ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「……悪魔の実の能力者は居ないわね」
ゼロ・オリジン号に帰ってくれば貰った手配書の海賊を確認する。
悪魔の実の能力者が居れば厄介なのでロビンと孔明が過去の新聞や情報から照らし合わせた。
悪魔の実の能力者は賞金首の海賊の中には居ない。
それは喜ぶべきことなのか悲しむべきことなのか分からないが、悪魔の実の能力者は相手にするだけでも厄介だ。
「
「『空』の技術?」
「今は冒険に集中したいから修行期間には入らないが、そうだな……能力者に対して有効となる技術と思えばいい。とは言え『空』の技術だけは現状将軍しか完璧に使いこなせないが」
厄介な能力である超人系も自然系も居ない。
『空』の技術を覚えておかなければ超人系と自然系は、特に自然系に関しては『空』の技術の基礎を覚えなければ攻撃そのものを当てられない。『空』の技術という言葉を全くと言って聞いたことがない孔明は何なのかを聞けば貴虎ば悪魔の実の能力者の有効打だと答える。
「当たり前だ……『空』の技術はともかく『空』の奥義だけは段違い。それを考案した者ですら偶然にもマスターするが出来ただけであり、確実に覚えることが出来るカリキュラムは確立していない。後にその者の弟子が『空』の奥義を会得したが難易度がとにかく高い」
『地』と『海』の技ならばこの世界の腕自慢でも大抵は覚えれるが『空』の奥義だけは別格だ。
実際にミホークも『空』の技術の基礎である覇気は出来ているが、その次のステップ、覇気で悪魔の実の力を斬る事はあまり出来ていない。
「最大が2000万ベリーで4割持っていかれるとなると……3億は遠いですね」
手配書の海賊達を中間手数料や生け捕りにして海軍に売り渡したとしても3億ベリーは程遠いと孔明は頭を抱える。
流石にここで3億ベリーを稼ごうとは思っていない。今ある資金は500万ベリーで、ある程度は纏まった金が集まればこの国から出て行く。
「!」
「隠れておけ」
金の事についてどうするべきかと悩んでいればロビンが反応する。
なにかを感じ取ったのだと見聞色の覇気を使えばゼロ・オリジン号に乗船した者が居る。知っている気配だがロビンの顔を見られるのは厄介だと隠れている様に言えば近くの木箱に潜んだ。
「邪魔をするぞ……お前達が持ってきた海賊の首の換金を終えた。生け捕りならば300万だが死んでいるので7割の210万、そこから我々の仲介手数料として幾らか貰いお前達に実際に受け取る額、120万ベリーだ」
乗船してきたのはセレスティア大臣のもとまで案内をしてくれたリグレット。
$マークが付いている封筒を持ってきており、中には分厚い1つの札束と20枚の10000ベリー札が入っている。
「ショーグン・アイ……ふむ、本物だな」
「海賊相手に金を出し惜しみすれば痛い目に遭う。ちゃんとした金だ」
一番上が10000ベリー札で残りは1000ベリー札と言うオチだけは困るとショーグン・アイで本物かどうかを確認する。
そこで出し惜しみすれば痛い目に遭う事を理解しているのでリグレットはちゃんとした真っ当な金である事を主張する。
「先に言っておくぞ、この国に長居する事は勧められない……場合によっては出て行けと宣告する時もある」
「金を稼ぐ手段を失うからですか?」
「……ああ、そうだ。説明をしてやろうと思ったが、どうやら気付いていたみたいだな」
リグレットはこの国に長居する事は出来ない、してはいけないと言う事について説明をしに来てくれたが孔明は既に見抜いていた。
金を稼ぐ手段を失うと言う言葉からして……
「強すぎる海賊が居れば、名を上げる者よりもその名に怯えてしまう者達のせいで海賊側が立ち寄らなくなるからか」
有名な海賊に対して喧嘩を売った結果、尽く敗れ去る者はこの世界には多くいる。それ故に多少腕に自信がある者でも、特に前半の海でそれ相応に名を挙げている者が後半の海である新世界に入ればその新世界で活躍している猛者達にあっさりと敗れる話はよくあることだ。だから相手に応じて色々と啖呵を切ることが出来る海賊は、それこそルフィやエースの様な上がどんな奴でも関係無いと挑む者は圧倒的に少ない。
「この国は海賊達のおかげで成り立っている……だが、私からすれば国としては破綻している。為政者であるならば明日に食う飯に困らない貧乏国家を作らないのが当たり前だと言うのに、明日に食う飯を手に入れる為に海賊を利用している」
「海賊が嫌いか?」
「海賊よりもこの国が嫌いだ。この国のシステムのせいで弟が死んだ」
海賊に対して毛嫌いをしているところがあるので貴虎が海賊を嫌っているかと聞けば海賊でなくこの国を嫌っている。
この国のシステムで弟が死んだ……
「この国のシステム、ですか?」
「海賊相手に商売をしている商魂逞しい島々があるからそこはまだ割り切れる……この国の民は何処で暮らしていると思う?」
「そういえばまともに見ていないな」
国のシステムに対して毛嫌いをする事について孔明が疑問を抱けばリグレットは他の島で商魂逞しくしている事は知っているので割り切れると割り切っている。この国の民について聞かれれば貴虎はこの国に辿り着いてからまともに見ていない。孔明も私も思い出すが、セレスティア大臣とその護衛、後は私達に直接会いに来たリグレットしか見ていない。地図上ではそれなりの国の大きさ表記だが国民をまともに見ていない
「この国は幾つかのエリアに分かれている……1つはセレスティア大臣率いるセレスティア領、もう1つはインフェルシア大臣が率いるインフェルシア領、そしてその間にあるのがお前達が出なければならない戦地だ」
「……まだ大きなスペースがありますね」
島の右端がセレスティア、左端がインフェルシアとなりその間が戦地と言っているが全く線引きされていない上部が残っている。
セレスティア領とインフェルシア領、そして戦地となっている場所を除いても土地が余っている事を孔明が指摘した。
「世界政府への登録手続き上、このナムコ島全体をバンダイ王国としているが本当の意味でバンダイ王国と呼べるのは国王であるバンエルティアが納める領地だけだ。このセレスティア領とインフェルシア領は人間の廃棄場だ」
「……どういう意味だ?」
「このバンダイ王国の方針として使えない人間は切り捨てようと言う考えだ」
「それのなにが悪い?使えない人間は切り捨てられて当然であろう?」
バンダイ王国が人間の廃棄場だと憎しみが少し混じった声で語るリグレット。
2つの領地が使えない人間が送られる場所と言うが、使えない人間は切り捨てられる……それは極々当たり前の事だ。
「人は満足や油断をするとそこからなにもしなくなる、現状に甘えずそれ以上を求める強欲さこそが人の真髄であろう」
「それは否定しない……だが、この国では人間力が定期的にテストされる。人には立ち上がる強さがあるのも分かっている。だが、誰もが立ち上がる事が出来るわけではない。だから誰かが手を差し伸べて立ち上がる。だが、悪い人間はそれを喰い物にする。他者の善意の施しを当たり前と思い自分にとって都合の良い物として扱う……弟は本当の国民になる前に死んだ」
人間力が試される事を述べれば憎しみが籠った声が強くなる。
優しい人間はそれを喰い物にする悪い大人にやられる……正直者が馬鹿を見ると言う言葉がある様になんでもかんでも正直になればいいという物ではない。
「ふん、世界を憂い嘆くのならば世界征服でもしろ……少なくとも目の上のたんこぶは天竜人への上納金と食料だ。それさえ無ければ大抵の国は国として成立させる事が出来て他の国との交流も可能とする」
もっとも、大抵の国は他の国から物資を略奪するという物騒な考えを持っている。
世界政府と言う国の1つの政府とは異なる所謂国連の様な組織はどうしても必要でそれを作っても逆らう加盟国のバカ共は居るしそれ自体が腐敗する。
「世界の平和は常に願われている、それを実現しようと動く者達も居る。だがそれでも泰平の世は築き上げられない……人から人の本質である探究心や闘争心の感情を問答無用で奪わない限りは仮染めの平和すら不可能だろう」
そしてそれを奪ったのならば人間は人間でなくなる。
人の進化と退化を操る神の如き存在になる…………いや、神の遣い……
「あのバカ共もそうだが、平和になる為に戦いよりも平和を維持する術を知らん。それで成功したという一例があり、その情報をあえて提供する事で模範と……リグレット、すまないが私を殴ってくれ」
「急にどうした!?」
「いいから殴ってくれ」
「わかった……ふん!………硬い」
「金剛の身体だからな。すまん、そして助かった」
「……なにかは分からないが、金は渡した。私は帰らせてもらう」
私を殴るように頼めばリグレットは私を殴ったが金剛の如く硬い私に手を痛める。
殴られた事によって冷静さを取り戻したのでお礼を言うが、リグレットはなにを言っているのか等が分からない。急に話題が変わったのでコレ以上はするつもりは無いのだとゼロ・オリジン号から出て行った。
「急に殴れとは、物騒なことを」
「悪魔の実に意識を持っていかれかけた、ああでもしないと元に戻らない」
「……どういう事です?」
急に叩いてくれと言ったので孔明も驚いている。悪魔の実に意識を持っていかれかけた事を述べれば孔明が意味が分からないと言う顔をしている。
「悪魔の実にはそれそのものに意識が宿っている、とでも言うべきか……私の食べた悪魔の実は時折私の思考を蝕む」
「悪魔の実って、そんな力があったの?」
リグレットが完全に船から去っていったのでロビンが木箱の中から出てきた。
孔明の質問に答えれば同じ悪魔の実の能力者だが特にコレと言った異変が無いロビンは驚いている。
「
「ホントに極稀だがこういうことがある。そういう時は殴ってやれば治るから迷いなく殴れ」
「いや、金剛の硬さを持っているのですよね?」
「普通に殴ったら折れるわ」
自警団だった頃も何度かこの現象が起きていて誰かに殴らせて意識を取り戻させていた。
コレばかりは完全に死ぬまで一生の付き合いになる厄介な物だと割り切ってはいる。幸いとも言うべきか超人なので野獣の如く理性を崩壊させて暴れ回るという事は無いが……それが逆に恐ろしい。
貴虎は殴ればどうにかなると解決方法を教えるが、孔明とロビンはまともに殴れないと言う。
「本当の国民になれなかったか……」
リグレットが何処がセレスティア領か何処がインフェルシア領か、何処がバンダイ王国の王であるバンエルティアが統治している領地なのかを書き記した地図を貴虎は見る。
国王の領地は2つの領地と戦場になっている土地も合わせても大きいが、それでもセレスティアとインフェルシアの領地もかなり大きい。一応は世界政府加盟国だからそれ相応の広さを持っている……自警団を率いていたあの島よりも広いな。
「この国の民になるのには、なにかしらの条件があるのでしょうか……」
「幸いにも明日は戦争そのものをしない休戦日だ。インフェルシア領には行くなとは言われているが、セレスティア領でのある程度の行動は許されている……この国について知りたいのであればそれは構わないが、ここにはおそらくは悪党は居ないだろう」
国民になれなかったと言うリグレットの言葉が孔明は引っかかっている。
明日は休戦日なのだから国の内情を知ろうとしたりする事は好きにすればいいが既に1つの答えは出てしまっている。この島には悪党は居ないと言う答えだ。
「悪党……インフェルシア側も海賊を雇っているなら、インフェルシア側が悪党ってわけじゃないわよね」
「インフェルシアもセレスティアも同じ穴の狢だ……単純に金を稼ぐ為に海賊を利用した戦争をしている、最終的には自分達が世界政府加盟国になる為の条件を満たす言わばマッチポンプだ。明確な悪党が悪政を行っているわけではない、色々と悩んだ末のこの国となったのだろう」
この国には色々と闇を抱えているだろうが、その闇を掻き消すことは出来ない。光が強ければ強いほど闇は濃くなる。闇が濃ければ濃いほどに光も輝く。その法則性を、ルールを壊す覚悟を決めなければ絶対に救えないし、それを望んでいる者と望んでいない者も居る。
イチイチ相手にしていてはキリが無い。