ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンを食った男の話   作:アルピ交通事務局

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神をも越える一撃(尻)の巻!

 

「……」

 

「なにを迷っている?お前は選ばれたのだぞ?」

 

 はぐれ武器の正体が盾だと教えればミホークは少し残念そうにしていた。はぐれ武器の正体が盾であった事でなく、その盾を自らの手で破壊する事が出来なかったのが悔しいのだろう。

 

 本来の目的であるはぐれ武器について判明したので、もうこの村には用事が無いのかと思えば普通に居る。

 

 最初は懸賞首の厄介な海賊だと何処か一線を引いていた村の者達も気付けばすんなりとミホークを受け入れている。

 

「俺に……コレを使う資格があるのだろうか」

 

 ジェルマ66に対抗する為に作られた海の戦士ソラとはまた別の変身ヒーロー、果物戦士斬月。貴虎はそれに変身する権利が与えられた。もっと他に人材があったんじゃないのかと思ったが、貴虎以外にも渡されては居るらしい。

 

 見た目はどう見ても仮面ライダー鎧武の戦極ドライバー。ベルトの生体認証で貴虎しか使えないようにした。後は変身するだけなのだが貴虎は変身することについて迷いを持っていた。

 

「コレはヒーローの変身道具だ。俺にヒーローになる資格なんて何処にも無い」

 

「それは資格が必要な物なのか?」

 

「……俺はゴミの様な環境で育った。掃き溜めと呼ぶに相応しい場所で、1日でもそこを脱出したいと……だから他を見捨てて俺は海軍に入った。本当のヒーローならば、自分だけじゃなく周りも救える筈だ」

 

 自分にはヒーローの資格が無いからヒーローである斬月に変身する資格は無い。ヒーローに変身する条件は満たしているが心の方で満ち足りていない要素がある。どうしたものかと考えていると見守っていたナンジロウが舌打ちをした。

 

「っち、面白いものを見せてくれるかと思ったらこれかよ……自分がヒーローになれないって思ってるならさっさと捨てちまえそんなもん」

 

「……」

 

「ヒーローってのは変身する事かもしんねえけど、変身するだけがヒーローじゃねえ……将軍さんを見てみろよ」

 

「私を引き合いに出すな馬鹿者が」

 

「心の何処かで変わりたいって思えば変わればいい。もし自分の中に罪悪感が、罪の意識があるならその罪を背負って歩けるように強くなる。それが変身ってやつじゃないのか?」

 

「!」

 

 今の自分が許せないのならば、新しい自分に生まれ変わればいい。それこそが本当の変身だ。

 

 ナンジロウがナンジロウなりのアドバイスを送れば貴虎の眉は僅かに動き……貴虎はメロンの錠前を外した。

 

『メロン』

 

「変身」

 

『メロンアームズ、天下御免』

 

「果物を彷彿させる戦士つったらもうちょいファンシーな物だと思ったが、中々にカッコいいじゃねえか」

 

 何処からどう見ても仮面ライダー斬月、擬似的にとは言えベガパンクは仮面ライダー斬月を再現する事が出来た。果物をモチーフにした戦士とアランは聞いているので子供向けっぽいファンシーな見た目をしているかと思ったがそんな事は無く、カッコいいと頷く事が出来る見た目の戦士だと笑う。

 

「っぐ、うっ……」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 斬月に変身した貴虎だったが、斬月に私達に見えるレベルの電流が走った。貴虎は苦しみ出したかと思えば変身を解除し、苦痛の表情を浮かび上げた……ふむ……

 

「貴虎のスペックと斬月のスペックが嚙み合っていない、か」

 

「どういうことだ?」

 

「そのままの意味だ。最上級の武器であろうとも使い手が貧弱であればその力は発揮しない。斬月を使う貴虎のスペックが斬月の力に追い付いていない……この手の物は使用者の力も物を言うところがある」

 

 ジェルマ66もといヴィンスモーク家の人間は強化人間だ。レイドスーツのおかげで色々と出来ては居るが、その下地になっているのは強化人間であるヴィンスモーク家の身体があるからだ。

 

 貴虎はまだまだ弱い人間だ。だから斬月に変身したとしても斬月のスペックに振り回されてしまう。本来の戦極ドライバーは誰にでも使うことが可能な便利な品物だと言うのに。

 

「まっ、そう落ち込むなや。お前だって日々成長してんだからよ」

 

 貴虎は変身こそ出来たものの、身体が追い付いていなかった。

 

 私の見立てが確かならば貴虎は近い将来、斬月を使いこなせる。ただ下地が出来上がっていない、逆を言えば下地が出来上がっていれば使いこなせる。ナンジロウはナンジロウなりのフォローを入れる。

 

「しかし、何時までこんなんが続くのやら」

 

 私の指導もあってか日々成長していく自警団の者達。覇気を使える人間はまだ出ていないが、それでも一定の力を持っている。

 

 しかし……アランは嫌気が差していた。この島は極々普通の村、特産品とも言えるものは無く定期的に商船がやってくるぐらいで激しい変化が無い。そのおかげで平穏を保たれているが、その逆、その平穏を破壊しようとする海賊達がやってくる。

 

 倒せない存在ではない。今のアラン達ならば簡単に倒すことは出来る。だからこそ嫌な思いがする。

 

「人と言うのは矛盾した生き物だ。お前の様に平穏を望み、いざ平穏を手に入れれば今度は刺激が欲しいと求めてしまう」

 

「将軍、それはわかってる。だけどこうも海賊が頻繁にやってくるとあっちゃ、村の人達が平和に暮らせない。守るのもいいけど、こっちからそろそろなにかを仕掛けなくちゃならんと思うんだがよ」

 

「やめておけ。今以上を望めば今より最悪になる」

 

「ミホーク」

 

 守るという事に対して異議は唱えないが、守る原因を作っている相手に対して何かをしないといけない。アランはもっともらしい意見を述べるのだがミホークは止める様に言った。

 

「今以上に最悪って」

 

「確かに自警団の者達は強い。だがそれは戦闘力に限った話だ。この村の人間達を守る程度ならばお前達が倒せばいい。だが、悪さそのものをさせない抑止力の様なものを得るには、戦闘力以外にも様々な力が必要になる……そうすれば戦闘力以外に力を持っている存在と対立してしまう」

 

「海軍や縄張りを作っている海賊達……毟り取られる人間達が自分達もその恩恵をと言ってくるだろうな」

 

 戦闘力と言う点ではミホークの隣に立てる人間は本当に限られている。だが、圧倒的な戦闘力を持っていてもどうにも出来ないのが現実だ。少なくともミホークは圧倒的な戦闘力を持っていて何処かの国を滅ぼす等の分かりやすい悪行をしていると言う情報は無いに等しい。それでも海兵狩りと言う異名をつけられてしまい賞金首の道を辿ってしまった。

 

 自分自身が圧倒的な強さを持っていると自覚している。それでも抑止力にもなににもならないのをミホークは知っているので勢力を築き上げる事はオススメしない。

 

「海賊達をどうにかしたいと言うのであれば海賊達が手を出せない勢力を築き上げる……海に出て、海賊王ゴールド・ロジャーと戦った猛者やロジャーの死後に海賊として名を挙げている者達を倒す。そうする事で誰でも分かる力が手に入る」

 

「海軍じゃダメなのかよ」

 

「アレは今の秩序を保つ存在だ。自警団を1つの組織とする以上は自分達が維持、もしくは求める秩序とは異なる思想がある……アランよ」

 

「なんだ?」

 

「私もお前も無知なのだ」

 

「無知?……将軍の言いつけ通り、勉強もしてるぞ」

 

「本のな……本では学べない事が外の世界にはある。それらを学び感じなければ出した答えは大して意味を持たない」

 

 勉強もしろと自警団の者達に言ってはいるが、本の勉強しか出来ない。実際に体験することで、現場の声を聞くことではじめてわかる事が沢山ある。この村が良い一例だ。ONEPIECEと言う物語は知っているがこの村は登場しない。この村はこの世界を生きる人間としてはじめて上陸し学んだ未知なる場所だ。

 

「本じゃ学べないねぇ……将軍が教えられない事か……恋愛とかか」

 

「そりゃそうだろう。文字通り鉄仮面な将軍さんじゃ無理よ」

 

「私は色々と試行錯誤しているだけで器用な人間ではない。むしろ不器用な人間だ……第一私の様な人間の何処に惚れる要素がある」

 

 本じゃ学ぶことが出来ない事があると言われれば恋愛を持ち出すアラン。ナンジロウは私に恋愛は不可能だと笑うが、私を好きになる物好きなど居ないだろう。

 

「そういう話をするのであれば、お前達がなにかしらの実りのある話の1つでも聞かせてもらいたいものだ」

 

「フッフッフ、それがあるんだよ。将軍さんよ……ブラッドの奴がピクニックデートをするんだ」

 

 私に浮いた話は無いのだが、顔がいい他の連中ならば浮いた話はあるだろう。そういう話でも持ってこないかと聞けばナンジロウはニヤニヤしながらも面白い話があると自警団の1人であるブラッドがデートをすると言う情報を出す。

 

「……」

 

「なに、邪魔はしねえ……オレ達みたいなのと交流を持ってくれる奴と結ばれるのはいいことだ」

 

 デートの情報を出したと言うことはロクな事をしないだろうと視線を向けていればアランは笑みを浮かべながらも邪魔はしないと言う。自警団とは聞こえはいいが、一歩間違えれば力にものを言わせた暴君となる。今は海賊という分かりやすい悪を倒しているので村の人間には好印象だが、何時その暴力に怯えるか分からない。

 

 色々な損得勘定の計算があるだろうが、そういう損得勘定抜きでブラッドと言う1人の人間を見ていて接している女性がいる。ならばくだらん冷やかし等はしない、いや、したくないだろう。

 

「ブラッドはまぁ、順当だな……お前達よりは」

 

「んだとコラ!海軍の犬のクソガキが!!」

 

「俺達はもうちょっとバリボーなのを求めてんだ!ボン・キュッ・ボンなハニー達を!」

 

 ナンジロウとアランは優秀であるが緩いところは緩い。対してブラッドは真面目な人間だ。

 

 仮に女性が寄ってきたとしてもアランとナンジロウは遊ぶだろう。しかしブラッドは1人を選んで純愛を選ぶ紳士的な性格をしている。ナンジロウやアランの緩いところは時には見習わなければならないが、基本的にはブラッドの様な真面目な人間で居ることが正しいと認識しているので貴虎はブラッドがモテるのは順当と言い、言われた2人は血管が浮かび上がる。

 

「将軍、なんか盗聴する方法はねえか?」

 

「こういう時こそ見聞色の覇気を研ぎ澄ませろ」

 

 ブラッドが綺麗な草原でピクニックデートの日にコッソリと見に来た。

 

 介入するつもりは無いが見守る。アランがなにか面白い話が出てこないかを聞いてくるので、見聞色の覇気を研ぎ澄ませて盗聴しろと言った。

 

「声の正体は音だ。音とは空気の振動により発生する。ならば見聞色の覇気を研ぎ澄ませて空気の振動を読み取りなにを言っているのかを感じ取る」

 

「将軍さんよ、気配探知能力でそこまでは無理あるって」

 

 声を見聞色の覇気で聞き取ればいいのだと説明をすればナンジロウは無理があるという。無理ではない、何時かはお前達もコレが出来るようになれという話だ。

 

「将軍、ここまで付き合ってるんだからなに言っているか教えてくれよ」

 

「……なにも言っていないな」

 

 私は言葉を聞き取れるのでブラッドとデートをしている女性の会話を教えてくれとアランに頼まれる。なにを言っているか、と聞かれてもブラッドと女性の間にはなんの言葉も交わしていない。しかし手と手が触れ合っている。

 

「え〜……あの状況でなんも言わねえのはねえだろう。向こうは気合い入れてオシャレしているんだから、男なら1つや2つ褒めるもんだろ?」

 

「ブラッドは女遊びってのを知らねえんだろ……将軍、あんた確か特定の人間にのみ声を聞かせる技を使えるよな。ブラッドに褒めてやる様にアドバイスを送ってくれよ」

 

 初心と言えば聞こえはいいが、中々に進まないことに対してナンジロウは呆れておりアランは私にアドバイスを送れと頼み込む。

 

 私の技の1つ、本来は波状に広がる声を一直線にのみ飛ばすという技術を用いればブラッドにのみアドバイスを送ることが出来る……

 

『ブラッドよ、言葉も送るのだ』

 

「!?」

 

 このままこの状況も悪くはないが、褒めるという行いは大事だ。

 

 ブラッドに向かって言葉を飛ばせばブラッドは驚いた顔をする。女性がどうかしました?と聞いたのでブラッドは焦るが、ここでチャンスが生まれる。女性に対して褒め言葉をかけることが出来る。

 

『その服、似合っています』

 

『あら、ありがとう』

 

「服を褒めているな」

 

「っち。あの、チェリーが。服を着ている君が綺麗って言えねえのか」

 

 定番と言えば定番だがピクニックデートの為に用意した服を褒めている。アランが服を褒めることじゃなくて服を着ている人を褒めることをしないのかと聞こえるレベルの舌打ちをした。

 

「ブラッドはそんなにバカじゃない……女性の事も褒めるはずだ」

 

 そんなアランを見て貴虎は女性の事も褒めると見守る。

 

『でも、褒めるのは服だけかしら?』

 

『いや……それを着ている君も綺麗だよ。特にその尻が』

 

 それは一瞬だった……いや、一瞬と言う言葉で片付けれない圧倒的な速さだった。後に出会う光人間ことピカピカの実の能力者の黄猿以上の速度だった。

 

 女性は服を褒められた事を嬉しそうにしながらもからかう様に服だけがいいのかを聞けばブラッドはなにを言ってほしいのか理解した。服を着ている女性が素敵という言葉を送るのが定番だろうが、ブラッドは何故か尻を褒めた。

 

 私はブラッドがなにを言っているのか聞くために見聞色の覇気を意識して使っている。当然ブラッドとピクニックデートをしている女性の声や動き等も感じ取っている……しかし、それでもだ……尻を褒められた女性は自警団の中でおそらくは一番見聞色の覇気に目覚めかけているブラッドに向かって島に響き渡る様な見事な炸裂音が鳴り響くビンタを叩き込んだ。

 

「……見えなかった……」

 

 10:0でブラッドが悪い発言をした。その結果、女性は手を出したのは分かる。殴られたブラッドが悪いことについては理解は出来る……しかし、見えなかった。アラン達に彼女のビンタが見えたかを聞けばアラン達は顔を青ざめながらも首を横に振った。

 

「やはり、心の籠った一撃は神をも超えるか」

 

 私は何十年と鍛えた。慢心もしないように心掛けていた。感情で動かされないようにしていた。そして圧倒的な力を得た。

 

 彼女がブラッドに対して放った一撃は感情から生み出される物で、私の力や想像力を遥かに上回った。そしてブラッドは確信した。結婚するならばこの人がいいと。

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