キヴォトス企業、アーキバス・コーポレーション   作:ねうしとら

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エクドロモモイとか誰が上手いこと言えと


束の間の問題児

 セミナー会長とくだらない戯言を交わし、それなりの月日が経ちました。

 

 フロイトの要望が日に日に強まるため、計画を前倒しにしてロックスミスの調整を進めることになっているのは誠に遺憾としか言いようがありませんが、彼の性格を考慮するとこの程度は予測して然るべきでした。

 

 そろそろ、ロックスミスも完成する頃合いでしょうか。

 

 この世界にはコーラルがないため、コーラル内燃機関を搭載したACの再現は不可能ですが、あんなものあったところで百害しかありませんからどうでもよいです。キヴォトスが滅びます。

 

 フロイトの機体は、原典ではアーキバスの敵対企業、ベイラムの機体パーツすらも活用する混成機体であり、とても企業所属とは思えない自由なアセンブルだったことが特徴でした。

 

 しかし、このキヴォトスにおいてAC開発を行っている企業は我々アーキバスを置いて他にありませんから、ここでは混成機体とはいきません。

 

 しかし、一部例外的に外部に兵器やパーツの開発を委託しているところがあります。

 

 極秘事項であるACの開発に際して、外部組織を絡めるのは相応にリスクのある行為ではありますが、四捨五入すれば実質身内みたいなものですし、万が一があれば相応の対処をする旨を契約書に記しているので問題はありません。

 

 それが、ルビコン総合技術学園。その一部活である『RaD』になります。

 

 部長であるカーラを筆頭に、ジャンクを始め様々な機械いじりを得意とする集団が集まりできた部活です。中々癖の強い武装を作ることが多い彼女たちですが、その技術力は目を見張るものがあります。

 

 ACのパーツや武装、その多様性をある程度作り出すため、彼女たちには事情を説明し協力して頂いています。

 ACについて説明した時の彼女の愉快そうな表情は、今でも覚えているほどです。

 

 部長たるカーラは、意図的に留年を繰り返しているため年齢は不詳です。

 そもそも、ヘイローこそ持っていますがルビコンに入学するまでは学籍がなく各地を放浪していた自由人だったとのことですし、学生といえる年齢にあるのかは全く分かりません。

 

 まあ、恐らくウォルターと共同で何かをやっていたのでしょうが。

 

 人は外見で判断できない物なのです。

 

 ミレニアムにも協力者となってもらうかどうか……。悩ましいところですが、まずはヴェスパーの隊長にACを行き渡らせ、バルテウスを完成させることが優先事項でしょう。

 

 そういえば、ACの開発に伴いMTも技術的には作成可能となっています。

 全面的な武装化を施しているわけではなく、ただの重機としての運用を目的としたものですが。

 

 とはいえ、これをヴェスパー隊員用に武装化させれば、我が社の戦力は驚くほど上昇するでしょう。

 

 キヴォトスにおいて建設業は花形と言われています。

 そんじょそこらで銃撃戦が行われ、戦車が当たり前のように運転されている頭の悪い世界なのですから、それもそのはず。

 

 日常のように建物は壊れ、したがってそれを修復する職人の需要が高まるのは当然のことです。

 

 そういった建設業界にMTを売り出すことができれば、我が社が得られる利益は計り知れないものになるでしょう。

 MT自体は、随分と前から開発が可能でした。ACを作ることができる技術力があるのでそれは当然のことですが、MTを売り出さなかった理由はただ一つ。

 

 悪用される危険性があったためです。

 

 ACの開発という重要事項にリソースを割きたかったというのも事実ではありますが、やろうと思えばMTを量産し、製品として各地に売り出すことなど容易かった。

 

 しかし、MTの存在を公にしてしまえば、確実に技術は広まり、大幅な武装化を施そうとする連中が出てくることは目に見えています。我が社が知りもしない経路でカイザーなどに渡り、技術を盗まれるなんてことがあれば、私は全力でかの企業を潰しにかかるでしょう。

 

 加えて、ACが完成していない状態でどこの馬の骨とも知らぬ蛆虫如きにMTを武装化されては、それに対してこちらも対応を求められることは目に見えています。

 

 であれば、さっさとACを完成させ、抑止力として大々的に宣伝してからMTを売り出すのが合理的であると判断しました。

 

 それに、ミレニアムにMTが渡れば、そこから技術を発展させACにまで独自に到達する可能性も十分に考えられます。

 そのようなことはあってはならない。ACを最初に完成させるのはアーキバスであるべきなのです。

 

 と言うわけで、MTに関しても現在は我が社が技術を独占している状態になります。

 

 このキヴォトスにおいて重機としてのMTの重要性は計り知れないでしょうが、それと同時に混乱を齎す兵器としての側面もあるのです。

 重機として市場に流す際は、武装化を施せないような工夫を入れるべきでしょうが、市場に回ったMT自体を解析され、各組織が一からMTに似た兵器を開発するところまでは対策しきれません。

 

 道具は使い方次第で毒にも薬にもなるということです。

 

 一先ずは、武装化を施したMTを量産することでヴェスパー部隊の戦力増強を狙うのが良いでしょう。

 

 さて、業務内容としてはこのあたりでしょうか。

 

「スネイル。ロックスミスの調整が完了した。一度動きを試したい、オープンフェイスとの手合わせを願う」

 

「……私も暇ではないのですが?」

 

「知っているさ。だが、現状完成しているACは俺のロックスミスとお前のオープンフェイスのみだろう」

 

「百歩譲って、私があなたと対戦することになったとして、損傷した機体の修繕に、補填する弾薬費などはどうするのです。ACとて消耗品であることには変わりありません。そこには多大な予算がつぎ込まれているのです。どうしても戦いたいのであれば、シミュレーターでの模擬戦闘に留めなさい」

 

「それでは意味がない。あくまであれはお前の模造品だろう? 実際の強さとはかけ離れている。AIなどではACの真の強さは引き出せん」

 

「ACについてよく理解しているようで何よりです。しかし、それとこれとは話が別だ。あなた一人の個人的要望に構っていられるほど、企業は暇ではないのですよ。分かったらさっさとシミュレーターに引きこもっていなさい」

 

「しかしスネイル。アーキバスは今やお前の手腕により、お前が退いた程度でどうにかなるほど軟な組織ではなくなっている。少しくらい自由にしても問題はないだろう?」

 

「そのようなくだらぬ理由で私が休んでいては、企業としての面子が潰れるでしょう!? 怠けたとして問題にはならないから怠けるなど言語道断です。その分割を食う人間がいるのです。このような些事で私が休んでいては下の者に示しがつかないでしょう?」

 

「だが、アーキバスの社員は、スネイルは少しくらい個人的な理由で休んでもいいんじゃないかと日ごろから言っているぞ?」

 

「それはそれでしょう!? ありがたいですが休日を頂けるのであればあなたとの戦闘になど興じません。どこか平和で趣のある自治区にでも旅行に行きますよ!」

 

「上の人間が積極的に休養を取らないと、下の人間が恐れて気軽に休暇が取れなくなるんじゃないか?」

 

「企業である私にそれは当てはまらないのですよ。そもそも、その理論は日ごろから接することがある各部署の上司と部下の関係にある人間の話です。私とでは立場が違うのですよ」

 

「だがな、そのラインの一番上にいるのがお前なわけだろう? そのお前が積極的に休暇を取れば、誰でも気軽に有給休暇が取れるようになるとは思わないか? アーキバスは少しばかり仕事と趣味が結びついている奴らが多い。仕事が生きがいになっているような人間ばかりの環境では、そうではない人間がついていけないだろ?」

 

「あなたがそれを言いますか? ライフワークの体現者ともいえるあなたが……? それに関しては問題ありません。アーキバスは福利厚生も充実しています。確かに、あなたの言うことも一理あるでしょうが、人間関係や職場でのコミュニケーションの困難さに対しては、専門の人間を雇うことで対処しています」

 

「そうか。なら、俺と戦ってくれるな?」

 

「一体、今まで何を聞いていたのですか?」

 

「聞いていた。だが、それはお前が業務を一時中断してはならないという話ではなかった」

 

「だから、下の人間に示しがつかないと……」

 

「その下の人間は少しくらい休めと言っているぞ」

 

「休みを取っても良いのなら、あなたとの戦闘になど興じないと言ったはずだが……!?」

 

「そうだったか?」

 

「人の話はしっかり聞けと、スウィンバーンも常々言っているでしょう」

 

「ところでスネイル。さっきからお前の秘書が何か報告をしたそうにこちらを見ているぞ」

 

「誰のせいだと……!」

 

 誰のせいでこのような状況になっているのか分かっているのでしょうか。まあ、分かっているのでしょうが。分かっていてなおこのような言動が取れるのがフロイトという男です。

 

 彼の問題行動は今に始まったことではありません。

 さて、フロイトとの言い合いによって時間を取られてしまいましたが、何やら報告があるらしい。

 

 このままでは堂々めぐりとなって一切決着がつかないでしょうし、このタイミングでの第三者の介入は渡りに船と言えます。

 

 私は後ろで控えていた秘書に対して、報告を促します。

 

「ミレニアムのセミナー会長、調月リオ様から要請が届いています。近く、ミレニアムに訪れてほしいとのことで」

 

 ふむ。つい先日会ったばかりだというのに、何が目的なのでしょうか。

 

「なるほど。フロイト、そういうことです。予定が入りました、あなたとの模擬戦闘はまたの機会に取っておきましょう」

 

「そうか。なら、帰ってきたら頼んだぞ」

 

 丁度良いタイミングで断る口実が出てきたことに、これ幸いとさっそく建前として使ったのですが……。先延ばしになっただけであまり効果はなかったようです。クソが。

 

 フロイトはそう言い残して、この場を去りました。

 

 自分の目的が達成できないと見るやさっさと去っていくその潔さをなぜ早く発揮できなかったのか疑問でしかありませんが。

 

「調月リオ、一体何が目的なのか知りませんが。彼女は何と言っているのです?」

 

「詳しくは、実際に会って話したいとのことです。どうやら、通信越しではリスクがあると」

 

「……厄介ごとですか」

 

 そういえば、世界の危機がどうこうと言っていましたね。大方、それ関連でしょう。

 

「スネイル閣下。フロイト隊長がおっしゃっていた、閣下の休日に関することですが……。社員の中でも、スネイル閣下には休息が必要だろうと意見している者は多いです。一度、お考えになられてはどうでしょうか」

 

「……企業に意見するとは、中々偉くなったものですね。多少、考慮するだけしましょう」

 

「それがよろしいかと」

 

 




デカグラ編完結しましたね

この小説でも閣下を鋼鉄大陸に降ろすところまで行きたいですね
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