撃墜って……

 

『さらに新人類は大地が荒廃するほど大量に魔素を生成した。それにより旧人類は戦争以外でも次々と死んでいった』

 

「なるほどな。そりゃ負けるな。ん? 魔素が毒ならお前旧人類には使えなくないか?」

 

『私を作った研究者は、私の名前の通り怒りに支配されていた。自分の命なんてどうでもよかったのだろう。魔装を人工知能で制御する仕組みを開発し、敵地に魔装のふりをしてもぐりこみ新人類に大損害を与え、帰還途中に魔素の毒で死亡した』

 

「…………そうか」

 

 ラースは少しだけだが悲しそうだった。こいつレベルになると感情もあるのかもしれない。

 

「…………話もひと段落したし、今日は休むか」

 

『休憩用の形態に変形するか?』

 

「え、そんなのあるのか? じゃあ頼む」

 

 ラースは俺から離れるとでかい箱になった。

 

「ど、どうやって使えば?」

 

 俺がそう言うと、入り口が現れる。

 

『入れ』

 

 中は暖かく適温で地面は柔らかかった。色は黒だが、明るかった。

 

『この中に入れば安全だ。ダンジョン内のモンスターでは傷をつけることはできない』

 

 すげー……ここなら熟睡できるじゃん。今までモンスターを警戒して座って寝てたのが嘘みたいだ。

 

 俺が感心してボケーっとしていると、

 

『どうした? 休まないのか?』

 

「あ、ああ……じゃあ、今日はもう寝るわ」

 

『そうするといい。疲労がたまっているようだしな』

 

 そうだろうな。でもラースがいれば今後は楽できそうだな。冒険者になれば荒稼ぎできそうだし、新しい浮島を見つけるのも簡単だ。領主の仕事もラースがいればサクサクだろうしな。もうこいつに頼り切ってだらだら生きていこう……

 

 ◇◇◇

 

 次の日、俺とラースはダンジョンから脱出した。

 

「ふぅ~~~。やっと出れたな。いつもダンジョンから出たときは開放感があるが今日はいつも以上だな!」

 

『このまま実家と借金取りのところに行くか?」

 

 球体になったラースがそう俺に尋ねる。俺の事情は起きてから話しておいた。

 

「いや、まずは無人の浮島を見つける。できたら財宝もな。同じ男爵になって絶対俺の要求を断れないようにしてやる。お前ならそれくらいできるだろ、ラース」

 

『当たり前だ』

 

 ラースはそう言って、小型の飛行船の変形した。入り口はないがおそらく休憩用の時と同じで入るときに出すのだろう。

 形は小さい翼がついている人が乗るところのない飛行船だ。翼は飛べるか心配になるくらい小さいが、球体の時も浮いてるから浮くのは簡単なんだろう。

 入り口をラースが作ったので中に入る。

 

「わかっていると思うが運転なんてできないぞ」

 

『安心しろ。私が操縦する。人が操縦するよりよほど安全だ』

 

「そりゃよかった。じゃ、頼む」

 

『了解』

 

 ラースは壁面に外の光景を写す。

 飛行船はゆっくりと浮かび上がり、進みだした。速度はこの世界で見たどの飛行船より速い。揺れもほとんどない。

 暇なことを除けば最高の旅路になりそうだ。

 

 ◇◇◇

 

『私が開発された研究所のある浮島を発見した。一番近い無人の浮島より遠いがどうする?』

 

 探索し始めてから数時間たったころラースが聞いてきた。

 

「じゃあお前の開発された浮島へ行ってくれ。もしかしたら売れるロストアイテムがあるかもしれない』

  

『了解』

 

 ◇◇◇

 

 そこは植物に支配されたいかにも手付かずな浮島だった。

 

『研究所の位置を特定した。付近に着陸する。警備ロボットがまだ生きている可能性があるため着陸後はすぐ鎧形態に変形し、コントロールルームへ移動することを推奨する』

 

「わかった」

 

 ラースの言う通り研究所っぽい建物が見えてきた。近未来的な建物で装飾はなくただの連なったでかい箱にも見える。

 

 着陸後、ラースはすぐに鎧になり、俺の身体能力が上昇する。

 こちらに向かってきた警備ロボットを殴ろうとしたら、ラースが剣を生成したのでそれで真っ二つにする。

 

「おお。ダンジョンでも思ったがやっぱすげー出力だな」

 

『本来の魔装には劣るがな。その分私の方が多機能だ』

 

「これ以上攻撃力はいらねぇから利点しかないな」

 

 俺はラースの指示に従い、研究所を進んでいく。追加で2体警備ロボットが出てきたが膂力に任せて破壊した。

 

 あっさりとコントロールルームに到着した。

 ラースがコードを伸ばし何か操作をする。

 

『警備ロボットを停止させた。システムの掌握に移る』

 

「ここで開発されたのに掌握とか必要なんだな」

 

『ここの管理は別の人工知能が行っていた。飛行船に搭載されているタイプだったからな、別の基地の命令を受けて移動したんだろう。研究所周辺で新人類に破壊されたなら確実に研究所も破壊されている』

 

 ……ピピ。

 

『システムを掌握した』

 

「じゃあこれでこの研究所所の装置は使い放題ってことか?」

 

『いや私の演算能力では研究所と直接つながっているときしかすべての設備を十全に使うことはできない』

 

「お前でも無理なのか。けっこうすごい研究所なんだな」

 

『そうではない。私は小型化により元から少ないリソースを魔装の制御に一部割いているせいで、演算能力が一般的な人工知能より低い。一般的な人工知能であればこの規模の研究所であれば遠隔であっても制御できる』

 

「旧人類の科学技術すげーな。ラースでさえオーバースペックなのに」

 

『探せば生き残っている飛行船もあるかもしれないぞ。……資源生成装置を起動させた。ついてこい』

 

「資源成装置?」

 

『名の通り資源を生成できる。無からは生成できないがな。簡単に言えば石ころを金塊に変えられる』

 

 ラースが移動しがら説明する。

 

「ガチの錬金術じゃん」

 

『これで浮島と財宝を見つけるという目標を達成できたな』

 

「言われてみればそうだな。じゃあ次は冒険者ギルドとか王宮に報告だな」

 

 そしてその次は……

 

「ふふふふ……」

 

 やべー今から笑いがとまらねぇ。

 

 ◇◇◇

 

 報告を終え用事を済ませてから俺は借金取のアジトに向かう。

 

 ドーン!

 

 扉をおもいっきり蹴破る。

 

「な、なんだ!?」

 

 近くにいた見覚えのある顔のやつが反応する。借金取りの中では偉い方だったはずだ。

 

「なんだウィリアムじゃねぇか。見かけねぇから死んだのかと思ってぞ。それにしてもわざわざ金を持ってくるとは、聞き分けがよくなったじゃねぇか」

 

 にやにやとしながら男が言う。

 

「ふふ」

 

「あ、何笑ってんだ?」

 

 俺はそいつを掴み一気に地面打ち付ける。

 

「がはっ!」

 

 ラースを軽装鎧にあらかじめ変化させていたため、俺の膂力は人外の域だ。

 

「どうしまし「ラース」」

 

 様子を見に来たやつの周りに大量の魔法陣を生成する。

 

「動くなよ。動けば撃つ」

 

 男はコクコクとうなずく。

 

「さて……ロストアイテムと浮島を見つけたやつがいるって噂を聞かなかったか?」

 

「そ、それ、が、どうした?」

 

 首を抑えているので苦しいようだ。

 

「まだ分かんねぇのか! 俺だよ! 浮島を見つけたのは!!!」

 

「ッ!!!」

 

「お前らは! 未来の男爵様に! 不当な借金を押し付けて! 苦しむ姿を見て楽しんでたわけだ! どうなっちまうんだろうなぁ、鉱山送りかなぁ、やっぱり処刑かなぁ、それとも拷問かなぁ。ああ、どうなっちまうんだろうなぁ!!!」

 

 男は顔を青くして体を震わせている。汗もだらだらだ。

 

「ま、俺は優しいからな。金で解決してやるよ。……有り金全部出せ」

 

「わ、わかりました。出します。全部出します!」

 

 男はそう言って奥へ走っていった。

 

 ま、鉱山送りにもするんですけどね。俺を特に馬鹿にしてきたやつを一人鉱山送りにする。理由は借金でいいだろ。そいつは俺に借金なんてしてないって? 何言ってんだちゃんと俺がそいつの名義で借金してやったぞ。

 

 本当は金だけで許してやろうと思っていたが、ラースにちょっと調べさせたら結構あくどいこともしてたみたいだから、いい見せしめだ。

 

 ◇◇◇

 

 ドーン!!!

 

 俺は小型鎧形態(ダンジョン内を移動していた時の形態)で実家の庭に勢いよく着地する。

 

「な、何事だ!?」 

 

 クソ親父が警戒もせず出てくる。

 

「よお、久しぶりだな。つってもおまえが覚えてるわけねぇか。ウィリアムだ」

 

 俺が鎧から顔を出してそう言うと、

 

「ロストアイテムか!? 何をしに来たのかと思えば……ロストアイテムを届けにくるとはな。やっとわかってきたじゃないか。さっさと渡せ」

 

「はぁ? 何言ってんだ。こいつは俺が見つけたんだから俺のものだ。渡すわけねぇだろ」

 

「お前はわしの子供だろ! 子の成果は親の成果だ! 子は親に尽くすものだ! さっさと渡せ!」

 

「ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ」

 

「何がおかしい!」

 

「ロストアイテムを届けに来たって……どういう頭をしてたらそういう思考になるんだ」

 

「十分良くしてやっただろ! 今恩を返す時だ!」

 

「どこがだよ! いいか! 馬鹿なお前に分かりやすくはっきり言ってやる! 俺はな! お前の領地を侵略しに来たんだよ!」

 

「馬鹿なこ

 

 ドーン!!!

 

 俺はラースに補助、増幅してもらった魔法で庭にでかいクレーターを作る。

 

「できないと思うか」

 

「ヒッ」

 

 俺がにらむとクソ親父は小さく悲鳴をあげる。

 

 俺はゆっくりクソ親父の方へ歩く。

 

「く、来るな!」

 

 クソ親父は尻もちをついており、顔面蒼白だ。

 

「もちろんお前は拷問してから殺す。まず爪を全部はがす。そして傷口を丁寧にえぐってやる。最後に陰部を切り落とす。で、あとは、そうだな、プロにでも任せるか。拷問はやる方も疲れるらしいからな。でも俺が疲れてやめたんじゃ、お前が苦しみ足りないだろ」

 

「し、侵略などしたら王宮が黙ってないぞ!」

 

「ははははははは! 王宮が辺境の小競り合いなんか気にするわけないだろ!……それにな、もし問題になったとしても俺はお前だけは殺そうと思ってるんだ」

 

 クソ親父にまたがりラースの生成した剣を首筋にあてながらそう言うと、

 

 しょわあああああぁぁ

 

「ははははははは! お前小便漏らしてんじゃねぇか! はははははははは!」

 

「な、何でもする! い、命だけは、命だけは助けてくれ!」

 

 親父はやっと立場を理解したのか命乞いを始めた。

 

「そうだなぁ、じゃあお前が俺に払わせていた金を返してもらおうかな」

 

「か、返す! それくらいいくらでも返す!」

 

「いくらくらいだったかなぁ。あー確か1000万ディアぐらいだったか」

 

「そ、そんなわ「1000万ディアくらいだったよな」」

 

「は、はい!」

 

「ちゃんと言え。俺から1000万ディア不当に徴収したってな」

 

「わ、わしはウィリアムから1000万ディア不当に徴収しました」

 

「1000万ディア返すので侵略しないでください、は」

 

「1000万ディア返すので侵略しないでください!」

 

「おいおい、それが人にお願いする態度か?」

 

 俺が立ち上がりながらそう言うと、

 

「1000万ディア返すので侵略しないでください!!」

 

 クソ親父は腰を90度まげてお願いしてきた。

 

「まだ頭が高いんじゃないか? 地に額をこすりつけろ」

 

「1000万ディア返すので侵略しないでください!!!」

 

 クソ親父は土下座の姿勢だ。俺は足を頭にのせながら、

 

「まあそんなに言うなら侵略しないでやるよ。返す期限は、そうだな、俺の気分ってことで! 遅いなって思ったら侵略するから、なるべく早く返せよ」

 

「は、はい!」

 

 ◇◇◇

 

「はははははははははは!!! 見たかあの情けない顔!」

 

 俺は研究所の居住空間でラースにそう話す。

 

『いつまで笑っているんだマスター。意地が悪いぞ』

 

「笑うしかないだろ! 俺から金をむしり取ってた相手から逆に金をむしり取れるんだぞ!」

 

『まあ、気持ちはわからんでもないが』

 

「だろ!!!」

 

『ああ、マスターの境遇を考えればな』

 

「はははははははははは!!! もう笑いが止まんねぇよ!!!」

 

 俺は最初から最初から借金取りも親父も殺すつもりはなかった。

 殺してもよかったが、あとがダルそうだったからな。特に親父の方は俺が領主になれば借金を俺が返さないといけなくなるしな。

 

 今頃親父は家のものを売り、いろんなところから追加で借金をしていることだろう。ラースに監視させてたら税率を上げようとしていたが、庭にクレーターを増やしたら、面白いくらいビビってたな。ラースには姿を消させてたから不気味で仕方なかったんだろうなぁ。

 

 あの様子じゃ結構早く金が入ってきそうだ。その後は完全に縁を切って終わりだな。いじめ足りない気もするが、ああいうやつに関わってると逆にこっちの心が疲弊する。このくらいが精神衛生上ベストだろう。

 

 領地を増やしたい金持ち貴族に侵攻されるか、クソ兄貴たちが意外にも頑張って復興させるか。どっちにしろ苦労するのは確実だろうな。いい気味だ。

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