キヴォトス企業、アーキバス・コーポレーション 作:ねうしとら
積もる話はあるが、本題に移ろう。君は、明日実装される臨戦エイミと臨戦ユズのメモロビを見て、何を思った。
……なるほど、どうやら既に背負っているようだな。戦友――!
共に、壁越えと行こうじゃないか。
うへぇ……。強いね。
正直なところ、ビナーよりはやりやすいんじゃないかと思ってたんだけど、思った以上にすばしっこい。
十メートルくらいある機体が、あの速さで動くというだけでも厄介なのに、小回りも利くのがうざったい。
後ろに回ったとしてもその場で回転して照準を合わせてくるのは、はっきり言って恐怖以外の何物でもなかった。
こちらは大きさでは劣っているけれど、火力という面では劣っているとは思わない。
ビナーを相手にすることができたのだから、例え目の前のロボット相手でも十分に戦えるはずだ。
先生の指揮があるから何とかなっているけど、正直面倒な相手には変わりない。
有人機体であることが、真価を発揮するのだとスネイルさんは言っていた。その意味が分かった気がする。
動きが機械的ではないというだけで、これほど厄介になるとは思わなかった。
加えて、目の前の相手は戦い方を知っている人の動きだ。
アーキバスグループの代表取締役。そういう肩書に目が行きがちだけど、彼の肩書はもう一つある。
それが、V.Ⅱ。
アーキバスが保有する実働部隊の二番目。最初に会った時から名乗ってたけど、今になって精鋭部隊の隊長として相応しい実力者だったことが分かるなんてね……。
生身だとあんまり強そうに思えなかったけど、この状態だと強さが如実に表れている。
つまり、ヴェスパーというのは、多分このアーマード・コアを操縦することが前提となった部隊なのだというのが分かる。
生身で戦ったことはないから分からないけど、今のスネイルさんには副長に相応しい圧がある。
「一番厄介なのは、垂直に打ち出されるプラズマ弾だね。あれのせいでこっちの動きが大幅に制限される」
「……そうね。私もあのミサイルのせいで悠長に狙撃ができないわ」
私は偶然隣り合った便利屋の社長ちゃんと会話する。
一番めんどくさくて、一番厄介な武装。それが、左肩に装備されている垂直プラズマミサイル。
先生の指揮のおかげで、避けるタイミングを逃すことはない。
けれど、あれはこちらの動きを如実に制限してくる。
上から降ってくる上に、打ち出されてから時間差でやってくるため警戒を怠りやすい。
そして、それに気を取られているとレーザーとスタンガンの餌食となる。
連射してくるスタンガンと、レーザーガンは複数の相手をロックすることができないみたいだから囮になれる私が引き付ければ問題はない。
けれど、やはり攻撃一発一発の大きさが普通の銃弾とは段違いだ。
連射されるスタンガンを受け流すのも難しい。基本的に避けながら、最低限盾で受け止めないとすぐに感電して動けなくなる。
そもそも、物理的な威力も持ち合わせているのが厄介なところでね。
あの巨体のくせに、結構すばしっこいのが難点だよほんと。
クイックブーストって言ったっけ? 一瞬でも前後左右に瞬時に移動できるっていうのは、私たちにとってこれ以上なく厄介極まりない。
使いすぎるとエネルギー容量が無くなって、回復まで待つ必要があるようだけど……。その回復のための時間も結構早いから、あんまり過信できないんだよね。
依頼内容は、五分間耐え続けることだけど……。
こりゃあ、ちょっと本気になった方がいいかも。
◆◇◆◇
想像以上に強い。
生身の生徒九人がかりとはいえ、ACと渡り合えているという事実は中々戦々恐々とします。
FCSのロック精度も問題なく作動しています。生徒という小さな物体を的確にロックすることができるか不安でしたが、問題ないようです。
今のオープンフェイスに搭載している武器類が、多対一に向いていない物ばかりだったことが災いしているのか、そこそこ苦戦していますが……まあいいでしょう。
優先的に処理するべきは、小鳥遊ホシノ。次点で陸八魔アル。その次に、砂狼シロコですか。
小鳥遊ホシノの戦闘スタイルは、基本的に盾で受け、反撃する役割。集団戦におけるヘイト集めとタンクを兼任していながら、本人の技量も極めて高い。
スタンガンとレーザーハンドガンを躱す身体能力も持ち合わせている。
その他の生徒たちも、的確に私のオープンフェイスに銃弾を当て、ACS負荷を溜めています。負荷限界まで残り五割と言ったところでしょうか。
現在搭載しているコア拡張機能は、アサルトアーマー。
これを起動すれば、一気に形勢逆転を狙うこともできるでしょう。
ACSの負荷もリセットされ、パルスの奔流により相手に衝撃と共にダメージを与えることもできます。
しかし、これを使う気はありません。
流石にアサルトアーマーを使用しては、大人げないというものです。
相手の強さは何も生徒たちの素の強さだけではありません。
安全圏から的確に指揮をする先生の指揮能力の高さ。これにより、多対一の状況を遺憾なく発揮してきます。
小鳥遊ホシノに気を取られていては、他のメンバーによる総攻撃が待ち構えているでしょう。
アサルトブーストで距離を取ってしまえばどうということはないでしょうが、アサルトブースト中に陸八魔アルの狙撃を食らうのは危険です。
あの狙撃の威力は侮れません。爆発を伴う狙撃など、ACS負荷を考えれば最も厄介と言っていいでしょう。
直撃は避けたい攻撃です。
『どうしました? 私が知っているあなた方とは、比べるべくもないようですが。期待外れだったということでしょうか』
右肩の三連プラズマミサイルをマルチロックで前方にいる黒見セリカ、十六夜ノノミ、浅黄ムツキに放つ。
そして、すぐ左にQB。背後から放たれた狙撃を躱し、すぐにクイックターンで振り向き、反撃を加えます。
左手のレーザーハンドガンはチャージし、そのままチャージ状態を維持。
右手のスタンガンで小鳥遊ホシノを牽制しつつ攻撃し、小鳥遊ホシノと陸八魔アルに垂直プラズマミサイルをマルチロックで迎撃する。
垂直プラズマミサイルを回避することに気を取られたその瞬間、チャージ状態で維持し続けていたレーザーハンドガンを陸八魔アルに向けて放ちます。
チャージ攻撃によりオープンフェイスの足が止まったことで、他の生徒からの攻撃を真っ向から受けることになりますが、一人落とすためには仕方がありません。
「……アル様ッ!」
……チッ。
避けた先にいた伊草ハルカが陸八魔アルを突き飛ばしたことで、レーザーハンドガンのチャージ攻撃を躱しましたか。
しかし、その代わりとして伊草ハルカが直撃とは言わないまでもレーザーハンドガンによる一撃を受けています。
「――ハルカッ!?」
陸八魔アルの悲鳴交じりの叫びが聞こえますが、両者とも大したダメージには至っていません。しかし、それでも隙を作ることには成功しました。
さて、陣形が崩れた今のうちに――ッ!?
機体制御が効かない……!
馬鹿な……。私の計算では、まだACS負荷限界には届かないはず……!
一体なぜ……。
そう思い、すぐに視野を広げる。
するとそこには、私のオープンフェイスの上でショットガンを連射する小鳥遊ホシノの姿があった。
まさか、あの一瞬でオープンフェイスに張り付いたとでもいうのか…!?
頭部に直接ショットガンを撃ち込んだことによるACS負荷限界とは……。
よじ登ったとでもいうのか。オープンフェイスの脚部から……!
なんという、常人離れした身体能力か。
垂直プラズマミサイルを放ち牽制していたというのに、レーザーハンドガンの硬直時間を的確に狙い距離を詰めるとは、何たる速度。
これは、非常にまずい……!
計算外のACS負荷限界による機体制御不能時間。それに伴う爆発的なまでの集中砲火状態。
加えて、機体に張り付いた状態の小鳥遊ホシノの連続攻撃による無視できない大ダメージ。そして、ここまで隙を晒してしまえば、先ほど落とせなかった陸八魔アルの狙撃が通る……!
「食らいなさい――ッ!」
着弾と共に爆発する射撃。それにより、オープンフェイスの姿勢は崩れた。
『AP、残り30%』
COMの警告音声が機体内部に鳴り響く。
まさか、ここまでAPを削られることになるとは……。
やむを得まい。
本来なら使うつもりはなかったが、これほどまでに実力を示されたのです。
出し惜しみは、無用でしょう。
『――ッ!?』
“みんな、できるだけ離れて!”
先生の警告、その直後。
その場で力んだオープンフェイスを中心として、球状のパルスの奔流が巻き起こる。
オープンフェイスに張り付いていた小鳥遊ホシノを始めとして、距離を取り切れていなかった生徒たちのほとんどが無視できないダメージを負ったようです。
黒見セリカや伊草ハルカは、衝撃に耐えきれず吹き飛ばされて倒れています。
小鳥遊ホシノは……吹き飛ばされてはいますが、空中で姿勢を整えた挙句そのまま綺麗に着地しましたね。
どこまでも馬鹿げた身体能力です。人の身でACと張り合えるだけのことはあるということでしょう。
『神秘』とは、これほどまでに厄介な物なのかと実感します。
しかし、『神秘』に対して技術のみで対抗できるというのは非常に心躍る事実でしょう。
さて、アサルトアーマーにより盤面はリセットされました。
ここからが反撃の時間です。
企業をここまで追い詰めたこと、その身で後悔させて差し上げましょう。
……と、言いたいところだったのですがね。
『……五分経過。依頼は完了です。私にアサルトアーマーを使わせたことは、まあ褒めて差し上げましょうか』
当初の依頼内容である、五分間オープンフェイスと戦うこと。これは既に達成されました。そこに勝敗の有無は記名していませんでしたから、時間が経ったのであれば終了です。
今回の戦いで分かったことは、アビドス並びに便利屋の強さ。
加えて、先生の指揮能力の高さでしょう。
まるで戦場を俯瞰して見ているのかと疑いたくなるほど、先生の指揮能力は秀でていました。異常という評価になるほどには。
生徒たちの強みを適切に活かせる指揮を出し、配置、攻撃タイミング、オープンフェイスの攻撃の予備動作を的確に見極め、回避行動を促す判断力。どれをとっても一級品。
指揮能力の高さに限定すれば、例えヴェスパーだろうと匹敵する人間はいないでしょう。
キヴォトスにおいて“先生”と呼ばれるだけの能力はあるようです。
今からでも我が社に勧誘したいほどの能力。現場監督としてこれ以上ないほど適している。
寄せ集めを精鋭にしてしまう。それほどの指揮能力が窺えました。
彼とは、敵対してはいけない。
今回の依頼は、それが分かったというのが非常に大きいでしょう。
「だぁー! な、なんだったのよアレ! 意味わかんないんだけど!?」
「お疲れ様、セリカちゃん。私も先生と一緒に支援してたけど、すごく手強い相手だったよ」
“あんなに俊敏な動きができるなんて、一体どんな技術を使ってるんだろう……”
「企業秘密と言っておきましょう。あまりAC技術を言いふらすつもりはありません。カイザーの害獣にでも渡った日には、私はアーキバスの全戦力を以て叩き潰さなくてはならなくなりますから。守秘義務はくれぐれも、遵守することです」
ACに関しては、未だに厳重な情報管理が必要でしょう。
そう思い、釘を刺せば鬼方カヨコから質問が飛んできました。
「……カイザー、嫌いなの?」
「無論です。私が企業となり、最初の数年はまあ煮え湯を飲まされたものです。ブラックマーケットの狂犬どもを雇うことになったのは、半分はあの害獣のせいですから。とはいえ、結果的にルビコンを立ち上げることができたので企業としては満足ですが」
思い出すだけで腹立たしい。
存在からしてカビが生えている奴らのことをなぜ思い出さなければならないのか。
地を這うハイエナにかける情など、企業は持ち合わせていないのです。
なんだか、アビドスの生徒たちから驚きの視線で見られているような気がしなくもないですが……。アビドスはカイザーに借金を抱えていましたか。
アビドス砂漠。
我が社がアビドス高校に協力し、借金を返済させてカイザーの目論見を破綻させることも道楽としては面白いかもしれません。
まあ、実利が生まれないのでそんなことはしませんが。娯楽としてはそれなりにはなるでしょうが。
まあいいでしょう。
「今回の依頼は、我がアーキバスからシャーレへの依頼となっています。したがって、今回の報酬はシャーレへと支払う手筈となっています。それをどのように山分けするのかは、そちらで議論しなさい。では、今回の依頼は終了です。速やかに帰宅するように」
報酬金額は、一千万円ですか。
契約書にはそのように記載していたはずです。
シャーレがどのようにその報酬を生徒に分配するのか。あるいは独占するのか。
まあ、後者はあり得ないと思いますが。
少し接しただけで、彼の人となりは把握しました。
ハンドラーに近しい人物でしょう。
度し難いほど生徒を優先する性格なのは目に見えています。
シャーレとは、今後ともよき関係でいたいものです。
最近、XのTLによくAC6の話題が流れてきています。
素敵だ……。