ありふれた彼らはデジモン共に   作:Re.Ac:月

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第3話です。
今までは悠の視点で物語を進行していましたがここからは俯瞰視点で書いていきます。
デジモン側のことについても触れていきます。


第3話 喪失と向こう側

 現在、ハジメ達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

 全員が薄暗い陰気な入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。

 なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置だろう。 

 迷宮の中は外の賑やかな雰囲気とは違い、まさに迷宮と言うにふさわしい雰囲気だった。

 一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

 「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 メルド団長がそう言い終わるのと同時にラットマンがに襲いかかっていったが勇者一行がなんなく撃退した。

 

 「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

 

 「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 そこからは特に苦戦もなく進んでいき彼らは一流冒険者かどうかを分ける二十階層に到着した。

 現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。

 ハジメ達は戦闘経験こそ少ないものの、全員がチート持ちなので割かしあっさりと降りることができた。

 もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

 

 「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

 メルド団長のかけ声がよく響く。

 それからしばらく一行は二十階層を探索していたのだが、急に先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。

 

 「ロックマウントだ! こちらに気づいて、攻撃してくるぞ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 直後、

 

 「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

 「ぐっ!?」

 

 「うわっ!?」

 

 「きゃあ!?」

 

 体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

 なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ! 

 突然のことで香織達が攻撃を受けそうになったその時、

 

 「魔法剣術―”炎の舞”」

 

 炎を纏った剣による斬撃がロックマウントを切り裂いた。

 倒すことには至らなかったが、

 

 「”ライトレイ”」

 

 光のレーザーが追撃を行い、ロックマウントにトドメを刺した。

 

 「サポートサンキュー!」

 

 「倒しきれるかわからないのに無闇に突っ込むな! と、言いたいところだがナイスだ悠」

 

 石神 悠と本寺 賢介がロックマウントを倒したのだ。

 

 「あ、ありがとう」

 

 香織達がお礼を言ったが、そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者天之河光輝である。

 

 

 「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 死の恐怖を感じたことで青褪めている香織達を見て怒りをあらわにする光輝それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。

 

 「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

 

 「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 

 光輝の攻撃よって、ロックマウントを倒すことはできたのだが、狭いところで〝天翔閃〟のような大規模な技を使ってしまったことについてメルド団長に叱られた。

 その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

 「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

 「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。

 

 「素敵……」

 

 香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、雫ともう一人だけは気がついていたが……

 

 「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。

 

 「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

 「団長! トラップです!」

 

 「ッ!?」

 

 しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。

 檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

 「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 さっきの魔法陣は転移させるものだったらしい。

 彼らが転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

 「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 メルド団長の言葉で生徒達が一斉に上階への階段へ駆け出していく。

 すると、橋の両サイドから赤黒い光を放つ魔法陣が現れた。

 階段側の魔法陣からは〝トラウムソルジャー〟と呼ばれる骸骨の魔物が現れた。

 そして、通路側の魔法陣からは頭部に兜のような巨大な角を取り付けた魔物〝ベヒモス〟が現れた。

 メルド団長はそれを見ると部下たちに指示を飛ばす。

 

 「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

 

 「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」

 

 「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

 そんな会話を尻目に悠と賢介はいち早く階段のところへと向かうため、〝トラウムソルジャー〟を騎士団と連携して倒し始めた。

 ハジメも錬成を駆使することで〝トラウムソルジャー〟を奈落へと落としていく。

 それを見て他の生徒たちも対抗しようとしているがパニック状態に陥っているため悠や賢介と違い、滅茶苦茶に武器や魔法を振り回しているだけである。

 

 「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……道を切り開く火力……天之河くん!」

 

 ハジメはそう呟くと走り出した。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって。

 

 

 光輝はメルド団長達を置いていけないと言っており龍太郎もそれに賛同してしまっている。

 雫は早くメルド団長の指示に従い撤退しようと呼びかけているが、光輝達には届いていない様子。

 その時、一人の男子が光輝の前に飛び込んできた。

 

 「天之河くん!」

 

 「なっ、南雲!?」

 

 「南雲くん!?」

 

 驚く一同にハジメは必死の形相でまくし立てる。

 

 「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」

 

 「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ! ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲は……」

 

 「そんなこと言っている場合かっ!」

 

 ハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした光輝の言葉を遮って、ハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。

 いつも苦笑いしながら物事を流す大人しいイメージとのギャップに思わず硬直する光輝。

 

 「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」

 

 光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。

 そこには、パニックになっている生徒たちと冷静に対処しているもののその顔には疲れや焦りが見えはじめている悠と賢介の姿があった。

 ハジメは光輝に見てもらったうえで、さらにまくし立てる。

 

 「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

 その言葉を聞いて撤退しようとしていた光輝達だったが、それと同時に凄まじい衝撃波がハジメ達を襲う。

 その衝撃で団長達は身動きが取れなくなっている。

 

 「ぐっ……龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

 光輝が問う。それに苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。団長たちが倒れている以上自分達がなんとかする他ない。

 

 「やるしかねぇだろ!」

 

 「……なんとかしてみるわ!」

 

 二人がベヒモスに突貫する。

 

 「香織はメルドさん達の治癒を!」

 

 「うん!」

 

 光輝の指示で香織が走り出す。ハジメは既に団長達のもとだ。戦いの余波が届かないよう石壁を作り出している。気休めだが無いよりマシだろう。

 光輝は、今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を開始した。

 

 「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」

 

 詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。

 先の天翔閃と同系統だが威力が段違いだ。橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。

 砂埃が舞い、それが徐々に晴れていくそこには―――無傷で立っているベヒモスの姿があった。

 

 

 

 ベヒモスに対して錬成を使い足場を崩す事によってなんとか光輝達を逃がし、生徒たちを落ち着かせることに成功した。

 それにより、ハジメ以外の生徒を階段へと撤退させることができた。

 そこからは作戦の通り、ハジメは安全地帯に避難し、他の生徒の魔法攻撃でベヒモスを撃退し、全員がしっかりと戻れる”はずだった”魔法が一つだけ軌道が違い、逃げているハジメに当たってしまったのだ。

 

 (なんで、こっちに魔法が!?)

 

 そう思ったのも束の間、ハジメが吹っ飛ばされたのと同時に橋に亀裂が入り崩落。

 ハジメは深い奈落の底に落ちていった。

 

 

 

 

 ????????

 

 これはハジメが奈落に落ちてから数ヶ月後の別の世界

 

 「なぁゲートを見つけたって本当なのかよ!」

 

 「本当だって〜この目でしっかりと見たんだよ!」

 

 青い小さな竜のような生物からの質問に対して黄色い大きなトカゲのような生物が答える。

 

 「それが本当なら、また会えるかもしれない」

 

 「とりあえず行ってみよう」

 

 青い毛皮被った生物と緑色のイモムシのような生物が話している。

 そして、彼らは今ゲートと呼ばれる物の前に来ている。

 

 「ね、本当にあったでしょ」

 

 「「「そうだな(ね)」」」

 

 「「「「これをくぐればもう一度……」」」」

 

 「「悠に……」」

 

 「「賢介に……」」

 

 「「「「会えるかもしれない」」」」

 

 そう言うと彼らはゲートに飛び込んでいった。




第3話読んでいただきありがとうございます。
 今回は少し今後のストーリーの流れについて話します。
 とりあえずハジメについてなんですが、ウルの町まで原作と同じストーリーになるため書くことができません。
 ベヒモス戦のところで不自然にカットされているところは、まんま原作と同じになってしまうためやむを得ず。なくすという選択肢を取ることになりました。
 今回の話は悠と賢介の影がめっちゃ薄かった気がするけどこれからどんどん目立つ描写いれていきます。
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