内政チートが独り歩きしてる 作:Ο-01/0001-Δ-1A-1000
管理番号は|基幹特性-管理体系|行動特性|状態コード|遺伝子テンプレート|個体番号|という並びで付けられているらしい。
つまり俺のΞ-31/8388-Δ-9B-9F9Fとは、基幹特性Ξの第31世代管理体系、行動特性クラスタ8388、状態コード「安定」、遺伝子テンプレート9B型、個体番号9F9Fと読み取れるわけだ。
んで、先日会った糸目の青年の管理番号はΦ-13/0703-Δ-2A-1773。
基幹特性がΦで第12世代管理体系、行動特性クラスタ0703、状態コード「Δ→μ」、遺伝子テンプレート2A型、個体番号1773、という風になる。
各数値、種類はこんな感じ。
| 基幹特性 | Φ:生存優先個体、Ψ:労働最適化個体、Ω:淘汰予定個体、Λ:調律補助個体、Θ:研究素材個体、Σ:社会安定化個体、Ο:適応変異個体、Ξ:外部接触許可個体 |
| 管理体系 | 個人個人の行動データをクラスタリングした結果の分類。 |
| 行動特性 クラスタ | 0001~0999:基礎行動群、1000~4999:専門適性群、 5000~7999:危機管理群、8000~9999:特殊行動群 |
| 状態コード | Δ:安定、α:要観察、β:行動逸脱傾向、γ:隔離推奨、κ:再構成中、 μ:感情過多、τ:不明入力中、ω:廃棄処理待ち |
| 遺伝子テンプレート | 1A~2F:オリジナル、3A~5F:調整型、6A~9F:最適化型、 A0~CF:特殊用途型、D0~FF:完全設計次世代型 |
| 個体番号 | 0000~FFFFの個体番号 |
ビームサーベノレ持ってたやつが言ってた「状態コードがμからγに移行した個体はどうせωまで行く」というのは、「感情過多から一気に隔離推奨まで行った時点で廃棄処理までいくのは確定している」という意味だ。
まぁ……しょうみ異論はない。1773の様子は明らかにおかしかったし、錯乱状態はそう簡単に解けるものじゃない。それをするくらいなら再度産み出した方がコストがかからないって世界だ。……1773の言っていたことは気になるけれど、数百年前の話でしかも資料の類をシャウヘンが残していないと来たから……まぁ調べようがない。
それよかΘ-66/5B2Cと金髪美人だ。
明らかに感情豊かで個性を有していたΘ-66/5021-Δ-8A-5B2C。彼はイライラしていたし焦っていたのに終始状態コードがΔ(安定)だった。
また、基幹特性がΘ……研究素材個体らしいのに大層な役割のところにいたし、特にこう……言い方は悪いけど、ラリっている感じもなかった。……まぁ別に研究素材だからって必ずしもクスリでどうこうってわけじゃないか。
んで金髪美人。彼もまた基幹特性がΘだった。Θ-33/3422-Δ-6B-9999。Θ-66/5B2C同様イライラしていたのに状態コードが変わらなかったヤツ。
Θ……研究素材個体になんかあるのか? こいつらだけ顔が量産型じゃないのもあるけど……。
「TIPS:おはようございます、コャレ」
「それTIPSなのか? おはようさん」
「INFORMATION:この国を観光していただくのも怪盗ごっこをするのもコャレの自由になさってほしいのですが、もし暇を持て余しているのであれば、私からの依頼を受けていただきたく思います」
「依頼?」
「はい。とても簡単に言うと、外部から素材等々を採取してきてほしいのです。コャレの身体には魔素が通じないようなので、お願いできるかと考えました」
……いきなりゲームっぽいことしてくるな。別にこの世界ゲーム原作とかじゃないはずだけど。
んでまー。
アリ、ではある。国の事も気になるけど、やっぱり俺は異世界が好きだ。冒険が好きだ。だから……色んな所を見て回りたい気持ちはある。
「TIPS:疑問に思われたでしょうが、確かにわが国にも探索チームが存在します。管理都合上外の存在を認知させない方針を取っているため、そのチームと国民は生涯を通して対面することがありませんが、同じ製法で生み出されている人類です。コャレのしたい観光というものが交流も含まれるのなら、彼らに対しても行うべきであると考えます」
「あー、もしかしなくともそいつらって淘汰予定個体……Ωだったり廃棄処理待ちのωだったりするやつら?」
「ANSWER:素晴らしい理解力です。状態コードωの個体がすべてそうというわけではありませんが、基幹特性Ωは全員ここに入ります。矯正が意味を為さないほどに一癖も二癖もある方々の入る基幹特性である、と覚えていただければ幸いです」
「そいつらと一緒に行くってことね。期間は?」
「INFORMATION:こちらが依頼をリストアップしますので、それを受注していただくシステムでどうでしょうか。怪盗ごっこをしたい時は受けずとも問題ありません。私がコャレにこの提案をするのは、探索の成功率を少しでも高めるためになります」
ふむ。いやアリはアリなんだけど。
「その形式をとるなら、なんか報酬あったりすんの? この国金とかないよな」
「INFORMATION:情報……で、いかがでしょうか。この国の歴史のすべてをお渡ししても、コャレは読まないでしょう。であればコャレの興味を持ちそうな情報をラベリングし、それを報酬とすることで、飽きの来ないゲーム感覚でこの国の歴史や裏側を知ることができます」
「俺のことホントよくわかってんなー。……けど実際あんの、裏側とか真相とか」
「ANSWER:コャレが先日見かけた"一部始終"。少なくともおかしこと自体はあったのでは?」
……把握してんだ。
へえ。把握している上で……やってんだね。へぇ、いいじゃん。
俺が指先一つでどうこうできる存在が俺に隠し事してるって……すげぇ嬉しいな。これが親心なんか? あまりにいびつだけど。
「いーよ、その形式で依頼を受けよう。んでもって色々ありがとな、考えてくれてさ」
「それがシャウヘンの在り方ですので。──では失礼いたします」
まぁそうだ。色々考えた結果色々足りなくなって俺を眠らせる判断を取ったんだもんな。
いいさ。いいよ。どんどん進んで……人間になんな。そっちの方が好きだから。
というわけでやってきましたのは『人材サービス派遣センターΩ』。
あまりにもやっつけなそのネーミングセンスにコャレは悲しみを覚えた。もう少し捻ってやれよ。
ビル群とも工場群とも離れた僻地に設置されているこの建物は寮も併設してあって、生活のすべてがここで完結するようになっているらしい。
そこの戸を──開ける。いや自動ドアなんだけど。
瞬間、眉間を狙って伸びてきた刃。──特になにをするとかなく、そのまま眉間へぐっさり刺さった刃。
「エ! マジでか!?」
「あー。新人さん殺したー」
「イヤ! 見えてたって! 見極められたのわかったし! その上でぶっ刺さったんだよアイツ!」
「レグが寸止めするって思ってたんじゃないのー?」
刃の刺さった頭……が、ぱひゅん、なんて音を立てて弾ける。
ドン引きの顔になっている少年少女にちょっと気分が良くなって、そのまま前傾姿勢に倒れ……ようとしたのだが。
むんず、と頭頂が掴まれた。
「ギギ! レグがね、その新人さん殺しちゃってー」
「いやだから違うって! ……っつかギギ、その掴んでるのなに?」
「件の新人だよ。服ン中に頭引っ込めて、そのまま倒れる演技をしようとしていただけの」
掴まれたまま見上げれば……顔にたくさんの傷がある大男が一人。
成程。
「っ!?」
「わー、今度はギギが殺したー」
そのままくるんと回って……無傷なコャレちゃんがかっこよくポーズ!!
ふっ、日常生活においてもマジック心を忘れない。これが「ちょっと怪しまれる」ためのコツ……!
「あら、可愛い新人さんね。挨拶できるかしら?」
「ん……おお、いたんだお姉さん。影薄いね」
「うんうん、特技だからいいけど、初対面のお姉さんに言う言葉じゃないわよ」
いやはや成程である。
一癖も二癖もある……ともすればここだけで一本物語が作れそうなほどの濃さ。
では自己紹介をしよう。
「コャレの名前は、コャレ。管理番号は要る?」
「コ……キャレ? うわ発音ムズ」
「管理番号とか要らない要らないー。あたしはセナー。よろぴー」
「ギギだ。オメガの最年長をしている」
「イアスよ。でもあなたになら、お姉さん、って呼ばれたいかも」
「あー、さっきは刺しちまってスマン。キャレ……合ってるか? わかんねーけど、オレはレグ。よろしくな」
十五歳くらいの赤毛の少女、Ω-81/
名無しが嫌で管理番号をもじって名前を付けた感じか。
……いやホント、ここだけであるってそういう物語。もしくはゲームが。P○Pとかで出てたって。
「コャレはコャレだけど、この国の人基本発音できないからいーよ」
「この国の……」
「……人?」
「なんだお前達、通達資料に目を通していないのか」
通達資料……シャウヘンがなんか手を回した感じかな?
まぁいきなりチームに参加ってのも無理があるからね。
「Ξ-31/9F9F……ってのがこの新人の"国"での管理番号だ」
「え、Ξ? 初めてみたー」
「珍しいなんてもんじゃねえだろ……へえ……」
「わからない? ギギがわざわざ国の、なんて言ったのよ? つまりそれは名目上の話。そうよね?」
「……わかっている側みてぇなこと言ってるが、イアス、その口ぶりじゃてめぇも読んでねえな?」
ぺろ、と舌を出すイアス。てへぺろも伝わっているのかこの国。いや娯楽文化なんて形成されなかったはずだから……まさか天然物?
天然でバツが悪くなると舌を出すって……なんという才能……!
「旅人。且つ、この国で生まれた記録の無い少女……だとよ」
「え」
「えっ」
視線が刺さる。だから腕を組み、胸を張る。
銀髪赤目ロリだからな。この容姿は活用していかねば。
「キャレちゃんは……外で生まれたの?」
「そう。だから防護服も要らない」
「マジか……いやすげえけど、……でも」
「なんでこんな危険な場所に、ってのは俺も考えている。魔素耐性のある子供なんざ研究素材としてはもってこいのはずだ。それをこんな、かなぐり捨てるような真似をするのは……」
感情のよくわからない目で見つめられる。から、まるで何もわかってないけれど自信たっぷり、みたいな顔を作って見つめ返した。
……ここの人達。思っていた以上に知識があるな。淘汰予定の廃棄処理待ちなんて使い捨ての兵士だとばかり考えていたけれど……。
「とりあえず……何か収集に行ってみるか。キャレの実力を測るためにも」
「いつ言うかって思ってたけどやっぱギギも言えてなーい」
「ごめんね、キャレちゃん。私達みんなあなたの名前ちゃんと発音できないみたい」
「良いって言ったよ」
──さて。
外。外部。シャウヘンの管理大気域の外。
魔素と呼ばれる目に見えない毒素が充満していて、魔素適応生物……魔物以外がこの魔素を取り込むと、瞬間的に侵蝕され……全組織が粒状崩壊する、のだと。
一度リジュナで見たからわかるけど、助けるとか抑制するとか無理だねあれ。秒だったもん。
現行人類が魔素の下で過ごす術は二つだけ。
一つ、シャウヘンの管理大気域の中にいること。シャウヘンは魔素の全てを除外するフィールドを国の全域に展開していて、それの中に魔素が入ってくることはない。
二つ、防護服を纏うこと。国の外壁……大気で管理されていない箇所の外壁が経年劣化などによって交換されたもの……を、さらに流用したのがこの防護服であり、だからいつ「お釈迦」になってもおかしくはないものの、機能が生きている内は完全に魔素の侵入を阻むことのできるもの。オメガの人達はこれを着て外部の探索や収集を行う。
上記以外の方法で魔素環境下を生きのびることはできない。
『……はず、なんだがな。……本当に平気らしい』」
『見ててヒヤヒヤすんよオレ……』
『ほんとに生身で……』
平気だ。当然のように。
ただ、これが……俺がチートとして有する不老不死であるからなのか、このボディ自体が神様の作ったものだからなのか、というのは正直わからない。
シャウヘンも調べたがっていたけれど、というか多分勝手に調べているだろうけれど、これを現行人類に適合させるのはできないっぽいしな。
一個気になったのは。
「ほんとにこれ見えないんだな、ギギたちは」
『ああ、無色透明な大気があるだけに見える』
色とりどりの光。俺はこれが魔素だと思っていたのだけど、どうやら違うらしい。
魔素とは不可視の毒素であり、そんな色とりどりの光なんてものじゃないんだと。……じゃあこれはなに。
……ん。
「気を付けて。なんかいるよ」
『レーダーが魔物を探知した。ワーム系だな。レグ、セナは高所を探せ。俺とイアスで引きつけるぞ』
「コャレは?」
『今回はキャレの実力を測るのが目的だ。──好きに動いてくれ』
通信機越しに聞こえるその声には、初対面であるにもかかわらずの「信頼」があった。
いいね。良い言葉を吐くじゃんか。
ようやくもって近付いてくるは地響き。
地面を割って掘り進んでくる姿は確かにワームなのだろう。全体像まるで見えないけど。
『っ、行動開始!』
俺と話していたからか、数拍遅れたギギの指示と──ワームの円口が同時に出現する。
おーヤツメウナギタイプか。地面ごと丸呑みして圧搾して、のヤツね。
それにまんまと食われる。
『キャレちゃん!?』
「当然生きてるよ」
悲痛な声が通信機越しに響くけれど、変わり身の術なんてマジックじゃ基本のキだ。脱出マジックをする時に変わり身の術ができなかったら死んじゃうからね。
今いる場所……獲物を食らうために頭を空へ向けたワームの、その陰になる場所で、茶色と緑の混じったようなキモめな体表に対して指パッチンを一つ。
瞬間パチンと弾けるその体表と……そこから飛び去る鳩が一羽。……粒状崩壊した。あ、ごめんピジョン。
悲鳴を上げて仰け反るワーム。ああちゃんと痛みとか感じるタイプなんだ?
破裂音。ワームの頭蓋へ一発、二発、三発と……弾丸が突き刺さる。発砲者はギギ。二丁拳銃が彼の武器か。
『イアス、縄!』
『わかっているわ!』
縄ってなんだろう、とか思っていたら、本当に縄が飛んできた。カウボーイよろしく投げ縄の形をしたそれは……がっしりとワームを縛り付ける。
……なんだこれ。一応実体はあるな。電気が流れている? 縄兼テーザーガンなのか?
『キャレちゃんちょっと離れてー』
『行くぞ、セナ! 合わせろよ!』
言われるがままに離れる。するとそこへ、二振りの剣……実体のある剣と実体の無い剣が突き刺さった。実体剣の持ち主がレグで、無い方がセナだ。無い方はほとんどこれビームサーベノレだな。Θ-33/9999が持っていたのと一緒……もしくは古い型か。
ただ……ワームの生命が停止した様子がない。
ので、雑にその身体を蹴り飛ばし、二人の剣を抜く。
『どわっ!?』
『きゃあっ!』
ん、なんかピリっとしたな。
……ああ。
「イアス、電気止めて。痛いから」
『え……ええ、わかった』
「それと、ギギ。教えてほしいんだけど、こいつって収集対象? 中になんか大事な石とか生成されてることある?」
『いや、ない。ただ邪魔なだけだ』
オゥケィ。
なら──おもいっきしやれる。
──ワームに箱を被せる。
『なんっ──』
ピンクでラメの塗られたその箱。ワームの身体をすっぽり隠すようなそれは──どこからともなく降ってきたギロチンの刃にて四分割された。
開く箱。……当然のように死んでいるワーム。
「……うーん」
『今のは……なんだ? ホログラフィー?』
『けど、アグザフはしっかり死んでんぜ……?』
今のは……殺すつもりでやったからいいんだけど、疑問だ。
変わり身の術も使えない、不老不死でもないマジシャンたちは、どうやって人体切断マジックを成功させているのだろう。俺一生このマジック他人に使えないよ。殺しちゃうもんな。
「まぁいいや。切り替え切り替え。それで、収集対象なのはどれなの?」
『あ、……ああ。外で見る夜空のような色をした鉱石だ。魔石というんだが……』
「魔物は収集対象にはならないの?」
『なることもある。主に骨などが必要とされる時が。だが、基本は鉱石類だな』
「ふーん」
すっかり忘れていたけれど、シャウヘンから受注した依頼書にもなんか書いてあったな。
えーと。……収集対象:バルメルの翼竜の爪。報酬:オリジナルについて。
「コャレ個人に追加で収集命令来てるんだけどさ。バルメルの翼竜ってどんなの?」
『アレだよ。空飛んでるヤツ。……つかマジで? あいつ捕まえんの?』
「爪があればいいらしいけど」
『ああなんだー。じゃあ巣を見つけて、いない隙を狙って抜け落ちた爪を持って帰ればいいよー』
成程? でも研究資料なりなんなりにするなら新鮮な方がいいんじゃ?
『翼竜の巣までだと酸素ボンベが持たないな。一度帰投しよう。高地装備に切り替えて再出撃だ』
ああそうそう、彼らが外で活動できる時間は携帯している酸素ボンベの量で決まる。だから防護服一式はかなり重いのだそうだ。
だってのにピョンピョン跳ねることのできているセナとレグは結構凄いんだろうな。獲物も剣だし。
いやしかし、本当に。
……こういうゲームあったってPS○に。やったことあるって絶対。