ヒトヒトの実 超人種モデル ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「イヴ……なんで、なんでお前が居るんだ!」
「お兄ちゃん、私はもうお兄ちゃんに守られる妹じゃないの」
レースは私の勝利で終われば道中に現れた謎のバイク乗りの正体を現した。
バイク乗りの正体はハヤトの妹であり、ハヤトはなんでこんな所に居るのかを聞けばイヴは守られる妹じゃないと言う。
「私だってバイクに乗れるし、結婚したいって思える人はいる……お兄ちゃんは最初は認めるもんかって考えていたけど今じゃ認めてくれた。だったら、だったら私を一人前の大人だって認めて!私はもうお兄ちゃんに守られる子供じゃないの!」
「イヴ……」
自分はもう守られる妹でないことを主張するイヴを見て何時の間にかこんなに大きくなっていたのかと感じるハヤト。
プルプルと震えているハヤトにどの様な言葉を与えるかと考えていれば、海兵達が現れた。先頭にはフェラーリとカトリーヌが居た。
「見つけたぞ!東漢連合総長のハヤト!」
「テメエ……」
「カトリーヌ曹長、奴が東漢連合総長のハヤトです!私の腕をこんな目に合わせた見た目通りの暴走族で」
「なにがだ!確かに見た目通り総長は暴走族だ!けどな、テメエみてえに妹を嫁に寄越せって言うほど落ちぶれた人間じゃねえんだよ!」
フェラーリがカトリーヌにハヤトについて教えるが、東漢連合の1人が怒った。
そもそもで妹を嫁に寄越せと言い出したのが事の始まりであり、それさえなければなにも起きなかった。
「フェラーリ伍長、それは本当なの?」
「え、あ、いや、それは……この島は海賊相手に商売をしているんですよ!」
「海賊相手に商売をしている島を根絶やしにすればこの世界は終わるわ。海軍の目は厳しいけど、やったら問答無用の逮捕なんてことはないわ……それを見逃す代わりに妹を寄越せだなんて、女の敵ね!!」
キッと強くフェラーリを睨むカトリーヌ。
睨まれたフェラーリは怯むが、それでもと言い出す。
「目の前に居るのは賊なんだ!お前等、逮捕しろ!」
フェラーリはそう言うが海兵達は誰も動かない。
海兵達の視線の先にはフェラーリが居て、全員が全員、フェラーリを軽蔑の眼差しを向けていた。フェラーリが誰も動かないと分かって激怒して銃を抜いた。銃を上に向かって撃って威嚇するが、そんな事に怯える人間はここには居ない。
「ふざけるな!」
「お前は……」
「イヴさんを嫁に寄越せと言い出してお義兄さんを賞金首にして島に圧力をかけて……それでもお前は海軍か!」
「だ、黙れ!逆らうのならばお前も」
「ふん!!」
包帯を巻いている義弟が現れてフェラーリの狼藉を見過ごせないとフェラーリの前に立った。
自分に逆らうならばと脅し文句を使おうとするフェラーリを前に義弟は殴り飛ばした。
「この島は海賊には屈しない……それと同時に海軍にも屈しないんだ!お前達がやろうって言うなら、お義兄さんじゃなくて僕が相手だ!」
「そいつだけじゃねえぞ!この東漢連合も相手になってやる!」
ブンブンとバイクのアクセルを鳴らす東漢連合の面々。
その音を聞いてフェラーリを始めとする海兵達は逃げ去っていき、カトリーヌだけになった。カトリーヌは戦う意思があるのか?と全員が見つめていれば謝った。
「ごめんなさい……暴走族が海軍に手を出したって聞いてたけれど、まさかそんな事があっただなんて思わなかったわ。この島の人達の覚悟も伝わったわ……今回は海軍の不手際で、これ以上は手を出さないわ」
「ここで賞金首を見逃すのか」
「ええ、そうじゃなきゃ押し付ける正義になるもの……今回は見逃すけど次は無いわ」
「ふん、貴虎にやられてボロボロになっているだろう」
カトリーヌはこれ以上は戦わないしこの仏恥義理島には手を出さないと言って去っていった。
多少は話の通じる海兵だったかと海軍の船が去っていった事を確認し、この勝負は自分達の勝ちだと東漢連合が喜んだ。
「待ちやがれ!お前等……この勝負は、いや、このレースはオレの負けだ」
「お義兄さん、海軍が横槍を入れてきたんですよ!?それさえ無ければお義兄さんが勝っていて」
「悪魔将軍の野郎は、海軍がやって来ても引くことをしなかったし提案もしなかった。そして何よりレースで負けたんだ……約束通り、悪魔将軍の船の、悪魔超人軍の操舵手になってやる」
「でも、総長が居なくなったら」
「バーロー……オレが居なくなっても、お前等は戦えたじゃねえか」
自分の敗北だと負けを認めるハヤトに対して、海軍が横槍を入れてきたことでレースは無効じゃないのかと義弟は主張する。
しかし私が海軍がやってきたと分かったとしても引くことをせず、レースの中断の話を一切提案せずに最後まで駆け抜けていきゴールに辿り着いた。自分はレースに負けたんだと認めて悪魔超人軍の操舵手を務めると言う。
東漢連合の1人が総長であるハヤトが居なくなればと心配するがハヤトは自分が居なくても海軍達と戦えた事を言う。
海軍達と戦えたのならば海賊達とだって戦える。これからは自分が居なくても問題は無いと感じる。
「お前がよ……義弟じゃなきゃ東漢連合の二代目総長に指名していた。この島を守ってくれと頼んでいた」
ハヤトはそう言いながらバイクから降りて義弟に近付いていく。
ポロポロと涙を流しており、先ほどまでの東漢連合の総長としての顔でなくひ弱な雰囲気のハヤトに戻っていた。
「イヴは、大きくなった。僕がお兄ちゃんとして守らなくてもいいぐらいに……でも、イヴは僕にとって大事な妹なんだ。暴走族として暴れている人達じゃなくて、君みたいな真面目な青年に、義弟に任せるって決めたんだ!僕は、この仏恥義理島を出て悪魔超人軍の1人に入る。君がイヴの婚約者じゃなかったら東漢連合二代目総長に指名したけど、君はイヴの婚約者だ!君は、僕の義弟で……イヴを幸せにする事を第一に考えて……いゔのごどを、だのんだよ!」
「お義兄さん……分かりました。僕はこの仏恥義理島でイヴさんを守り抜きます」
「お兄ちゃん……ありがとう」
「礼を言われる事じゃないよ、イヴ……お兄ちゃんが妹の幸せを願わないなんてことないだろう」
涙を流したハヤトは妹のイヴを改めて義弟に任せる。
そして東漢連合に自分は居なくなる事を伝える。
「今日で僕は東漢連合の総長を辞める。皆の走りを止めろって言うつもりは無いよ……でも、イヴと義弟を巻き込まないでね。2人は僕達と違って真っ当な道を歩いて生きているんだから」
「「「『押忍!』」」」
ハヤトは特攻服を脱いだ。
特攻服を私の前に持ってきて、私の前に差し出す。
「今日からは僕は東漢連合の総長じゃないです。悪魔超人軍の1人です……まさか海賊になるとは思っていませんでしたが、船長、いや、将軍さん。命じてください」
「東漢連合総長ハヤトよ、今日よりは貴様は悪魔超人軍の操舵手として任命する。悪魔超人軍に入った以上は私の冒険の力となり、私の冒険が終わるまで戦いで死ぬこと以外の死は認めない。操舵手としてあらゆる海を走り抜けろ」
「押忍!」
「この特攻服は貴様が暴走族の総長として駆け抜けていった輝かしい黄金の時を生き抜いた証だ……今すぐには出航しない。しかし今生の別れになる可能性もある。特攻服に加え私が乗ったバイクやお前のバイクを貴様の親父に返還すると同時に荷物を纏めろ」
ハヤトが正式に仲間になった。覚悟は本物だが後で鬼出しの釜には手を入れてもらう。
バイクを走らせてハヤトの親父が経営するバイク屋に戻ればハヤトはバイクと特攻服をハヤトの親父に渡した。私もバイクを返還した。
「この特攻服……どうやらあんたはハヤトの船長に相応しい男だったか!」
「ハヤトは連れて行かせてもらう……永遠の別れになる可能性もある。今日1日は家族と過ごせ。それと、貴様がチューンナップしたバイクは中々の乗り心地だったぞ。貴様のバイクでなければ、ハヤトとまともに勝負をすることが出来なかった」
「たりめえよ。このホンダ様のバイクの腕は世界一だ……っと、随分と無茶な走りをしたもんだな」
ハヤトの親父、ホンダにお礼を言えば自分のバイクは世界一と豪語する。そして直ぐにハヤトと私のバイクと向き合った。
今日1日は家族の時間。私の冒険は何時かは終わりを迎えるが何時終わりを迎えるかは分からない。故に最後の1日を過ごさせる。
「お疲れ様です、将軍様」
「中々に骨がある相手だった……だが、それだけに操舵手に相応しい男だ」
ゼロ・オリジン号に戻ればリグレットが茶を出してくれる。
今回の冒険は中々で、特にハヤトとのレースは中々に過酷だった。殴り合いとも知恵比べとも異なる戦いで骨が折れた。
だが、操舵手として任命したハヤトはこのゼロ・オリジン号、そして何時かは手に入れる私達の船の操舵手を操る男として相応しい男でもあった。
「奴が操舵手になる事については不満はあるか?」
「あそこまで見事な走りを見せられた以上は文句は言えませんよ」
茶を飲みながら孔明達にハヤトが船の操舵手になる事について不満を抱いていないのかを聞いた。
ハヤトとのレースを見届けていた孔明も貴虎もロビンもハヤトが悪魔超人軍の操舵手になる事について一切不満を抱いていない。ハヤトならば操舵手として任せる事は出来ると信頼をしていた。
「異論はありません……ですが、1つだけ気になることが」
「なにが不満だ?」
「いえ、不満でなく気になることです。今、この場で言ったとしても分からない事なので……明日にやってくるハヤトを見ましょう」
リグレットも異論は無いのだが1つだけ気になることがあった。
不満なのかと聞いたが、不満でなく気になること……少しだけ心当たりがあるが、私はそれを口にせず翌日の夜明けにバイクの音で目を覚ます。
「まさかお前の後ろに乗る日が来るとはな」
「これが最初で最後だよ、お兄ちゃん」
2人乗りでバイクに乗っていたのはハヤトと妹のイヴだった。
妹のイヴがバイクを運転していて、自分が妹のバイクに乗る日が来るとは思っていなかったとハヤトは言いバイクを降りた。妹のイヴはハヤトをバイクに乗せるのは最初で最後だと言いハヤトと別れて帰っていった。
「お〜い、将軍さん。やって来ましたよ!」
「随分と淡泊な別れだな。もう少し涙を流すと思っていたが……」
「いやぁ、涙は昨日の内に全部流しましたから……覚悟は充分に出来てますよ!今日からよろしくお願いします!」
妹のイヴとの別れを見ていて随分と淡泊な別れだと貴虎が指摘すれば、別れの涙は昨日の内に流したことを伝える。
ゼロ・オリジン号に乗ってきたハヤトはビシッと敬礼をして、仲間としてよろしくお願いしますと頼み込んだ。
「バイクに乗っていた時と、大きく異なっているな」
「いや〜僕、ハンドルを握ったりすると性格が変わるタイプなんですよ」
「性格が変わった時の状態は常時続けられないのか?」
「無理ですよ。僕の家って何かをすれば性格が豹変するんですけど、そうじゃないとこの通りの性格でして」
バイクに乗っていた時のハヤトと性格が違うと感じる貴虎。
ハヤトはハンドルを握ったりすれば性格が変わるタイプと言った。気弱そうな性格になっているのでやはりかとリグレットはバイクに乗っている時の性格にはなれないのかと聞けば無理と言われた。
「父さんは作業着を着れば性格は変わりますし、お祖父ちゃんは自転車に乗れば性格が変わります。妹のイヴはなんと象に乗れば性格が一変するんですよ!」
「とんでもない家系ですね」
「あ、でもお母さんとお祖母ちゃんはそんな事は無いですから」
「……将軍様、大丈夫でしょうか」
気弱そうな性格になっているハヤトを見て、悪魔超人軍としてこの先にやっていく事が出来るかどうかの不安を抱くリグレット。
「問題は無い。スカウトして戦って、覚悟を決めてこの船に乗ったのだから」
不安が無いかと聞かれれば嘘になるだろう。
常時、東漢連合総長のハヤトだったのならば心強く今のハヤトは気弱そうな男にしか見えない。覇気を感じないが、奴は私がスカウトし、最終的にはこの船に乗ることを決めた。ならばなにも問題は無い。
「バイクは持ってこないのか?」
「持ってきてないっすよ。僕は今日から丘の上の暴走族からこの船の操舵手になるんで不要っす。それにこれから先、立ち寄る場所がこの仏恥義理島みたいに整備された道路があるとは限らないじゃないっすか、メンテナンスとかも色々とありますし……なによりも今日からは、この船が僕の乗り物です!」
「言っておくが、この船は次の新しい船を手に入れれば乗り捨てるだからな」
「えぇ!?そうなんすか!?」
「それまでに船の設備で欲しい物を考えておけ……大抵の願いは叶えるつもりだ」
バイクからゼロ・オリジン号に!と意気込んでいるハヤトに対して、このゼロ・オリジン号は乗り捨てるつもりだと言った。
既にその事については他の面々は知っているので1人驚くハヤト。少しショックを受けているので、船の設備で欲しい物を考えていく様に言った。
「ところで次は何処を目指すんすか?」
「私は東西南北の海から仲間を集めている。北の海の上空で孔明に出会った。西の海でリグレットとロビンに出会った、東はハヤトと出会った……ならば残すところは南の海だ」
「一度リヴァースマウンテンを経由して向かいます。故に次の進路はリヴァースマウンテンです!」
「分かりました〜」
東西南北の海で仲間を集めることを告げて、孔明は別の海に向かう為にリヴァースマウンテンに向かうと進路を教える。
ハヤトは笑顔で歩いていき、舵輪を手にした……すると雰囲気が変貌し、東漢連合総長ハヤト……いや、悪魔超人軍操舵手のハヤトの顔に切り替わった。
「全速前進で行くぜ!将軍の旦那!」
「孔明、進路を」
「取舵いっぱい!」
「あいよ!」
ハヤトを仲間にしてリヴァースマウンテンに向かった。
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