ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「ふむ」
「待て……何をするかは分かるが周りは気にしろ」
畑の雑草の除去を終えてひと休みをしていればミホークが黒刀を手にした。
珍しく闘志を剥き出しにしていてその理由は分かってはいるが、周りへの迷惑を考えろと言う。
「構わん……挨拶程度で死ぬほど惰弱ならばとっくの昔に死んでいる」
「……」
「将軍、誰か近づいているのか?」
黒刀を手にして少しだけウキウキしているミホークを見て誰かが近づいてきているのだとブラッドが察する。
全員2色の覇気はまだ何となくの世界で意図的に使えるものではないから海からこの島に向かってやってきている小舟の気配を感じ取れていない。
「奴がウキウキするレベルだ……余程の大物だろう」
まだ本格的に原作がはじまる前ではあるが、それでも名は売れている海賊は居る。
ミホークもその内の1人でありそのミホークがウキウキするレベルなのだから余程の大物だ。ミホークは黒刀を携えて海岸に向かっていく。幸いにもブラッドと私は自分の畑の雑草取りを終えたのでミホークがやらかさないかの確認の為にもついていった。
ミホークは愛刀の黒刀・夜を抜いた。
両手で持って刀を使うのならばで誰もがイメージするあの名前を取った後に刀を上げ……振り下ろした。見る人が見ればただの素振りだろう、だがこの世界ではその法則は通じない。文字通り海をも割る一撃であり、こちらに向かって来ている小舟に向かって振り下ろした一撃が……と思えば途中で飛んでくる斬撃が相殺される。
「アレを防ぐとは……」
「それぐらいならば出来て当然だ」
本気でやれば海波斬は出来るがミホークの様に通常攻撃でそれが出来ないブラッドは驚いた。
ミホークの斬撃を軽々と相殺した。ミホークはその事について特に驚きはしないが何処か満足そうにしており黒刀を背中に戻す。
「おい!危ないだろ、オレじゃなきゃ相殺出来なかったぞ!」
「アレを相殺とか船長ヤベえよ」
小舟が徐々にこちらに近づいてきたら2人組の男が居た。
赤髪のシャンクスとヤソップ、シャンクスはあの斬撃は自分以外ならば対応をする事が出来なかったと騒ぎ、ヤソップはアレを相殺とかスゲえなと感心している。
「アレから色々と行方を晦ましているからな。呑気に隠遁生活を行っているのならばオレがこの手で始末する……どうやらそうではないようだな」
「当たり前だろ。呑気に茶なんか飲んでる程にオレの人生は暇じゃない……第二波は飛んでこないか」
「ミホークよ、知り合いか?」
斬撃を飛ばした事について軽く文句を言うシャンクス。ミホークはそこで死んでいたらそれまでだとバッサリと切り捨てるが、シャンクスはそれについてはなにも言わない。ブラッドはミホークとシャンクスとの会話で顔見知りの関係性なのかと気付いたので聞いた。
「なに、昔からの敵だ」
「ライバルって書いてダチって読むぐらいの関係性だ……ところで、上陸していいか?」
「船長、堂々と上陸すりゃいいだろ?」
「そうしたいのは山々だが、明らかにヤベエのが1人居るからよ」
まだ島に上陸していないシャンクスは上陸する許可を貰おうとする。
一応は賞金首であるミホークが普通に居るのだから上陸してもなにも問題は無いとヤソップは判断しているが、シャンクスはチラリと私の方を見る。1つでも選択肢を誤れば大惨事になる様な相手が目の前にいるのだから選ぶことはするだろう。
「一般人に手を出さないのならば船長が長として上陸許可を村長から貰え……私はあくまでもこの島の自警団の長を務めているだけで村に対してなにか力を持ってるわけではない」
「そうか。じゃあ、挨拶してくるからちょっと待っててくれ」
村長の許可が降りたのならば私に文句を言う権利は存在しない。
シャンクスは筋を通せばいいのだなと直ぐに受け入れて1人で島に上陸し、村長に挨拶をした。また海賊かよと村長はあまりいい顔をしないが、シャンクスの人柄とも言うべきものに当てられて上陸の許可をした。
「悪魔将軍よ、もう少しなんとかならないのか?」
「なにがだ?」
「ミホークといいあのシャンクスといい、東の海の辺境の島に居ていいレベルの実力者じゃないだろう……性格がまともなのが救いだが、海賊を倒してもらわなければ」
「言いたいことは分かるが全てを倒すよりも、ああいうのを受け入れておいて金を落としていって貰った方がお得だ……海賊が嫌いなのは分かっているが、文句があるのならばお前が私と同じ立場になればいい」
「よしてくれ。あんたみたいに強くなれない」
ミホークに続きシャンクスも受け入れたので村長がやや不満にしている。
シャンクスならば騒動等を起こさないと物語の上でのシャンクスを知っているから深く考えずに許可を出しているが、それを知らない村長にとっては今から海賊を始めようとしている者をスンナリと上陸させたと思っている。
普段からこの島に向かってくる海賊達を上陸する前に殺しているので今回もそんな風に対処してくれとでも思っているのだろう。少しは海賊に慣れろ……とは言えないな。シャンクス達があくまでも極少数派の人間であり、本来はバギーの様な海賊が当たり前だ。
ONE PIECEは過去の回想と麦わらの一味視点で物語が動いているから海賊達のその手の側面を描いていない。描いていないだけで居る奴は居るだろう。
「しかし、貴様がこんな所に居るとは……」
「いや、別におかしなことじゃないぞ。自分の船を持ちたいって思っていたから。こっちのヤソップは最初の仲間、射撃の腕はホントにヤベエ。東の海随一って言ってもいい」
村長からの上陸許可を貰えたので何事もなく酒場に入り浸るシャンクス達。
私が倒さずミホークも特になにもしないという事は問題はないのだとあっさりと受け入れている。ミホークは最弱の海である東の海でちんたらしているシャンクスに何をしているんだという疑問をぶつければ海賊稼業を始めた事を告げてヤソップに自慢する。
「バーロー、東の海随一じゃねえ世界一だ……それを証明する為にもオレは船に乗った」
「あんな小舟にか」
「……そこなんだよなぁ……」
ヤソップは東の海随一と言う事に対して世界一と反論し、それの証明の為にもと誇らしげに語るが私が小舟を指摘すればシャンクスは困った顔をする。乗っている船が海賊船でなく小船であることをシャンクスは気にしている。
「仲間を増やすのもいいが、船をどうにかして手に入れなきゃならねえ。造船所に関しては心当たりはあるが問題は金だ。堅気の人間に手を出すのはアウトで、この島に近付こうとする者達は問答無用で沈められるって噂を聞いてな。もしかしたら財宝が眠っているんじゃないのかと思って来たんだが……」
「生憎だが、ここはお前にとっては面白味が無い普通の村だ」
「いや、何処からどう見てもありえないのが何人か居るだろう」
この島に近付こうとする悪党は問答無用で沈められる、沈められると言う事はそれ相応のお宝があると思うがそんな物は無い。
シャンクスにその辺をハッキリとしておこうとするのだが、シャンクスは周りで飲む物を飲んでいる自警団の者達を見る。
「偉大なる航路前半でも充分どころか物凄く通用するレベルの奴等しかいねえ……どうだお前等、オレと一緒に冒険しないか?」
「誘いはありがてえし面白いとは感じるが同じ穴の狢にゃなりたくねえ」
「あんたとなら面白い冒険は出来そうだが、それをしたら今まで積み上げきた物を否定してしまう」
シャンクスは自警団の人間に誘いをかけるがマツシロとアランが断った。
海賊が大嫌いだからでなく、今まで積み上げたものや同じ穴の狢になることが嫌だからという……それが無ければシャンクスの仲間になっていたとは流石は後の四皇だ。
「シャンクスよ、誘うなとは言わないが一言だけ告げておく。海賊王であるロジャーの死に際に放った一言のせいで海賊達が増えた、それもあってかこういう村にはなんの手も届かない。それこそ本来は悪人である海賊の海賊旗を掲げる事で悪行を起こさない抑止力すらもだ……海賊の楽しいとは真逆、厳しい部分を知っているのならばどういう結果が待ち構えているかは知らぬとは言わせぬ」
「……そうか。そいつはすまん」
「私達は必死になってこの村を守っている……頑張ろうと思えば他も守れるが、そうなるとここが疎かになる。自分が一番最初に守りたかったものを守ることが出来ない、ホントに守りたいものがピンチな時になにも出来なければ絶望して心が折れる……外の世界の憧れは無いと言えば嘘になる。しかしそれを解放すればロクなオチは迎えん」
シャンクスに誘うのは構わないが相手の気持ちを考えろとだけは言っておく。
デンゾウが外に対する憧れはあるにはあるがそれだけで、それ以上を望めば待ち構えているのは破滅そのものだとお猪口の酒を飲んだ。
「おいおい、そんな風に我慢していいのか?折角の一度きりの人生だぞ。俺は女房も子供も居るが海の向こうに待っているロマンが俺を止めてくれなくて船に乗ったんだ。楽しまなきゃ損だ、損」
必死に我慢して己を律している姿を見てヤソップは呆れていた。
自分はその我慢をせずに海に出た。我慢して辛い思いをするよりも楽しんだ者の方が勝ちだと、損は無いのだと言えば空気は固まる。
「お前には子供と妻が居たのか?」
「おう。子どもはウソップって名前で嫁に似て鼻が長く、うぉ!?」
「ブラッドよ、やるのは構わんが場所だけは選べ」
海が俺を呼んでいるぜ!発言で妻子を捨てた事を聞いてブラッドはサーベルを抜いた。
ヤソップに向けられる視線が一瞬にして冷ややかなものに変わった……感情的になっているのはブラッドだけでサーベルを抜いているのを見てシャンクスが待ったをかけた。
「待て!待ってくれ、ヤソップに妻子があるのを理解して口説いたのはオレだ……悪いことをしたって自覚はある」
「……今、1人の女性と交際している。この人ならばと思える強い女性で仮に自分が死んでもしっかりと生き抜いていく強さを持っている。だがだからと言って捨てていいわけではない……私は貴様の妻でも子供でもない。だがもし、恨み言をぶつけられる時が来たのならば、その現実から逃げるな」
「シャンクスよ、ここで暴れれば周りに迷惑がかかるから暴れない。しかしブラッド達の怒りには偽りは無い……貸しは1つだ」
「すまんな…………はぁ」
「どうした?」
ブラッドがヤソップに向けているサーベルを納刀させる事に成功したのでシャンクス達に貸しを1つ作った。
これで終わりだが酒が少し不味くなったなと思っているとシャンクスは大きくため息を吐いた。さっきまで盛り上がっていた……気持ちを下げる原因があったがそれはそれで割り切れるシャンクスにミホークは疑問を抱く。
「いや、レイリーさん……副船長の苦労が少し分かったなって……船長がド派手な事が大好きでそれに対してバカ騒ぎするのがスゲえ楽しくて。でも副船長が定期的に小言を言ってきて、細かいなぁとか思ってたけど色々と頑張ってたんだなって」
「No.1の男がバカ騒ぎするのが好きならば何処か下の誰かが苦労するのは当然で、No.2である副船長ならば最も苦労人だろう」
ヤソップが少しバカをやらかしたのでそれのフォローに入ったことで嘗て乗っていた船のNo.2の苦労を知れた。
好き勝手するNo.1が居る以上はNo.2が上手い具合に調整する、ましては乗っていた船が人間的な個性が色々と強い人間だから仕方があるまい。
「お前自身は冷静なのだから、そこの判断は誤るな……苦労をかける意味合いでNo.2選びは慎重にしておけ」
何処の業界も中間管理職のNo.2は嫌がるものだ。
そういうのが上手い奴がその内に仲間になるのは確定だからなんとかなる……それはそうとミホークが畑を耕してほのぼのとした農耕ライフを送っている事をシャンクスが知れば大爆笑し、ミホークがキレて軽く喧嘩したが酔っ払っているので本来の力をまともに出せなかったので喧嘩するなと両方とも叩いておいた。