ヒトヒトの実 超人種モデル ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「ここみたいだな」
島のはずれにやってくればポツンと一軒の店があった。
ザウスキッチンと店に書かれており、貴虎はここがザウスキッチンである事に気付く。リグレットはザウスキッチンの入口の前に看板が置かれている事に気付いて、看板に書かれている文字を読んだ。
「【本日のメニュー (前菜)もぎたてとうもろこしのオリーブオイルのソテー(スープ)ほうれん草のポタージュ(魚料理)トマホークロブスターのボイル(デザート)搾りたて一頭ミルクのバニラアイス】……普通に美味そうな料理だな。値段は3800ベリーか」
「随分と良心的な値段ね」
「なにやら中が慌ただしい様ですが」
「先ほどの海賊だろう」
料理のメニュー及び値段を読み上げたリグレット。普通に美味しそうな料理だと言う。
ロビンは良心的な値段だとザウスキッチンに目を向ける。ザウスキッチンから音が聞こえている事を孔明が言う。慌ただしい音だと感じ取ったが貴虎がさっきの海賊がこの店にやってきている事を推測した。
腹が空いているのは確かなので店の入口を開けばカランコロンとベルの音が鳴った。
「いらっしゃい」
ヒゲを携えたコック服の男が現れた……見た目がトリコの調理王ザウスに似ているな。
「ふむ、何処かで見た顔だと思えば賞金首の海賊か。客としてやってきたのか?それとも海賊としてやってきたのか?」
「客としてやってきた」
「そうか。席はこちらだ」
私や貴虎を見て賞金首の人間だと気付く。
海賊か客かを聞かれるので客としてやってきた事を伝えれば6人座れる席に案内してもらい、メニューを渡された。
「カプチーノ……ココア……コーラ……麦茶……烏龍茶……おい、飲み物しか書いてないじゃないか」
リグレットがメニューを開いた。
そこに載っていたのはカプチーノ、ココア、コーラ、麦茶と色々と載っていたが全て飲み物だ。料理を食べに来たのに飲み物しか載っていないメニュー表にどういうことだとリグレットは聞いた。
「このザウスキッチンは私がその日の食材に合わせてメニューを決める……入口前の看板に本日のメニューを書いてあっただろう。今日出す料理はその料理だけになっている。ザウスキッチンはお客には飲み物だけを決めてもらう、後はその日の食材に合わせて作ったメニューを提供する。それがこの店のシステムだ」
「なるほど、変わった店とはそういうことですか」
決まったメニューはドリンクしか置いておらず、料理としてのメニューは本日のメニューと店の前に置かれている看板に書かれている物しか出さない。
孔明は魚屋の主人が言っていた変わった店とはこういう意味だったのかと納得をした。
「私の店、と言っているがお前が料理王ザウスなのか?」
そして貴虎が男の発言から男がザウスである事に気付いた。
「そうだ」
貴虎の質問に対してそれがどうした?と言わんばかりの薄い反応をするザウス。
「どうしてウェイトレスが居ないの?」
料理王と呼ばれるのならば、ウェイトレスの仕事でなく料理を作っているイメージがある。
ロビンはウェイトレス等が居ない事について聞いた。
「私1人でこの店を経営しているからだ」
「……なんか厨房の方から慌ただしい音が聞こえるんすけど」
ザウスが1人で経営している店と言うが、厨房から音が聞こえることをハヤトが指摘する。
「ああ、海賊としてやってきた者達が料理を作っている。お前達には関係無い事だから気にするな……それで飲み物は?」
「僕はコーラで」
「私は水でいい」
「カプチーノで」
「私はエスプレッソで」
「烏龍茶でお願いします」
「私も水で」
ハヤトはコーラを頼んだ。貴虎は水でいいと。ロビンはカプチーノを頼んだ。リグレットはエスプレッソを頼んだ。孔明は烏龍茶を頼んだ。私も水を頼んだ。
注文は聞いたと厨房の方に向かうザウス。数分後には各々が注文した飲み物が出てきて、先ずはと飲んだ。
「美味い」
私が水を飲んだ感想はその一言だった。
この世界は日本の様に蛇口を捻れば普通に飲める水が出てこない。飲み水が貴重な地域すらある。見た目こそはただの冷たい水ではあるが、上質な水だった。この水が料理に使われているならば極上の料理を期待できる。
「ふむ……この烏龍茶、事前に入れた作り置きなどでなく注文を受けてから入れていますね。しかも烏龍茶を入れる茶器を丁寧に温めています」
孔明が飲んだ烏龍茶が美味しく、作り置きの烏龍茶でないと喜んでいる。
他の面々を見れば全員が出された飲み物は美味いと言葉にしないが満足そうにしている。ドリンクの時点でこのレベルなのだから、期待する事は出来るなと待っていればとうもろこしとベーコンのソテーが出てきた。
「美味い……」
「同じ料理を食べたことも作ったこともあるが、なんだこの美味さは!?」
前菜のとうもろこしとベーコンのソテーを食べれば予想を上回る美味さだった。
とうもろこしとベーコンをオリーブオイルと炒めて塩で味付けしているだけのシンプルな物で、私達でも簡単に作れるし食べたこともある。貴虎は別格の美味さのとうもろこしに驚いているのでザウスは説明をした。
「このとうもろこしはもぎたてのとうもろこしだ……とうもろこしは採取した瞬間から一気に鮮度が落ちていく。故に調理するギリギリまでとうもろこしを採取しない。そうすることで最高品質のとうもろこしを維持する。採取したら即座に粒を剥いでオリーブオイルでベーコンと共にシンプルに炒めた後に塩で軽く味付けをする」
「シンプルだが高度な味だな」
ザウスの説明を聞いた。メニューにもぎたてとうもろこしと書いていた通りもぎたてのとうもろこしを使っていて、調理法もシンプルだった。シンプルだったが最適な味付けや焼き具合で文句のつけようがない。
前菜を食べ終えればスープが出てきた。ほうれん草のポタージュだ。
「甘くてコクのあるほうれん草だ」
「そのほうれん草は冷やしたほうれん草だ」
「ああ、凝固点降下ですか」
「なんすかそれ?」
ほうれん草のポタージュだが、自然な甘みとコクがある物だった。
なんの工夫があるのかと思ったらほうれん草を冷やしている事を説明する。孔明が凝固点降下かと納得をしたが意味を知らないハヤトは頭に?を浮かべる。
「凝固点降下は物が凍りつく温度が通常よりも低くなければならないことだと思えばいいですよ……確か、ほうれん草は寒い環境に置いていれば甘くなるのでしたね」
「ああ、その通りだ」
ほうれん草のポタージュのコクや甘みの正体はなにか手を加えた物ではなく、冷やすことで甘みが増したほうれん草そのものの味だった。このポタージュも美味いなと感じて食べ終えれば、メインディッシュであるトマホークロブスターのボイルが出てきた。これもまた絶品で美味いなと感じていれば、魚屋で鮭を買っていた海賊とその仲間と思わしき人物達が出てきた。
「ザウス、1万匹に1匹しかいねえと言われている鮭を使ったポワレだ!味付けにはしょうが醤油を使い、食べ進める途中でレモンの果汁を搾ってかけろ!」
鮭を買った海賊は鮭のポワレを別のテーブルに持っていった。
テーブルにはザウスが座り、ザウスは鮭のポワレを食べた。
「ふむ、確かにこの脂の乗り具合は一万匹に一匹と言われる鮭、鮭児だ。味付けに使っているしょうが醤油のしょうがは既に擦り下ろされているしょうがでなく、生の生姜から皮をつけたまますりおろした物。食べている途中にレモンの果汁をかけることで鮭児の濃い脂に飽きずに最後まで食べる事が出来る……中々に美味い一品だ」
鮭児を使った鮭のポワレを食べたザウスは鮭が鮭児だということや味付けに使った生姜醤油の生姜が既に擦り下ろされている調味料の生姜を使わず生の生姜を皮を剥かずそのまま擦り下ろした物だと気付く。そして途中でレモンの果汁をかけることで味が爽やかになり、鮭児の脂に飽きずに最後まで食べる事が出来る一品だと褒めた。海賊達はその言葉を聞いて嬉しそうに喜んだ。
「だが、これではダメだ」
鮭のポワレを食べ終えたザウスはこれではダメと言った。
鮭児を使った鮭料理ならばもっと美味い鮭料理を作れると言っているのかと思ったのだが、喜んでいた海賊達は激怒する。
「ザウス、テメエ!何度も何度もオレ達に料理を作らせてはダメだダメだと言いやがって!オレ達はコックじゃねえからコックを雇う為にお前をスカウトに来ているんだ!それなのに料理を作って食べてはダメと言って断り続けやがって!」
「お前達の料理は美味かった。だが、私が求めていて納得することが出来る料理ではなかった。だから話を断っただけだ」
「本当は最初から仲間になる気なんかねえんだろ!こうなったら、力で教えてやる!」
「将軍、どうしますか?」
「問題は無かろう」
料理は美味かったが、ザウスの納得がいく料理ではなかった。
海賊達の仲間になる条件、いや、課題として料理を作らせている様だがザウスが求めている料理ではなかった。出来うる限りの最高の料理を出したが、ザウスは違うと断るので最初から仲間になるつもりは無いのだと色々とやらせて適当な理由をつけて断っているんだと思い激怒した。
刀や銃を抜いたのでこのままでは大きな争いになるのではないのかと予測する孔明。
力を貸すべきかを聞いたが問題は無い。ザウスと海賊達の間には大きな力の差がある。
「はぁ……そちらがその気ならばやらせてもらう」
ザウスはそう言うと襲いかかってくる海賊達に向かって針を投げた。
針が刺さった海賊は膝をついた。他にも海賊達は居るので襲いかかるがザウスは軽々と避けて掌底を入れた。
「栓抜きショット」
「っが、ぁ……」
掌底を入れられた海賊は倒れた。
まだまだ居る海賊達に向かってザウスはコックコートから酒が入ってそうな水筒、確かスキットルと呼ばれる水筒を取り出して中に入っている液体を少しだけ掌に乗せた後に海賊達に向ければ海賊達は酔っ払ったかの様に千鳥足になる。
「ほろ酔い漬け」
ザウスはアルコールで海賊達を酔わせた。
「私は条件と出した問題を答えることが出来ればコックになっても構わないと最初から言っている。しかし、お前達はそれを成し遂げれなかった。手を出してきたのはそちらだ」
「な、なんらとぉ!?」
「瞬間血抜き」
ザウスは酔っ払っている海賊達に向かって手刀で頸動脈を攻撃した。
海賊達は全員倒れればザウスは急いで海賊達を抱えて店の外に放り出せば……海賊達が頸動脈から大量の血を流して倒れた。
「最初の針は麻酔針、次の掌底は骨盤をズラす、スキットルタイプの水筒から出したお酒で酔わせる、最後に血を抜く……料理人らしいと言えばらしい技だな」
「奴等は雑魚だ。強い相手であれば人間を捌く包丁を使って戦う」
「包丁は食材を捌くものでそれは刀では?」
「なにを言っている……人間の世界では人間は人間を食べないが自然の世界では他の動物が人間を食う。野生の生き物にとっては人間は極上の餌だ」
魚の鮮度を保存する麻酔針、肉や魚の骨髄等を取り出す為の骨盤をズラす、酒を使って相手を酔わせる、そして最後の血抜き。
料理人らしい技だなと感心していれば、こいつらは雑魚で強い相手ならば人間を捌く包丁を使うとザウスが言う。孔明はそれは包丁でなく刀じゃないのかを指摘すれば、自然の世界では動物達には人間は立派な餌、食材であることを伝える。
野生の過酷さを知っていて、麦わらの一味のサンジとは異なる料理人か。
「っと、デザートだな。待っていろ」
トマホークロブスターのボイルを全員が食べ終えているのを確認したザウスは先程までの戦闘が無かったかの様に厨房に戻る。
ちゃんと自分が食べた鮭のポワレや私達が食べたトマホークロブスターのボイルの食器を片付け、ザウスはバニラアイスを持ってきた。
「……美味いな」
このバニラアイスも極上のバニラアイスだった。
「通常の牛乳は生産地の牧場に居る複数の牛から採取した物を混ぜ合わせ、煮沸による殺菌を数十分ほど行う。しかしこのバニラアイスに使っている牛乳は牛一頭から取れた牛乳のみを使い、煮沸による殺菌を数秒だけにしている。そしてバニラアイスにする為に冷やしていく過程で定期的に掻き混ぜて空気を含ませている」
バニラアイスについてザウスは説明をする。
美味くて当然だなと素人でも分かる内容であり、前菜、スープ、メインディッシュ、デザート、ドリンク、全てにおいて最高の料理であった。
「これほどの腕を持っている者ならば、海賊達にスカウトされるのも納得だな」
「料理王の名は伊達じゃないか……」
今まで食べたどんな料理よりも美味かった。貴虎は海賊達にスカウトされるのを納得する。リグレットも料理王の名は伊達ではなかったと認めた。
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