ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
帰れと言われたが帰らなかった。
「……」
「なんだい、あんた達……バイクがそんなに珍しいかい?」
漢連合の総長であるハヤトの家は町工場。
ハヤトの親父はバイクを弄くっているのを見て、バイクがそんなに珍しいのかを聞いてくる。
「その手の物は知識として知っているが、実物を見るのは初だな」
「私もだ」
「そうかい……あんた等、ハヤトを連れて行きたいんだろ?……だったらよ、ちょっとこの街を歩いてみな。それでもまだ仲間に引き込みてえってなら……」
リグレットが知識として知ってはいたが、実物を見るのは初めてだと言う……とは言え男心が燻ぶられるの感情は出ない。
コレがあったのならば色々と便利に事を進める事が出来るのだと考えていれば、ハヤトの親父がこの街を歩いてみろと言ってきた。なにを意味しているのかと一先ずは歩いてみる……
「工業地帯だな」
「……造船所がありますね」
デカい大砲やマスト等、色々とある。
武器や兵器等を作っているかと思ったが、オーブン等の科学製品や電球等も作っている。町工場が幾つも集まって出来ていると言ったところだが、逆を言えばそれ以外は特に代わり映えのない普通の街だ。
リグレットが気にしている事は……造船所があることだ。
東の海の海賊達が何処で船をゲットしているかと言われれば知らない。ルフィ達は偶然にもゴーイング・メリー号を手に入れたが、他の海賊達はどういうルートで船を作っているか知らない。
リグレットは海賊船を見つけた。町工場が海賊船を作っているのだと分かって少しだけ嫌悪するが基本的には海賊船を作ることは罪に問われない。職人達は必死になってカンカンと木材に釘を打ち鳴らしていき船を作ったりしている。
「ほら、300万ベリーだ!」
「ありがとうございます!」
如何にもな海賊の見た目をしている男が1万ベリーの札束を3つ、工場の人間に渡した。
シュパパと目にも止まらない速さで札束の枚数を数えればちょうど300万ベリーあると喜んでいて、涙を流している。
「……そうせねば食っていけないのを見せられると心にくるな」
ロジャーの最後のメッセージを残して以来、世界は大きく変化していっている。
当然経済事情も変わっていく。海賊達が多くなった事で物価は上昇する。それをどうにかしようにも海賊達は滅びない……偉大なる航路には海賊達が金を落としていく事で生計が成り立っている島は数多くある。
この島は工業製品を作る普通の工業地帯として活動していたが、大海賊時代を迎えた為に変化した。
海賊達から受け取っている金は汚い金か綺麗な金か、それは金を持っている海賊にしか分からない事だが、少なくともその金でこの島の経済は潤っている。リグレットは見ていて心が苦しくなった。
「色々と考えたんだがよ……海賊旗をデザインするだけで30万ベリーってのはおかしいんだよ」
ならず者を受け入れている以上はそういう話も出てくる。
海賊旗を描いてもらった海賊達は海賊旗のデザインを気に入っているが、海賊旗をデザインして帆等に描くのに30万ベリーもすることについて文句を言ってくる。しかし町工場の人間はそんな威圧感には負けない。
「なに言ってんだい、デザインを浮かび上がらないからって描いてほしいって頼んだのはあんただろ」
「そうだが、よくよく見てみればこんなデザインは俺達でも描くことが出来るって気付いたんだ」
「あぁ!?なにふざけたことを言ってんだ!それが出来ないから頼ってきたんだろ!今更無しなんて無しだ!」
「払いたくねえんだから払わねえんだよ!!いいからさっさと言うことを聞けや!!」
「将軍様」
「ふん、問題は無かろう」
町工場のオヤジに支払う金は無いと武器を取り出そうとする海賊達。
このまま行けば大事になるのだと感じたリグレットが止めておいた方がとなるが、問題は無い。ブォンブォンとバイクの音が鳴り響き、ハヤトが現れた。
「テメエ等……オレ等が下手に出てるからっていい度胸だな!!」
「ハヤトさん!」
「契約を無効にしてえってなら、覚悟しな!」
「あ、あいつ!突っ込んで来やがる!逃げろ!」
バイクに乗っているハヤトは海賊達の無理は通さないのだとバイクで突っ込む。
海賊達がアレはまずいと感じ回避するがハヤトは海賊達の動きを読んでいるかと言わんばかりにバイクを小刻みに動かして器用に1人1人の顔にタイヤ痕を付ける。
「ぐぇえ!?」
「オレは優しいからな……1回だけチャンスをやるよ。お前達はワカサキのオヤッサンに代金を支払う。100万ベリーだったか?」
「ち、がう……30万、ぐぅ!?」
「おっと、違ったな。有り金全部か。テメエ等のシンボルマークが作れねえからワカサキのオヤッサンに作ってもらうんだからな……ふん!!」
「……むごいな」
海賊達の船長と思わしき人物の頭を掴んで睨みつけて代金を改めて支払えと本来の額よりの数倍上の額を請求する。
本来の額じゃないと船長は否定しようとするが顔を殴られて奥歯が飛んでいき、ハヤトは自分が違っていたと、有り金全てだったと訂正し……鋭い眼光で睨めば海賊達は意識を失う。睨みを利かせると同時に覇王色の覇気を飛ばして気絶をさせたか。
「ひーふーみー……んだよ、ちゃんと金があんじゃねえか。テメエ等のシンボルマークが必要だってのに、出し惜しみするか普通?……ワカサキのオヤッサン、受け取りな」
「ハヤト」
「礼には及ばねえ。何時ものことだろ」
「もういいんだ……総長を降りても」
「なに言ってやがる!オレが東漢連合の総長を降りたら、誰がやるんだ!?この島は終わりだぞ!」
「だがお前はもう札付きの」
「馬鹿野郎、その程度でビビるハヤト様じゃねえ!余計な口出しは要らねえんだよ!」
「……すまない」
ハヤトに対してなにかを言いたかったが、言うに言えない。
海賊達から200万ベリーを巻き上げる事に成功したハヤトは1ベリーも自分の懐に入れずに、町工場のオヤジに渡して去っていった。
「総長……オレァ、オレァ」
「泣くな!ベルツリー!……ハヤトは、ハヤトは漢気を見せてんだ!俺達はそれにあやかってんだから文句は言えねえよ!」
リーゼントの男が受け取った大金を見て涙を流している。
町工場のオヤジは涙を流すなと叫び、ハヤトの漢気を無駄にしてはいけないと200万ベリーを自分の懐に入れる……
「あの男は、そんなにスゴいのか?」
「あぁ!?女のテメエに総長のなにが分かるってんだ!!」
ハヤトがやった事を見て、リグレットはイマイチ理解出来ない。
やっていることは迷惑料を含めての回収だが、それだけでポロポロと涙を流す理由にはならない。
リグレットはそんなにスゴいのか?と口にしたらリーゼントの男、ベルツリーはキレた。
怒りを剥き出しにし目を血走らせながらこっちにやってきて睨んでくるが……ついさっきのをハヤトの暴れっぷりを見れば怖いとは感じない。
「総長はな、この仏恥義理島等を守るヘッドリーダーを務める漢で、オレ達東漢連合の総長だ!オレ達ゃぁ、あの人の走りと漢気に魅せられて舎弟になったんだ!見ねえ顔だが他所者だろうが、総長をバカにす、っぐ!」
「やめんか!バカ息子が!……すまないね」
「いや、構わない……それよりもなにやら気になる話だが、詳しい詳細について聞いても構わないか?」
ベルツリーがワカサキに耳を引っ張られて怒られた後に私達に謝罪をしてくる。
一番睨まれていたリグレットは特に怒るような真似をせず、なにやら込み入った事情があるのだと話を聞いてみる。
「この仏恥義理島は、見ての通り工業が盛んな島だ。電球やらシャワーヘッドやら色々と売っていたんだが、それでも経済は回らなくて海賊達に海賊船を造ったり修理したり色々と商売をしている」
「……さっきのハヤトはそれを取り仕切っている、と言うわけではなさそうだが」
「あの子はうちの息子を始めとする荒くれ者を束ねている東漢連合の総長さ……ただな、それと同時に自警団でもあったんだ」
「……とても治安維持をしているとは思わんが」
「この漢連合はそういうのじゃないよ。ハヤトは海賊と海軍に話をつける仕事を担っていたんだ」
ハヤトは暴走族の総長であると同時に自警団でもあると言われてもピンと来ない。
私が治安維持の組織には見えないと言えばそういう組織じゃないと、海軍と海賊に話をつける仕事をしていた……
「裏取引か」
「ああ、そうさ。裏取引をしている……この仏恥義理島の経済を回していくには海賊相手に商売するしか道は無かった。だが、海賊に加担をしているとなれば海軍は黙っていない。ハヤトの奴はその事についてこの地を担当している海兵に話をつけた」
裏取引をしていると聞けば少しだけリグレットは嫌悪感を向けるが、町工場のオヤジは否定しない。
仏恥義理島の経済を回していくには海賊を相手にしなければならないが、海賊に加担をしているのを理由に色々と裁ける。特にここの様に世界政府加盟国でも何でもない場所ならば尚更だろう。
ハヤトは漢気を見せ、海軍にこの仏恥義理島が海賊から商売をしても許されることを認めさせた。
金を落とさない海賊達は問答無用で捕まえる事などを交渉の材料にして……ハヤトの手によって既に賞金首の海賊は何人か捕まっている。
「事情は分かった……だが、指名手配犯になっていたが」
「……分からねえ」
その協定もハヤトが賞金首になってしまったのだから破ることが出来る。暴走族の話は聞いても賞金首の賊の話を聞く通りが無い。
話をキッチリとつけている筈じゃないのかとリグレットは聞けばベルツリーは苦虫を噛み潰したように分からないと答えた。
「この前も、代金を踏み倒そうとした海賊をしょっぴいて海軍に渡したんだ……そん時に話し合いが通じるカンキチの旦那から全く違う海兵に変わっちまってた。きっと総長の身になにかがあったんだろうが……総長は今まで通りでよ」
「ふん、部下にも話せない事か……」
そのカンキチという海兵から別の海兵に切り替わって、話が拗れた。そんなところだろう。
だが舎弟にも話せないとなれば……内容を言えないか、言ったとしたら血の気が多い舎弟達が暴走するのか……
「賞金首になったからって、掌を返す奴はこの仏恥義理島にはいねえんだ。皆、あの人の男気に惚れて舎弟になったんだ」
「ほぉ……しかし、奴の親父は息子を連れて行くならば連れて行っても構わないと言っていたぞ」
「なっ、なにぃ!?おやっさんが!?テメエ、嘘ついてんじゃねえ!頑固者と職人を組み合わせた様なあの人がそんな事を言うわけねえだろ!」
「いや、事実だ……少なくとも、将軍様に連れて行きたいのならば連れて行けと言ってきた」
出鱈目な話をするな!とベルツリーは怒るが、リグレットは連れて行きたいならば行くがいいと言った事は否定しない。
そんなわけがない!とベルツリーはバイクを出して走り出した……
「きっと何か裏があるのね」
今まで黙って見ていたロビンは口を開いた。
なにかがあって、打ち明けることが出来ないなにかをハヤトの親父は知っている。おそらくはハヤトが言っていないがハヤトの親父は何かしらの方法で知った。それを踏まえた上で、ハヤトを連れて行くのならば連れて行くがいいと言っていた……
「ホンダの親父さんがハヤトを売るなんてありえねえな……」
「自分の夢がどうとか言っていたけれど」
「確かにあの人は若い頃に世界一周を夢見ていた。その才覚もしっかりとあったが、家業のバイク屋のしっかりと継いださ……自分がバイクが大好きだからそっちの道を選んだ。頑固者で職人肌だけど、ハヤトにああだこうだ言うような人とは思えないね」
「……将軍、これは少し調べてみる必要があるわね」
「……藪蛇を突くのはお前の能力ならば最適だろうが、あまり見たくない物を見せられる覚悟は出来ているのか?」
「そんなの、今更よ」
ハヤトに何かがあったと推測するロビン。
なにかがあったのは確かなのだろうが、それを勝手に調べれば逆にこちら側が痛い目に遭う可能性があることをロビンに言えば今更と言われる。
「ならば、話は早い。将軍様、バイク屋へ戻りましょう」
「事情を話せ、と言っても話をしてくれる相手ではなかろう……だが、ハヤトの奴もまた頑固者であるのは確かだろう」
事情を話せと言っても、あの手の輩は溜め込むタイプでそのまま噛み付いてくる……とは言え、先程のハヤトのバイクの腕から見て、乗り物に関する能力は凄まじいのは事実だ。
この仏恥義理島にやって来たのは操舵手を仲間にする為だ。
私達は来た道を戻っていきバイク屋に向かった。