ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンを食った男の話   作:アルピ交通事務局

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無限のモノサシと1つのコンパス!の巻!

 

「ケンを連れて行ってほしい、か……ふん、師弟で似たような事を考えているな」

 

 教師であるケンが孔明を連れて行って欲しいと頼み込み、生徒である孔明がケンを連れて行ってほしいと願い出た。

 武術で同じ流派ではるならば師弟の思考が似ることはあっても勉学で似ることは無いと思っていたが、どうやら間違いの様だ。

 

「師弟で似たような事を……センセイは、私を推薦したのですか?」

 

「自分が今まで育てた生徒の中で断トツの才能を有していると褒めていた……それ故にこのウェザリアには居てはならないのも。広い世界を知って欲しいと」

 

「お言葉ですが、悪魔将軍。ウェザリアに居てはならないのは私の方ではありません、センセイの方です」

 

 ケンが孔明を推薦してくれた話をすれば孔明はその逆、ケンこそがウェザリアに居てはならない人間だと言った。

 

「学者としてはケンよりも上回る者は幾人も居るとは聞いている……おそらくは事実であろう」

 

「……このウェザリアが出来たのは50年以上前です。今はもう亡くなりましたがセンセイはウェザリアを作ったハレダス達最初の学者達の子供でした。当然、幼い頃から勉学に勤しみ勉学の大切さや楽しさ等に気付きました」

 

「それで?」

 

「このウェザリアは空島の1つではありますが、天気に関する言わば移動する研究所その物です。センセイは天気以外の分野の方に興味を抱いていますが……周りからはおかしな方だと見下されています」

 

「ここは天気を研究する学者達が天気を研究する為に作った場所、他の分野の学問をバカにするのはおかしな事ではあるが天気に関する勉強をする場所で他の分野の勉学を学んで教える事は少しお門違いではあるだろう?」

 

「ええ、その通りです」

 

 ウェザリアは天気に関するあれこれをしていて、それが結果的に政治等に繋がるのは分かるがメインは天気に関する研究だ。

 現実の世界でも天候に関する研究はしていても制御する装置だけは作られていない。理論上は雨を降らせる事が出来るが雨雲を促進させる物ばかりで存在しない……遠い未来でならば存在しているだろうが現代では不可能でこの世界でもこの世界独自の物質で誤魔化している。

 ウェザリアはお天気研究所ならば他の学問について教えるのは少しお門違い。授業をスムーズにさせる為の軽い雑学を入れるならばまだ納得が出来るが、そこまでだ。その事を指摘すれば孔明は否定するどころか納得し頷いた。

 

「勿論その通りであり……ここは気象学を始めとする天気に関する研究をする場所でセンセイの学ぼうとしている学問とは異なります」

 

「だから他の学問を学んでいるケンを外の世界にか……ありふれた話だな」

 

「……先ほども申し上げましたが、あの方はこのウェザリア創始者達の子供です。当然、将来は有望な学者になると思われていました。あの方は、センセイは知ってしまったのです。同じ1つの海で繋がっているのに全くと言って異なる遠い遠い外の世界を。そして疑問を抱いてしまったのです」

 

「疑問だと?」

 

 外の世界を学んだが為にケンはなにかしらの疑問を抱いた……外の世界に対して憧れを抱いている、と言うわけではない。

 いや、外の世界に対して憧れを抱いていないと言えば嘘になるが、それとはまた別ななにかを見つけたのだろう。

 

「どうして自分は学者なのかを……ウェザリア創始者の1人の子息として生まれ、勉学する事についてはとてもいいことと認識しております。ですがそれらは親から与えられたもの、親のモノサシで決めた事です」

 

「親と言えども他人と言いたいのだろう、自分のモノサシで決めたことこそが最高だと言いたいだろう……だが、自分のモノサシは1つしかない。他人のモノサシは無限に存在している。ならば自分こそが最高だと思えば例えそうであろうとも何時かは下等に堕ちるものだ」

 

 親のモノサシで勉学を学んでいたケンだが自分がどうして学者なのかを疑問に抱いている。

 勉強することが苦しいから辛いからと言う理由で逃げる為の言い訳を求めているのはケンの性格上ありえない。自分のモノサシで胸を張って最高だと言える行いをしたとしても、自分のモノサシが正しいとは限らない。

 

「例えそれが自分にとって最高でも誰かが最低と言い殴ってでも止めなければ最低最悪のモノサシになってしまう……人には信念がある。その信念を正義と言う者が居るが私は信念と見ている……もし、異なるが正しき信念とぶつかり合う時が来た時、お前はどうする?」

 

「……戦いましょう。私の信念を貫く為に……己の信念の理解者や共感者になって頂ければ幸いですがそれが不可能だからこそ戦う……相手の持つ自分とは異なるが素晴らしき信念や哲学を持ち合わせているのならば、私はその信念や哲学を認めリスペクトしましょう」

 

「……ふん、よりによってそこに行き着くか」

 

 相手の持つ信念と自分の持つ信念がぶつかり合う時に、自分の信念こそがと貫くのでなく相手の信念を認めて尊重する。

 それは悪魔超人軍の開祖である後に悪魔将軍となるゴールドマンの信念でなく、ゴールドマンのやり方は焦りすぎていると判断してゴールドマンと似ているが異なる方法を見出した弟のシルバーマンの正義超人軍の思想だ。

 

「話を戻しましょう……センセイは疑問を抱き、気付けば様々な事に手を出していました。政治に関すること、農耕に関すること、文芸に関すること……しかし大きな成果を特に上げるわけでもなくこのウェザリアではあまり認められない。豊富な知識を持っているにも関わらず天気以外の学問に興味を抱いている変人と認識されており……私はセンセイならば外の世界に羽ばたけばと」

 

「……ケンは木偶の坊だな」

 

 孔明が自分よりもケンの方が青海に出るのに相応しいと考えている。ケンならばと言う強い信念を感じているが、私の出した答えはケンが木偶の坊である事だ。それを述べれば孔明は持っていた扇を振り……空気の刃が襲ってくる。

 

「やめておけ。私をその手の攻撃で倒したければ問答無用の粉砕が出来るグラグラの実でなければダメージにすらならない」

 

 鉄塊を己の中で昇華させ金剛塊と言う金剛の如く硬い体で空気の刃を耐えた。

 鍛え抜いた筋肉に通じるのは覇気、そして純粋な物理ダメージ……自然物による攻撃も通じなくはないが、鍛え抜いた筋肉と覇気がある以上は大したダメージにはならない。

 

「撤回しなさい……センセイは木偶の坊ではありません!!」

 

「ふん……ウェザリアを捨てられない男が木偶の坊でなければなんと言う?政治に興味を抱き、農耕に興味を抱き、文芸に興味を抱き、医学に興味を抱き、食育に興味を抱き、他にも様々な分野に興味を抱いた。だが、それだけだ。学び得た知識を元に他でもない何かになれたのか?」

 

 本気の怒りと殺気を向けてくる孔明……ウェザリアで修行したナミと同じ、いや、それ以上の技術を用いた天気攻撃をしているか。

 その気になれば雷すら降らせる事も出来るウェザリアの天候科学技術は中々に厄介、純粋な雷なのでルフィとエネル以外にまともに対処する事が出来る人間は居ない。

 

「それは……」

 

「ウェザリアは金を得る為に天気を売る、その時に島に向かって下天する。その時にケンがこのウェザリアを降りて医者、農民、シェフ、作家、政治家、商人、奴の技量ならば大抵の存在にはなれただろう。それでもこのウェザリアに残っている。親の期待に応えなければならないという責務が無いにも関わらず」

 

 このウェザリアで教師を務めれるレベルの学者ならばある程度は食っていく事が出来るだろう。

 それでもケンはこのウェザリアに残っている。様々な学問に興味を抱き、色々と手を出した……手を出しただけで、そこから更に一歩踏み込む事が出来ないのならば趣味の範囲か木偶の坊だろう。

 

「ケンはお前を推薦した、お前はケンを推薦した……選ぶ権利は私にある……お前の言いたいことは分かったが、素直に飲み込める物でも無い。この話はここで一旦終わりだ」

 

 ケンを外の世界に、孔明を外の世界にとお互いにリスペクトをしている2人。

 似た者同士だと思いながらも部屋に戻れば貴虎が結局、誰が来ていてなんの用事だったかについて聞かれたので孔明がケンを外の世界に連れて行って欲しいと言う願いであった事を伝える。

 

「両方はダメなのか?……ケンも孔明も優れているのだから、両方を選ぶ事だって出来る筈だ」

 

 ケンと孔明、どちらかを連れて行くのでなくどちらも連れて行く事にしたら全ては丸く収まるのではないのか?と言う貴虎らしい答えが返ってきた。なんともまぁ、先を読み通せない。

 

「私は既に賊の身だ、生きているだけで罪に問われるレベルのだ……私の旅は諸国漫遊だが旅の終わりは既に決まっている。旅の終わりは天のダンベルをラフテルにある祭壇に捧げる事だがそれが何時までにすることなのかは決めておらん。私についてくる以上は私の旅が終わるまで戦って死ぬ以外の死は認めない。私は力で従えてついて来いと言うのは私の好みに合わない」

 

「ケンと孔明ならば将軍に仕える事は……何処まで理解しているかは知らないが、将軍のカリスマは相当なものだ」

 

「その考えこそが慢心だ、体の筋肉は中々に発達しないが心の贅肉を直ぐに着けておって……私達が今求めているのは航海士だ。私が用意する航海士の席は1つのみ……理由は分かるだろう?」

 

「……最終的な決定権は船長である将軍にある。だが道中のコンパスとなる役割は1人だけ、それこそ複数のコンパスを用意していては正確なコンパスが分からないから」

 

「そうだ」

 

 コックならば扱うデザート主体のパティシエと普段食べる食事のコックと分けれる。

 船医ならば……これから女が仲間に加わる可能性がある。男には見られたくないと男女両方の医者が必須になるだろう。だが、航海士は違う。最終的な決定権は私にはあるが、道があると道の存在を教えるコンパスは1つだけで充分いや1つだけでなければならん。例え偉大なる航路が記録指針か永久指針を頼らずに突破することが不可能であろうともその道標を教える存在は1つだけでいい。

 

「なら、どうするんだ?……どちらも選べない、いや、選ばないのであればどちらかを選ぶのかそもそもで選ばないのか」

 

「どちらかは選びはする……私個人の意思としてケンの方が好ましい。だが……」

 

「そのケンが孔明を、孔明がケンを推薦したか?」

 

「違う、そうではない……今日はもう寝るぞ。あまり長話をしては明日に関わる」

 

 ケンが孔明を推薦し、孔明がケンを推薦した。

 だから悩んでいると言うわけではない……もっと別の部分、どうしてと言う疑問がある。それは本人に直接聞かなければならない事だが……まだまだやらなければならない事は多く問題が山積みだ。

 

「そうですか……孔明が自分を推薦してきましたか……先生として嬉しい限りです」

 

 翌日にケンに推薦した孔明がケンを推薦した事を伝えれば少し嬉しくも恥ずかしそうにしている。

 素直に喜んでいるのだがむず痒い、そんなところだろう。しかし直ぐにケンは意見を述べる。

 

「悪魔将軍さん、もし自分を航海士として外の世界にと思っているのであればその話は無かった事にしてください……最初に申し上げた通り私は孔明を推薦します。孔明ならば貴方達の前途多難、波乱万丈の冒険を共に乗り越える事が出来ます。彼女は中々に我が強いところがありますがそれでも貴方達ならば」

 

「何故断る?……まさか病に侵されているのか?」

 

「ハハハ……どうでしょうね。外の世界に憧れは抱いております。貴方達の仲間となり冒険をする事にとても魅力を感じております……ですが自分はそれよりも更にやりたいことがこのウェザリアにあるのです」

 

 私達ならば信頼して背を押せると最初に推薦した通り孔明を薦めるケン。

 断る理由が分からないと貴虎は病でもあるのかを聞けばはぐらかされたが、ケンはこのウェザリアでやりたいことがあると言う……強く拳を握って意思を隠すことをしていない。言葉に揺らぎが無い。心の底からこのウェザリアでやりたいことがあると思っており、そのやりたい事を成し遂げる意志を感じる。

 

「そうか……私は孔明を無理に誘わない、お前が行ってほしいと願い出たからと言う理由で私について来られても困る」

 

「参りましたね……彼女、意外と頑固なところがありますから……貴方ならば己の意思でついていきたいと思えるのですがね」

 

「私が言うのもなんだが賊だぞ?会って間もないのだぞ?」

 

 白ひげ達の様な海賊としての名声も無い。なんの後ろ盾も無ければ、特に進路を決めていない。唯一決めているのが冒険の終わりで、その冒険の終わりが私の完全消滅だ。

 ケンは私達の何処を見て孔明を託そうと思ったのかが分からない。

 

「ええ、そうですね……でも、不思議と貴方ならば任せても問題は無いと思えるのです」

 

「……」

 

 私達は賊で、富も名声も持っていない。

 そんな所に推薦するだなんて見る人が見ればイカれているとしか言えないだろう。だが、何故かケンは私ならば大丈夫だと安心して背を押してくる。

 

 頂上戦争でのルフィの強さは真ん中ぐらいだ。仮にルフィに好意を抱いていないハンコックと真っ向からやり合えばメロメロの実が通じなくても高確率で負ける。

 だが、ルフィは頂上戦争の中で最も厄介な力を持っていた。海軍と言う共通の敵が居たとは言え、白ひげ達を即座に味方につける主人公補正と言う言葉で片付ければそれで容易いが、それを別の言語にすれば呪いとも言えるレベルの魔性の魅力……それこそが恐ろしい力だとハッキリと明言されている。

 

 ケンは私からその力に似たなにかを感じ取った……だから任せても問題は無いと推薦をしたか。

 

「孔明の一件については1度置いておく……今の私は次の問題を解決したい」

 

「次の問題?……このウェザリアは本当に風の気まぐれで動いているから行きたいところは早々に」

 

「そこではない……ケンは特に臆する事は無かったが、この身がどうしても威圧感を与えてしまう。この見た目もあり私はどうしても目立ってしまう」

 

「目立つと言うがたかが身長220cmだろ?」

 

 他の動物(ゾオン)系の悪魔の実はON/OFFが可能だが、私はどう頑張ってもゴールドマンにしか戻れない。

 ケンは特に威圧を感じないからなんともないがコレは非常に厄介な事だ。貴虎はたかが220cmに奇妙な格好と言うがここまでド派手に目立つ存在は普通に厄介だ。

 

「変装の1つや2つ、出来るのならばするに越したことはないですね……ここはとても寛容的で緩いですが厳しいところは厳しく即座に通報する事が多いですから」

 

「だが、顔を変えられないならどうしようもないか?その悪魔の面も純金の頭部も変装しようにもなにをどういう風に手を付ければいいのかが分からない」

 

 変装が出来るのならばしておいて損は無いとケンはウェザリアだから色々と許されているところがある事を認めた。

 貴虎は変装をしようにも頭部は弄くれない筋骨隆々の男をどうすれば変装させる事が出来るのかが分からない。

 

「それについては1つ……ふん!」

 

「……?」

 

「なにも起きませんね」

 

「……ここは島雲だったな。同じことは出来ないか」

 

 私が見た目を変える方法については知っていると手にエネルギーを集めたが特になにも起こらなかった。

 このウェザリアが雲で出来ている島でありこの星と繋がっている大陸ではないことを忘れていた。コレについては月で色々としていた為に当たり前に出来る物だと認識していたが……私もまだまだか。

 

「まぁ、何処かの島に降りた時にお披露目しよう」

 

「ふふ……何をするのか、期待していますよ」

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