HELLSING×Bloodborne   作:椛―もみじ

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第4話

 

2匹の吸血鬼に被害者が惨殺された家の扉には、死の宣告のようなインターホンがなっていた

 

「チッ…ちょっ待ってろ、静かにさせてくるわ」

男の吸血鬼、ライフがマシンガンに弾を装填し、玄関に向かう。

彼がドアスコープを覗くとふたつの人型の影が合った。その影は段々と近づき、銃を構えた。

 

ドガドガドガドガドガドガ!!

ドア越しに銃を乱射し、蜂の巣にされたライフは倒れ込む。

キィ、とドアを開け2人の男が侵入して来た。深紅のコートを靡かせた怪物アーカードと、泥に塗れた狩装束の男。

 

(シャー)

 

ライフは即座にマシンガンを乱射した。だが、人間ごときの銃弾が彼らに通じるはずもない。

アーカードは銃弾を身体で受け止めながら高笑いし、狩人は紙一重のステップで弾道をすり抜ける。

 

「ひ、ひぃぃッ!?」

狩人が瞬時に間合いを詰め、ノコギリ鉈を振り下ろす。ライフの腕が銃ごと切断され、宙を舞った。

同時にアーカードのカスールが火を吹き、両足の膝を正確に撃ち抜く。

 

「ギャァァァァッ!!」

床に這いつくばるライフ。ジェシカは悲鳴を上げて部屋の奥へ後退る。

ここまでは、いつもの「ゴミ処理」のはずだった。

 

アーカードが銃口をライフの眉間に突きつける。

「終わりだ。腑抜けの吸血鬼(ノスフェラトゥ)──」

 

その時だった。

 

グジュッ……バヂヂヂッ!!

 

ライフの切断された腕の断面から、血ではなく、青白い粘液が噴き出した。

 

「あ、が……あああ、アアアアッ!!? ソラがぁッ!!降ってくるッ!!」

 

ライフが意味不明な絶叫を上げると同時、彼の頭部が風船のように膨張を始めた。

眼球が飛び出し、頭蓋骨が内側から砕ける音が響く。

皮膚は湿った蒼色に変色し、首から上が、まるで「巨大な肉塊のキノコ」あるいは「深海魚の頭部」のような、形容しがたい異形へと変貌していく。

 

「……なんだ?」

アーカードが眉をひそめた瞬間、その異形の頭部から衝撃波が放たれた。

 

ズドォォォン!!

 

「ぬぅッ!?」

油断していたアーカードが、見えない巨人の拳で殴られたかのように壁まで吹き飛ばされる。

木造の壁がクレーターのように陥没した。

 

狩人は咄嗟に後方へ跳んだが、異形となったライフの腕が長く伸び、ヒレと触手が混ざったような剛腕が、鞭のようにしなり、狩人の横っ腹を薙ぎ払う。

 

ガギィッ!

骨が軋む音。狩人は受け身を取りながらも、部屋の家具をなぎ倒して転がった。

 

(……この感触。獣ではない。「眷属」か!)

 

狩人は痛みを無視し、即座に立ち上がる。

目の前の存在は、もはや吸血鬼ではない。

実験棟の「失敗作」と、漁村の「魚人」を無理やり混ぜ合わせ、培養液で膨らませたような、冒涜的なキメラだった。

 

「アア……ウウゥ……!!」

異形は言葉にならない声を上げながら、その巨体を揺らす。

ただ腕を振るうだけで、建物全体が地震のように揺れる。物理的なパワーも、耐久力も、先程までの比ではない。

 

「クク……ハハハハ! いいぞ、素晴らしい!」

瓦礫の中からアーカードが這い出てくる。首が奇妙な方向に曲がっていたが、ボキリと音を立てて元に戻った。

 

「ただの雑魚かと思えば、とんだ隠し玉だ! 貴様、何を埋め込まれた!?」

 

異形は答えない。ただ、本能のままに、最も脅威度の高い狩人へ向かって、星の光を纏った拳を振り下ろした。

 

 

攻撃が直撃すれば、床ごと押し潰されるほどの重撃。

だが、狩人はすでに「敵」を分析し終えていた。

眷属には、雷が効く。

 

狩人は懐から一枚の紙片を取り出し、武器に擦り付ける。

「雷光ヤスリ」

バチバチバチッ! と青い稲妻がノコギリ鉈に纏わりつく。

 

異形の拳が振り下ろされる直前、狩人は前へ踏み込んだ。

死角へのステップ。

そして、雷光を帯びた刃が、ブヨブヨに膨れ上がった異形の脇腹を切り裂く。

 

バヂィィンッ!!

「ギョ、エエェェッ!!?」

電気の痛みが神経を駆け巡り、異形の動きが硬直する。

 

そこへ真紅の死神がクイックし、躍り出る。

「遅い!」

アーカードの「カスールカスタム」が、異形の膨張した頭部に突きつけられる。

再生を阻害する13mm爆裂弾が、ゼロ距離で発射された。

 

ドパンッ!!

頭部が弾け飛び、青白い体液が部屋中に飛び散る。

だが、それでも肉体は痙攣し、暴れようとする。生命力というより、細胞そのものが暴走しているのだ。

 

「往生際の悪い」

 

狩人は鉈を変形させ、長く伸びた柄を両手で握りしめた。

渾身の力で振り下ろす、縦一文字の叩きつけ。

グシャッ!!

残った胴体が両断され、ようやくその肉塊は活動を停止した。

 

「……汚い花火だ」

アーカードがコートについた青い粘液を忌々しげに払う。

「吸血鬼の改造実験か? 随分と悪趣味な事だ」

 

 

「い、いやぁぁぁぁッ!!」

恋人の無惨な、あまりに理解不能な最期を見たジェシカは、半狂乱になって窓から飛び出した。

外へ。夜の闇へ。

だが、そこにはもう一人の狩人が待っている。

 

建物の外、約600メートル地点。

屋根の上に展開していたセラス・ヴィクトリアは、飛び出してくる女吸血鬼を捉えた。

 

「逃がすなよ、婦警」

「…ヤッ…ヤーッ!」

アーカードの指示を聞き、セラスは震える指で、支給されたライフルの引き金に指を置く。

「スコープ無しでこの暗さですようッ!」

「教えた通り射て。おまえはもう人間ではない」

アーカードの助言を受け、暗闇の中セラスが目を澄ます。

 

ズドォォン!!

夜気を切り裂く砲声。

弾丸がジェシカの上半身に直撃し、心臓を貫いた。

 

「良くやった」

「………はーっ」

セラスが安堵の息を吐こうとした、その時。

遠くから見えるジェシカの死体、その残された首の断面から、何かが這い出しているのが見えた。

 

それは、とぐろを巻く蛇のような、あるいは巨大なムカデのような「虫」だった。

宿主が死んだことで行き場を失った寄生虫が、のた打ち回っているのだ。

 

「ひっ……!? な、なにアレ!? 蛇!?」

 

現場に追いついた狩人が、その「虫」を見下ろす。

彼は無言のまま、厚底のブーツでその虫を踏み潰した。

グチャリ。

まるで、害虫を駆除するのが当たり前の日課であるかのように。

 

狩人は、潰れた虫の残骸を見つめ、小さく呟く。

「……禁域の、連盟の()。持ち込まれている」

 

アーカードが背後から近づき、そのシミを覗き込む。

「寄生虫か。なるほど、先程の男の変異といい、今の吸血鬼たちは随分と『賑やか』な腹の中をしているようだ」

「インテグラに土産話ができたな。……これは、ただの吸血鬼事件ではないぞ」

 

 

場所は変わり、どこかの暗い一室。

無数のモニターが並ぶ部屋で、一人の小太りの男が、映像を見つめていた。

そこには、頭部が破裂して異形化したライフの戦闘データと、ジェシカから這い出た虫の映像が映し出されている。

 

「……ふむ」

男は恍惚とした表情で呟く。

「失敗か。いやいや、これは成功への尊い礎だよ」

 

彼の背後には、ガラスのシリンダーに入った、赤黒く脈動する「肉塊」と、アルコール漬けにされた「瞳」が鎮座している。

それは科学力と探求の果てに見つけた、異次元の遺跡からの発掘品。

 

「吸血鬼の不死性に、上位者の『進化』を掛け合わせる。……素晴らしいじゃないか」

男は不敵に微笑み、カチャリとライターで煙草に火を点けた。

 

「素晴らしい……これが、醜き戦争の根源……という訳か」

「急がずとも、とびきりの闘争が待っているね…夢より来たる狩人よ…」

 

紫煙の向こうで、男の眼鏡が冷たく光った。

 

「戦争だ。悪夢のような、戦争が待っている…」

 

to be continued…

 

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