乙女ゲー世界というよりチートなし異世界転生が厳しいのかもしれない 作:乙女ゲーはやったことない
ラースを手に入れてから1年弱。現在俺は学園へ入学する準備をしている。だが一つ問題がある。
「なんでちょうど俺がいる男爵子爵家の女子はひどいんだ」
『知らなかったのか?』
「知ってたけど、実家は男女関係なくクズばっかりだったし、平民は普通だったから失念してたんだよ」
『外国に行くか? 私がいれば問題なく引っ越しできるぞ』
「それも考えたけど、この島も結構気に入ってるし、言葉覚えるのも面倒だらさぁ……」
『ではこの国の王になるか? そうすればだいたいのことは思うがままだ』
「ならねぇよ。お前がいれば簡単だろうけど、そんな面倒な立場になりたくねぇよ」
『仕事は私に任せればいい』
「どうしても本人が出ないといけない時があるだろ。それにその立場にいるってだけで気疲れするんだよ」
『そういうものか?』
「そういうものだ」
本当なんでこう楽させてくれないんだろうな。ブラック使用人生活、半分サバイバル生活、一人ダンジョン攻略、その次はクソみたいな女子と婚活だ。なんだこれ罰ゲームか?
「ま、婚活に失敗したら諦めてお前と外国に引っ越すよ。普通は家族に迷惑がかかるからできないらしいけど、むしろ俺はもっと迷惑をかけたいぐらいだからな」
親父の領民はとばっちりだろうけどな。元からそんな良い暮らしはしてないだろうからそんなに影響はないと信じよう。
◇◇◇
「それじゃあ行ってくる」
『ああ』
最初は本体がついていくと主張してきたがどう考えても過剰戦力なので我慢してもらった。
研究所に本体がいた方が開発がはかどるからな。そんなに急ぐものでもないが効率が悪くなってる感じが我慢できなかった。転生してからのひもじい生活のせいで貧乏性になっているのかもしれない。
『何か困ったことがあったら連絡しろ』
「わかってるよ」
ラースが作った端末でラースと連絡できる。他にも武器や防具を作ってもらった。学園でラースに助けてもらうことなんてそうそうないだろう。婚活もそこまで真面目にやる気ないし。
俺はラースに作ってもらった100メートル級の飛行船に乗って王都へ向かっている。中はもちろん無人だ。ラースが動かしているからな。
見られたらまずいが、すぐ帰らせるから大丈夫だろう。
ちなみに名前はレイヴン。意味はカラス。黒い船だからそう名付けたらしい。
貧乏な辺境の貴族は定期船を乗り継いでいくらしい。金持ちは豪華客船らしいから格差がひどい。まあ、俺は貧乏な奴らを見下ろす側だが。
◇◇◇
ラースの作った船は性能も高く思ったより早く王都についた。どうやら港から学園までは定期船でいくらしい。伯爵以上の金持ちは専用の港が学園の近くにあるようだ。
港にはちょうど男爵家や子爵家の連中が多い。多くの女子は亜人の奴隷を連れている。あの中から結婚相手を見つけないといけないなんて憂鬱だ。さらに今年は王太子殿下と他有力貴族4人が入学するらしい。将来偉くなりたいやつはうれしいかもしれないが、俺みたいなやつは比較されたり、気を使わないといけないことが増えるだけで全くうれしくない。
◇◇◇
王都の中にある馬鹿みたいにでかい学園についた。今日から学生寮で暮らしながら学園生活だ。
学生寮は寮というかホテルのようだった。
案内された部屋そこまで豪華じゃなかった。俺は上級クラスの中では最下層の男爵なのでこんなものだろう。
コンコン
ノックが聞こえた。開けると学園の制服を着た人がいた。多分先輩だ。
話を聞けば親睦会をするらしい。
俺は学園の外にあるしゃれた居酒屋へ案内された。
◇◇◇
「やあ、君だろ。冒険者として大成功した話題の騎士って」
親睦会で特に何もせずぼーっと過ごしていたら、先輩に話しかけられる。確か名前はルクル。
「あー、多分そうです」
「そこにいるもう一人の大出世の騎士のリオン君にも話を聞いたんだけどさ、君の話も聞かせてくれよ」
リオンと思われる人物は興味深そうにこちらを見ている。
「そんな面白い話じゃないですよ。クソ親父が俺名義で借金したせいでどこかで一発逆転しないと一生借金生活だったから死に物狂いでダンジョン攻略したんです」
「そうかお前も事情があったんだな。俺も変態ババアに売られそうになって冒険に出たんだ」
「リオンだったか。俺はウィリアム・フォウ・セレスディアだ。お前も苦労してるんだな」
「ほんとだよ。あ、俺はリオン・フォウ・バルトファルト」
リオンの隣に座っているのはダニエル、レイモンドというらしい。どちらの男爵家の嫡男だ。二人を交えて俺たちは苦労話をした。借金という単語に反応していたので、二人の家も借金があるのかもしれない。
男爵家は不憫なやつが多いらしい。
その後リオンの兄の話や特待生の話をして解散になった。
◇◇◇
入学式が終わり数日たった。俺は放課後はほとんど毎日図書室で過ごしている。家を出てからはほとんど勉強していないので、微妙に学力が足りていない。
ラースを手に入れてからは余裕が出たので勉強とか筋トレとか自己研鑽できたが、勉強は前世からあまり好きではないので身が入らなかった。
図書室で勉強しているのは読書とか勉強が好きな女子の方がいくらかましなんじゃないかという気持ちがあってだ。
「ふっ、ふっ、えい!」
前にかわいらしく背伸びして本を取ろうとしている女子がいた。チャンスだな。
「これですか? お嬢様」
俺はそう言って本を取ってあげる。
「あ、ありがとうございます!」
女子生徒はそうお礼を言ってくれた。
な、なんていい子なんだ! 是非お近づきにならなければ!
「もしよろしければ一緒に勉強しませんか?」
精一杯紳士を装ってそういえば、
「え、えっとじゃあお願いします」
そうはにかみながら言ってくれた。
何だこの子は! 天使、いや女神か?この子意外に結婚するべき相手はいるだろうか、いやない。(反語)
「私は、ウィリアム・フォウ・セレスディアです。お名前をうかがっても?」
「え、えっとオリヴィアです」
「……? 家名をうかがっても?」
「す、すみません。私特待生で平民なので家名はないです……」
な、なんだと……!
俺は膝から崩れ落ちた。
「ちょ、ちょっとウィリアムさん! 大丈夫ですか!?」
そうだ。ちょっと考えればわかる。こんないい子が男爵家子爵家の子女なわけない。男爵家子爵家ならすぐ取り合いになって話題になるはずだ。俺が知らない時点で彼女が俺の結婚相手になりえないと気づくべきだった……
◇◇◇
「かわいくて性格もいい子と結婚でいるかもと舞い上がってた分ショックが大きくて……」
俺たちはその後図書室にある机に向かい合って座っていた。
「かわいいなんて、そんな……」
「? かわいいよオリヴィアさんは」
「そんなことないですよ。私なんて。地元でも男の子とよく遊んでで全然そんな感じじゃありませんでしたし……」
うむ、どうやらオリヴィアさんは女性にありがちな勘違いをしているようだ。
「オリヴィアさん、男っていうのはな、素朴な可愛さっていうのが大好きなんだ」
「そうなんですか?」
「そうだ。自分だけあの子の可愛さを知ってる感じっていうか、癒されるっていうか、守ってあげたくなるっていうか……。男はそういうのにめちゃくちゃ弱いんだ。多分オリヴィアさんの地元の男の子の初恋のほとんどはオリヴィアさんだ」
「でも全然そんなそぶりなかったですよ」
「そりゃあ恥ずかしいから平然を装ってるんだ。まあとにかくオリヴィアさんはかわいい! 断言する! 自信持って!」
「あ、ありがとうございます///」
オリヴィアさんは恥ずかしそうにしながらお礼を言った。
……俺は一体何を力説しているんだ?
オリヴィアさんは顔を赤くしてもじもじしている。そんな反応をされたらこっちまで恥ずかしくなってくる。
「…………」
「…………」
「……勉強しようか!」
「そうですね! 勉強しましょう!」
◇◇◇
「えっと、オリヴィアさんここって……」
「あ、そこはですねーーー」
やばい。オリヴィアさん頭良すぎる。さっきから教わってばっかりだ。そりゃあ特待生になるくらいだから頭いいよな。婚活するために学園にいる俺たちと違って、勉強するために学園にいるんだから勉強に対する意気込みが違う。
「なんか教えてもらってばっかりで悪いな」
「いえ、私も久しぶり誰かとお話しできて楽しいので」
「あーオリヴィアさん以外貴族だもんな。困ったことがあれば言えよ。ほら、この学園の女子ってあれだからさ」
「そこまでお世話になるわけには……」
ま、俺も貴族だし頼りにくいか。
「オリヴィアさんには勉強教えてもらったし、少しぐらいは手助けするよ。でも本当に女子には気をつけろよ。オリヴィアさんもわかってると思うけど」
「あはは……」
数日過ごせばわかる女子の酷さにオリヴィアさんも苦笑いだ。
もちろんいい人もいるんだけどな。爵位が高すぎるか、人気者すぎて俺たちが近寄れないだけで。
◇◇◇
「そろそろいい時間だから解散しよっか」
「あ、ほんとですね……」
オリヴィアさんがシュンとしてしまった。
ぼっち生活らしいから寂しいんだろう。
「放課後はだいたいここいるから、また一緒に勉強しよう」
俺がそういうとオリヴィアさんはパーっと顔を輝かせ、
「はい!」
と言った。