禪院の王庫   作:ナムルパス

21 / 23
少しグダって来たので、一気に話を進めて0編まで飛びます


第13話 数年後

「聞いたか?今日来る転校生

クラスメイトをロッカーに詰め込んだらしいぞ」

 

「殺したのか?」

 

「ツナマヨ」

 

「いや重傷で済んだらしい」

 

「ま、生意気なら分からせてやんよ」

 

「おかか」

 

 

 

 

 

乙骨憂太は、自分がなぜここにいるのかを、思い出していた――

薄暗い部屋で大人達が自分の事について話している。

 

「完全秘匿の死刑執行?」

 

「まだ、未成年の子供ですよ?」

 

「あり得ないでしょ」

 

「しかも、制御もできない呪いがついてるんでしょう?変に危害を加えるとこちらが呪われる可能性もあるんですよ?」

 

ガラガラガラ――

誰かが入ってきた

「なら、うちで面倒見ますよ」

 

(誰だろう…?)

 

「やぁ、乙骨憂太君

僕は五条悟よろしくね」

 

「僕は教師だ 僕はね、若者から青春を取り上げるのは好きじゃないんだ。だからさ、おいでよ呪術高専に」

 

「いやです…僕はもう誰も傷つけたくないんです…」

 

「でもさ、1人は寂しいよ?」

 

「君にかかった呪いは、使い方次第で人を助けることもできる力だ。力の使い方を学びなさい。全てを投げ出すのはそれからでも遅くはないと思うよ?」

 

 

(五条先生に言われた通り、1人は寂しい…もう少しだけ頑張ってみようかな…)

 

 

 

高い塀に囲まれた敷地の前で、少年は立ち尽くしていた。

 

門をくぐった瞬間、

身体の奥がざわりと波立つ。

 

(……いる)

 

理由は分からない。

だが、何かが、すぐ近くにいる気がした。

 

「おーい」

 

背後から、場違いに軽い声がかかる。

 

びくりと肩が跳ね、反射的に振り向く。

五条先生が、手を振って立っていた。

 

「来たね、憂太」

 

突然名前を呼ばれ、喉が詰まる。

 

「……は、はい」

 

声が、震えた。

 

五条はそんな乙骨の様子を気にするでもなく、歩き出す。

 

「とりあえず案内するよ。

 立ち話もなんだし」

 

拒否する理由も、勇気もなかった。

乙骨は、少し遅れて後を追う。

 

校舎へ向かう途中、視線を感じる。

生徒たちが、こちらを見ていた。

 

好奇心とも、警戒ともつかない目。

距離を測るような視線。

 

(……見ないで)

 

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。

 

「気にしなくていいよ」

 

五条が、前を向いたまま言う。

 

「ここ、普通じゃない人しか来ない場所だから」

 

普通じゃない。

その言葉が、重く胸に残る。

 

教室に入ると、すでに三人の生徒がいた。

 

一人は、眼鏡をかけた長身の少女。

無駄のない立ち姿で、鋭い視線を向けてくる。

 

(……怖い)

 

隣には、パンダ。

大きな体で、興味深そうにこちらを見ている。

 

……パンダ?

 

「へえ、こいつが?」

 

低く、柔らかい声。

 

さらにもう一人、口元を覆った少年。

視線だけが、静かに乙骨を捉えていた。

 

「しゃけ」

 

意味は分からないが、

それが声をかけられたものだと理解する。

 

「紹介するね」

 

五条が、軽く手を叩いた。

 

「禪院真希。

 パンダ。

 狗巻棘」

 

「呪具使い 禪院真希 呪いを払える特殊な武器を使うよ」

 

「呪言師 狗巻棘 おにぎりの具しか語彙がないから会話頑張って」

 

「パンダはパンダ」

 

(一番欲しい説明がない…)

 

「で、今日から一年生」

 

五条は、乙骨の肩に手を置く。

 

「乙骨憂太」

 

その瞬間だった。

 

胸の奥で、何かが強く軋んだ。

 

――やめて。

 

言葉にならない叫びと共に、

内側から、黒い感覚が膨れ上がる。

 

「……っ!」

 

乙骨は、思わず身を縮めた。

 

(出る……!)

 

それが何かは分からない。

だが、出てしまえば、また誰かが傷つく。

 

「……おい」

 

真希が、眉をひそめる。

 

「五条、こいつ――」

 

言葉の途中で、空気が変わった。

 

重い。

圧迫されるような感覚。

 

乙骨の背後で、

何かが、確かに“立っている”。

 

「……里香、ちゃん」

 

乙骨の声は、震えていた。

 

黒く歪んだ呪力が、形を成す。

人とは言い切れない異様な存在。

 

――祈本里香。

 

「ゆゔたぁぁァァぁァァァ……」

 

低く、粘つく声。

 

その場にいた全員が、一瞬で理解する。

 

(……特級)

 

パンダが、息を呑む。

 

「冗談だろ……」

 

真希は歯を食いしばる。

 

狗巻は、一歩引き、静かに構える。

 

乙骨は、ただ震えていた。

 

「ごめんなさい……

 お願い、出てこないで……」

 

「ゆゔだぁはァァわだしのォォぉォ」

 

その言葉が、

何よりも恐ろしかった。

 

乙骨憂太は、理解する。

 

ここは、

安全な場所ではない。

 

そして、

自分自身こそが、

一番の危険なのだと。

 

呪術高専での生活は、

こうして始まった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。