ヤーナムは朝を迎えた。
しかしここまで辿り着くのに何度、この夜を繰り返した?
介錯され、明けた筈の朝はいつの間にかにあのヨセフカの診療所に戻っていたし。自分を介錯したゲールマンを殺したとして、自分が彼の代役を務める事になっただけで何も変わらず、また診療所に戻る。
殺さなければ。
この因果を操る黒幕を。
狩人は狂ったように幾度も獣を殺した。獣以外の者も殺した。狩って、狩って。何度も巡って、繰り返して。
辿り着いた。ようやく、殺せる。月の魔物を。
狩人は月の魔物を狩った。かくして、ヤーナムの夜は明けた。
しかし狩人は望まぬ進化を与えられた。
自身が上位者になってしまったのだ。
その後は上位者の身で、人形と使者たちと共に過ごした。幾年か経過した辺だろうか、狩人がやっと人の姿を取り戻すことが出来たのは。
異形の身でなく、やっと人の身である事が出来た。
そんな時、ヤーナムに新たな異変が起こった。
夜が来る…よりもっと凄惨な、ヤーナムの街がより一層…腐臭が立ち込めていた。
辺りに散らばる獣と、獣に似ても似つかないなにかの死体。
街は荒らされたような形をしていた。
至る所にある銃痕と、火薬の匂いではない、乾いた油の匂い。見たこともない精巧な縫製の軍服を着た、食い荒らされた人の死体。破壊された建物と鉄格子。
それは誰かが人為的にやったとしか言いようがない有様だった。
「……誰が、何故このような…」
荒廃したヤーナム市街の真ん中に佇む狩人。
すると彼の上位者としての
それは獣の死臭ではない。
上位者の眷属が放つ、冷たい宇宙の匂いでもない。
もっと卑俗で、もっと貪欲で、それでいてひどく懐かしい……「血」の匂い。
似ている。此処の血の匂いと。
まるで一つの器に数百万の命を詰め込み、何百年も熟成させたような、歪で巨大な「穢れた血」の塊が、あちら側の世界で脈動している。
「……見つけた」
狩人は、雑踏に転がる獣ではない"化け物"の上で呟いた。
その「穢れ」は、かつてカインハーストの血族が求めた禁忌の完成形か。あるいは、ヤーナムを滅ぼした獣の病の、さらなる変異種か。
いずれにせよ、それは狩らねばならない。
狩人はその本能に従い、次元の膜を指先で引き裂いた。
「月」が歪む。
ヤーナムの赤い月とは違う、どこか冷めた、20世紀末の蒼白の月が、彼を招いていた。
1999年、英国。
チェダー村へと続く山道に、音もなく「闇」が落ちた。
アスファルトが凍りつき、空間がガラスのようにひび割れる。
その亀裂から這い出してきたのは、古びた狩装束を纏った「男」だった。
彼は一度だけ、自分の掌を見つめた。
実体化した肉体は、この世界の物理法則に縛られ、「人間」の形へと固定されていく。
だが、その瞳の奥には、今なお狂える宇宙の星々が瞬いていた。
「……ここが、源流か」
狩人は鼻を鳴らす。
風に乗ってやってくるのは、火薬の煙、そして……
女の悲鳴と、獣の咆哮。
彼は取り出した「ノコギリ鉈」の感触を確かめた。
時代は変わり、空は変わり、
だが、やるべきことは変わらない。
「狩りの時間だ」
男は霧の中へと、音もなく滑り込んだ。
その先で、赤いコートを着た最強の吸血鬼が、一人の婦警に牙を立てようとしていることも知らずに。
to be continued…
原作の流れでやっていきます。
こういうのって色々特殊なやつ入れた方がかっこよくなりそうですが、いまいち分からないので基本こんな感じでやっていきます。