HELLSING×Bloodborne   作:椛―もみじ

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ストックが切れるまではどんどん載せてきます。




第2話

英国チェダー村、郊外の路上。

冷たい霧が立ち込める夜。空には不吉な月が浮かんでいた。

 

吸血鬼アーカードは、胸を貫かれ瀕死の状態にあった婦警、セラス・ヴィクトリアの首筋から口を離した。

血の盟約は結ばれた。彼女は人間を辞め、夜の住人(ドラキュリーナ)へと堕ちたのだ。

 

アーカードは口元の血を拭い、満足げに夜空を見上げようとした。

だが、その動きが凍りつく。

 

背筋を駆け上がる、怖気。

異質で、冷たく、粘り気のある……「深淵」からの視線。

 

「……ほう?」

 

アーカードがゆっくりと振り返る。

舗装された道路の向こう、霧の奥から、ジャリ……ジャリ……と足音が近づいてくる。

そこに立っていたのは、時代錯誤な格好をした一人の男だった。

古びた三角羽根帽子。裾の長い革のコート。顔の半分を覆うマスク。そして右手には、錆と血に塗れた、ノコギリのような歪な鉄塊が握られている。

 

(誰……この人…?)

 

地面に転がるセラスは、薄れゆく意識の中でその男を見た。

吸血鬼になったはずの彼女の本能が、警鐘を鳴らしている。

『アレはダメだ』と。

私の主となったこの赤いコートの男も化け物だが、あちらに立っているのは、この世の(ルール)の外側にいるナニカだ、と。

 

狩人は立ち止まり、帽子のつばの下から鋭い視線を投げる。

彼の「瞳」には、常人には見えない世界が映っていた。

目の前の赤い男。その内側に蠢く、数百万の命の渦。それは圧倒的な「個」でありながら、同時に穢れた血の集合体でもある。

そして足元の娘。無理やり血を注がれ、望まぬ獣へと変えられた被害者。

 

狩人の思考は、瞬きするよりも速く、冷徹に結論を下す。

 

酷い獣臭だ。狩らねばならない。

 

ジャキッ!

狩人が手首を返すと、ノコギリ鉈が展開し、長柄の殺戮兵器へと変貌する。

 

「クク、ハハハハハ! 素晴らしい夜だ!」

アーカードは両手を広げ、歓喜の声を上げた。

 

「吸血鬼になったばかりの娘への祝いか?貴様、どこから迷い込んだ?」

「その瞳……貴様、人間ではないな? かといって吸血鬼でもない。……化物か。俺と同じ、夜を統べる側の、だな」

 

狩人は答えない。ただ、前傾姿勢をとる。

その沈黙こそが、肯定だった。

 

「いいだろう、歓迎しよう! 闘争の時間だ!」

 

アーカードが愛銃「454カスールカスタムオートマチック」を抜き放つと同時、狩人の姿が掻き消えた。

 

ドォォォンッ!!

大口径の銃弾が地面を砕く。だが、そこにはもう狩人はいない。

加速。

古い狩人の遺骨を用いた一瞬の加速。風を切り裂く音と共に、狩人はアーカードの懐へと滑り込んでいた。

 

「ッ!?」

 

ガァンッ!!

展開されたノコギリ鉈が、アーカードの胴体を深々と斬り裂く。

ただの斬撃ではない。肉を断ち、骨を砕き、その勢いのまま地面に叩きつけるような、重く粗暴な一撃。

 

「グ、ゥゥッ!?」

アーカードの体が吹き飛び、ガードレールをへし折って転がる。

しかし、赤い怪物はすぐに立ち上がった。傷口からは黒い瘴気が溢れ、瞬く間に肉体が再生していく。

 

「ハハッ! 速い! そして重い! 」

アーカードは笑う。痛みはある。だが、それ以上に興奮が勝る。

「だが、この程度か? その鉄塊で俺を殺しきるつもりか!?」

 

今度はアーカードが一気に詰め寄り、弾丸を発射する。狩人はそれを遺骨の加速で避けるが、幾つか肩を掠める。

その弾丸の威力はとても片手で発射するものとは思えぬほど、強かった。

 

「どうした!さあ来てみろ!」

 

アーカードが目を大きく見開き、愉しげに言う。

ヤーナム式の短銃よりも、散弾銃よりも、その弾丸の水銀弾よりも威力が大幅に高い。致命傷になりうる。

 

ならばこちらも攻めを変えなくてはならない。

 

武器を納める素振りを見せる。

否、持ち替えたのだ。

虚空から取り出したのは、「教会の杭」

医療教会の古い「仕掛け武器」の1つ

獣の古い伝承にある、大型の杭を狩り武器に仕立てたもの。変形前は片手持ちの槍のような大剣、変形後は長柄のウォーピック。

 

狩人の直感(啓蒙)が告げていた。

この男は「不死」に近い。だが、その不死性は「血」に依存している。ならば、血族を狩るための武器が特効となるはずだ、と。

 

「……!」

狩人が再び踏み込む。今度は正面から。

アーカードもまた、真正面から迎え撃つ。

「こいッ!!」

 

ズドォッ!!

杭が、アーカードの心臓とおぼしき位置を正確に貫いた。

その瞬間、アーカードの絶叫が夜のチェダー村に響き渡った。

 

「ギ、ァァァァァァァッ!?」

 

痛い。熱い。

ただ肉体が貫かれた痛みではない。

杭に宿る不可視の概念「穢れた血を浄化する」という祈りが、アーカードの中に存在する「命のストック」を焼き尽くしていく。

数人、いや数十人の命が、たった一撃で蒸発した。

 

「なんだ、それはァ!銀ではない、祝福儀礼された武器でもない! なのに俺の中の命が、悲鳴を上げている!?」

 

アーカードは口から大量の血を吐き出しながら、それでも笑みを深める

「浄化しているというのか!? この呪われた俺を! 異界の(ルール)で!」

「最高だ! 貴様は最高だ、名も無き狩人ッ!!」

 

 

セラスは、ガタガタと震えながらその光景を見ていた。

(うそ、でしょ……黒い人の体が、煙を上げてる……)

彼女の目には、狩人の背後に「何か」が見えていた。

星のような、宇宙のような、冷たい闇。この狩人は、人の形をした宇宙の端末だ。

これ以上戦えば、きっとこの村ごと消し飛んでしまう。

 

狩人は攻撃の手を緩めない。

アーカードが反撃の拳を繰り出す。その腕が、狩人の身体を捉える寸前。

 

パンッ!

 

乾いた銃声。狩人の左手に握られた短銃が火を吹いた。

水銀弾の衝撃が、攻撃動作に入っていたアーカードの体勢を崩す。

パリィ。致命的な隙。

 

狩人は武器を捨て、素手でアーカードの胸板へと手を突き出した。

内臓攻撃。

ズブリ、と腕が胸郭を突き破り、その奥にある「核」のようなものを鷲掴みにし、引き千切る。

 

「ガ、ハッ……!?」

大量の血液が噴水のように舞い散る。

狩人はその血飛沫を浴びながら、帽子を目深にかぶり直した。

返り血を浴びることで、狩人の活力は満ちていく。

 

アーカードは膝をついた。だが、その目は爛々と輝いている。

 

「……イイぞ。実にいい。心臓を抉られる感覚など、何百年ぶりだ」

 

アーカードの影が膨れ上がる。無数の目が、闇の中からギョロリと狩人を見据えた。

「礼をしよう。ここからは、俺も本気で応えねば失礼というもの」

 

 

拘束制御術式(クロムウェル) 第三号 二号 一号……開放ッ!!」

 

 

闇が奔流となって溢れ出す。

巨大な黒犬の顎、無数の蝙蝠、そして怨嗟の声。

チェダー村の通りが、赤と黒の地獄へと塗り変えられる。

 

それを見た狩人は、静かに息を吐いた。

(……ああ。やはり、貴公もそうなのか)

(夢に囚われた、哀れな獣)

 

狩人は背中から取り出した長柄の武器の包帯を解く。

現れたのは、湾曲した巨大な大鎌「葬送の刃」

かつて最初の狩人が用いた、夢を介錯するための武器。

 

そして、狩人は右手を天にかざした。

「彼方への呼びかけ」

狩人の頭上に、小さな宇宙が爆ぜる。無数の星々が流星となって降り注ぎ、アーカードの放つ闇の軍勢を光の雨が焼き尽くしていく。

 

「ハハハハハハ!魔術か!? 奇跡か!? いや、これは!」

「悪夢だ! 素晴らしいッ!!」

 

アーカードの体から拘束された使い魔が溢れ出し、狩人の大鎌がそれを刈り取る。

一撃ごとに空間が歪み、上位者のオーラが世界を軋ませる。

セラスは悲鳴を上げることもできず、ただ地面に張り付いて耐えるしかなかった。

これが、彼らの「挨拶」なのか。

 

互いに必殺の間合いへ踏み込む。

アーカードの黒犬が顎を開き、狩人の大鎌が首を刎ねる軌道を描く。

 

その時

 

ヒュンッ、と鋭い風切り音が響き、無数の鋼線が二人の間に割って入った。

 

「……そこまでにしていただけますか」

 

老紳士の声が、加熱した空気を凍らせる。

鋼線は狩人の大鎌を絡め取り、同時にアーカードの黒犬の鼻先を封じていた。

 

「アーカード。それに、奇妙な訪問者殿も」

ヘルシング家の執事、ウォルター・C・ドルネーズ。

彼は冷や汗を隠しつつ、慇懃な笑みを浮かべて二人の間に立っていた。

 

「チッ……」

アーカードは舌打ちをし、黒犬を霧散させた。

その顔は不満げだが、どこか満ち足りた余韻に浸っている。

 

「ウォルターか。間の悪い男だ。最高のメインディッシュだったものを」

「……まあいい。腹八分目もまた一興か」

 

アーカードが殺気を収めると、狩人もまた、瞬時に戦闘態勢を解いた。

大鎌を背に収め、ただの寡黙な男へと戻る。

その切り替えの早さは、彼が「戦い」を感情ではなく、あくまで「狩り」という仕事として捉えている証左だった。

 

ウォルターは狩人に向き直り、恭しく一礼する。

「お見事でした。我が主の最強の切り札と互角に渡り合うとは。……貴方のような専門家(スペシャリスト)とお会いできて光栄です」

 

狩人は答えない。ただ、じっとウォルターを見つめる。

その視線に敵意がないことを悟り、ウォルターは続けた。

「当主インテグラルが、是非お会いしたいと言うでしょう。……それに」

ウォルターは狩人の汚れた武器に視線を落とす。

「その珍しい武器、整備が必要では? 我が家の設備でよければ、お貸しできますが」

 

「……工房」

 

狩人の口から、初めて言葉が漏れた。

乾いた、しかし深い響きのある声だった。

 

「あるのか。……この地に」

 

「ええ、最高のものが」

 

狩人は小さく頷いた。

それだけで十分だった。彼はウォルターの後ろに従う。

 

「……ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ!」

取り残されたセラスが、涙目で叫んだ。

「なんなんですか今の! あの人なんなんですか!? 私これからどうなっちゃうんですかぁ!?」

 

アーカードは愉快そうに笑い、新たな眷属を見下ろした。

「騒ぐな婦警。面白いことになっただろう?」

「今夜は素晴らしい満月だ」

 

一行は霧の中へと消えていく。

ロンドンの闇に、新たな、そして最も深い「悪夢」が混ざり込んだ瞬間だった。

 

to be continued…

 






戦闘は以降めっちゃ盛ります。この武器とかにそんな作用とかついてないよ?みたいになりますが、派手に見えるので盛っていきます。
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