ヒトヒトの実 超人種モデル ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「どの様な料理を出すのか」
悪魔将軍が料理の仕込みに入って1日が経過した。
ザウスを仲間にする為に再びザウスキッチンにやってきたが……リグレット達は下町の包宰と呼ばれたタカオと言う料理人がどんな料理を作ったのかが分からなかった。
なにか手伝えることは無いかとリグレット達は聞いたが、悪魔将軍は1人でやると言って調理を始めた。
どんな料理が出てくるのかをリグレット達は予測する事が出来ない。唯一ザウスは答えに辿り着いたかどうか楽しみにしている。
「出来たぞ」
料理を作り終えた悪魔将軍はお盆を手にしてザウスの前にやってきた。
お盆をザウスの前に置いた。どんな料理を作ってきたのかと悪魔超人軍は見た。そして驚いた。
「は、白米?」
お盆には綺麗な銀シャリが盛られたお椀があった。
なんだこれと貴虎は戸惑った。
「豆腐の味噌汁?」
お盆には綺麗な賽の目切りされている豆腐の味噌汁があった。
なんだこれと孔明は戸惑った。
「焼き鮭?」
お盆には焼き鮭があった。
なんだこれとロビンは戸惑った。
「肉じゃが?」
お盆には肉じゃががあった。
なんだこれはとリグレットは戸惑った。
「ほうれん草のおひたし?」
お盆にはほうれん草のおひたしがあった。
なんだこれはとハヤトは戸惑った。
悪魔超人軍は改めて悪魔将軍が持ってきた料理を見た。
白米、豆腐の味噌汁、焼き鮭、肉じゃが、ほうれん草のおひたし、極々普通のありふれた料理だった。
「ご、極々普通の料理だと……」
下町の包宰と呼ばれた料理人、タカオが作った料理はこうではないかと答えを出した。
悪魔将軍が出した料理を見て貴虎はどうしてこんな料理をと戸惑いを隠せない。ザウスは箸を手に取った。そして悪魔将軍が用意した料理を食べた。
今までは料理の隠し味や調理法等を言っていたがザウスは黙々と食べていた。
なにかあるのか?と孔明は考えていたがザウスは喋らない。そしてザウスは悪魔将軍が用意した料理を食べ終えた。
「美味かった……素人臭さはあったが、紛れもなく私が唯一敗北したタカオの料理だ。約束通り、お前の船のコックになろう」
ザウスは求めていたタカオの料理だったと認めて悪魔超人軍のコックになることと頷いた。
「ま、待ってくれ!将軍様の料理の何処が良かったのだ!?大衆食堂で食べれる普通の料理じゃないか!」
ザウスは美味かったと一言述べる。素人な部分はあったが、紛れもなく求めていた料理だった。
約束は守ると悪魔超人軍の船にコックとして乗ると言うが、リグレットがなんでこの料理で頷いたのかを聞いた。貴虎達もどうしてこんな料理でザウスが納得をしたのかが分からないので説明を求めた。
「焼き鮭以外は残っている……お前達も食べるといい」
悪魔将軍がそう言うと厨房に戻った。
焼き鮭以外の料理、白米、豆腐の味噌汁、肉じゃが、ほうれん草のお浸しを持ってきた。5人はテーブルに座って料理を食べる。
「美味い……だが、なんだ」
「飛び抜けた美味さではありませんね」
貴虎が白米を口にした。
白米は美味かった。しかしなにか別のものを感じた。孔明は飛び抜けた別格の美味さでは無いと感じるがそれでも美味いと感じた。肉じゃがにも手を出す。ほうれん草のお浸しにも手を出す。どれもこれも絶品ではあるが、飛び抜けた美味さではなかった……だが気付けば完食をしていた。
「将軍、なんなのですか?貴方はいったい、どの様な料理を作ったのですか?」
体に自然と入っていく美味い料理だった。
しかしとてつもない美味さの料理ではなく孔明がなにをしたのかを聞いた。
「……先ずは白米、この島で採れた米であり調理をする前に米を1粒1粒確認をして選別をする」
「選別だと?」
「そうだ。米と言っても1粒1粒が全て同じ物ではない。小さな粒で殆ど一緒に見えるが粒の大きさは実際にはバラバラであり、大きさが同じ物のみを揃えて炊き上げる。無論、その米が育った井戸水を使ってだ。そうすることで炊いた際のムラが一切無い」
「……舌触りが普段と違うのはそういうことか」
米を一粒一粒選別していた事を教えれば今まで食べた白米と違う理由が分かって納得する貴虎。
「次に味噌汁。鰹節で出汁を取るが、鰹節は削りたての鰹節を使う。すり鉢で山椒の木で出来たすりこぎで味噌をすった。出汁を取り味噌を入れた後に豆腐を入れて沸騰させずに温めた」
「それでこんなに美味いんですね」
味噌汁の工夫を言えば美味かったことに納得するハヤト。
「肉じゃがは砂糖を使わずハチミツを使い牛肉の脂身とジャガイモだけを先に煮込み途中で牛肉を入れる。高温で煮込むのでなく60℃から70℃までの間で煮込み続けることで煮崩れが起きにくく味が染み込みやすい」
「だからコクがあるのに潰れないのですね」
肉じゃがの美味さの理由を知ってリグレットは納得した。
「ほうれん草のお浸しはほうれん草を塩を入れた熱湯で茹でる前に根元を切って軽く水につける。そして茹でた後に醤油で味をつけるがそこにほんの僅かだが砂糖を混ぜる。まぶしている鰹節も当然、削りたてだ」
「……と言うことは、焼き鮭にも工夫があるのね」
「ああ……とは言え、タカオという男が作った物よりは粗末な物のようだがな」
ほうれん草のお浸しの工夫を聞いた。ならば唯一食べていない焼き鮭にも工夫があるとロビンは考え悪魔将軍は頷いた。
タカオと言う料理人が作った物と比べればお粗末な物だが……紛れもなく、ザウスが求めていたタカオの料理だった。
「何故、これが答えなのですか?」
焼き鮭は食べていないが残りの料理は食べた。
どれも美味いと感じるが、これよりも最上級の料理はある筈でザウスならばそれを作れる筈と確信している孔明はコレが答えの理由をザウスに聞いた。ザウスは何故コレが答えなのか、嘗て料理勝負で自分を負かしたタカオの話をした。
「3−0でタカオの勝ちです!」
下町の包宰と呼ばれるタカオと料理王と呼ばれたザウスの料理勝負。
勝負の審査をする3人の審査員が迷いなくタカオの料理の方が美味いと認めた。
「バカな……何故、何故こんなありふれた街の料理に私の技術を尽くした料理が敗れる!?」
下町の包宰と呼ばれるだけあってかタカオの素材の目利きは確かだった。
選んだ食材は異なるが、どちらも最高の素材を選んだ。ザウスが作った料理は高級旅館の朝食を思わせる料理だった。対するタカオが作った料理はありふれた街の料理だった。自分の料理よりもタカオの料理の方が美味かった事を、敗北をザウスは認められなかった。
「ありふれた料理だからこそ、細かな工夫や気遣いの心尽くしがしっかりと伝わるんです」
タカオは自分の料理がザウスに勝った理由を伝えた。
「貴方の料理は確かに極上で絶品で芸術品とも言える領域の物です。しかし貴方の料理は気合いが漲り過ぎている。それでは食べる人が心を楽しませて満足に食べる事が出来ない」
ザウスは料理を極めたと思っていた。
ザウスの作る料理は誰もが美味いと認めていた。ザウスの料理を期待する客に対してザウスは最高の一品を作っていた筈だったが気合いが漲り過ぎた料理は食べる者の心を落ち着かせ、楽しませる料理ではなかった。
「これはなにかの間違いだ!もう1度勝負すれば、私が勝つ!」
ザウスとタカオの料理の違いを説明されれば納得が出来ないザウス。
もう一度勝負をと料理勝負をタカオに対して挑むのだがタカオは断った。
「申し訳ありません。自分はまだまだ修行中の身です、料理勝負はとても楽しかったですが料理勝負ばかりしていては……自分の店、日輪食堂の事もありますし」
「……これほどの料理を作れて下町の包宰と呼ばれる料理名人がまだまだ修行中の身だと!?」
料理勝負は楽しかった。しかし自分が経営している食堂、日輪食堂の事や料理修行の途中なので再戦はしない。
タカオの料理はありふれた料理ではあったが工夫はしている。素材の目利きも確かで、下町の包宰と呼ばれる程の腕自慢だ。ザウスは敗北は認めていない。しかしタカオは腕のある料理人である事は既に認めていた。そんなタカオがまだまだ修行中である事に違和感を抱いた。
「料理人は死ぬまで修行中ですよ」
タカオはなにも迷わずザウスの抱いている疑問に答えた。しかしザウスはそれならばと新たな疑問を抱く。
「それならば完成された至高の料理が作れないではないか」
まだまだ修行中ならば完成された至高の一品を作ることが出来ない。
死ぬまで修行中ならばそんな料理を永遠に作ることが出来ない。
「確かにそうですね」
ザウスの問いかけにタカオは少し苦笑いをし完成された至高の料理を作れない事を認めた。
料理人として至高の一品が作れないことは悔しくないのかと疑問を抱いているとタカオは直ぐに笑顔になった。
「でも、死ぬまで修行中と言うことはまだまだ料理の腕が上がるということ。料理人としてこれほどまでに嬉しくて楽しいことはないじゃないですか」
「っ……」
「美しい味と書いて美味しいですが、未だに口と書いて味です……未だ見ぬ知らない味をこの日輪食堂で自分は作っていきたいです」
ザウスはタカオに料理人として負けた。タカオの言葉を聞いてザウスは料理王と呼ばれている自分よりも上の料理人と感じた。
何も言えない完全な敗北をしたと受け入れるが出来なかった敗北を受け入れた。それを気にザウスは出張料理人をやめ、珍しくも何ともない南の海のこの島にザウスキッチンを立ち上げた。
「1つ聞くが……何故この料理を答えにしている?」
「それはお前が一番分かっているんじゃないのか」
悪魔超人軍はザウスの唯一の敗北を知った。
今まで幾つかの海賊団がザウスをスカウトにやってきた。
条件を提示すればあっさりと飲んだ。しかし課題だと料理を作らされるがタカオの料理はどの海賊団も作ることが出来なかった。悪魔将軍は何故この料理を求めて答えにしたかを聞けば、ザウスは既に分かっているんじゃないのかと言い返した。
「傲慢な頃の自分への戒めの為でなく、自分が振る舞う料理がなんなのかを聞いていたか」
「そうだ。私は料理王と呼ばれあらゆる料理に精通している。海賊らしい宴の料理、大きな戦いを迎える前の戦前の縁起のいい料理、色々な料理を作ることが出来る。しかし、私がシェフとなって作る普段の料理は豪勢な料理ではない。工夫もする。手間暇もかける。だが豪華絢爛ではない何気ない日常の1ページの料理だ……海賊らしい豪華な料理は当然作る。だが、何気ない日常の1ページの料理を求めていない、その料理を要らないと言うのであれば、その海賊達に対して振る舞う料理は何一つ無い」
ザウスは自分が振る舞う料理は宴の料理だけでなく何気ない日常の1ページの素朴でありながら体に染み込む料理だと決めていた。
その料理を知らず、海賊らしく酒や肉を求める。タカオの料理の様な素朴でありながら心尽くしがしっかりと伝わる毎日食べる料理を拒むというのであれば、求めないというのであれば、ザウスはその船に乗るつもりはなかった。
「料理王ザウスよ、これよりお前は悪魔超人軍の1人となる。そして悪魔将軍である私がお前を悪魔超人軍のシェフとして任命する。お前はシェフとして我々の食を安心と安全を確保しろ……今日よりお前は私の冒険が終わるまで、戦って死ぬ以外の死は認めん」
「ああ、たった今からお前達の船のシェフとして最高の料理を作ろう。そしてお前達の仲間として戦おう……今日はザウスキッチン最後の営業日だ。最高の料理を振る舞おうじゃないか」
仲間になったザウスに悪魔将軍は改めて悪魔超人軍のコックいや、シェフを任命した。
ザウスは最高の料理を作ること、そして仲間として戦うことを約束して今日はザウスキッチン最後の日だとザウスキッチンにある食材そしてゼロ・オリジン号に余っている食材等を全て使った宴会料理を振る舞った。
ザウスは喜んでいた。
己の料理を振るうのに相応しい者達がやってきたのを。悪魔超人軍ならば思う存分に自分の料理を振る舞える。
「さて……食材を仕入れるか。孔明よ、次の行き先は?」
「リヴァースマウンテンに最も近い街に向かいますので数日分で構いません」
ザウスキッチンは閉店し、店にあった食材とゼロ・オリジン号にあった食材は全て使った。
悪魔超人軍のシェフとして厨房を手に入れたもとい預かったザウスは次に何処に向かうのかを聞けば孔明はリヴァースマウンテン、でなくリヴァースマウンテンに最も近い街に向かうことを告げる。数日分の食料で構わないと言われたので、ザウスは悪魔超人軍のシェフとして数日分の食料を市場で購入した。
タカオ
下町の包宰と呼ばれている天才料理人。
日輪食堂と言う大衆食堂を経営しているがザウス同様にあらゆる料理に精通している。
元ネタは料理漫画の金字塔のあの漫画に出てくる料理人で多分一番料理の腕が強いあの男
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