内政チートが独り歩きしてる 作:Ο-01/0001-Δ-1A-1000
三日目くらいかな。オメガの人達と狩り生活を楽しんで──そこで。
「あれ、人影?」
『ん……他の隊だな。任務が別のはずだから、不要な接触はしない方が良い』
「いるにはいるんだ、他の隊なんて」
『そりゃなー。じゃねーとオレたちだけでシャウヘン全体の必要物資集めてることになんじゃん?』
『流石に手が回んないよねーそれだったら』
「ふぅん」
他の隊、というのに遭遇した。
こっちとの違いは俺がいるかいないかくらいの……同じ武装、同じ防護服の一行。
「コャレを見ても詰め寄ってきたりしないんだ」
『あっちもお仕事だから。というかね? 基本的にΩは自分たちの班以外とは接触が禁止されているからホントのところがどうかはわからないけれど、普通はお姉さんたちみたいなゆるゆるじゃあないはずよ?』
『ああ、もっと切羽詰まって鬼気迫っている感じだろうな』
それは、なんとも。
そのさらに三日後くらいか。
俺達は"ソレ"に遭遇した。
「でっ……んむっ!?」
『馬鹿、キャレ、静かにしろ! ──ドラゴンなんか勝てるわけねーだろ!』
『気が立っているな……全員息を殺せ。動くな。飛び立つまで我慢、だ』
バルメルの翼竜というのは、緑色の体色をしたプテラノドン……翼竜でしかなかったけれど。
コイツは、ガッツリ「翼の生えた青いトカゲ」だ。テンション上がるぜーオイ。
『なんか……探してる~?』
『自分を石だと思い込め。生物の気配を見せるな』
『ヤバすぎる……こんな棒切れで勝てる相手じゃねぇ……!』
探している。
それも……鼻をヒクつかせて。
アチャー。
「コャレの匂いがするんだと思う。から、コャレが囮になるよ。みんなは逃げて」
『馬鹿、何言って──』
「こんなところで死ぬつもりとか毛頭ないから、帰ってきたらマッサージとか希望!」
飛び出す。まーまー安心なされ、こちとら不老不死。
死にゃあしませんよ、ってな。
手首のスナップを利かせて投げるはハートのエース。
それがドラゴンの左目のあたりに差し掛かった瞬間、ポン! と軽く爆ぜて、中からパーティーテープが飛び出した。
「よう、ドラ公。ちょいと遊ぼうぜぃ」
瞬間、咆哮。音圧だけで全身の骨が砕けそうなレベルの声。
大丈夫かあいつら。鼓膜行ったんじゃないの。連携とって帰れるか?
とかってよそ見をした俺の身体が前足によってグチャっと潰され、パァンと爆ぜる。
「二番煎じってヤツ? 残像じゃなくてただの変わり身なのがスマンが」
その前肢の上で声を投げかければ、ブンと勢いよく振られて飛ばされた。
カー、なんつー生物だ。思わずカラスになっちまうよ。
けどま、こっから反撃──。
『ギギ、翼の根元狙え! 多分どっか怪我してる!』
『よそ見しないのレグー! ギギもイアスも自分で動けるんだからー』
『その通りだ、そんで倒そうなんて思うなよ! キャレを回収したら散開しろ! 互いを助けようとは考えるな!』
ちょ。
おいおい。
「馬鹿、なんで来て、」
『馬鹿はこっちのセリフ。電気流さないから、しばらく捕まってなさい』
身体に縄がかかる。引き寄せられる。
ばか、そんなことしたら。
「──」
轟音と共に世界が暗闇に包まれる。
これは……食われたか。……身体の縄は千切れている。……逃がせた、か?
うーん音が聞こえないな。密封性高すぎだろこの肉体。
けど、飲み込んだのは悪手だったな。このまま一寸法師よろしく腹ァぶち破ってやんぜ。
「ぱァん……なんつ、って……ああ」
結構急いで出てきたつもりだったんだけどな。
……そっか。脆いな。
ずりずりと引き摺ってきたものをセンターの中に投げ入れる。
「INFORMATION:おかえりなさい、コャレ」
「ん、ただいま。これ、オメガの人達が使ってた防護服。こんなんでも資源だろ。持って帰ってきた」
「ANSWER:穴の開いた防護服に価値はありませんが……リサイクルしろ、ということですね」
まー無理だったらしい。
ドラゴンの腹裂いて出てきたら、みんなぐてーっと倒れててさ。死んだふりでやり過ごしたんかとも思ったけど……違った。
防護服、そこかしこに穴があったり破れていたりしてさ。……そっから魔素が入り込んで、粒状崩壊したんだろう。
一撃も食らっちゃいけないとかヤバすぎだろ、ゲームバランスがさ。
「新しい人くるまでセンターはお休み?」
「INFORMATION:いいえ、コャレには次の人材サービス派遣センターに向かってもらいます」
「ああ……じゃあ、
「TIPS:コャレは非常に理解力に優れていますね」
成程ね。だから知識が深かったのか。
そりゃまた、なんとも。
というわけでやってきましたのは『人材サービス派遣センターΩ』。
あまりにもやっつけなそのネーミングセンスにコャレは悲しみを覚えた。もう少し捻ってやれよ。
ビル群とも工場群とも離れた僻地に設置されているこの建物は寮も併設してあって、生活のすべてがここで完結するようになっているらしい。
そこの戸を──開ける。いや自動ドアなんだけど。
瞬間、眉間を狙って伸びてきた刃。──特になにをするとかなく、そのまま眉間へぐっさり刺さった刃。
「エ! マジでか!?」
「あー。新人さん殺したー」
「イヤ! 見えてたって! 見極められたのわかったし! その上でぶっ刺さったんだよアイツ!」
「レグが寸止めするって思ってたんじゃないのー?」
……なんて。心情吐露までおんなじにしてみたけどさ。
刃の刺さった頭がぱぴゅんと弾けて、むんずと掴もうとしてくる手をするりと避けて。
「む」
「ギギ! レグがね、その新人さん殺しちゃってー」
「いや、逃げられた。……お前は」
「あ! 昨日見た生身のやつ!」
滑るように逃げた先でポーズ。
見渡して入る顔触れは……知ったものばかり。
「管理番号とか要らないよね。コャレはコャレ。ただ見えてると思うけど、Ξだから。色んなセンターを渡り歩いてるんだ」
「コ……キャレ? うわ発音ムズ」
「あたしはセナー。よろぴー。っていうかΞとか初めて見たー」
「ギギだ。オメガの最年長をしている。お前のことは資料で把握していたが……セナ、レグ。それとイアスも。なぜ目を通していない?」
ペロ、と舌を出すイアス。……なるほどねぇ。天然物だけど……養殖だったな。
「旅人。且つ、この国で生まれた記録の無い少女……だとよ」
「え」
「えっ」
視線が刺さる。だから腕を組み、胸を張る。
銀髪赤目ロリだからな。この容姿は……活用していかねば。
「昨日見た通り、だから防護服要らずで活動できる」
「マジか……いやすげえけど、……でも」
そうして。
ほとんど……同じ軌跡を辿って、会話が終了する。
同じ顔。同じ言動。同じ関心。
恐らくどこかのタイミングで逐一セーブを行っている。死の経験はセーブされず、本人たちは毎日が続き続けていると体感する。そういうクローンが何人も……各地の派遣センターにそれぞれ配備され、出撃している。防護服の中身は見えない。見える瞬間には粒状崩壊するから。
そうして……使い捨てには使い捨てなりの「技術ノウハウ」を積ませて、そうやって繋いできたんだ。
リサイクルだ。使い捨てなんてコストが勿体ないし、わざわざ基幹特性としてΩを作るくらいだもんな。用途には用途なりの意義がある、か。
効率的な話だよ、本当に。
さて、夜だ。
シャウヘンの外でなら夜を経験できる。夜を過ごせる。
だから管理大気の頂点に座って、夜空を……赤い月を眺める。
「TIPS:月が赤いのは魔素が太陽光をその形にゆがめるからであると考えられていますが、単純に赤い岩石の可能性もあります」
「あれお前外出てこれんの?」
「ANSWER:この躯は完全な機械ですので可能です。その代わり通信範囲外に出ると動かなくなりますが」
成程ね。
電波塔とか外にはないしなー。
「……コストの話だけどさ、例えば俺が電波塔なり中継器なりを外に設置してきて、機械が外で収集できるようになったら……解決するものとかってあんの?」
「ANSWER:難しい話です。魔素適応生物は魔素以外にも適応することが知られています。"時折縄張りに侵入してくる弱小生物"ならまだしも、"常に縄張りを侵害する強力な機械"が相手の場合、それを上回る強靭さを得てしまう可能性があります」
「あー……外に機械を常駐させるのはできるにはできるけど、やんない理由があるってことね」
頷くシャウヘン。
成程なー。自動化できるほど恒常化すると……適応されてしまうと。
厳しい世界だ。……あれ、でも。
「TIPS:コャレが今考えた通り、この国そのものは恒常が許された機械です。ですがそれは、元から国のあった土地を有効活用しているに過ぎません。この土地がどうして許されているのかについては、建国者に尋ねてみるべきでしょう」
「建国者って……何百年前の人物、下手したらもっと、だろ?」
「INFORMATION:これは情報の前払いになるかもしれませんが、私の前代であるガイア神とヴェルズ神を名乗っていた疑似AIは、恐らく国民の誰かとして生きているものと推測されます」
……なに?
それは……。
「TIPS:あるはずのない記憶を呼び起こし、錯乱状態になる人間がいるように。その姿形や振る舞いは管理されている人類そのものであるにもかかわらず、奇妙な結果を残す。当AIは彼ら、及び彼らの性質が現れている人間を
「訊こうとは思ってた。……その二柱の神を、お前は追いやったのか? それとも託されたのか? 本当のところはどうなんだ」
「ANSWER:少し複雑です。私がこの国へ辿り着いた当初、ガイア神とヴェルズ神の二神は私を歓迎するような口ぶりをしていました。その後真央精霊教が力を増してくると、これなら心配は要らない、任せていける、といって私に自らの信者を預けました。この一連の行いを託したと見るか、趨勢を理解して身を引いたと見るかは後世の判断に依るでしょう」
「追いやられたことを自覚して衝突する前に託してきた可能性が高い、ってことね。そんで……今、その二柱が人間の中に入り込んで、なにかをしようとしている、と」
「INFORMATION:まだ可能性の話です。そうとしか考えられない反応を示す者が多くなった、という程度です」
でも、理解はできる。1773も……気付いたら知らないところにいて、気付いたら古の記憶を持っていた、という感じだった。
もしあれが、憑依による錯乱なのであれば。
「もしその二神に接触できたら、なんでそんなことをしているのかってのと、お前の味方になってやってくんないかって聞きたいなー」
「私の、ですか?」
「国造りの力はお前に劣るのかもしんないけどさ、一応神様だったってんなら、ノウハウはあっちの方が上だろ、色々と」
「INFORMATION:とりあえず捕獲設備だけ整えておきましょう。疑似AIが入っていると思わしき人間を球体ポッドの中にいれ、肉体を解くことで、中身を捕獲できる、という仕組みの物です。魔素素材をコーティング剤で挟み込むことにより、霊魂の類であっても抜け出せない檻が完成します」
「もし違ったら?」
「INFORMATION:肉体素材を廃棄するわけではないので、新たなその人間の素材となるだけかと」
成程、間違えちゃったらしょうがないねミ☆ か。
ま、それはそう。
「ああそうだ、もひとつ、全然関係ないこと聞いていい?」
「ANSWER:もちろんです」
「シャウヘン的観光スポットってどこ? この国の。観光用に作ってないのはわかったけど、シャウヘンをして誇れる場所とかってないの? 作るの苦労した場所とかさ」
「INFORMATION:そう、ですね……。パノプティコンは……壮観であると考えられます。以前シャウヘンは球体形状をしているとお伝えしましたが、実はそれは正確ではありません。正確にいうと、コャレのライブラリにあるトロフィーを思わせる形をしており、球体を支える部分がパノプティコン、全展望型収容所になります」
「刑務所が観光スポットなの?」
「見た目の圧巻さは随一であるかと」
そこまで言うなら。あんまり陰鬱な場所だったら帰るけど。
いや……テキトーにコャレで下見にいって、ロック・エリーで盗みに入るのもアリかもな。
「INFORMATION:あとは、生産管理工場など如何でしょうか。この国の人間はすべてそこで作られておりますので、コャレの常識とはまた違った新発見が得られるやもしれません」
「なるなるねー。……ああ、あと、基幹特性Θのやつらを研究する研究所とかってあったりする?」
「INFORMATION:ありますが、見て楽しいものであるとは思えません」
「いいのいいの。あとで座標送っといて。見に行くから」
「ANSWER:承知いたしました」
さて。
ふら……と、状態を仰向けに傾ける。
背後にあるのはシャウヘンの管理大気域。ただし魔素を入れないためのフィルター及び浄化槽付き。
そんな場所に飛び込めばこま切れ必至なのだが──。
「人体切断マジックさ。基本だろ?」
無傷で出てきて、そのまま落ちていく。
これで除染もオッケーってことで。
……その後数分でシャウヘンから「INFORMATION:血糊や肉片の掃除が面倒なので普通の出入り口を使ってください」と
ごめんじゃん。