ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「コレって……」
「ああ、同じ物だろうな」
「で、でも確か同じ物はこの世に2つ無い筈だろう?」
弟がジャガイモ畑から掘り当てたジャガイモではなく悪魔の実。
ついこの前に海軍に売り飛ばした筈の物であり、なんでここにあるのか?いやそれよりもこの前売ったものじゃないのか?と言う素朴な疑問を弟は抱いている。
「その認識で間違いは無い……貸せ」
「え?」
「流石にまた海軍には売れん」
オレ達が売った悪魔の実がここにあるという事はこの悪魔の実を食べた誰かが死んだ。
ハズレな能力でも入っていたのだろうが、そんな事はどうでもいい。悪魔の実がまたここに舞い戻った以上はどうにかしなければならない。再び海軍に同じ悪魔の実を売れば色々と怪しまれるのだからやることは1つ。
悪魔の実の天敵である海に投げ捨てることだ。
「これでよし……」
「に、兄さん」
「なんだ?食べない以上は持っていても厄災しか呼ばないロクでもない物なのだから、食べないのは普通だ」
「違うよ。ジャガイモが!」
仕事の報酬として貰った売り物にならないジャガイモ。
その内の1つが、先ほど海に投げ捨てた悪魔の実へと変貌している……悪魔の実がどういう経由で生まれるか全く知らんが能力者が死亡した時点で新しく生まれるのは知っている。能力が宿っている実が破壊された時点で新しく実を作り出す……なんともまぁ、呪われたアイテムだ。
「……ふむ、念の為だ」
もう1度と悪魔の実を海に投げ捨てた。しかし悪魔の実はめげないのか、別のじゃがいもを悪魔の実に変貌させる。
捨てても捨てても意味が無い。これ以上はじゃがいもが勿体無いので海に捨てるのは止める。
「こんな偶然って、あるのかな?」
「……偶然ではないだろうな」
家に悪魔の実を持ち帰った。
悪魔の実は不要な物だと海に捨ててもそれでも蘇るという中々の根性を見せているが、オレ達の前に何度も出てきている。
悪魔の実には意思が宿っていると言われている。悪魔の実を食べる事により得られる能力は千差万別で、その人じゃなければ扱えないだろうと思えるピンポイントな能力まである。
ならば、この悪魔の実もオレか弟のどちらかに食べてもらいたいという意思を持っている。
運命力を操ってか、オレ達の前に現れた。しかしオレ達は口にしなかった。金に変えた。だが、再びオレ達のもとに戻った。
オレか、それとも弟か。どちらかには分からないが食べてもらいたいという意思が宿っている。
「食べるつもりはあるか?」
「う〜ん……」
「オレは無い」
図鑑に載ってない悪魔の実がしつこくオレ達の前に現れている。
オレと言う存在しない異分子が居る以上は最早、この悪魔の実には運命を感じるが……オレは食べるつもりが無い。
悪魔の実を食べれば超常的な力を得られるのは確かだろう。それについては否定しないし食べてみたいと言う思いはある。だが、それしかメリットが無い。超常的な力を手に入れたとしてどうする?オレや弟が住んでいる村はホントに小さい村だ。世界政府非加盟国でもなければ世界政府加盟国でもない。
強い力を手に入れたとして、その力をどうする?
オレは田植え等の農作業から金物細工まで色々な雑務をこなしており、充実している。ゲームや漫画等のサブカルチャーの知識が何故か豊富だ。だが、酒池肉林を作りたいとは思わない。
正義の味方になることはオレの性に合わないし、無理だろう。
暴力という物を用いての正義よりも、腹を空かせている子供にあんぱんを渡すあのヒーローこそが立派とは思うがそのヒーローになってみたいとは思わない。
強い力にはそれ相応の責任が伴う。車の運転免許だって考えようによってはその責任を負う覚悟が出来ている証だ。
自分ならば大丈夫等と考えていてはその時点で堕落している証だ……特にこの世界はその気になれば素手で岩を軽々と破壊する事が出来る理不尽と思える絶対なまでの暴力と言う力がある。暴力と言う力も使い道さえ誤らなければ問題は無いだろう。
だが……意味が無いんだ。
ロジャー海賊団はカタギに手を出すことだけは禁じている。
自分達は海賊だ、酒だ女だ財宝だと言う野蛮な思想を持ち合わせていない様に見えるが、バギーと言う海賊はその精神を受け継がなかった。ロジャーが死の間際に放った一言で海賊としての欲望を高めた自由と好き勝手にしていい事を勘違いしている者が沢山増えた。
ロジャー海賊団自体は海賊としては高潔な精神を持つ者が多いだろう。
しかし、それに群がる凡夫達が営利を貪る……完全なる不老不死となった神が自身の理想を教えて学ばせる、その様な行動を取ったとしても何処まで行っても自分の劣化コピーしか生み出せないのが現実だ。人間が神を超える方法はこの世でただ1つ、神の教えに背き神が下等と排除した物の中にあるものを使う。それだけが人間が神を超える事が唯一の方法だ。
「まぁ、要らないよね……食べたところで意味は無いし」
「そうか」
弟に食べさせればその時点で弟が能力者になる……ただまぁ、悪魔の実の能力と弟の能力が噛み合わない可能性も普通にある。
悪魔の実を売り捌いて1週間もしない内に悪魔の実が戻ってきた。ベガパンクがまだ居ない以上は悪魔の実に関する研究は全く進まないが、食べるだけで確実に1人の能力者が生まれる。
超人系に関してはピンキリだが、動物系と自然系ならば基本的にハズレは無い。
テラフォーマーズでやっていた動物のスペックを人間の体格で変換すれば物凄い力を有していると言う描写があるだけに、些細な動物でも圧倒的な力を手に入れれる。
人間が動物の中で繁栄しているのは知識が発達し火を扱ったり道具の力を利用しているからで、他の能力では人間は勝てないところが多い。
弟も食べない。オレも食べない。ならばコレ以上はなにも議論をすることが無い。
この悪魔の実を再び売り捌けば怪しまれる。仮に売って能力者が死んだとしてオレ達のもとに舞い戻ったとして、オレ達になにかあると思われるだろう。
ハンコックやベガパンクの様なピンポイントな能力を使うに相応しい適合者……ダメだな。
「大変だ!海賊が来た!」
悪魔の実を食べない方向で進めていれば海賊がやってきた。
見たことはない旗ではあるが、世間一般で疎まれている海賊旗の象徴たる髑髏を掲げている。海賊旗は海賊の証、それを掲げると言う事は海賊であると言う事を認め世間に晒す。ましては、島から島に移動する為に船を使い海賊旗を掲げるのであれば……バカだろうな。
海賊旗を掲げているが、見たことが無い海賊旗だ。
海賊旗である以上は許す心など持ってはいけない。賊なのだから。冒険をしたいと言うのならば冒険家を名乗ればいい。少なくともこの世界には海賊だけでなく冒険家と言う職業はハッキリとあり、それで成功を納めている人間も一応は居る。
「何時も通りか」
海賊にも話し合いが通じるのは居ると知ってはいるが、ヤンキー気質でナメられたらその時点で相手を瀕死寸前まで追い詰める。
ナメられたらおしまいな稼業なのは分かっているが、全くと言って関係無い一般人にすら手を上げる……冒険家と言う概念があるのに、何故海賊旗を掲げているのだろうか?オレにはそれが分からない。
なにか特別なことはしない。
ここは東の海で最弱な海賊達の集まりだ。自由とロマンを求めてと聞こえはいいが、所謂真面目にコツコツと積み上げるという事が出来ず楽な道に逃げた者達の末路が海賊……ロクでもないか。
「やれぇ!」
何時も通りだ。海賊達は黒だった。ロジャーやシャンクスの様に一般人には手を出さないタイプの海賊では無かった。
海水をぶっかける事で、フリントロック式の拳銃は使うことが出来なくなる。網を被せる事で相手から一手奪うことが出来る。そして海賊達を剣や弓で貫く……これで今回も終わりだ。何時も通り海賊を拒む平穏な日々を過ごせる。
「テメエ……ナメた真似してくれんじゃねえか!!」
「なっ!?頭が割れた!?」
「っ!?」
何時も通り終わるかと思えば……船長が死ななかった。確かに頭をスパッと刺した筈なのにと驚いていれば頭がパカっと割れた。
コレは知っている。ONEPIECEの主人公達とある意味同格の幸運を身に宿していて……斬撃、いや、刺突系の攻撃が一切効かないと言う冷静になって考えればかなり破格の性能を秘めている悪魔の実。
「せっかく従えた部下をよ、殺しやがって」
「バラバラの実……」
バギーが食べるまでの前任者について特に言われていないバラバラの実。
ロジャー海賊団の名前を全くと言って聞かないのだから、バラバラの実の能力者が別に居てもなんらおかしくはない。
だが……まずい。
バラバラの実の弱点は打撃攻撃だ。だが、打撃攻撃が得意な人間はこの場所には居ない。
斬撃系の攻撃を問答無用で通じない……剣豪として名高い者達の剣を受けてもしなないのがこのバラバラの実の恐ろしさだ。
「っ、ミュース兄さん!アレを!時間を稼ぐ!」
バラバラの実が相手である以上は打撃攻撃が通じない。
幸いにもバラバラの実を食べた船長だけが生き残っているが、バラバラの実は非常に脅威的な能力だ。弟は直ぐに危険を察したのでオレに叫ぶ。時間を稼ぐと言われても、なにをしろと?と思ったが、オレが持っている物はよく分からない悪魔の実だ。
悪魔の実は2つ口にすることが出来ない。その性質を利用して無理矢理悪魔の実を口にさせることが出来れば確実に仕留めれる。
ただそんな事が出来るのであれば最初から毒の1つでも食べさせればいいだろうという最もな考えはある。弟は盾を手に取り、出来る限りの時間を叫ぶというのでオレは全力で家に戻った。
「…………食えと言うことか」
ああ、憎い。己の無知や弱さが憎い。
ここがONEPIECEの世界で原作開始前ならば、本来はそのキャラが持っている悪魔の実の能力を別の人間がもってもなにもおかしくはない。
ONEPIECEの世界は民度が低い。正義を掲げているが、分かり合う為の正義ではない。それが分かっていた筈でオレは今日まで何もしてこなかった。筋トレも覇気の練習も。例え平穏に生きていても原作が開始すれば麦わらの一味が世間を騒がせて海賊を一気に増やす。
弱い者は強い者に虐げられる。それはこの世界でなくても極々普通の事だ。だから人は力を求める。
弱いことは罪……特にこの世界では強くならなければなにも出来ない。そしてただ強くても人はなにも出来ない。
「一口食べれば問題は無い筈だ。なんでもいい、ゔぇっ……」
とにかく強い当たりの悪魔の実であれ。
悪魔の実を口にすればこの世の物とは思えないクソ不味い味がした……が、ゴクリと飲み込んだ。
「パゴアパゴア!!力が湧いてくる!コレは動物系か!」
超常的な力を使える
「褐色の肌に筋肉ムキムキ……まさかリキリキ?……いや、それならば好都合だ!」
割れてなかった腹筋があっという間にバッキバキになったと言うか北斗の拳の様に筋肉に力を入れたら服が破ける現象が起きたと言うか体格が大きくなった。怪力を得られるリキリキの実なのかとなったが、リキリキの実はシンプルな怪力、バラバラの実を倒すのに必要な打撃攻撃にはもってこいだ。
「早い!怪力というだけあってか全ての筋力が上がっているのか!」
家に向かうのに時間がかかったが、海賊のもとに向かう際には物凄い速度で走ることが出来る。
リキリキと言うから腕の筋肉だけかと思えば下半身の筋肉まで上がっているんだなと納得をしつつ弟のもとにまで戻ればバラバラの実の能力者とその部下達が盾を持っていて構えている弟をタコ殴りにしている。
「っ、兄さん!?」
「待たせたな!この力があればこいつらを倒せてお前を守れる!」
「ほぅ、悪趣味とは言え宝をわざわざ差し出すとはいい心構えだ」
「パゴアパゴア!なんのことだ?……うぉおお!!!」
剣術も何もないが正拳突きぐらいならばそれっぽいのは可能だ。
正拳突きをお見舞いすればなんということか、殴り飛ばされるのでなくお腹に文字通り穴を開ける事に成功した。
「ニャガニャガ!」
怪力と言えるだけの力はあると思いつつも、他の海賊達にも攻撃をする。
この世界の住人、上澄みも上澄みな人間達は物凄い打撃を受けてもダメージが大して無いかと思えば銃で普通に死んだりするよく分からない頑丈さだ。だが、この圧倒的なパワーを前にすれば問題は無い。
「終わったな」
「……声は兄さんだけど……兄さん、なの?」
「む……まぁ、体格が変化しては驚くだろう」
動物特有の毛が無い。鱗的なのも無い。動物系の悪魔の実ではないのは確かで、リキリキの実なのだろうと思ったがホントにリキリキの実なのかと頭が冷えてきたので疑問に思う。リキリキの実って体格が変化する悪魔の実だったろうか?
いやまぁ、モチモチの実と言う悪魔の実があり超人系に分類されてはいるのだから体を変質させる超人系の悪魔の実が他にあってもなんらおかしくはないが。
「顔が……スゴく変わっちゃってるよ」
「む、そう……む?」
顔が変わっていると言う言葉を聞いてオレは顔に手を当てるのだがおかしな感覚がした。
触感で分かる……今まで何度も何度も触れていた顔から明らかに材質の段階で違う顔になっているのを。
海賊達を無事に殺したので弟に攻撃を受けさせるのを任せっきりだった村の人達が出てくるのだがオレに対して警戒をしており、弟は家から手鏡を持ってきて見せる。
「コレは!」
オレの頭部と言うか、オレの体全体がキン肉マンに出てくるゴールドマンになった。
まさか……ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンなのか!?